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【本編完結】人生に疲れたので人生をお嬢様に捧げます  作者: ミズヤ
第四章 人生に疲れたので友好関係を結びます
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第31話 辛くないといえば嘘になる

 これで一番の目的であっただろう服選びは終わったんだが、次はどうするんだろうか。


「もうお昼近いから昼食にしよう!」


 いやいや、あんたお嬢でしょ? そんな簡単に外食なんて決めてもいいのかよ……。

 しかし、そんな俺の考えとは裏腹に古沢もうんうんと頷いている。これは俺一人反対したところで通らないような気がする。諦めて料理人たちに連絡した方がいいな。

 そう考えた俺は携帯電話を取り出して番号を打つ。そして、コールが始まると一コールで繋がった。

 お前らは暇か! と言いたくなるような速さだが、俺は簡潔に要件を伝えることにした。


「風魔です」

『おー坊主、どうしたんだ?』


 あんたかよ。料理長のあんたが電話に張り付いていて大丈夫なのか?

「実はこれから犬飼さんと共に外食をすることになりましたので昼食はキャンセルで。お願いします。俺が着いていますので、ご安心ください」

『おう、了解だ。きっちりとお嬢様をお守りしてやれよ〜』

「分かりました。では」


 これで一応大丈夫だ。少し外食することの不安はぬぐえないが、そこは俺が何とかして守れば良いか。

 電話を切り、二人の方を見る。すると、何を食べたいのかの相談をしていた。この二人は本当に仲がいいと思う。で、なにか決まったのか?


「で、どうすることにしたんだ?」

「唐揚げ!」

「うどん!」

「わ、割れていやがる」


 全く別種の料理がご所望のようだ。だが、この二つならば簡単に叶えられそうだ。

 唐揚げだけの店ってのは無いだろうし、うどんだけってのも結構珍しいから両方入った店ってのが多いはず。なら適当に入った店で両方注文するのが手っ取り早いな。


「とりあえず適当な店に入るぞ」

「「分かった」」


 まずはこの居心地の悪い空間から逃げ出すことが最優先だ。俺は頑張ったよ……。


 飲食店にも俺は行ったことがないので、二人に聞いてみると、飲食店フロアは三階にあるらしい。

 そして二階に上がった時同様にエスカレーターに乗って三階を目指す。


 前回は二人の後に着いていった形になったので、当然二人の後ろに乗ることになったのだが、スカートを履いている二人の後ろに乗るのは気まずいので、今回は俺が先導してエスカレータに乗った。

 そして徐々に見えてくる三階。確かに俺の視界いっぱいに飲食店が埋め尽くされていた。某餃子の中華料理屋とか、様子を見ていて犬飼さんが好きそうな某うどんの店だったり、こんなフロアがこのスーパーにもあったのかと感心してしまう。

 そして、そんな中、俺らが選んだのはカフェだった。


「色んな店があったけど、本当にカフェでいいのか?」

「うん。カフェの方が落ち着けるし。ねーゆららん」

「そうだね。私もカフェの方がいいかな」


 二人がそれでいいのならいいのだろう。確かにカフェならうどんも唐揚げも食べられるからいいのかもしれない。

 そして、三人で入ると、なかなかに落ち着けそうな空間が拡がっていた。

 まだ混んでくる時間ではないので、俺らはゆっくりと食事が出来そうだ。

 そこで、犬飼さんは少し考え込むと、俺らの方に向き直って手を合わせた。


「そうだった。私、買いたいものがもう一つあったんだった。ごめんね、先に食べてていいから」


 なんか慌ただしいやつだ。しかし、用事があるなら仕方が無いだろう。


「俺らも付き合うか?」

「いや、いいよ。二人は先に食べていて?」


 なんか様子がおかしい犬飼さん。またなにか企んでいる可能性があるなこれは。

 でも、まぁ、本人がいいって言っているんだし、俺らは先に食べていることにするか。


「じゃあ、待っているから早く来いよ」

「うん! ありがとう」


 すると、犬飼さんは走ってどこかへと消えてしまった。

 じゃ、二人で待つとするか。そう思って店内に入っていく。何名かと聞かれたので、後で友人が来ると言って三名と言っておいた。

 そしてそんな俺たちが案内されたのは窓際の景色が綺麗に見える席だった。

 犬飼さんが居ないので急に不安になったのか古沢の表情は優れないけど、それでも、窓際の席って事は嬉しいようで、少し表情が柔らかくなった。


「それじゃ、頼むか……俺は、スパゲティか。古沢は?」

「え、えと……唐揚げ定食かな」


 了解だ。

 ここは執事らしく、俺が注文を済ませると、意外と早く料理が運ばれてきた。

 俺の注文したスパゲティはトマトソースのスパゲティだ。

 一口食べて見ると、とても美味しい。流石は店だなと感心しながら食べ進める。そして、古沢の方をチラッと見てみると、いつもなら唐揚げに真っ先に飛びつくのに、まだ一口も食べては居なかった。

 どうしたんだろうか。そんな風に古沢を見ていると、古沢は口を開いた。


「風魔君。あの学校辛くないの?」


 急な質問だった。

 どうやら犬飼さんの事を心配しているのではなく、俺の事を思い出して暗くなっていたらしい。


「確かに、辛くないといえば嘘になる」

「そうですよね……あんだけ酷いことをされたのですから……それなのになんで風魔君は行こうとするんですか? 登校することを焚き付けた私が言うことではないと承知しています。ですが、あの様子を見ていると、本当にこれで良かったのか不安になってきてしまうんです」


 まぁ、あんな場面を見られてしまったら、そりゃ不安にもなるよな。

 確かに俺も未だにあの学校でよかったのかが分からなくなることがある。


「ずっと悩んでいたんです……これは聞くべきなのか……踏み入ってはいけない部分なのか。でも主として知っておきたかったんです。風魔君の事をもっと知るために……」

「まぁ、正直に言うと、踏み入って欲しくはないことだな」


 俺のその回答に暗くなる古沢。

 この話題は親にも言っていなかった話題だ。だからこそ喧嘩になった時もあった。なんであんなお嬢様学校に行くのか……うちは庶民ぐらしがモットーだと、何度も反対され続けて漸く親の承諾を得た。

 それだけこの話題は他人に言いたくなかったのだ。

 でも俺は決意を決めることにした。だから俺は「だけど」と続けた。


「古沢になら話してもいい」

「え、私になら?」

「あぁ、俺の主ってだけでなく、俺は古沢を信用に値する存在だと判断したからだ」


 すると、古沢の頬は真っ赤に紅潮した。

 しかし、俺はそんなのは構わず話し始める。


「俺の両親はずっと前に他界しているんだ。俺がまだ小学生の頃だったと思う」

「……えっ」

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