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17話 幼馴染と師匠

 ファミレスのどたばた騒ぎも終わり、俺は帰路に着こうとしていた。

 重たい荷物を持って。

 七橋と電車の方角が違えば、駅で荷物を押し付けることができたのだが、二分の一で外した。さらには最寄駅も一緒という不運。

 しかし駅から家の方角は真反対。ここまではまだいいとして、これ以上は俺が干渉する義理はない。


「もういいよな? 流石に家まではキツイ」

「えー、いいじゃん。ステーキセットはちゃんと私が払ったんだし」

「お前が食ったんだから当然だろ」


 もしかしてコイツ、俺に払わせようとしていたのか。……恐ろし過ぎる。


「家はこっからそんな離れてないし、別にいいじゃん。ね? 唯香ちゃん」


 七橋は俺から視線を横にずらして声をかけた。

 隣を見ると、むすっとした表情の元幼馴染が立っていた。


「……なんでお前、ここにいんの?」

「帰る方向一緒なんだし、仕方ないでしょ」

「いやそうじゃなくて」


 ここ北口だし。

 普段、俺たちが通るのは南口。ここに立花がいるのは違和感しかない。


「あれ、二人って知り合い?」


 流石に今の会話を聞かれていたら、知り合いじゃないと言うのは苦しいか。


「一応知り合いではある」

「へー、そうなんだ。あ、唯香ちゃんって今時間あったりする?」


 そこまで興味がなくて助かった。

 立花も少しホッとしたような顔をしている。一度、小さく息を吐いてから七橋の問いかけに答えた。


「大丈夫だけど、一応なにするかだけ聞かせて」


 そう言うと、バッと俺から袋を一つ奪って立花の前に差し出す。


「私の家までこれ運んで欲しいの! 鈴城が重いってうるさくてさ、一個だけでいいから」


 いやそれは違うだろ。


「重いから文句言ってるわけじゃない。自分で買った物は自分で持って帰る、それは当たり前のことだろ」


 なんで俺が荷物持ち確定みたいになってんだって話だ。

 皆川の恋も終わったことだし、そろそろ師匠と弟子は終わりにしたい。てか、思い返せばこの師匠何もやってなかった気がする。


「……まあ一個なら」


 持つのかよ。

 七橋から袋を受け取って立花はじろっと俺を見た。


「アンタが今帰ったら私たちがその荷物持たされるんだけどさ、それでいいの?」

「そういうことか、わかった。持っていくよ」


 どうせここで何言ったって結局は俺が持っていく流れになっていただろう。それならさっさと諦めて腕が限界に来る前に運ぶだけだ。

 七橋が足軽に歩き出し、立花がそれに続いた。

 二人に置いてかれないよう、俺も駆け足で追いつく。


「ねえ、今度はこっちが聞くけど二人って仲いいの?」


 立花が俺と七橋を交互に見た。


「……えー、うん、どうだろう。ねぇ?」

「その思わせぶりな感じマジでやめろ。……七橋とは普通に友達じゃない」

「友達じゃないんだ! ひどい、こんなにカマってあげてんのに」


 そのせいで今日はいい迷惑だよ。

 この調子だと暫くは弟子として扱われそうだし、一体いつになったら俺は解放してくれるのだろうか。


「ふーん、仲いいんだ」


 立花はそう呟いて、持っていた荷物を俺に押し付けてきた。

 戸惑いながらも袋を掴んで立花の顔を見る。

 相変わらず、無愛想な顔をしているがいつもよりか不機嫌そうだ。


「あれれ、唯香ちゃんもしかして妬いてるのかな」

「あぁ?」


 かなり低く籠った声で立花、だがそんな彼女の様子にも動じずに七橋は言葉を続ける。


「わかるよー、唯香ちゃんも女の子だし欲しくなるよね」

「べ、別に欲しくは」


 焦った様子で否定する立花。

 七橋は追い打ちをかけるように告げる。


「弟子、欲しいよね」

「え、弟子? ……いらないですけど。ってちょっと待って、優生って弟子なの?」

「…………」


 サッと目を逸らして俺は湧き上がる羞恥心と葛藤する。

 これだけで察したのか、一気に冷めた目をした立花は大きなため息をこぼした。

 さらにくるりと踵を返して駅の方へと歩いて行く。


「あれ、唯香ちゃん?」

「私、用事思い出したから帰る」


 止める暇もなく、立花は一瞬にして背中も見えなくなった。


「む~、折角私考案の誰でも出来る弟子の作り方、を教えようと思ったのに」


 平和にこの場が収まってよかったと思うと同時に、立花になんて説明すればいいか。

 もしかしたら説明する暇さえ与えてくれないかもしれないが。


 と、そんなことを考えていると俺の腕が割ときつくなってきた。


「早く行くぞ、かなり限界が近い」

「え、あ、うん」


 名残惜しそうな顔をしていた七橋。

 だがすぐに切り替えた様子で満面の笑みを浮かべた。


「弟子くん、帰るぞ」

「ここから家は近いんだろうな」

「そうだよ! それじゃ走って行くから師匠について来てね」

「無理に決まってんだろ!」

読んでいただきありがとうございます。


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