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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死にたがり賛歌

作者: 赤紫

拙いとは思いますが、書きました。

『死人に口無し。』そんな題名の、一冊の本から始まった。


『死人に口無し……死んだ人は現実に影響力を持たない。それを嘆く様を指す。』


なんだって僕はこんな本を読んだのだろうか。別に死人に興味があったとか、このことわざが特段好きだったとか、そんなことはなかった。題名にパンチがあったわけでもなかった。ただ、題名に惹かれたのだ。妹が読んでいた『櫻の樹の下には』の本にある文豪味を題名に感じて読んでみただけだった。

そして、──


──その本は、容赦なく僕の価値観を壊していった。


“死人に口がないのは何故か” “それは、生者が望んだことだから”

生者、とは。

どうやら、この世界に干渉できるのは生者だけで、死んだらこの世界には残れないらしい。

死んでいる人、という表現もおかしくて、死んだ時点で生者ではなくなるから、死んでいる、という状態が続くのはありえないのだって。


生者に都合の良い様な一説だと思ったけれど、『この世界』という限定の仕方が、“実は世界にはひとり(あなた)しかいない”という主張の様にも思えて、不気味だった。

ともすれば、『死者だけが世界にいた』みたいで。そんな考えも、そう考えられた人も怖かった。これを考えた人こそ、外の世界から僕を好きにみつめているのではないかと思った。


それからは、第三者の視点が付きまとっていた気がする。悪いことをしても恥ずかしいことをしても、何も声をかけてこないでただじっとみつめている存在が、ただ僕について記録をとっている。

そんな超常の存在が常にいる。


意識し始めると嫌悪と恐怖と羞恥に襲われる気がした。

だから、何も考えていない振りを誰に対してもする様にした。何も考えていないと思い込めば、本当にこれを忘れられると思ったから。

あと、この時は気付かなかったけれど、この世界に僕ひとりなら、みている世界は僕の心象を投影した幻想で、この世界にいる人は超常の者と同じで僕を観察している様に感じて、それが怖かったのだと思う。

簡単に書けば、死後の世界や裁きを信じたのだ。だから、誰も(そいつら)に顔向けできる生き方をしなければと考えた。もう純粋無垢でない心が恐怖し続けるならと、欲塗れな思考を停止してみせることにした。


その後は、ぼんやりと過ごした。


例えば、何も考えていない振りだと学校の先生から内申を貰うこともできないし、今まで貯めた分が勿体ないなとは少し思った。それでも、講習には参加しないし、積極的に会話もしないで、何も考えていないと装うことに努めた。


例えば、家ではひっそりとしている様になった。いや、実際はわからないけれど、僕はひっそりとした様に感じる。口喧嘩の絶えなかった日々から、あまり顔も合わせない様になった。朝は家を勝手に出る様になった。学校が終わって家に帰っても、「ただいま」の挨拶を一方的に言い放って、布団に潜り込む様になった。

休日もただただぼんやりと過ごした。


ただの走馬灯だった。




バッ、と。古い記憶から掘り起こされて、なんだか頭が痛かった。


少しだけ……時間があるからこの続きも振り返ろうと思う。


その後、もう一度あの本を読んだんだ。この時はもう、死人が現実を左右しないとしか頭に入らなかった気がする。だから、直ぐに考えた。


“死ねば楽になる”なんて──なんともありきたりな言葉だと思う。

でも、死ぬしかないな、と思った。もう精神はぼろぼろだと思った。もう耐えられないと思った。

それに、現実を変えないなら、僕の中でこの世界が崩壊するなら、得体の知れない誰か(やつら)に看取られて、観察されて、弄られて、そんなこともされないと冷静に考えたつもりだった。


結局……こ、の………………(せかいは)……

自殺前の走馬燈と、一般に精神疾患と呼ばれる脅迫観念や被監視意識、またはただの一世界観です。


起承転結といった物語性がなく世界観の紹介の様になってしまいました。

それでもと読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゾワっとしました。 もし超常なるものがいて、それが自分の全てを見ていて、しかも罰や幸運という形で評価を示す事もなく、ただただ観察され続ける……。 考え詰めると恐ろしい事だと思いました。 未…
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