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13話 俺と皆川⑤

 またしても遠月とのデート。

 今日は待ち合わせするのではなく、本屋で集合だった。


 一応、時間よりも少し早く来たが遠月は来ているだろうか。

 そんなことを考えながら店内に入る。そして遠月の姿は五秒で見つけた。

 新刊の漫画が置かれているコーナーに突っ立っている。見た目のせいか周りの人たちから滅茶苦茶見られていた。

 俺は急ぎ足でフロアを歩いて遠月の元に向かう。


「お待たせ、遠月」

「あ、鈴城くん。ちょ、ちょっと待ってね」


 真剣な眼差しでずらっと並べれられた漫画を見ながら遠月は顎に手を当てた。

 唸り声をあげてかなり真剣に選んでいる様子。

 一分、二分と時間が経っていきやがて遠月は一冊の漫画を選ぶ。


「……うん、おっけ」

「買いたいモノを見つけたのか?」

「いやー、最近支出が多くてねぇ。買いたい漫画いっぱいあるんだけど、ラノベも買いたいし、悩んだ結果の一冊。後から読んでもいい漫画を買うべきか、今すぐ読みたい漫画を選ぶべきか、どちらをとるか考えて後者を選びました」


 饒舌な様子の遠月を見て、俺は言葉を失っていた。

 学校でも日に日にオタクとして成長していく遠月を見ていたが、これほどのポテンシャルを持っているとは夢にも思わん。


「鈴城くん、私はオタクを理解できていますか?」

「あ、ああ。かなり良い線いってるな」


 正直、もう引き返せないところまで来ているかもしれない。

 とその時、遠月のスマホに着信が届く。

 遠月は慌てた様子で電話を取ってスマホを耳にあてた。そのまま会話しながら漫画コーナーをゆっくりと歩き、物色している。


 会話しながら漫画を手に取って入念に何かをチェックしている感じだ。

 電話はすぐに終わり、手に持っていた漫画も元に戻す。それから遠月はスマホをポケットへと仕舞った。


「立花ちゃんから電話きたよ」

「立花? なんでアイツが」


 というか、本当に遠月に話しかけたんだな。しかも連絡先も交換して電話もして随分と仲が良さそうだ。


「今日、ここに来るんだよ」

「どういうことだ?」


 なんでここに、っていうかそうすると俺も会う事になるんじゃ。それはマズいだろ、気まずい空気になるに決まってる。


「ほら私ばっかり、オタクにさせてもらって悪いし。ここらで手の込んだお礼ということで受け取ってください」

「要らないです。マジで」


 女子からプレゼントを拒否したのは初めてだ。つーかオタクにさせてもらう、って日本語あってんのか本当に。

 遠月は不服そうな表情でぷくりと頬を膨らませる。


「でも鈴城くん、立花ちゃんのこと好きだよね?」

「だから何度も言ってる通り、それは誤解でだな」


 その時、遠月のポケットからバイブ音が聞こえた。遠月がスマホを取り出し、軽く操作する。


「……あー、立花ちゃん。ちょっと遅れるって」

「そっか。……ははっ、よかった」


 安堵のため息が漏れ出る。

 これ以上、立花について会話をしていると息が詰まりそうだ。一旦、話題を逸らそう。

 折角、遠月と二人きりで本屋にいるんだ。元幼馴染に邪魔されるのだけは勘弁して欲しい。


「遠月の好きな男のタイプ、教えてよ」

「……え?」

「え?」


 しまったぁー。

 頭の片隅にあった話題がこれって、皆川のことで最近ごたごたしていたからか。


「好きな男性の、タイプ……」


 ほんのりと頬を赤く染め、遠月は俺から視線を逸らした。


「いやアレだよ。遠月の好きなタイプの男が出てくるラノベとか漫画とか、紹介しようかなと思って」


 ちょっと苦しい言い訳かもしれない。

 だが遠月は納得したような表情をして首を縦に振った。


「そういうことね。でも私、男基準で選ばないからなぁ」

「言われてみれば、遠月ってそういうタイプだったな」


 なんとか誤魔化せたようだが、これで変に勘繰られたら洒落にならん。


「んー、でも試しに言ってみようかな」

「あ、ああ。聞かせてくれ」


 そっと音もなく近づき、遠月は俺の耳元で囁く。


「また今度」

読んでいただきありがとうございます。


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