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【本編完結】人生に疲れたので人生をお嬢様に捧げます  作者: ミズヤ
第三章 人生に疲れたのでボディーガードをします
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第23話 学校全体が敵

 古沢と犬飼さんは一緒のクラスのようなので、途中で別れた。

 そんな俺は一人で地獄の教室へと入る。その入った時の表情から読み取れる感情は思わず目眩がしてしまいそうな程のドス黒い感情だった。

「なんできたの」「来なければよかったのに」「そのまま回れ右して帰れ」などの理不尽な暴言だ。


 俺らのような庶民に落ちた人達は意味もなく虐げられる。俺たちは所詮、ストレス発散道具だ。普段溜まったストレスを庶民にぶつける事によって発散しているのだ。全く……迷惑な話だ。俺らには何も関係ないじゃないか。


 いつもの様に味方が居ない教室を慎重に歩いて神経を逆撫でさせないようにして席に着く。すると、その椅子は何度も傷つけられていて、木片が尻に刺さって痛かった。

 机にしてもそうだ。足なんて対角線上の二本しか無い。よくこれで今まで立っていたなと思うような仕打ち。普通のグラつきじゃねぇ。常軌を逸したグラつきだ。


 こんな所でまともに板書なんて取れるわけがない。こんな事ならいっそ席がない方がよかった。

 しかし、そんな状況だからこそ俺は笑った。そんな俺を見て気味悪がる人も沢山いた。なにせ、こんな仕打ちをされているというのに笑っているのだ。普通で考えたら、こんな事をされ続けて頭がおかしくなってしまったと思うだろう。


 だが、俺の頭は至って正常だ。冷静に思考出来ている。むしろ、冷静すぎて自分が怖いくらいだ。

 確かにこんな事をされたら俺もイラッとくる。しかし、お嬢様と約束をしたからな。今の俺は独りの風魔春人ではなくて、古沢由良の専属執事の風魔春人だ。

 もうこんなことには屈さない。寧ろこんな事をやっている奴らが滑稽すぎて笑いが止まらない。なんて面白いことをするんだあいつらは。俺の腹筋を崩壊させる気なのか?


 それから少しして教師が到着した。

 教師は一瞬俺の方を見ると嫌そうな表情をした後に俺は居ないものとして出席を取ってきた。つまり俺は欠席扱いだ。流石にこれには意義を申し立てても罰は当たらないだろう。


「せんせー。俺の出席がまだなんすけど」


 しかし、無視。教師からそんな仕打ちを受けた俺を見てクラスメイトたちはゲラゲラと笑い始めた。大爆笑だった。

 ちょっと、それは無いんじゃないか? どうしても俺を退学にさせたいからって欠席扱いで、単位を与えない気だ。

 やはりこの学校は腐っている……。


「せんせー俺の出席を認める気がないのなら、どこへ出たっていいんですよ?」


 俺がそう言うと先生は無言で教室を出ていってしまった。まだ、出席を取っている途中だったのでクラスメイトたちも困惑してしまっている。

 正直、あの先生が何をしたいのかが分からない……。

 そして数分したその時だった。


「風魔っ!」


 俺の名前を叫びながら物凄い形相で俺の方に来たのは生徒指導の雪川先生だ。

 もしかして今出ていったのは俺の事を相談しに言ったのか? 俺を追い出すのに物凄い必死だな。


「風魔。お前、担任の夢路(ゆめじ)先生を殴っただろ!」

「は?」


 突然俺の記憶に無いことを言ってきた。

 俺は一切手を触れてもいない、脅しに殴るとも言っていない。なのになんでこんな事を言われなきゃならねぇんだよ……。

 この学校は理不尽の塊だ。それが、古沢と一緒ならば、少しは変わるかと思った。しかし、現実は非常だった。今までがそうであったように、変わるわけがない。


 悔しい……。第一、あんな嘘つき先生は殴る価値もない。俺はそんな無駄なことに労力を使う質では無いのだ。

 他の奴らにしたってそうだ。どいつもこいつも殴る価値のない奴らばかり。


「この学校にまともなやつは居ないのかよ」

「今の、教師への暴言として付け加えておくよ。漸く君を追い出す算段がつきそうだ」


 その時だった。乱暴に教室の扉が開かれた。

 そこに居たのは、ムッとした表情の古沢と、オドオドして隣に立っている犬飼さんだった。その二人が突然俺たちの教室に乱入して来たのだ。そんなことがあったらそりゃ教室内は大混乱に陥る。

 さっきまで強気だった雪川先生までまずいところを見られてしまった子供のような表情をしていた。

「風魔君が何をしたって言うんですか……。風魔君は優しい人です。目立ちたくないとか言いながら人助けなんかして……自分から目立ちに行っているようなものです。それに成績のことも……なんで庶民を目の敵にするんですか?」

 その問いに言葉が詰まってしまう雪川先生。

「そ、それは君には関係の無いことだろ?」

「胸に着いているバッチを見てください」

「バッチ? それがどうしたって……っ!?」

 どうやら今気がついたらしい。俺が古沢の使用人バッチをつけていることに。とんだ間抜け先生のようだ。

「そのバッチは私の使用人であることを表します。私はこの使用人がとても大切です。なので、何かある時は私が直接御相手致しますが?」

 かっこいい。

 普段のダメダメな感じではなく、キチンと主をやっている。その事で、普段と学校のギャップをすごく感じる。

「これ以上、風魔君に嫌がらせをするならばお父様に言って融資の契約を解除させて頂きます。それと、風魔君には安全のために私の所属する教室に移動してもらいます」

 どうなっているのかは全く理解出来ていない。しかし、古沢はこの学校の中でもかなりの地位を獲得しているようだ。あの雪川が古沢の言葉に縮こまって頷いているだけになっている。

 俺は心の中でお礼を言った。正直、折角古沢に貰ったチャンスだったのに、そのチャンスも物に出来ずに退学させられるところだった。やっぱり古沢には助けられてばっかりだな。

 この学校では庶民の話などかき消されてしまうのだ。

「風魔君、行きましょう」

「お、おう……」

 どこに? と聞く前に手を握られて連行されていた。

 一緒に来たらしき犬飼さんが居たような気がしたんだけど、あの人は空気だった。皆、古沢の剣幕に圧されていたって感じだもんな。

 そりゃ古沢以外は空気になっても仕方がないか。

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