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20話 文学少女

鵜飼(うかい)、見てたのか」

「購買行こうとしたらお前と藤宮が話してるのを見かけてな」


 どこまで見られていたかわからないが、鵜飼の表情は明るくない。


「なんかマズかったか?」


 もしかして藤宮が鵜飼の彼女、知り合いの彼女というパターンで不審がられているというのもあり得る。

 すると鵜飼は突然、吹き出して笑う。


「ぷっ、くくっ、うははは。いやいや鈴城くんよ、藤宮に随分と気に入られてたな」

「そんな笑うことか?」


 面白さが全くわからない。

 だが鵜飼の様子だと、藤宮には何かあるのは間違いなさそうだ。

 うーん、例えば宗教にハマってるとか、……おいおい、それは流石にないだろ。じゃあめちゃくちゃクラスで嫌われて……いたら立花とは仲良くならない。


 じゃあなんだ。

 そんな考えを駆け巡らせていると、鵜飼がスッと真面目な表情をして言う。


「藤宮は言わば、童貞キラーだ」

「……何言ってんだ、お前」


 童貞キラー? あのメガネで三つ編みの藤宮が。


「まあ聞け。あの女は見た目地味なクセに男に取り入るのがうまい。だが本人は別に気があるわけじゃなく、ただ喋ってるだけで軽くボディタッチも彼女にとっては当たり前の行為。そういう下心のない素の彼女が童貞たちを苦しめている」


 長々と説明ごくろう。


「つまり勘違いして好きになる男が続出している、そういうことか?」

「正解だ、次の標的は鈴城ってことだな」


 力強く頷いて答えた鵜飼。

 ぶっちゃけ、鵜飼の言いたいことはわかってしまう。あの感じでグイグイと来られたら悪い気しないどころか、勘違いしてしまうかもしれない。

 もちろん俺はそんな簡単にコロッと落ちたりしないが。


「ところで、なんでそんなに藤宮に詳しいんだ? まさか鵜飼」


 そう言うと、鵜飼は自信満々の表情で腕を組んで答えた。


「ふんっ。俺をバカにするな、今の話は立花から聞いただけだ。それと今年から同じクラスだから、それなりに情報は入ってくる」


 立花と藤宮は仲が良かったな。立花と鵜飼もそれなりに話すようだし、嘘ではないか。


「藤宮ってクラスではどんな感じなんだ?」

「そっちのクラスで言うところ、香奈とか美咲みたいな感じだな。クラスで目立っている女子のグループの一人って感じだな」


 メガネで三つ編み、小説を持ち歩く。……その姿は正に文学少女と言わざるを得ないが、教室では完全に陽キャ側。わからないものだ。


「意外って顔をしているな、鈴城」

「立花と親友って聞いてたからなんとなくはわかっていたけど、でもあんまイメージできないって言うか」

「確かに藤宮の見た目は一見、そこまで可愛くない。でもあいつは眼鏡を外したら別人のように可愛くなる」


 力強く言い切った鵜飼に、俺は少し想像する。

 だがうまい事、イメージすることはできなかった。


「鵜飼は好きなのか? 藤宮のこと」

「いや別に。あいつは男に興味ないからな、好きになっても意味ない」


 その言い方だと、一回好きになってそうだが今は触れないでおこう。


「そこは遠月と似てるんだな」

「……確かに、言われて気付いたが藤宮と遠月って似てるな」


 だからすぐに友達になれたのかもしれない。しかも二人ともオタク的趣味を持つという共通点もある。


「取り敢えず、鈴城は藤宮に恋しないよう気を付けるんだな」

「結局、忠告しに来たのか?」

「黙って面白くなるまで見守るのも一興だが、今回は武士の情けだ。有難くこの恋愛マスターの言う事を聞き入れとけ」


 そう言えば、こいつ恋愛マスターだったな。

 皆川の時は結局何もせずに終わってしまったが、その実力は本物なのか未だわからない。


「なんかあったら話聞いてくれ」

「おう。てか明日は食堂で食えよ? 人数は多い方が楽しいからな。ちなみに今日の話だが、立花と皆川が同卓しててすげぇ面白かったぞ」


 そんなワクワクした顔で言う話じゃねえだろ。

 だけど、なぜだろう。

 見ればよかったと後悔している自分がいる。


「明日は行くよ」

「頼むぜ。じゃ、俺は購買に寄って行くからここでお別れだな」


 鵜飼が走り去って行くのを見てから俺は教室へ向かって歩き出す。

読んでいただきありがとうございます。


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正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

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