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俺達の所属している騎士団の支部拠点から移動して2日位の場所にその村”チャオドー”はある
昨日の任務に行ったあの草原を抜けてその先の丘を登ったその先だ
道中何度かの休憩をはさんでたどり着いたその村は簡素な木の柵で囲まれていた
柵の内側には果実の木々だろうか、木がきれいに並んでいた
まだ実りの季節には早い青々とした木々に迎えられて俺達は村についた
すると村の入口にいた住民が駆けてきた
手には槍を持ち緊張した面持ちでいる
「あの…騎士様でしょうか?」
「はい、自分達は聖天守護騎士団のファグリール支部からきたんですが、「あ!でしたらこの村の代表の所にご案内しますね!」じゃあ、お願いします」
こちらです。と優しそうな村人に案内つられて歩く
道は土を固められた道でその道を挟むように木造の家々が建てられている
村の様子を眺めていると柵を補強している人、農具を持ち周囲を見回す人、倉庫に何か詰め込んでいる人、遠巻きにこちらをみる人などが見られた
他には少し寂しい様子の人のいない屋台がならんでいた
なんとなくだが全体的に村の雰囲気が物々しく、暗く重く感じた
まぁ、すぐ近くの森に野獣の声が聞こえてくるなら仕方ないか。早く問題を解決して安心させてあげれたらいいな。俺達で解決できるといいんだが…
「ここです。代表!!騎士の方がいらっしゃいましたよー!!」
村人は目の前の他より比較的大きい家のドアを叩く
するとドアの向こうでドタドタと音聞こえ、少しのあとドアが開いた
「騎士様!お待ちしてました!」
とがっしりとした体格の気の良さそう中年の男性が出てきた
どうぞお入りくださいと中へむかえてくれた男性は家の中へと促がす
それに俺達は会釈して入らせてもらった
家に入ってすぐのリビングには何人も座れる椅子と大きいテーブルがあった
さきほどの代表と呼ばれた男性の奥さんに促させて椅子に座る
その正面の席に男性が座り、程なくして奥さんがお茶を用意して座った
「自分達は聖天守護騎士団ファグリール支部からきました。カラトといいます」
「僕はフィオネです」
「俺はジンフィードだ」
と自己紹介をしていく
「私はこのチャオドー村の代表のドーアンといいます。こちらは妻のマスンです」
「本日は騎士様に来ていただきありがとうございます」
と二人とも深々と自分たちに頭を下げる
「いえ、こちらこそ来るのに遅くなってしまって申し訳ないです」
「いやいや、ここまで来るのに大変だったでしょう。なんせここは農林を主にしている田舎ですからなぁ」
「でもここの果物って有名ですよね、僕も食べたことあるんですけどとってもおいしかったです!」
「そうかい、そう言ってもらえるなんてうれしいねぇ」
「…んで、本題入ろうぜ」
談笑していたときの和やかな雰囲気がジンフィードの一言でガラリと変わった
代表は重い、深い息を吐くと
「3週間前でした。子供が森の近くで大きな音を聞いたと、最初は勝手に森の近くに行った子供が叱られるのをごまかそうとしていると思われていたんです」
「次はその3日後、村人が森の木の一部が折れていると報告してきました。この前の子供がいっていた音はこれだと思いました」
「それから5日後、森で大きな影を見たと、もともと森に野獣はいましたがそんな大きい野獣なんて聞いたことがありませんでしたから…見間違いたのだろうとなりました。村全体に野獣注意の知らせで終わりました」
「1週間前、野獣の鳴き声…あれは咆哮なんですかね、とても大きな音でした。裏の森から村まで轟くような、あの時地面が揺れる…そんな声でした」
「それから急いで騎士団に依頼しました。今でも時折聞こえるんですよ。あの声が」
代表の顔は暗く、テーブルの上で組まれた手は固く握り絞められて白くなっていた
その表情は事態を深刻だと受け止めるには十分で一刻も早くの解決を望んでいるようだった
背景には代表としての責任か、野獣に対しての恐怖か、それは分からないが人々を助け救っていくのが騎士団の信条だ
俺はもちろんだと、安心してくれきっとすぐに解決してみせる。と代表に言おうと口を開いた
そのとき
ヴゥゥヴガアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアアア!!!!!!!!!!
轟く
とても大きな音だ
背中に冷たいものがはしる
これは、想像していたよりもあまりに、
少ししてやんだ音
俺達は声を発することができなかった
これほどとは思っていなかった
"不明の野獣の鳴き声が聞こえる"確かに任務内容はそうだった
軽く考えているつもりはなかった
でもこれは想像していたよりも深刻な状況だった
もちろんだと、安心してくれきっとすぐに解決してみせる。
本当にできるのか?
この野獣相手に…?
そんな軽く言おうとしていた俺に?
しんと静まり返った部屋
誰も何も、一言も、発することはなかった
沈黙
数秒の時間が長く感じた
ふと正面の視界にうつるのは小さく震えた人の姿だった
「わかりました、早急に取り掛かります」
思わず握り絞めた手は少し汗ばんでいた




