第33話 候補
次の登校日。今日も俺は古沢の部屋に起こしに来ていた。
しかし、昨日は古沢の部屋を見ていなかったから、大惨事になっていたらどうしようか……。また、放課後に掃除かな。
一昨日は服を買っていたから少し心配だ。また散らかってなきゃいいけど……。そんな懇願にも似た思いでお嬢様の部屋の扉を開けた。
「古沢〜朝だ、おき……ろ」
俺は絶句してしまった。
なぜなら、古沢の部屋が全く散らかっていなく、前回片付けた時の綺麗な状態を保っていた。この事は一つの地域に夏と冬が同時に来るレベルでありえない事だと思っていたのだが、いざ蓋を開けてみれば物凄く片付いている。
そして、お嬢様は服を畳むのが苦手なのか、畳むと逆に体積を増やす性質があるのをわかっていらっしゃるのか一昨日買った服はハンガーで壁にかけてある。
まさか、こんなことが有り得るなんて……っ!?
もしかして、天変地異の前触れなのか? 今日地球が終わるのか? それとも――
「いたっ!」
急に顔面に何かが投げつけられた。勿論、この空間でそんなことが出来る人物は一人しかいない。
「お嬢様……起きていらっしゃったのですか?」
「ええ、あなたがうんうん唸っていたから煩くて目が覚めてしまったわ」
この口調が強い時は不機嫌な証拠。多分、起こすのでもなく固まってうんうん唸って居たのが古沢を怒らせてしまった要因なんだろう。
だが、この状況に出くわしたら絶対に誰でも俺と同じ反応になるに決まっている。
しかし、急にどうしたんだろうか。部屋を綺麗に使うとか古沢らしくなくて少し不気味だ……はっ! もしかしてこのお嬢様は偽物なのか!? もしそうだとしたら――
「お前、本物のお嬢様をどこにやった!」
「あなたねぇ……失礼すぎるわよ!」
今度はお嬢様に拳を落とされてしまった。
「って言うことがあったのよ……」
「それは信用がないゆららんが悪いような」
今日も俺は古沢の教室に登校して、今日は俺の机が用意されていたので、そこに座ろうとしたら古沢に連行されて前回と同じことになってしまった。
なんでこいつはそこまでして俺を隣に置こうとするんだ?
すると、小声で古沢が俺に話しかけてきた。
「そういえば、風魔君はご両親のこと、誰が怪しいとか思っていたりしないんですか?」
そういう事か……俺の事を気にして隣に置いているわけね。俺が信頼しているとか言ったから負担をかけてしまっているのかもしれないな。
「いや、今のところは何とも……そもそもこの学校は教師の出入りがないから他の学校から入って来ない分、出ていくこともないから教師のたまり場になっている。だから人数が多すぎて今すぐにはわからん」
せめて人数が少なければ探しようがあるんだけどな……。
「それなら人数を減らしましょうか」
「あぁ……はぁ?」
すると、古沢は徐に携帯を取り出して電話アプリを開いた。その様子を見て嫌な予感がした俺は急いでその古沢を止める。
「な、なんの電話をかけようとした」
「ん? お父様にこの学校の教師を何人か追放しないと融資しないと脅して頂こうかと」
「やめて!?」
なんて危険な発想をする子なんだ俺のお嬢様は!
確かに人数が減れば、その分見つけやすくはなるだろう。しかし、その代わりこの学校から追放された教師はもう二度と教師に戻れないんだぞ? この学校で退学をくらった生徒と同じくらいの対応だ。
そんなこと、軽々としていいわけがない。
その旨を古沢に伝えるが、古沢は首を傾げて不思議そうにしていた。今の俺の話のどこに不思議な点があったか教えて貰いたいものだ。
「だって、風魔君を苦しませた教師ですよ? 当然の報いです」
真っ黒なオーラを出しながら、そんな怖いことを言う古沢。多分、この件に関しては本人である俺よりも古沢の方が怒っているような気がする。
この状態だったら俺が望んでいないと言っても聞かない気がする。だとしたら、止める正当性のある理由じゃないとダメだな。
「だってよ、考えてみろ。どうやって追放する人を決める。適当に選んだらその中に俺の両親を殺した人物も含まれているかもしれないんだぞ」
「あ、確かに……でもそれはそれで当然の報いなのでいいのでは?」
「いいか? 俺はその人物に復讐がしたい訳では無い。ただ、どの人物なのか調べたいだけだ。確かに追放されたその人物は途方に暮れていい気味かもしれないが、そうなってしまったらもう探す方法がなくなってしまうんだよ。分かってくれ」
俺が必死に伝えると、少し納得が行っていないようだが、何とか頷いてもらうことができた。それを見て安心し、ホッとため息を着く。
確かに追放した方が、ランダムに選ばれた追放者以外の場合、格段に探しやすくなるだろう。しかし、今はこのままでも充分探せる。
今でもあんまり自由っていう感じではないが、古沢のお陰で俺は虐げられる回数も減り、だいぶ自由に行動出来るようになってきたので、このままでも充分に犯人探しが出来るだろう。
古沢の気持ちはありがたいが、そんな危険な考えはいただくことが出来ないので、丁重にお断りさせていただく。
だが、一応の候補は居るのだ。
俺の両親と同じ時代から既にこの学校に居た人物で怪しいと睨んでいるのは三人の人物、体育の教師で、このクラスの教科担任でもある妥当先生。俺の元のクラスで数学の教科担任をやっていた鹿島先生。そして、俺は殆ど会ったことはないが、以前調べた情報によると、何やら黒い過去が隠されているんじゃないかと噂されている稲光先生。この三名だ。
他にも何人も俺の両親の世代から居る教師はいるが、俺は特にこの三人が怪しいと見て行動している。
そして、こんな俺にも優しく接してくれる人が居る。確かに俺は古沢以外には誰にも言っていない。しかし、事情を知っている人はいたので、俺が庶民になってしまってからはその人に情報収集を頼んでいる。
その人物はこの学校の教師であり、俺の内通者。
「風魔君、ちょっといいかな」
っと、呼ばれたようだ。ちょうど何かを見つけたらしい。
「俺、ちょっと行ってくるな」
「風魔君……気をつけてくださいね」
「あぁ、大丈夫だ」




