第37話 不意打ち
俺は昨日と同じく廊下に出る。すると、そこには当然黒鉄先生がいて、今日もニコニコしていた。
「今日はどうしたんですか?」
「今日は面白い情報があってね……」
俺はその時、ある違和感を持った。なぜなら面白い情報と言った瞬間のあの顔、なにか企んでいる人の顔をしていたからだ。
そして今日は白衣を着ていないのも気になる。今日の黒鉄先生は色々と怪しすぎるので俺は警戒することにした。
「実はね、風魔君。今、この学校に昨日のニュースでやっていた強盗団が集団で向かってきているらしいんだ」
「……それ、全然面白くないんですが」
寧ろ俺にとってはそれ即ち古沢が危険に晒される危険性があるってことだ。出来ることなら来て欲しくはなかったが、それならなんで教師たちはみんな落ち着いているんだ?
黒鉄先生の話を聞いてから俺は他の教師たちを見てみる。しかし、誰一人としてまるでこれから強盗団がおしよせてくるとは思ってもいないような呑気な表情をしている。
確かにこの先生が嘘をついた可能性もあるだろう。しかし、俺は嘘だと決めつけることが出来ずに居たのだ。なぜなら今、黒鉄先生はとてつもなく冷たい目を向けてきているからだ。
この目には絶対に何かがあるはずだ。そう思った俺は今、黒鉄先生が言ったことを信じることにした。
すると、黒鉄先生は顔を押さえて笑い始めた。
それは突然だった。さっきまで真顔で俺の事を見下ろしていたというのに急に笑い出したのだ。その様子は真顔から一瞬で笑いに移り変わったので、不気味以外の何物でもない。
そんな黒鉄先生を見て俺は表情を引き攣らせた。
そして、黒鉄先生は何かを隠している。そう確信した。
「君は確か、先日疑いが晴れた稲光先生と体育科の妥当先生、数学科の鹿島先生を怪しんでいたんだっけ?」
「なぜその事を……俺は何も言っていないはずだ」
「まぁ〜確かに、僕は君から何も聞かされていないよ。君は用心深い、例えどんな人物だとしても自分の深い部分については語りはしない」
なんなんだ、この奇妙な感じは……それにあの目、なんだか俺のことは全て知られているみたいで気味が悪いな。
それに、なんで俺は誰一人にも言っていないのに俺が怪しんでいた人物がバレているんだ。俺は古沢にですら、その事は一切何も言っていないんだぞ。
いよいよ面倒な事態になってきたかもしれない……嘘を本当に味方ならまだ良かったが……俺は気がついていた。背後から近づく謎の気配に。
そして、その人物が俺に攻撃しようとした瞬間を狙って背後に向かって回し蹴り。すると、相手は俺の隙を突いたと油断していたのだろう。ノーガードで俺の蹴りをくらったその人物は一発で意識が深い闇に落ちてしまったようだ。
その状態になってから俺はマジマジと倒れた人物を見てみる。その人物はどう見てもこの学校に関係のある人物には見えなかった。
黒い背広を着て、サングラスをしている。とても強面の男だ。
しかし、なんでこの学校にこんな部外者が居るのだろうか。警備員がいたはずだが……もしかして、やられたのか? もしそうなんだとしたらかなりやばい状況なのかもしれない……。
しかし、これによって一つ確定したことがある。
「黒鉄先生……あなたは俺の敵だ」
「なんで僕が敵だと決めつけるんだい? そんなやつは知らないね……本当にどこから入って来たのやら」
知っているくせに白々しいな。
まぁいい。今はとりあえずこいつの事を他の教師に突き出すのが先だ。そして警備を厳重に固めてくれないと、この学校に通っている人達の身が危ない。
「なぁ、知っているかい?」
「なんですか」
「昨日のニュース……そのニュースに映っていた人の顔を思い出してみたらどうだ?」
なんでニュースなんか……俺が見たニュースは銀号強盗のニュースしか……まさか!
そう気が付いた瞬間、俺の頭に鈍い衝撃が走った。その事を認識した瞬間、俺の意識は深い闇へと落ちて行ってしまった。
「あばよ……稲田の一族、そして桟敷学園の最後だ」
最後に黒鉄章翔の高笑いだけが聞こえた。




