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14話 俺と皆川⑥

 本屋を出て歩いて数分。

 俺と遠月は思わぬ人物に見つかってしまった。


「あ、舞夜と……鈴城!?」

「美咲じゃーん、はろー」


 七橋は小走りで駆け寄って険しい顔でけしかける。


「はろー、じゃなくて! なんであんたが弟子……じゃなかった、鈴城と一緒に出掛けてるのよ」

「うん? 普通に買い物だけど」


 ほれほれ、と漫画やラノベが入った袋を見せつけ、遠月は答えた。それを訝しむような目で見た後、七橋は俺に近寄ってくる。


「……おい、弟子よ。これはどういうことかちゃんと説明しなさい」

「説明ってもなぁ」


 七橋にオタク趣味を隠しながら弁明するのは難しい。ここはなんとか誤魔化すしかない。

 まあしかし、皆川に協力すると言っときながら遠月と二人でお出かけしているのは軽率だった。


「ねえ、なにコソコソ話してんの? 私も仲間に入れてよ」


 俺たちの間に割り込み、遠月はニコリと笑った。

 七橋はどこか焦ったようで俺のことをチラチラと見てくる。


「ううん、なんでもない! ……取り敢えず、さっさと鈴城は遠月から離れて」


 七橋は俺の背中を押して、遠月から遠ざけようとする。明らかに様子がおかしい、何かあったのだろうか。


「あ、美咲ぃ! こっちに……って、あれ舞夜じゃん!?」


 声のした方を振り返ると、十数メートル離れた位置に安達と五島、それから皆川が立っていた。

 ……そういうことか。

 俺は素早くこの場から離れようとするが、もう遅い。


「おいおい、すずしー。どこ行くんだ」


 いつの間にか皆川が俺の目の前で来て、腕を掴む。普段の表情とは打って変わって怒りに満ち溢れている。

 これは七橋にも協力してもらって誤解を解くしかない。


「落ち着け、これには深い事情があってだな……な?」


 七橋の方を見ると、こくりと頷いた。

 おう、わかってくれたか。流石は師匠。


「どんな事情があれ、やっていいことと悪いことがあるよね? 少しは皆川の気持ちも考えなさいよ」


 いや、おい、弟子見捨てんな。


「……ごめん」


 だが、言ってることは正論だし、反論の余地もない。


「すずしー、オレだって傷つくんだ」

「マジで悪いと思ってる。だがマジで俺と遠月は付き合ってるわけじゃない。そこだけは絶対だ」

「じゃあ今日一日はオレが遠月ちゃんとデートしていいよね!?」

「俺は別にいいけど、遠月次第じゃないか」


 ちらりと遠月の方を見ると、五島と安達と会話をしている。皆川に視線を向けて背中を叩いた。


「行ってこい」

「すずしー、……ありがとう!」


 そう言った後、皆川は両頬を叩いて気合を入れる。いつもより背筋も伸びて遠月へと話しかけに行く。

 五島と安達は何かを察したのか、皆川が近づいてきたのを見て一歩体を退いた。


「あのさ遠月ちゃん、オレと……オレと二人で買い物にっ!」

「うーん、私はもう欲しいモノ買えたし、皆で行動しようよ。その方が楽しいじゃん?」

「……え、あ、そうだね」


 これもうフラれたと同義なのでは。

 しょぼんと肩を落とす皆川は重い足取りでこちらに戻ってきた。対して遠月は不思議そうな顔をして様子を見ていた。

 重くどんよりとした空気になり、遠月以外の五人が気まずい感じなる。


「と、取り敢えずどっか行こうよ! ここで立ち話もなんだしさ」


 安達が空気を読んだのか、そんな提案をした。


「そうだな。鈴城もついて来いよ」


 五島は俺を見て、アイコンタクトを送る。おそらく皆川と遠月が並んで歩けるよう配慮しろ、ってことだろう。


「賛成! 弟子は私の荷物を持ちなさい」


 七橋は元気よくずっしりと詰め込まれた袋を渡してくる。


「重っ。なに買ったんだよ」

「なんでもいいでしょ、ほらつべこべ言わずに歩け歩け」


 結局、先頭に五島と安達。真ん中に俺と七橋。最後方に遠月と皆川という布陣になった。


「お腹空いたし、ファミレスにゴーゴー!」


 七橋のこの一言で目的地はファミレスに決まった。

読んでいただきありがとうございます。


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