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【本編完結】人生に疲れたので人生をお嬢様に捧げます  作者: ミズヤ
第二章 人生に疲れたので使用人になります
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第15話 執事業

 意気込んで仕事を引き受けたまでは良いものの――


「うわぁ、すごいゴミだな……これは片付け甲斐がありそうだ」


 その言葉は現実逃避だった。

 俺の目の前にはゴミの山。この部屋の扉には『Yura』というネームプレートがかけられていたので、現実逃避もしたくなる。

 なにせ、一見して清楚で綺麗好きのように見えるお嬢様のお部屋が、こんなゴミの山と化していただなんて……。これは予想つかん。


 しかし、これは俺の仕事として任されたものだ。任された仕事はきっちりとこなさなくてはならない。

 まずは散乱しているものを片付けることにした。

 大量のゴミの山だったり、脱ぎ散らかされたまま放置された衣服だったり。色々あるが無心で仕事をしていく。例えその中に下着類があったとしても平常心。そのままそっとタンスの中に畳んでしまっておく。


 ゴミは即座にゴミ箱に投げ入れる。しかし、この量だ。直ぐに小さいゴミ箱は溢れてしまった。

 確かにこの大きさで済む量なら、こんなに放置しておく訳がない。


 しかし、ゴミ箱に入る分位はゴミ箱に入れといてくれよ、お嬢様……。

 そんなこんなで掃除して約30分後。ゴミは綺麗に片付き、床が綺麗に見えるレベルまで片付け終わることが出来た。

 そして驚くことに、ゴミや衣服はあんなに散乱していたというのに、ゲーム類や化粧道具は綺麗に纏めて仕舞ってあった。だが、それが出来るならせめて衣服も仕舞って欲しかったな。

 そんな愚痴を心の中で呟きながら次に取り掛かったのは掃除機だ。


 なんとこの屋敷は一つ一つの部屋に掃除機が置いてあるのだ。だが、掃除機があるなら掃除しておけよ……というツッコミは野暮なのだろうか?


「はぁ」


 小さくため息をついた。流石に量が多すぎて疲れてしまったのだ。

 そんなたるみ切った自分に嫌気がさしたのか、俺は気がついたら自分の頬を叩いていた。

 確かな痛み。しかし、その痛みのお陰でたるみきっていた気持ちがシャキッとしてやる気が出てきた。

 そうだ、考えようによっては仕事が沢山あるってのはいいものじゃないか。仕事があるって事は役目はまだまだあるって事なんだから。


「よし、やるかやってやろうじゃねぇか!」


 一人、部屋で叫んで気合を入れた。

 それから掃除機をかけて床を濡れ雑巾で拭いていく。その後、乾拭きをして床は終了。


 しかし、俺の見立てではまだまだ仕事は残っている。

 パッと見では、この惨状のせいで床にばかり気が行きがちだ。しかし、実際は埃などが細かいところにあるものだ。

 試しに棚の縁を指でなぞってみると指に大量の埃が付着した。どうやら俺の考えは正しかったようだ。まだまだ俺の掃除しなくてはならないところがあるようだな。

 それから俺は棚なども丁寧に拭いて行った。細かい溝に溜まった埃や塵などは爪楊枝を使って出して雑巾で拭いていく。

 エアコンなんかは機械製品なので慎重に作業をし続けること約二時間。漸く部屋の隅々まで綺麗になった。


「ここまで綺麗にすると達成感がすごいな」


 これは自宅で培われた能力だ。いつも掃除は俺の仕事となっていたので、一時期掃除の研究をしていた事があった。そのお陰でここまで綺麗にすることが出来るようになった。

 そんな時、パンツが一枚だけベッドの下に隠れて発見されていないのが見えた。

 とりあえずあれが最後の敵の様だ。


「洗濯機にでも放り込んでくるか」


 そして洗濯室に向かおうとパンツを持って立ち上がった、その瞬間だった。入口に立った一人の女の子と目が合った。


 その人物は我らがお嬢様、古沢由良。この部屋の主である。

 その美しい目は今にも泣きそうなくらいうるうるしていて、どう見ても俺の事を凝視して泣きそうになっている。

 その様子から今の俺の状況を考えてみる。


 確か俺は掃除をしていて、最後の仕上げが終わったと思ったらベッドの下からパンツ様が顔を覗いていた。

 俺はそのパンツを手に取って洗濯室に向かおうとしている。ここで古沢と目が合った。

 特別おかしい事なんてないよな――待てよ?


 俺は今、洗濯室に向かおうとパンツを持って立ち尽くしている……あ、これは完全アウトな光景だ。状況だけ考えたら完全に事案発生。

 これはクビどころの話じゃなく、お巡りさんのお世話になってしまう可能性も――ないな。だって、この状況を知られたら確実にお巡りさんに差し出す前にメイドたちに惨殺されて捨てられる。

 こういう場合、どう切り抜けるのがいいんだ?


 すると、古沢はわなわなと震えだした。


「き……」

「き?」

「キャァァァァァァァァァっ!!」

「ちょ、誤解!」


 多分、恐らく、確実に俺の人生は幕を閉じた。

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