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ーー04


ジョンの父親は逮捕された。

しかし、扱いは悪くなかった。


子供のために復讐をした。

このアメリカでは英雄だ。法律があるから逮捕された、だけだ。


しかし、これは正当防衛ではないか?

という世論を、上杉は引き起こした。


ネットを使い、様々なメディアやSNSに投稿し、議論を引き出した。


そして、

あらましを公表した。



あの後、その場で、

上杉はジョンの父親から全てを聞いた。

地元マフィアの言うことを聞かない父親を脅すためにジョンを痛めつけようとしたら、抵抗され、その抵抗が激しかったので、襲撃した奴らの頭に血が上り、あそこまでやってしまったらしい。



ジョンの父親は話を続けた。


それまでのことを考えれば、殺されるのであれば自分なずなので、多分それは事実なのだろう。

メアリーは巻き込まれた。メアリーを守ろうとしたがゆえに、激しい抵抗をしたのだろう。

女の子を連れている男を襲った時点で、見えている展開だ。


襲った奴らも、生かしておいたら、また、いつかどこかで同じような被害に合う者たちは生まれるだろう。


ジョンは君が大好きだった。

初めて仲の良い友人ができたと心から喜んでいた。

だから、さっき君をここで見た時、ジョンは本当に良い友人を得られていたんだと、嬉しかった。


だから、君は今日ここに来ていない。

ここで、奴らを皆殺しに居たのは私だけ、私一人でやった。

一人でも二人でも罪は一緒。

なので、

君が刑務所に入るという全く無駄なことをする意味はない。

わかってくれるな。


でも、、

と、上杉は言い返そうとしたが、、、

わかりました。ジョンは、多分、それを望むでしょう。

だったら、俺は外でできることをします。


君ならそうしてくれるだろうと思う。

お願いする。

あと、君はほかの君のガンを使わなかったかね?


はい、持って来たのはこの9mmと22RLを。

それじゃ、それは私が貰っておこう。君の登録だろうから、ジョンの部屋にあった物を使ったと言う。

もし警察が聴取に来たら、

君は、ジョンにメンテのために預けてあったが、引取にいくのも気が引けてそのままにしていた、と言いなさい。





俺はネットで叫ぶ


復讐を認めなければ、あなたの子供が殺されるだろう。

あなたは自分の子供が殺されて、泣いていれば済むのか?自分の子を痛めつけ恐怖の底に落とし、あげく殺した者たちをたかが刑務所という昔のホテル同様に施設に一時期いれただけで許そうというのか?

本当に、楽しんで殺人をする者たちが、たかが刑務所に入るだけで改心すると思うのか?!!!


これまで、同様の被害に会った者たちも、声を上げよう!

たまたま幸運で死ななかった被害者達も、高らかに叫べ!!

復讐は正義だ!

時には、復讐こそが正義なのだと!!!


多くの、大半のアメリカ人達は、それなりに想像力をまだ失っていない。

なので、

上杉の言い分への意見は、ほとんどが肯定であり、否定論者達は何も言えなくなっていた。

自分の愛するものが楽しんで殺害されても復讐しないんだよな?と質問されるだけで、否定論者の声は止まった。

これがアメリカだった。アメリカの人々だった。


裁判は異例の速さだったと各マスコミは言う。

判決は懲役5年。執行猶予1年。


ネットでの論議。

大半は、

「今の法ではこれが精一杯だろう」

という意見を支持している。

一部、

「それでも、無罪だ!!」

と叫ぶ者たちの気持ちはよくわかる。それが正しいく、本当の正義を守るための法だろう。


「法の、大半は、正義のためじゃなくなっているんだよ。法をよく勉強しなさい。国を出たくなるから」

という法学者の話が拡散され、

議論は下火になった。


それでも、その裁判官は可能な最も正しい判決を出した。と、上杉は納得した。


ジョンの父が戻ってきたのを知り、

上杉はジョンのライフルを父親に返しに行った。

後から思うと、ジョンの話を誰かとしたかったのかも知れない。


結局、ライフルは形見として上杉に与えられた。

父親は、

「私は今後1年はガンを持てないが、その後は、このジョンのリボルバーを大事に使うよ」

と、あのマグナム用換え銃身のある38口径リボルバーを見せてくれた。


上杉も何度が撃たせてもらったことがある。

グリップ(銃把)の角度がイマイチしっくりこないので、

「やっぱり俺にはリボルバーはあわない」と諦めたのだ。

FN1910も合わなかったんだろう。最後まで集弾がまとまらなかった。


ーー


あれが俺の初めての実戦だった。

訓練さえ受けたことが無い俺が、知識を元に、射撃の経験、練習だけが多かったことが幸いし、状況が奇跡的に良かったということ、ほぼそれのみによって生き残ったと言えるかも知れない。


ジョンの父が来ていなかったら、俺は、やつらに勝てたであろうか?

今思い返しても、寒気がする。

先程殲滅させた無能どもとは、同じ無能でもかなり違うのだ。

生死の戦いを知っている、経験がある、というだけでも脅威に成る。



この街は平穏だ。いや、国が。

表向き、武器はない。一般人には持たせない。

先程殲滅した奴らは、最初の狙撃後、皆銃を抜いた。

あの全員が銃を持って街を歩いて来ていた。


もしアメリカだったら、、組織のボスが、チンピラ共に外にハンドガンを持って行かせるだろうか?

在りえない。現場付近で自動車から配布するだろう。

自動車に積んで運搬するのは多くの州では合法だからだ。


こっちは、警官はほとんど街をまわっていない。

交番にも誰も居ないことが多い。

犯罪を職とする者たちには、とても気楽な世界か。



上杉は繁華街を通り抜け、高級なレストラン、バーが多い通りに入る。

東京と言っても、それほど大きいわけではない、とNYに滞在して初めて知った。

その通りも、有名な割に小さく思えた。


ほどほどのバー。

雑誌の切り抜きがいくつも額に入って壁に飾られている。

入る店を間違えたか。


まぁいい、明日の仕事帰りには、も少しマシな店を探してみよう。



ーー




今日、スコープにはフードを付けている。

晴れの、いい天気だ。空には雲もほとんどなく、薄汚れた青い空が広がる。


サイトを覗いている俺の目には、いかにも意地汚さそうな中年男の顔が見える。

元首相だという。


俺はその話を聞いた時、切り捨てられる最後の仕事か?とさえおもった。

が、

「こいつはいつまでもしがみつき、かつ、こちら側の言うことに耳を貸さない。いい加減、こちらの上はお冠なのだ。」

その後、依頼料金の全額が振り込まれた。


その全額を国外に居るエージェントに預けた。

その程度の金額では決して裏切らないエージェント。

今の俺の価値はその程度でしか無い。

どうでもいいことだ。



トリガーを内側にわずかに押し込むように引く。

ダン。サプレッサーは仕事をしている。


標的の後頭部からいろいろ吹き出した瞬間を確認した瞬間体を引っ込め、スコープを外し、ケースにしまい、ほかの部分も解体してしまっていく。

1分かかるかかからないか程度だろうか?測ったことはない。


今日はポンチョはない。


さて、あと一件。

数日後には向こうに帰ることができるだろう。




昼間の仕事だから、現場からそのまま飲みに行ってもまだ開いていない時間だった。

なので一度ホテルに戻り、ラフな服装に着替えてから外に出る。


いくつかの街、いくつかの国を見たことがあるが、滞在したことがあるが、ゲロの臭いがするのがデフォな場所がある国は、今の所他に見たことがない。特に駅周辺がこれほどな。立ち小便の臭いも、他ではほとんど無い。

なぜ掃除がされていないのかもわからない、スラムでもないのに。

が、どーでもいいことだ。


ただ、そのような所のバーや飲み屋には入りたくないだけ。


タクシーを捕まえ、

「バーなどが多くあり、しかしゲロと小便の臭いがしない通りに言ってくれるか?」

と訊く。

運転手はかなり考え、無線で事務所に問い合わせている。


「お客さん、確実とは言えないですけど、、それに近いところなら、」

と車を出してくれた。


高速に入り、30分ほど走ると海辺、埠頭の近く。

「ここいらは若者カップルの集まる場所なんで、下品な飲み方するものはあまりいないはずです」

と運転手。


感じの良い通りで降ろしてくれた。

運転手に礼をいい、目の前のBarに入る。


店員が影になっている。

それだけで気に入った。

こっちに来てからおもったのは、店員が存在を主張しすぎる。

特にBarでのそれは滑稽に映る。

昔のアメリカ映画の、、あの映画の影響がまだあるのだろうか?


カウンターの端から一つ手前に座る。

隅で出番を待つマリオネットのように見えるバーテンが目に入る。

めったに飲まないカクテルを頼みたくなった。

「ジンライム」


ゴードンの瓶が出てきた。

アイスは、アイスストッカーから、カットされて久しいらしい氷気を放った丸に近い形のものが使われる。

ロックグラスも専用のだろうか、冷蔵庫から出されていた。


何も言わず、俺の前にすっと出される。

一度アイスをグラスの中で回し、中の液体を口にする。

ああ、、うまい具合に混じわっている。温度、アイスの溶け具合、ジンの刺々しさと香り、ライムの香りと味、、、

両手で溶けるのを速め、再度アイスを回してから飲む。

ますますいい具合だ。


ウオッカは何がある?と訊く

その口に銘柄を並べていくバーテン

スピリタス、と聞こえた。


では、スピリタスで何ができる?

と再度訊く。


一瞬こめかみが動いたが、元の人形のように戻り、

・・・・カンパリをジガー、ウオッカもジガー、ロンググラスに入れ、冷えたビールで満たす、というものがあります。

とほとんど唇を動かさずに聞こえる程度の声を出す。


、、では、カンパリをショット、スピリタスをダブルにしてくれるか?

と頼む。


バーテンは僅かにうなずき、作業に入る。


ウオッカが癖がない上に割るからアルコール臭も少なくなる。なのでビールは薄目の種類を使ったようだ。

「このビールは?」と訊く

「地方の、地ビールです」


口の端が少し動く。

彼の地元のビールなのだろうか?

嬉しそうに見えた。


グラスが空になりかける頃に、

「何かよさそうなつまみを頼む」

と丸投げ。


バーテンはそれを気にもせず、小さなまな板と手入れの行き届いているナイフを出し、ストッカーから材料を出して作り始めた。


チーズとウインナーと生野菜だ。

俺の飲み方を見て取り合わせたか、、、


それを見て俺は

「先程君が言った地ビールを半パイント、スピリタスをショットで」

と注文。

バーテンはまた口の端を僅かに上げた。


チーズ、ウインナを食い、野菜を食べ、ビールを飲み、ショットグラスを空ける。

ウインナ、野菜、チーズを食い、スピリタスお代わりを注文し、ビールを空け、来たスピリタスを放り込む。


「・・・美味かった。」


タバコを見せると、首を振られた。

国内どこでも禁煙ルーム以外は喫煙禁止らしい。

アメリカよりもマシだと思う。州によるだろうが。


ジンのストレートをショットで頼み、口に放り込んで、

目の前の伝票いれの中に入った何枚かの伝票みて、でかい札を一枚その中に入れ、

ごちそうさん、いい店だ。

そう言い、店を出た。



横浜か?店を出た時にやっと気付いた。


そのまま埠頭の方まで歩いてみる。

途中、閉まった店の前のベンチで座ってタバコを吸う。

タバコやコーヒー、酒、は落ち着いて摂りたいものだ。


そのあたりを見渡す。

ああ、そういえば、何か、と、何か、の間がつまらないのだったな、、

普通の町中風景がつまらない。

アメリカでも、アジアでも、そういうところも無いことはなかった。そういうのは珍しかったが。



そういえば、、

明日はここらで仕事だったな、、、そう思うと宿に帰るのが億劫に成る。

しかし、仕事道具を持ってきていないので仕方がない。


思い返し、通りがかりのタクシーを止め、ホテルのなと場所を告げ、行ってくれるか訊いた。

「お客さん、海外永いんですか?」

運転手は訊く。


「ああ、行き先に言ってもらえるかどうかを運転手に尋ねる、というのが、こっちではない行為だったな」

「ええ、そういう風習になれば助かるんですけどね」

「どこでも、行きたくない場所だと、運転手は断る権利くらいあるんだがなぁ」


「はぁ、、かなり多くの国で、ですか?」

「ああ、、、、多分、30カ国以上?」

「・・・うらやましいもんです」


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