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10話.[したいんだから]

「貢君っ」

「うわっ!?」


 扉を開けた瞬間にこれだったから倒れるかと思った。

 不意打ちだとでかかろうが関係ない、下手をすれば倒れるところだったぞ……。


「危ないだろ」

「えへへ、ごめん」

「まあ上がれよ」


 危ねえ、いつでも受け止められるように鍛えておかなければな。

 奈々美が怪我をすることになったら嫌だ。

 彼女が直接的な原因だとしても受け止められたら防げるわけなんだから頑張りたい。


「今日は小栗の家に行くんじゃなかったのか?」

「藍ちゃんが行ってあげてくださいって言ってくれたんだ」

「そうなのか? ま、来てくれて嬉しいよ」


 残念ながら提供できるものは飲み物ぐらいしか、あ。


「今日は菓子もあるぞ、奈々美が来るんじゃないかと思って買っておいたんだ」

「ほんとっ? どんなおか――それで煎餅ってなんかすごいね」

「いやいや、煎餅を馬鹿にするなよ? 地味に高いが美味しいんだからな」


 変なのはいらない、シンプルが最強のものだ。

 海苔の存在も結構重要かもしれないが、最悪それがなくたって構わない。


「ほら」

「あむ、うんっ、ぱりぱりしていて美味しいねっ」

「だろ?」

「だけど……ポッチーとかだと期待しちゃったよ」


 なるほど、つまり俺のチョイスが古いというか渋いというか、そんな感じか。

 今度からは気をつけよう、俺は依然として煎餅が好きだから食べるけどな。


「……そういえば貢君だけ?」

「ああ、ひとりだな」

「そっか、じゃあ……ぎゅー」

「はは、別にふたりきりじゃなくてもしてくるだろ?」

「……いいでしょ、私がしたいんだから」


 ただ、される度によくない感情が刺激されるのが問題だった。

 いやでもまあ、なんとか我慢しているけどな、俺からはできないままでいい。


「……貢君からはしてくれないの?」

「抱きしめたりなんかしたら終わりだぞ、その先も求めるようになる」

「その先って……?」


 そりゃまあそういうことだ。

 恋人同士ならまあするよねという行為。


「もしかしてだけど、キス、とか?」

「まあそうなんじゃないか」

「したいの?」


 いや、別にそんなに求めていないかもしれない。

 頭を撫でたり手を繋いだり抱きしめたり、その程度のスキンシップで十分だった。

 じゃあなんでそんなこと言ったんだよと問われれば、すぐに甘えだすようになってしまうかもしれないからだ。


「俺はこうして抱きしめられる程度でいい」

「してくれたら嬉しいけど……」

「頭を撫でたりとかもな、手を繋ぐのもいいな」


 どんどんと抱きしめる力が弱くなってきたからソファの上まで運んだ。


「一緒にいてくれればそれでいいぞ」

「……そんなこと言われたら求めづらいじゃん」

「したいのか?」

「……きょ、興味はあるけど?」


 ……ちゃんと向き合うということは責任を取るというのと同じか。

 再度奈々美がしたいならと言ったら頷かれてしまったのでマジかあとなりつつも漫画とかで得た知識などを使ってしておいた。

 真っ赤に染まった彼女の顔を直視できなくて違うところを見ていたら抱きしめられて終わる。


「あ、ありがと」

「お、おう」


 なんか滅茶苦茶な時間だった。

 こんなことを何度も繰り返したら心臓に悪いなとそんな風に思ったのだった。

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