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5話 恋囃

 今日は不思議と早く起きて、早くご飯を食べた。

 当然、学校も昨日より早く着いたわけだが、言っても五分くらいだ。

 気にしないようにはしていたが、どうしても気になってしまう。

 というのも昨日、遠月に貸したラノベのことだ。

ちゃんと読んでくれているだろうか。


「おっはよー」


 軽く肩を叩かれ、背中からテンションの高い声が聞こえた。

 振り返ると遠月が満面の笑みを浮かべている。


「おはよう。随分と元気いいね」

「そう? これが普通だよ」


 軽い挨拶を交わして俺は自分の席に向かって歩く。遠月も俺のすぐ後ろをてくてくとついてきた。

 鞄を机の上に置いて俺は遠月を横目でちらりと窺う。

 ラノベの話題をこちらから振るべきか、それとも遠月から話すのか。


「あっ、これ有難う。読んだよ」


 そう言って手渡してきたのは昨日貸したラノベだった。


「ど、どうだった?」

「面白かったよ、所々不思議に感じた場面もあったけど読んでよかったよ。それに女の子が可愛かった」

「そうか。面白かったなら貸してよかった」


 取り敢えず、一安心。

 ただオタクになりたいというならこれくらいは突破しなければいけない壁だ。


「続きあるけど読む?」

「うーん、そうしたいんだけど。なんか借りっぱなしはアレだし」

「じゃあ本屋行ってみたらどうだ」


 本屋ならラノベだけじゃなく漫画も置いてあるし、オタクの勉強にはもってこいの場所だろう。

 遠月は小首を傾げた後、納得した表情をする。


「本屋? そっか、中身は小説だったし本屋にあってもおかしくないよね」

「そうそう、でも遠月一人だったら浮くだろうな」


 こんな美少女がラノベや漫画コーナーにいることは滅多にない。男と一緒ならまだ理解できるが、一人だと色々勘ぐってしまう。


「じゃあ鈴城くんも一緒に行こうよ」


 無邪気な笑顔でとんでもない提案をしてくる遠月。もちろん一緒に行けるなら行きたい。そりゃそうだ、こんな可愛い女の子とデートできる機会なんてもう二度とないかもしれない。


「俺とで大丈夫かな」


 でも二人でいる所を知人に見られたら、彼女に迷惑がかかるかもしれない。余計な誤解を生んでしまうこともある。


「大丈夫だよ。むしろオタクアドバイザーの鈴城くんと一緒じゃないと私一人で行ってもわからないから」


 オタクアドバイザー、あまり響きはカッコよくない。つーかダサい。

 でも遠月がここまで言うなら行くべきだろう。誤解されたらどう、とか考えてる場合じゃない。

 このチャンスを逃したら一生後悔する。


「俺はいつでも平気だから、そっちの都合良い時に誘ってくれ」

「おっけー、りょーかい」


 ビシッと敬礼ポーズをした遠月を見て、俺は鞄の中から教科書を出して授業の準備をする。

 ある程度、落ち着いた後にさっき買っておいたお茶を飲む。


「あ、そう言えば鈴城くんって立花ちゃんと仲いいの?」

「げほっ、えほ、えほっ」


 びっくりしたぁ……え、なんだ急に。

 むせた身体を落ち着かせ、俺はペットボトルを仕舞って遠月に視線を移した。


「昨日も言ったけど、別に仲良くない。全くの初対面ではないけど」

「そうなんだ。でも立花ちゃんのこと好きだよね」


 なぜそうなる!?

 遠月の考えてることがわからない。何が言いたいんだ。

 もしかして俺と立花について何か知っていたり……。


「私、実は恋のキューピッド的な所があってね。今まで何組ものカップルを誕生させた実績があるんだよ」


 その実績が一体、なんの役に立つのかわからないが間違ってはない。中学の時、俺は立花を好きだったわけだし。

 ただ今は違う。好意は一ミリも無いそう断言できる。

 一度、咳払いをしてから彼女に尋ねる。


「そうだとして、何で俺が立花を好きってことになるんだよ」

「ビビッと来たわけです。二人が隣に座っていた昨日の感じ、あれは間違いなく人が恋してる距離感」


 そんな距離感ねえだろ。

 お互いに椅子の端っこ座って一番遠かったけどな。


「鈴城くんと立花ちゃんはいいカップルになれるよ!」


 そう言い残して遠月は友達の元に走って行った。

 遠月が何を考えてるかさっぱりわからん。

 俺が立花を好きとか、やっぱり有り得ない話だ。


 けれど、もし俺が陽キャになったとして立花が振り返るとしたら、正に遠月舞夜は恋のキューピッドってわけか。

読んでいただきありがとうございます。


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