10話 俺と皆川②
昼休み、俺はまたも食堂へと来ていた。
と言うのも、今日は五島から誘われて皆川の作戦会議だとか、なんとか。
皆川、五島、鵜飼そして俺とテーブルを囲って座っている。
後ろのテーブル席には遠月がいるのだが、この近さは本当に作戦会議と言えるのだろうか。
俺はうどんを啜りながら傍観者としてこの場を見守る。
「で、どうだ。進展とかあったのか?」
五島が皆川に尋ねた。
皆川はため息を吐きながら答える。
「お手上げって奴? どうすりゃいいかわからんのよ」
「鈴城はどう思う?」
五島からキラーパスが飛んでくる。
「どうって言われてもな……」
俺が答えに困っていると、この様子を見ていた鵜飼がいぶかしみながら呟いた。
「……お前ら、なんの話してんだよ」
「皆川の奴がアイツを好きなんだと」
五島が皆川を一瞥した後、遠月の方に視線を送った。
その一連の動きを見て鵜飼は察したようで頬を緩めてニヤけた顔をする。
「へぇ、意外だな。アイツのことが」
「おいおい、それ以上は」
焦った様子で皆川が止めると、鵜飼は笑い声を上げながら言う。
「わーってる、まあそういう話なら任せておけ」
「なに!? もしやうかうかって恋愛マスターなのか」
うかうか、って鵜飼のことか。
相変わらず変なネーミングセンスしてるな。
「つーか、皆川はもっと早く俺に相談しにこいよ。こんな五島みたいな恋愛下手じゃなくてよ」
「え、でもいっくんは女子からモテモテだよ」
そんな皆川の疑問に、鵜飼は待ってましたと言わんばかりの勢いで答える。
「それは間違いない。ただコイツは自分から恋をしたことがない陰ポ野郎だ。黙っていても女がよってくる、だから今回の皆川の相談には向いてないってわけだ」
きっぱりと言い切った鵜飼に対し、五島はちょっとイラついた表情をしているが反論することはない。
「そうだったのか、いっくん!」
「まあ確かに、俺は恋ってのはよくわからん。でもなぁ、不思議と鵜飼には負けてる気がしない」
「ははっ、言うじゃねえか。それならまともなアイデアでも出したらどうだ」
鵜飼が挑発する言葉を投げかけた。
五島は暫し、考えてから俺に視線を向ける。
「じゃあまず鈴城からだな」
諦めんな。
そして俺に爆弾渡してくんな。クラスでも目立って女子からも人気の五島がまさか恋愛下手だとは。これが親近感って奴か。
……で、なんだっけ? アイデアだったか。テキトーに何か言うか。
「遠月に認識してもらう、とか」
皆川の話を聞く限りだと、遠月に友達としか認識してもらっていない。
「すずしー、今のは傷ついたよ」
「うぇ?」
「鈴城、流石に言い過ぎじゃないか。皆川だって一応人なんだから」
「そうだぞ。皆川は知能がサル以下のバカアホでも人なんだ」
今のお前らの発言もどうなんだよ。
まあ確かに今のは言葉足らずで、俺の言いたいことが伝わってなかった。
「違くてだな。遠月に友達から一人の男として認識してもらった方がいいんじゃないか、ってことだ」
真っ先に反応したのは鵜飼だった。
「なるほどなー、確かに舞ってそういう所あるよな」
「え、そうなん? オレって男として認識されてないの?」
「鈴城が言うなら、そうなんじゃねえの。この中で一番遠月のこと知ってるの鈴城だろ」
じろっと三人から一斉に視線を集めた。
一瞬の間が空いた後、鵜飼があっと何か思い出したような顔をする。
「そういや、鈴城って遠月と一緒に飯食いに来てたな。……お前そんな大物だったのか」
「いや、そういうわけじゃ」
「先生、どうすれば!? オレを男として認識してください」
それは別の意味に聞こえるからやめてくれ。
つっても俺もそこまで遠月に自信があるわけじゃない。だが頼りにされるというのは悪くないかもな。
でもと遠月の現状をそのまま教えるわけにはいかない。
「とりあえず、遠月の……」
「ちょっと待ちなさい」
俺の声を遮って凛とした声が被せられる。
振り返ると、金髪のショートカットガールが立っていた。遠月の友達代表でもある七橋美咲だ。
「話は勝手に聞かせてもらっていたわ。鈴城じゃ力不足でしょ? 私が協力するわ」
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