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一話

 俺、佐久間洋太はオタクである。

 何だこの自己紹介って思うかも知れない。でも俺も混乱してるんだから勘弁して欲しい。

 「なんで君がここに…!?」

 「それはこっちの台詞だろうがぁああ!」

 

 クラスメイトが超人気のアイドルだったからだ!!


 ※


 正月太りと言う言葉をご存じだろうか。人は動物である。つまり冬眠する本能がありどうしても寒い冬には脂肪を蓄えてしまう物なのである。いや、多分言い訳なんだろう。

 まあ、かくいう俺も一月からどすこいデブ活と言わんばかりに食っちゃ寝してたが、俺はそもそも痩せ型だから関係無い。つーかあんま食ってない。運動もあんましてないから不健康ではあるだろうけどな。つまり何が言いたいかというと…


 「おっす!少し痩せたか?」

 「全く?つーか一キロ増えたわ」


 少し太った方が良いかもしれないということだ。

 今日は高校二年の四月始業式の日だ。恋しい春休みとグッバイホリデーして、万里の長城の様な険しい山道を歩いてきたわけだ。春休みも冬休みの様にバイトの日以外は、だらだらしてたわけで痩せている訳がない。というか、冬休み明けも同じこと言ってた気がする。

 

 「おーい、ここわぁ比較的新しめの立地の良い高校だぞ?そんなに登校難しくないゾ☆」

 

 その通り。ここは比較的新設の私立高校相沢高校。公共交通機関も充実した都市部に隣接しており非常に登校しやすい。しかしそのような事は関係無い。長期の休みを挟むと気持ちが学校から離れてしまうのだ。つーかなんでこいつ俺の独白に混ざってきてんだ?

 

 「うるせえ。気持ちの問題だ気持ちの。つーか心の中を読むなハゲ」

 てか、『は』が、『わ』に聞こえるような言い方すんな。きゃぴるな。しばくぞ。

 因みに今俺と話している男はクラスメートの大道寺五郎。名前が厳ついし名前に見合ったばりの体格と鍛え抜かれた肉体、野球部であるから丸刈りにした頭。男というより漢。

 そいつがクネクネしながらゾ☆なんていうなよ。しばくぞ。


 「なんだよー怒るなよー俺とお前の仲じゃんかーこの間のライブの限定版BDまた貸してやるからさー」

 あの限定版か…!と俺の感情が顔に出てしまったのか五郎がこっちを見ている。おい五郎ニマニマするな。揉み手をするな。俺は悪代官か。

 「まあいい。早く教室いこか」

 ふん。俺は寛大なのだ。けっしてBDに釣られた訳では無い。


 「あいよ」

 五郎も俺の言葉に同意する。それを見て俺も教室への歩みを再開することにした。

 歩いていると様々な声が廊下に反響して俺の耳に入ってくる。朝練終わりなのか…少し汗臭い男が通っていく。


 「野球部は朝練まだなのか?」

 「うん。あさってからだよ」

 

 俺はふと五郎が野球部で朝練がどうとか言っていたことを思い出した。というか、朝練あったら二人して登校時間は合うって事はないか。俺は帰宅部、こいつは野球部。あんまり接点が見えてこないと思うだろうが俺らには共通点があった。

 「洋太お前はせなっち推しだろ?まあ分かる。初心者はそうなるよなー」

 「けっ。玄人ぶるなよ。楽しんだモンがちだろうが」

 …オタク的趣味を持っているということだ。

 五郎はドルオタ。俺はゲーマーでアニオタ。種類は違えど似たような趣味を持っていた俺たちは、高校入学後直ぐに打ち解けた。結果的に自分の好きな領域を伝え合う…俗に言う布教だが、五郎もゲームには親しんでたし、俺も五郎から渡されたDVDを楽しくみる程度にはアイドルに知識をこの一年で蓄えた。完全に意気投合とも言えるな。

 

 「まあいいさ。洋太には洋太の楽しみ方があるってもんだ」

 「ふん…」

 だからこそ、よくオタクの悪いところである押しつけをしない所はしっかりしてると思うが、クネクネしないで欲しいです。はい。


 「ところで嫁も良いけどリアルも見たらどうだ?」

 「アイドルは見てるぞお前のせいで」

 二次元だけには囚われていないぞ。色んな物を見て聞いて経験してからこそ嫁の素晴らしさが輝くんだからな。あ、結婚してる訳じゃ無いぞ。嫁ってのは推しキャラのことだぞ。俺十七歳だから日本国の法律では結婚できまへん。


 「そういうことじゃなくてな…まあいいや」

 「ぽえ?」

 因みに五郎は彼女がいる。因みに紹介されたこともあるしめっちゃ良い人だった。アイドルばっかり気を取られるなよ…と言っておきたい。まあ、推し活と彼女は別なんだろうけども。何となく分かるけども。僕ですか?ぽえ?


 俺の体感だが、Vtuberの隆盛やゲームの盛り上がりのおかげで、オタク趣味に理解がある世の中になったとは思うが、別にオタク趣味というのは、モテる趣味では無いんだよな。まあ、オタクである事がマイナスであることから小さいマイナスやプラマイゼロになった位だろ。まあつまり本人次第って事ですね。ええ。私が悪いんですか。そうですか。


 「いてえ!何で叩くんだ洋太!」

 「何となくだ。他意は無い」

 そうだ。他意は無い。別にうらやましくなんか無いし、嫉妬心から暴力を振るったわけでは無い。本当に違うんだからね!!





 高校に入学して二年目。当たり前だが知り合いも一年の頃に比べれば増えている。五郎以外にも比較的仲の良い奴はいる。ただ今回のクラス替えではどれぐらい入れ替わったのかは分からない。クラス替えの時誰がいるとか気にしてなかったからな。

 因みに五郎が同じクラスなのは知っていた、なぜなら…

 『おっ!洋太も同じクラスか。二年生もよろしくたのむゼ☆』

 ってクラス発表の時に言われたからな。

 五郎のやつ、たまに語尾がルビ振ったらカタカナになる様な発音するんだよな。丸刈りなのに金髪のギャル男みたいな発音が無駄に決まってるのやめろや。しばくぞ。

 

 教室に入ると沢山のクラスメイト達がいる。俺たちは別に登校してくるのが早いわけじゃ無いから当たり前なんだけども。

 

 「佐久間くん今年もよろしく」

 「おお!古河さんも同じクラスだったか!」

 今回話掛けてきたのは昨年も同じクラスだった古河瀬名。

 これと特別な接点は無いが、席が隣になる事が何度かあった為こうして会話する程度には知り合いである。まあ、友達って訳では無いけど。友達というより俺が勝手に気に掛けている所はある。

 「私も、って事は…あ、大道寺くんも同じクラスなんだね」

 教室で野球部の奴らと親しげに話している五郎の姿を捉えて、どうやら俺の言葉に合点が行ったようだ。古河さんは新学期開けも、俺と五郎の様に去年と変わらない姿だった。まあ、一ヶ月で変わりようも無いか。

 

 古河さんは眼鏡を掛けており、髪はセミロング。容姿にこれといった特徴は無い。いや、少し違うな。目立たないだけでかわいい。明らかにかわいいはずなのだが、男子人気が全く無いのだ。

 

 すこしどうでも良い話をしよう。

 俺はゲームが好きでギャルゲーもかなりやりこんでいる。ラノベ原作ならラノベも読むし、アニメ原作ならアニメも見る。気に入ったアニメもゲームと関係無く沢山見る。つまりは沢山のヒロイン物を経験しているわけで、五郎よりも恋愛経験が豊富と言っても過言では無いのだ!(二次元に限る) 

 ヒロインには当然個性があり、妹キャラや、小悪魔キャラ、お姉さんキャラ、幼なじみ…とまあ色々な属性があるわけだ。(二次元に限る?)しかし、古河さんはそういった物が無い。いや、俺もバカじゃ無い。現実の女の子が二次のヒロインの様に属性があるわけじゃないし、ご都合主義的な『あなたのことが…好きなんです』とはならない。


 だってもしそうなんだったら、俺もハーレムしてるのが当たり前だし、攻略対象になるヒロインが居ないのはおかしい!!


 …話を戻そう。


 何が言いたいかというと古河さんは磨けば光る、俺だけが知ってる可愛い女の子とかっていう前に、なんだか不自然さを感じる事があるのだ。個性が無いというか何というか…地味なら地味でそれも属s…げふんげふん、個性なのだがそういう訳でも無い。

 本当に何というか、上手く何も目立たない様に調整されたキャラというか…


 「どうしたの…?なんか難しそうな顔してるけど…」

 「ああ!ごめん!何だっけ?パスタのソースは何が好きって話だっけ?」

 

 どうやらじっと古河さんを見てしまっていたようだ。しかし、決して怪しい者では無いぞ!俺はキャラメイクについて考えていただけだ!いや、それも変な理由か。駄目だぁ!


 「そんな話してないよ…ふふっ」

 「あれ?そうだっけ?」

 

 うん。笑顔も可愛い。これで何故モテないのか。

 いや、まあ古河さんの事をめちゃくちゃ知ってるわけじゃ無いから何も言えないんだけどさぁ…本当はちゃっかりさんっていう可能性もあるけどさ…あぁやめやめ。失礼な妄想は良く無いでござる。

 と、そんな妄言を頭の中で俺が考えているとはつゆ知らず、古河さんは直ぐにハッとしたように笑顔から普通の顔に戻った。


 因みにパスタはカルボナーラが好きです。異論は認めます!


 「一年間よろしくね。佐久間くん」

 「こちらこそ!」

 

 何でハッとしたのか謎だが…まあいいか。

 家に帰ったら新作のゲームでもするかあ…






 

 

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