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1

低木が所々に生え膝くらいまで草が茂る片田舎の草原

風にそよぐ青々とした草を黒い影が駆ける


草に身を隠す影

しかし、そこにいることを知らせ、主張するかのようにがさがさと音を立てて動く


草むらを走る影は右へ、左へと駆け回り此方を惑わすように揺らす



そして、音が止む



風が草を撫でそよがせる


穏やかに、静かにそよぐ草むらは、さわさわと音を鳴らす



さわさわと



さわさわと



そよぐ






カサリ

音は前方


影が飛び出す




影は、獣

獣は、狼


口は大きく開かれ鋭い牙は鈍く光り



胴体を一線


血飛沫を上げて身体は2つに別れた


「そっちに行ったぞ!!」


背後から声があがる


振り向き様に背後から飛びかかる狼の首を突き刺す

その勢いのまま地面に突き立てて完全に仕留める



「ふぅ、危なかった…」


周囲に目を向けながら突き立てた剣を抜く

どうやら最後の一匹だったらしく辺りは再び風が草を揺らす音だけがする

抜いた剣についた血を振るい鞘にしまう

仕留めた狼の血で汚れていないところを掴み集めていく

ふむ、胴体を別けるのは間違いだったかとそんなことを考えていたら


「ごめん!大丈夫だった!?」


と小柄な少年いや、正しくは青年が慌ただしく走ってくる

彼は"フィオネ"、小柄で少し抜けているけれども優しいやつだ


「大丈夫だ、フィオネは?」

「僕はなんとも…ってさっきのごめんね!?」

「ん?」

「一匹こっちきちゃったでしょ?」

「あ、こいつか」


ちょうど足元の一匹を指さす

うげーとそれを見ながら彼、フィオネは頭を下げる


「僕が逃がしちゃったから…」


申し訳なさそうに謝るフィオネに


「じゃあ、次頑張ろうな」


と声をかける

こっち持ってくれと半分にしてしまった狼の首を渡す

再度ごめんと言いながら受け取ったフィオネ


「向こうでジンフィードが待ってるよ」


と走ってきた場所を向く

一部死骸を引き摺りながら向かうとちょうど向こうも終わったのだろう

少し大きめの狼を前にしゃがむ男がいた


「ジンフィード終わったか」

「あ?おう当たり前だ!」


声をかけると此方を向き立ち上がる彼は"ジンフィード"

単純で何事にも一直線だが、たまの直感が優れていて俺も何度か助けられたことがある


「フィオネが逃がしたやつもやったのか」

「まあ、咄嗟にな」

「凄いよねぇ、僕慌てちゃって出来ないよ」

「お前はもう少しちゃんとしろ!」

「お、怒んないでよ~」

「おい、ケンカするな!俺は"返す"ことはできないんだから」


持っていた死骸を置き離れる

ホッとした顔をするフィオネと不満げな顔をするジンフィード

二人は死骸の前に立つと


フィオネは白い狐を

ジンフィードは赤い虎を


何処から表す


白い狐はフィオネから周囲へと跳ね回る

フィオネはそれを見て微笑み


聖なる守護を  バリア


と告げる


瞬間

周囲に揺らめく光をもって障壁があらわれる


一方

赤い虎は死骸を前に姿勢を低くし唸る

ジンフィードはそれを見て不敵に笑う


炎よ燃え上がれ  フレイム


瞬間

炎が死骸を焼き尽くさんと広がる


光の障壁は大きくなる炎をその場にとどめ、炎は死骸を包み大きくなっていく


やがて、死骸を灰に変えると炎は消え、障壁は溶けて消えた



よくやったとジンフィードは虎を誉める

ありがとうとフィオネは狐を撫でる


何処からともなくあらわれたそれらは"精霊"呼ばれ水、火、風、土、光など種類がある

形は様々でアイツらみたいな狐や虎、実体のない光の集だったり、高位のものだと人のような形ものもいる

通常は目に見えず触ることも出来ないはずの精霊を使役し、力を借りることの出来るのが俺達の所属する"聖天守護騎士団"

聖天守護騎士団は精霊を束ねる高位の存在とされる神を守り戦うためにできたもの

そして俺はそこに所属する所謂落ちこぼれ




俺の名前はカラト·イノセンス


騎士団に所属しておきながら唯一、精霊と契約することができなかった者





これはそんな俺が世界を巡る旅をする物語


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