ーー03
雨は嫌いだ。
雨がしとしと降る場所も嫌いだ。
アメリカに留学してた頃を思い出していた。
あの頃は、アメリカの何もかもが目新しく、面白かった。良い友人達に恵まれたことも、面白く思えた大きな理由だろう。
さて、
おいでなすったようだ
お出迎えに行かねば
Sauer 101 + Lica Mugnus, ウインチェスター308弾。30-06とほぼ一緒の弾。装弾数5+1。
サプレッサーがあるが、弾が弾だからな。
まぁ、雨が助けになるだろう。
ポンチョは建物に似せた色。
雨に当たらない場所からの狙撃。
雨の日は昼間でも暗い。いくら集光性が良いスコープでも、こんな日にフードはスコープを暗くするので外してある。
スコープレンズが陽の光を反射して光ることはない。
傘を差し、集団で、通りの真ん中を歩いてくる。
いかにも危険を全く知らない社会の者たち、と言ったところか。
暴力団と言えども、自分たちの安全が保証されていた、ということを知らない奴ら。
俺がここにいる、ということが、もうその安全装置が無いということだ。
知るがいい、身を持って。
クン、人差し指が少し内側に引き込まれた。引き金が引かれたのだ。
バン!サプレッサーのおかげで高く長い音にはならない。
向こうまでは届かない音。
ボルトを動かす。ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
プラスチックスの弾倉を取り替える。
カチャリ。
ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
ガチャガチャッ、
クン、
カチャり、弾倉を入れた。
スコープを覗き、標的の様子を探る。
身動き一つ無い。
傘が邪魔だった。
あいつら、傘が守ってくれるってことすらわからず、攻撃されたと気付いた瞬間に傘をすて銃を抜いた。
何処まで無知なのだろう?何も考えていないのだろうか。
それでも今まで余裕で生きてこられたのだろう、権力に媚び、腕力が弱い脅しに弱い者たちのみを相手にしてきたのだろう。
マガジンを抜き、チャンバーから弾丸を抜き、
スコープを外し、バットストックを外し、
ケースにしまう。
厚みの均一なサックスのケースくらいか、少し大きめくらい。
ストックも樹脂製なので軽い。
ポンチョを折りたたみ、ザックに入れる。外に出なかったので濡れていない。
俺の服装は、ブレザーにスラックス。黒と茶の革靴。銀縁のメガネ。
髭もキレイに剃ってある。
さて、洒落たバーにでも行こうか。仕事帰りだから。
ちょうど時間も、会社の引ける時間だ。
「あと1時間遅かったら、スコープは使えなかったな、、」
今日はそれだけ暗い。
雨は嫌いだ。雨の日は嫌いだ。
ーーーーーー
その日、
珍しく、西海岸のその街にはしとしと雨が降っていた。
俺はそれにも気づかず、それを見つめていた。
気付くと、その残骸達を抱きしめて叫んでいた。
うおおおおおおおおおおおーーーーー
肉塊と言うほどにまでに成り果ててしまった友人たち
警官達は上杉を止めなかった。犯人は逮捕されている。証拠などの心配は無いとおもったのだろう。
もしくは、
警官達やそこに居る者達皆が手で口と鼻を覆っている。近づきたくなかったのかも知れない。
上杉は、逮捕された犯人達がその首魁だとは思わなかった。
警察も犯人逮捕した以上、それ以上の捜査はして居ない様に見えた。
上杉はしつこくしつこく聞き回った。
ある日、襲われた。
数人のガタイのいい者達に囲まれ、殴る蹴るの暴行を受けた。
殺すつもりであればこんなつまらん手は使わない。警告だろう。
つまり、、、
上杉は胸の当たりを蹴ってきた者の足を捕まえ、一気に体を後ろにずり下げながら足首を思い切りそいつの外側に捻る。ボキッ、、
一瞬周囲の者達が少し離れる。
その一瞬で立ち上がり、左前の者の襟を掴んだと同時に上杉は体を返しながらかがみ、襟を持った腕をひきながら前かがみに一気に立ち上がる、重量が全部背中にかかり、、そのまま上杉は勢いにのせたまま腕を引き、腰を跳ね上げる。背中に乗った重量物は、逆我の数人を巻き込んでいった。
左手のやつの髪を掴み手前に引くと、そいつは頭をそのまま前に出す、体全体を左に回しながら右膝をそいつの顔面に入れる。体重の数割が遠心力に乗ってその顔面に入る。
そのまま捨て、次に手近な者を掴まえようとすると、もう我を取り戻したのか殴り掛かってくる。
右手のひらで払いながら殴ってきた手の甲を掴み、弧を描きながら下に押し下げながら上杉は体を右回りで返しながら少しかがんでからそいつの脇の下の左肩をちょいといれ、ぐん、と体を伸ばす、と、そいつは飛んでいこうとするが、上杉は掴んだ右手を放さずに強く下に引く。そいつはその右肩を中心にドギャッっと頭から路上に落ちる。首がへんなほうに曲がっているのを目の端で確認しつつ、次の獲物に飛びかかる。
それから数分位だろうか。
上杉以外に立っている者は居ない。
生きている者もいない。
最後の一人から、呼び名と場所を聞き出していた。
その日は、その夜は晴れていた。
絶好の日和だろう。
上杉はそのときにはもう口径の大きい拳銃を買っていた。
9mmオートマチック。
上杉は身長は170半ばだが、手が大きい。なので大容量のマガジンが収まるグリップのほうが安定して撃てる。
それを買った時、ちょうどカスタム物のショートスライドモデルも中古に出ていた。が、売価が桁違いだったので泣く泣く初期モデルにした。垂涎だったモノが買えないことに少し頭にきていたので、やはり中古ででていたロングマガジンも買ってしまった。ロングマガジンは20発入る。使いどころはまずない。
機種はブローニング・ハイパワー。
メアリーに、時期も似たような時期だし同じメーカーなんだからこれにしなさいよ!と半強制された。持ってみた感じがとてもしっくりきたので決めた物。
上杉は襲撃を撃退した後フラット(アパート)に戻った。
すぐにブローニングとスタームルガーを出し、すべてのマガジンに弾丸を装填した。
そして両方のガンを分解し、手入れをした。
30-08のライフルケースが見える。ジョンに借りていたものだ。今度は優勝するから練習しろ、と言って貸してくれたのだ。
いや、ライフルは、、ジョンの物を、クズの血で汚したくはない。
拳銃用ホルスターも一応買っておいた。許可証がなければハンドガンの持ち歩きは禁止なのだが。
ホルスターはベルトに止めるタイプ。落下止めホックが着いている。
腰の右後ろに付け、ガンを入れてみる。勿論弾倉は満タン。
違和感はさほど無い。
上着を着る。前のボタンはかけない。
上着を少し跳ね上げ気味にガンを抜く。
ザッツ、パチ、ズッ
バッ、チッ、ス、
バッ、チッ、ス、
バッ、チッ、ス、
よし、抜き撃ちはこの程度でいいだろう。
上杉はガンの相性に左右される撃ち手だった。
ジョンのライフルで最初から上手く撃てたのは相性が良かったのだ。
一番最初に30-06口径を撃った日、最終的に22口径のM16よりも集弾できたのは、相性がそれほどよかったのだ。あの日はM16でさえ集弾はかなり纏まっていたのに。ジョンは当たりのガンを選ぶのが上手い。
ハンドガンでもそれは発揮された。
上杉はガンを手に入れてからは毎日シューティングレンジに通った。やればやるほど面白く感じていたのだ。
そのうち大きい口径も撃ってみたくなった。
ジョンとメアリーと連れ立ってガンショップに行き、ハイパワーを手に入れた。
その後、更により面白く感じるようになり、暇を見つけてはレンジに通った。
その甲斐あってだろう、
ある日3人で連れ立ってレンジに行った。
22LRのスタームルガーも30mくらいまでなら腰だめでも高得点範囲内に集まったが、ブローニングだとほぼ黒丸に集まった。腰だめで。勿論そのガンがが当たりのガンだったのは確実だ。
これにはジョンもメアリーも驚きを通りこし、呆れていた。
FBIかよ、、。
それどころか、、、西部劇並ね!。
と2人はつぶやく。
「どれだけ通ったんだよ、、、」ジョン
「手に、豆で来ているんじゃない?」メアリー
そのとおりだ、できて潰れてまたできて、固まっていた。主にハイパワーのせいで。
手を見せると、2人は呆れ、笑いだした。
こういうのをヲタクっていうんじゃないか?初の日本人の友人が、よりにもよって、日本じゃ成れないガンオタクだとはね!!と。
「その成果を、こんな事に使いたくはなかった。一緒に優勝を喜ぶために使いたかった、、」
ぐっと銃把を握りしめる上杉。
スタームルガーは右手で左脇腹のベルトに差し込んだ。勿論チャンバーに装填していない。
靴を履き替える。ランニング用のスニーカー。音がしにくい。
外に出てる前に、入り口ドアの横に置いてある自転車を見るが、思い直して外に出る。
自転車では腰のホルスターが目立つ。移動に音が立たないのはいいが、その前に人目につくのは困る。
小型のスクーター。小型と言っても100cc以上ある。50など使い物にならないからだ。街が広い、買い物も多い。当然二人乗りする。使い方が全く違うから、こっちには力のあるエンジンのものしか無い。
スクーターなら目立たないので丁度よいだろう。この場合、少なくとも自動車より都合は良い。
フルフェイスを被り、バイク用のジャンパーを羽織り、スターターを押す。
日本のメーカーの中古は使い込まれた物ばかりだったので、新しめのイタリアメーカーのを買った。少し高かったが、新品よりも安いのでヨシとした。
エンジンや各部がスムーズなのに驚いた。イタリア製は、、日本に居た時はあまりよくは聞かなかったから。
あの値段でこれなら、少々故障しても買得なのでは?とおもったが、それから半年以上毎日乗っているが、壊れる気配も無い。
なによりも、音が静かだ。
その邸宅の近隣は、やはり大邸宅ばかりであった。
目当ての邸宅の周囲を、ダイレクトにではなく、道に迷ったていを装って、道から道に、あれ?またここに出た?という感じで、一周し、侵入路を決めた。
スタームルガーで監視カメラを死角から撃ち破壊。
裏門の小さな金属扉のカギの部分をバイクのジャンパーを9mmガンに巻いて撃つ。
蹴飛ばしたら開いた。あかなければ丁番を9mmで吹き飛ばそうとおもっていた。
建物の裏口は、、開いていた。そういえば、裏に番人小屋があるんだが人がいなかった。トイレにでも行ったのか?都合良い。
中に入り扉を閉める。
そっと、物音を聴きながら、進む。
・・・・
上のほうで?
銃声か?
スニーカーなので足音は出にくい。
が、誰も居ない?
かなり広いので、逆側はなんとも言えないが、、。
広い階段が見つかったが、、見通し良すぎる。
周囲を確認し、端にあるスツールの上の小さな置物を取り、音のしないように、端にあるソファに放り投げた。
・・・・・
誰も出てこない。
飛ぶように数歩で階段の下に行き一気に駆け上る。足跡はほとんどでていないはず。
下では誰も出てきた気配はない。
階段の上、見える範囲には誰も居なかった。階段上の踊り場の影に隠れ、奥を覗く、人は居ない。
ここまで来ると上からの音がもう少しよく聞こえる。
抑え込まれた銃撃のような音だ。撃ち合いしている様子。
マフィアの抗争?
何にせよ都合が良い?のか、悪いのか?
まぁ行ってみるしかないか、、
少なくとも警察ではないので相手をしてもさほど問題はなかろう。
3階への階段の手前から階段を覗くと、踊り場に3人ほどが、その手にサプレッサーを付けたガンを持っている。上に出るのを躊躇している様子。
奴らは兵士でもなくメルメットかぶっているわけでもない。
上杉はスタームルガーを構える。
奴らの目は上の階に釘付け。
一人がこちらに目線を向けようと
パン、、、パンパン!!
いっちょ上がり。
踊り場に行き、ちゃんと頭が破壊されているのを確認する。
22口径の場合、たまたま当たりどころが良くて頭蓋の内周をまわって外に出てしまった、などという奇跡みたいなことがあるからだ。
案の定この3人の銃にはサプレッサーが付いていた。
一人からそのガンを奪い、残りの中からマガジンを抜き、チャンバーの弾も抜き、ポケットにいれる。
奪ったガンのチャンバーに弾が装填されているのを確認し、安全装置が解除されているのを確認した。
スタームルガーに安全装置を掛け、左手でベルトの左の尻の方につっこんだ。左手で抜き打ちできるように。
このスタームルガーは左利きでも安全装置解除ができる後期型。
3階の踊り場部分へ頭を出して確認。誰も居ない。隠れる場所もない。
踊り場部分に出て見える範囲の状況を確認。右手奥から音がする。
左手には音がまったくない。
左手にも気をつけ、下からのも用心しながら、廊下の右手の方を覗いてみる。
3人ほどが一つのドアの外におり銃を持っている。中に入る機会を伺っているような感じだ。
部屋の中で銃撃音。
どうだろう、このガンは握った感じは悪くない。が、元の持ち主が持ち主だ、、、手入れもさほどされていないようにも見えるが、何よりほとんど使われていない。
まあ撃ってみるしか無いか
バシュ、バシュバシュ、バシュバシュ・・
バシュ
その廊下にいた3人がやられても、他の部屋から誰も出てこない。覗きもしない。勿論廊下のこっち側奥からも。
廊下を用心しながら問題の部屋の方に行く。各ドアに耳を付け内部から音がするか確かめたが、しなかった。
ドアを開けて確認しないのは、女子供が居た場合困るから。そのままじっとしてはいないだろうから。
問題の部屋を覗く、チュン!! 弾丸が出した頭のすぐ上の扉枠を掠っていく。
わお、、側に転がっている3人の頭を、入口から少し中に押し込む。
「もう外に誰も居ないぞー、皆死んでる」
一瞬中は静かになった。
「そんなわけねぇ!!俺の兵隊はもっと居るはずだ!!」
「は?何人だ?」思わす聞き返す上杉。
「30人はいたはずだ!!」
「いねーよ、、数人が死んでるだけだ。あとは、逃げたんだろうよ、、自分が狙われているわけじゃないだろう?兵隊たちは。んじゃ、逃げるよな?」上杉
「くっそー、、恩知らず達があああああ!!!」
バンバンバンバン!!かちゃ、かちゃ、ぐああああ!!
どん!
弾が無くなったガンを放り投げたか、、
バン!
ぐ、ぐぐ、、くっそ、、
先程の声の主が撃たれたみたいだ。
「入っていいか、あんたがここの館を襲撃に着たなら、俺は敵じゃあない。」上杉
「入ってこい、両手を先に見せろ、ゆっくり入って、両手を上げ・・
なんだ、おまえか、、、」
「お・・、先に来てたんですか、、」
ジョンの父親だった。
ダンッ!!
俺の9mmが初めてクズを退治した。
まだ生きていたあの罵声の持ち主が、落ちていた部下の銃だろう、を、掴んだところだった。
クセなのか、頭を1発で。
「流石にジョンの言うだけあるな、、ミラクルな抜き打ちだ」
悲しそうに言うジョンの父
「これで全員ですか?」
上杉は訊く。
「ああ、多分、な」