4. 揺蕩うドラッグ Dextromethorphan デキストロメトルファン
※警告※
レクリエーション用途を目的とした医薬品等の適応外使用および過剰摂取は本質的にリスクの高い行為であり、使用者に対し死をも含む不可逆的かつ重篤な障害をもたらす可能性があります。医薬品に関しては極力医師および専門家の指導・監督のもと用法用量を守った適切な使用に努めてください。自己判断による摂取は使用者自らの完全な責任の下、十分な情報収集を行い危険な状況を回避するあらゆる予防措置を講じたうえで行ってください。馴染みのない物質の使用は必ず低用量以下から始め、trip sitterを用意する等の対策が推奨されています。また、許可を経ない処方医薬品の譲渡および売買は法律で禁じられています。責任ある薬物使用を十分に心がけてください。
名 :Dextromethorphan
別称 :DXM、【削除済み】、デックス
作用分類 :解離性物質
化合物分類:Morphinan
危険度 :Monitum
●概要
Dextromethorphan(以下DXM)はMorphinanクラスの化合物であり、風邪薬や咳止め薬の成分としてOTC医薬品を含む多くの医薬品に含まれています。通常は臭化水素酸塩として使用されており、純粋なものは苦みを有する白色粉末です。その化学構造はOpioidに似ていますが、DXMはHeroinやCodeineのようなμ-opioid受容体への活性を示しません。DXMはNMDA受容体に作用する解離性物質であるため、規定用量以上の摂取では多幸感や鎮静、陶酔をもたらし、さらに高用量になると解離性幻覚や意識の切断に代表される解離性効果を示します。咳止め薬として広く用いられているCodeine phosphateとは異なり非麻薬性の物質ではありますが、規定用量以上の摂取で特異な精神活性を示しかつ合法的な入手が比較的容易であるため多くのユーザーによって乱用されています。
●薬理
DXMの薬理機序はまだ完全には判明していません。現在広く支持されているDXMの作用メカニズムはNMDA受容体の拮抗作用によるというものです。NMDA受容体は興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸受容体の一種です。DXMによってNMDA受容体が拮抗・遮断されると、中枢神経系内での情報伝達が阻害され脳の各領域間の通信が困難になり、結果解離的な感覚を使用者にもたらすとされています。また、各種研究によりDXMにはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用、ニコチン受容体拮抗など様々な薬理作用があることが分かっています。DXMは摂取後様々な物質へと代謝されますが、約90%はCytochrome P450 2D6(CYP2D6)によってDextrorphan(DOX)へと代謝されます。実はこのDOXはDXMよりもはるかに強いNMDA受容体拮抗作用を有しているため、DXM摂取により出現する解離性効果の強さは体内のDOX量に大きく依存しています。なのでそのような観点ではDXMはDOXのプロドラッグであるともいえます。DOXはこのほかにもDXM並みのノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有していますが、セロトニン再取り込み阻害作用はDXMよりも弱くなっているようです。
●投与量
・閾値線量 50mg~
・軽度 100mg~
・中度 250mg~
・重度 500mg~
・深度 700mg~
●摂取方法
オーラル
●効果時間
・知覚 30min~2h
・発症 30min~2h
・ピーク 2h~5h
・残効果 12h~24h。
・作用時間合計 8h~12h
空腹時、もしくは飲食物の摂取後2時間以上経過している状態を想定しています。飲食物の摂取からDXM使用までの間隔が短いと、一般的に効果が始まるまでの時間が長くなり体験の強度は減少します(※)。
(※)胃の中にものが入っている状態でDXMを使用することは避けるべきです。DXMは効果中に激しい吐き気を伴うことが多く、嘔吐と吐瀉物による窒息のリスクが非常に高まるおそれがあるためです。
●正の知覚的効果
・刺激 (軽用量)
・鎮静 (中用量~)
・咳抑制
・多幸感
・抗不安
・軽度の抗鬱
-DXMがセロトニン再取り込み阻害の効果を有することによります。
・解離性幻覚(中用量~)
-閉眼幻覚が主です。明るい場所での開眼幻覚はほぼ生じませんが暗いところでは見えるという報告もあります。詳細は下記を参照してください。
・残光(中用量~)
-摂取・体験の翌日(睡眠を一度挟む)に発生したという報告がよくあがっています。それは「世界が新しくなった」「頭がすっきりと冴えている」「生のすばらしさを感じる」といった感覚に形容され、幸福感、リラクゼーション、不安消失、モチベーション向上といった作用が報告されています。
●負の知覚的効果
・食欲抑制、消失
-摂取後24時間続くこともあります。
・吐き気、嘔吐
-知覚~発症期に起こりやすいです。その期間を超える、もしくは嘔吐することによって消失することがあります。吐き気出現の有無やその強弱には個人差があるようです。
・不安、混乱
-Bad tripの状態です。
・頭の重さ、頭痛
-効果終了後に顕著です。
・体のだるさ
-効果終了後に顕著です。
・めまい
・聴覚異常(中用量~)
-幻聴(稀)や聴覚の歪みを感じます。
・かゆみ
-一部の使用者は全身の激しいかゆみの発生を報告しています。DXMはHistamineを放出させる作用を持つことが原因ですが、多くの使用者はかゆみをほぼ感じないか感じても軽度です。
●解離効果(主なもの)
・バランス感覚異常、運動機能異常(中用量~)
-空間が回転しているような感覚を覚えます。そこに視覚的な効果も合わさり平常時のような運動が困難になります。また、体が思うように動かせなくなりキーボードやスマートフォンの操作、水を飲むといった簡単な行為も難しくなります。この作用のためにDXM作用中に歩いたりましてや車を運転するといった行動をすることは、大きな怪我や事故につながる危険性があります。DXM作用中の活動は最小限にとどめるべきです。
・歩行困難
-ロボウォーキングと呼ばれる状態を呈します。
・感覚消失、鈍化(中用量~)
・無重力感(中用量~)
-宇宙に浮かんでいる、もしくは深海に沈んでいるような感覚を覚えます。
・体の軽さの知覚(軽用量~)
-体、特に四肢が非常に軽く動きすぎてしまう感覚を知覚します。
・離人(中用量~)
-「自分」とは誰かがわからなくなることがあります。見失います。
・時間感覚の変化(中用量~)
-一般的にDXM使用中は時間が非常に長く感じられることが多いようです。実際には数分しか経っていないのに数時間以上の体験をしているように感じることもあります。
・音楽鑑賞の変化
-平常時と音楽の聞こえ方が変化することが多く報告されています。特に低音域の音楽の感じ方に差が生じるようです。また、適切な音楽(自分の特にお気に入りやヒーリング用BGM等)の使用はBad tripを防ぎ陶酔感と多幸感を飛躍的に高め、DXM体験を大幅に強化します。しかし、中用量以上の使用では聴覚異常が出現しやすく、ピーク時は音楽の音が小さく遠くで鳴っているよう感じることがあります。
・視覚異常
-目の焦点が合わない、世界が揺れているように見えるなどの視覚異常が報告されています。
・肉体的離断感覚(軽用量~)
-体と精神が離れている、自分の体が機械であるように感じる、自分の体の所有権が自分ではないと感じるなどの感覚を覚えます。が、DXMの肉体的離断効果はketamine等他の解離性物質より弱いとされています。
・視覚的離断感覚(軽用量~)
-自分の視界と認識が離断しているように感じます。自分の視界がまるでスクリーンに投影されている映画のように感じる、目で見える世界が遠くにあるように感じる、他人の目で世界を見ているように感じる等が報告されています。
・hole
-DXMによる離断は比較的量依存であり、外部の感覚をほとんど認識できない状態まで離断が進むと最終的にはholeと呼ばれる空間に落ちます。そこで体験できるのはまさに自分自身であり、自分自身を内側から見つめることができ、自分自身を感じ、自分自身を知り、そして自分自身を見つけることができる世界とされています。この状態では外部の状況にほとんど対応できなくなるためtrip sitterの存在が不可欠です。
●幻覚・幻聴作用
中用量以上の摂取で解離性幻覚の出現がよく報告されています。出現するのは主に閉眼幻覚であり開眼幻覚は稀です。幻覚の出現は全体験のうちのピーク期間中が主であり、約1h~3h続くとされています。DXMによってもたらされる幻覚は通常明るく、また複雑です。効果が始まるとまず使用者は宇宙や深海、異世界と形容される暗い空間に揺蕩っているように感じます。その後、暗い空間に次々と鮮やかな幾何学模様や複雑なフラクタル様図形が浮かび上がるようなものから、故人と会う、空を飛ぶ、見たいビジョンを再生できる、自分自身が見えるというような様々な幻覚を体験できます。その体験は「異世界からこっちの世界を見ている」と形容する使用者が多く、夢のように思えるが奇妙な現実感があるとされています。また、鐘の音が響く、知人が未知の言語で話しかけてくる、幻覚ビジョンと会話ができる、かけている音楽の聞こえ方が変化するといった幻聴・聴覚異常も報告されています。ただし、得られる体験には大きな個人差があることに注意してください。
●Plateaus
DXMの経口摂取は、摂取量依存で得られる効果が変化することが知られています。一般的に低用量では多幸感や鎮静等の「軽く酔っているような」感覚がメインです。一方中用量以上では解離作用が強くなり「解離効果」がメインの効果になります。DXMユーザーのコミュニティではこのような量依存のDXM効果の違いを5つに分類し、Plateausと呼ばれる階層分けを行っています。
現在DXMのPlateausはそれぞれ以下のように定義されています。
【First Plateau-第一プラトー-】
目安摂取量 約100mg (1.5~2.5mg/kg)
・このプラトーでの体験はあまり強くありません。多くのユーザーは刺激、軽度の多幸感、音楽鑑賞の心地よさを報告します。ほろ酔いのような感覚と形容するユーザーが多いです。
【Second Plateau-第二プラトー-】
目安摂取量 約200mg (2.5~7.5mg/kg)
・解離性幻覚を目的としないならば、このプラトーは最もレクリエーションに適していると感じるユーザーが多いです。このプラトーでは刺激作用が弱まり鎮静の作用が強くなります。また第一プラトーよりも多幸感、覚醒、音楽鑑賞の心地よさが強化されて感じられることが多いです。また、軽度の視覚的離断を感じるユーザーもいます。解離の程度が比較的低いために解離性幻覚はほぼ出現しません。また、このプラトーまでは効果が発現している最中であってもある程度通常の判断・認識・運動が可能であることが多いです。
【Third Plateau-第三プラトー-】
目安摂取量 約400mg (7.5~15mg/kg)
・第一および第二プラトーとは大きく異なる作用が発現します。離断、鎮静、吐き気、陶酔といった作用が第二プラトーよりはるかに強力になります。また解離効果も強力になり、運動機能異常、視覚異常、聴覚異常、離人、そして閉眼幻覚が表れ始めます。このプラトーでの経験は非常に内省的かつ深慮なものであり、個人を大きく成長させてくれるものであると多くのユーザーが報告しています。しかし、この物質に不慣れなものがいきなりこのプラトー以上に到達すると大きな混乱と不安を感じ、そこからBad tripへと繋がることがあります。第三プラトー用量以上の用量を使用する場合はセッティングをきちんと行い、可能ならばtrip sitterや落とし薬の用意をしてください。
【Fourth Plateau-第四プラトー-】
目安摂取量 約800mg (15~20mg/kg)
・このプラトーでは第三プラトーの効果がすべて増強され、それに加えて外部幻覚や完全な離断、意識消失が生じる可能性があります。第四プラトーへ到達するためには多量のDXMの摂取が必要であり非常に危険です。リスクが高いためこの用量でのDXM摂取は推奨されません。第四プラトーを目指す場合は必ずセッティングをきちんと行い、かつ経験豊富なtrip sitterのもと行ってください。
【Plateau Σ-プラトーシグマ-】
目安摂取量 〈削除済み〉
・このプラトー用量では精神と肉体は完全に離断します。この用量でのDXMの効果はしばしば精神異常を生じ、高いレベルの不安、せん妄、吐き気、意識消失を高確率でもたらす非常に不快で予測不能なものであると報告されています。プラトーシグマへ到達するためには、一度に多量摂取するのではなくまず第二か第三プラトー用量のDXMを摂取、その効果がピークを迎えたタイミングで第四プラトー用量を追加摂取するという方法がよくとられています。セロトニン症候群等の致死的な状態になる可能性が非常に高いため、プラトーシグマへの到達は強く非推奨です。
●Bad trip
初めての使用、セッティング不足、気分不調、もしくはその他偶発的な要因よりBad tripの状態へ陥ることがあります。DXMによってもたらされるBad tripは激しく、強烈な不安、混乱、死の予感、大量の虫が這いずっている幻覚、近くにいる殺人鬼が自分を狙っているというパラノイア等の精神的トラウマ体験や、体が炎に焼かれているような感覚、痙攣、振戦、暴れるといった肉体的トラウマ体験が報告されています。DXMをレクリエーション使用する際は必ずAnchorsを用意し、可能ならtrip sitterやBenzodiazepines等落とし薬の用意をしてください。Bad tripを完全に避ける方法はないので、万が一に備え被害を軽減する準備を行うことが重要です。
●毒性
レクリエーションを目的とした量でDXMを長期的に使用した際の影響についてはほとんど研究されていません。多くの使用者はDXMを単独(他の薬剤と併用しない)かつ低~中用量で摂取する限り健康への悪影響はないと確信していますが、完全に信頼できるものではありません。特に青年期での慢性的な摂取は学習能力が損なわれる可能性があるため控えるべきです。DXMの致死量は50~500 mg/kgと報告されており、これを超える量の使用は致死的な状態を招く可能性があり非常に危険です。
●依存性
DXMは中程度の依存性があり長期間の慢性的な摂取は精神的および肉体的依存を引き起こします。また、高用量以上の慢性的な摂取は不可逆的な精神状態の悪化、心理的問題を引き起こす可能性があります。DXMの高頻度の使用は避けるべきです。
●耐性
DXMの耐性は長期かつ高頻度の使用で生じます。耐性がついてしまうとこれまでのようなポジティブ体験をするために必要な摂取量が増加していきます。さらなる摂取を行わない場合、約1~2週間で耐性はベースラインに戻るとされています。DXMはほぼすべての解離性物質と交差耐性を構築します。そのためDXM使用中は他の解離性物質の効果は下がりますし逆もしかりです。また、一部のハードユーザーはDXMの高用量かつ高頻度の使用によって不可逆的で永続的な耐性の構築を報告しており、そうなるとDXMによるポジティブでユニークな効果を体験することが生涯にわたって不可能になると主張しています。その真偽や原因は不明ですが、DXMの高用量かつ高頻度の使用は神経毒性を生じる可能性があることを示唆しています。
●効果終了後、離脱症状
効果終了後にめまいや吐き気が生じることがよく報告されています。また、泥酔しているような感覚を覚え、効果終了後もしばらくまともな活動が困難になったという報告もあります。DXMを慢性的に摂取したのちに中断すると離脱症状が生じます。中用量程度であっても長期間の慢性的な摂取後に使用を中断すると無気力、フラッシュバック、便秘、不眠、悪夢、記憶障害、学習障害、注意散漫、性欲減退などが生じると報告されています。
●禁忌
・Alcohol、Gabapentinoid、Benzodiazepine等GABA受容体作動物質
-これらの物質は運動障害、鎮静の作用を増強するため予期しない意識消失をもたらす危険性があります。そのため、意識消失中に吐瀉物が気管につまり死亡するリスクを増大させます。
・Ephedrine、Caffeine等興奮刺激物質
-これらの物質は心拍数増加の作用を増強し、パニック発作等深刻な心臓の問題を引き起こす可能性があります。
・Opioid
-中用量以上の併用では呼吸抑制が増強され危険です。また、肝臓毒性を増強する危険性もあります。
・MAOI作用物質
-セロトニン症候群のリスクが高まり非常に危険です。
・SSRI作用物質
-セロトニン症候群のリスクが高まり非常に危険です。
●その他特筆事項
・グレープフルーツジュースによるtrip強化
DXMトリップの前日と直前にグレープフルーツジュースを摂取することでDXMの効果を非常に増強できることが報告されています。これはグレープフルーツジュース中に含まれるFuranocoumarin類が薬物代謝酵素の一つであるCytochrome P450 3A4 (CYP3A4)の活性を強力に阻害することが原因とされています。DXMは摂取後その約90%がCYP2D6によってDXMより強力な解離作用を有するDOXへ、残りはCYP3A4によって活性をほとんど持たない3-hydroxy-morphinanへと代謝されます。グレープフルーツジュースを摂取することでCYP3A4を阻害すると、活性を持たない3-hydroxy-morphinanへ代謝されるDXM量が減るため血中のDOX量が増加します。それによってDOXの分解による効果減衰を防ぐことができ、tripの大幅な強化が可能になると考えられています。
・CYP2D6阻害作用を有する物質との組み合わせはtripに影響をもたらす可能性があります。
Diphenhydramineや三員環系抗うつ剤等の強力なCYP2D6阻害作用を有する物質は、原理的にはDXMからDOXへの代謝を妨げるためにDXM体験(特に解離性効果)においてよくない相互作用を示す可能性があります。
・Morphine耐性の予防、逆転効果
DXMはMorphineの耐性構築を予防、もしくは解除する作用を示すことが報告されています。また、DXMのようなNMDA受容体拮抗薬はOpioidの作用を増強することが報告されています。
・少量のBenzodiazepineは落とし薬として利用できます。
少量のBenzodiazepineはDXMの幻覚やBad tripを終わらせる効果があります。ただし量が多すぎると意識消失のリスクが高まります。
・holeへ挑戦する場合
確実にholeへ到達する方法はありません。またholeへ到達するためには通常DXMを多量に摂取する必要があるため、死の可能性もある非常に危険な挑戦になります。体調とセッティングを万全にし、必ずDXMについての深い知識と経験を有するtrip sitterの存在下で行ってください。
・DXM体験には大きな個人差があります。
DXMコミュニティーでは1/3の法則と呼ばれるものが提唱されています。これは使用者の1/3はDXMで素晴らしい体験を経験し、1/3は中程度の効果を経験し、1/3は全く効果を感じない、不快な体験しかしない、というものです。なのでDXMのレクリエーション使用は低用量から始め、自分の体に合わないと感じたら無理せずあきらめることが必要です。
[効果レビュー]
①中程度使用量
報告日時 :20〇〇年α月β日
報告者 :■ ■■博士
被験者 :■■ ■■■ [Cクラス被験者] 管理No.C-01533
実験内容
被験者にDXMを摂取させたのち体験の経時変化を文章の形で記録させる。なお、本実験の被験者であるC-01533はこれまで幻覚剤や解離性物質のレクリエーション用量での摂取経験はありません。
実験環境・準備
・実験は被験者の自室で行いました。
・実験は被験者一人で行いました。
・被験者は記録用のパソコンを前に、座椅子に座った状態で実験を開始しました。
・BGMは[削除済み]を用意しました。[削除済み]は被験者自らが希望し選定しました。
・カーテンを閉めた状態で行いました。
・室温は適温を保ちました。
・嘔吐対策としてごみ箱にビニール袋をセットしたものを用意しました。
・アイマスクの代用、および汎用用途のため黒い厚手のタオルを用意しました。
・手が届く範囲に飲料水 (ミネラルウォーター)が入ったペットボトルを用意しました。
・スマートフォンはマナーモードに設定の上すぐに手に取れる場所に置きました。
・被験者は前日の夕食から飲料物以外一切の摂取を断っていました。
実験結果
以下、被験者C-01533の体験報告文章の抜粋
検証日時 20〇〇年δ月γ日
17:20 DXM15mg錠剤 20t 計300mgを水で摂取 前日から食事を断っているため胃の中は完全に空
一気に飲んだらいくつかの錠剤がのどに張り付き焼けるように痛い。分けて入れるべきだった。追加で水を何杯か飲む
17:40 なんとなく2錠追加 計330mg。現在胃の軽い違和感以外特に変化なし。
17:45 急に頭がぼーっとしてきた。吐き気も感じる。
17:50 吐き気に耐えられず嘔吐。おそらく追加の2錠は無駄になった。吐いたら少し楽になった。手足が異様に冷たい。
18:00 体と脳が離れていくように感じる。動きがロボットのようになった。記録のためのキーボードが打ちづらい。
18:03 再び吐き気。一回目より酷く激しい。耐えきれず大量に嘔吐。黄緑色味がかったものが出た。
18:10 吐しゃ物を捨てにトイレに行く。空間がぐにゃぐにゃしている。奥行きが変動している。感覚がつかめない。壁に手を付けないとまともに歩けない。
18:18 キーボードがスムーズに打てない。いや、打てるがからだがしびれているかのよう・脳の指示と体の動きが同期していない
18:19 頭がぐわんぐわんする 二回目の嘔吐から吐き気ほぼない。世界が二重に見えてきた。お気に入りBGMを流しアイマスクをつけ座椅子にもたれかかう
からだばらばら 宇宙 万華鏡 走馬灯 すごい体験
からだぐわんぐわん 置きながら西夢を見ている まだ三時間
焦点が合わない 脳が宇宙に引っ張られている 空間認識ができない(安定しない)音楽がどこかわからない 脳から流れている 座ると宇宙 仰向けになると沈んで深海にいける
死についていろんな人が話をしてくれた
20:45 こっちの世界に戻ってきた感覚 もうあの空間にビジョンは映らない
21:00 頭のぐわんぐわんが取れないがもうピークは過ぎているとおもう
泥酔しているような感覚、キーボードも今は特に問題なく打てる。乖離は落ち着いてきたようだ。
21:20 足元がふらふら ロボットのよう。壁に手をついてトイレへ(小)
視覚的な異常(二重に見えるなど)はほぼない 何日も徹夜した後のような頭がずーんとしてふらふらするのはつついている。食欲は全くない
21:50 手足がすごく軽い
23:20 まだぼーっとする 手足がすごく軽い
01:00 めまいのような感覚がまだ続いているが意識自体は極めて明瞭。
座ったまま体をぐらぐら動かし続けるしかできない。
3:50 まだ頭が重いが身体的異常は落ち着いてきた。睡眠のためベッドへ移動する。
4:00 睡眠のために横になり目を閉じるとあの世界へ行けた。目の前にペルシャ絨毯のような複雑な模様が広がっていきそれが緑色に光っている。しばらく続いたのち模様は消えこちらの世界に戻ってきた。以降あの世界へは行けなかった。
13:00 起床。頭がとてもすっきりしている。太陽の光は温かく世界がクリアに感じる。素晴らしい体験だったという充実感に満たされている。以降、非常にエネルギッシュに活動できた。
追記
■ ■■博士によるC-01533へのインタビュー記録が存在します。現在クラスBセキュリティ指定されているため、閲覧希望者は■ ■■博士へ連絡してください。
②軽程度使用量
報告日時 :20〇〇年ε月μ日
報告者 :■ ■■博士
被験者 :■ ■■■ [Cクラス被験者] 管理No.C-01892
実験内容
被験者にDXMを摂取させたのち体験の経時変化を文章の形で記録させる。なお、本実験の被験者であるC-01892は中程度レクリエーション用量でのDXM摂取経験があります。
実験環境・準備
実験①と同様です。
実験結果
以下、被験者C-01892の体験報告文章の抜粋
検証日時 20〇〇年η月λ日
19:30 夕ごはん 以降飲食なし
2:25 DXM15mg錠剤 10t 計150mg 水
2:35 トイレ(小) 特に自覚症状なし
2:47 胃に軽い違和感。手先が冷たい。
2:55 あくびが出る。あくびをすると胃に違和感
2:58 明らかにあくびが多い
3:00 あくびが止まらない。急に眠気のような感覚。
3:05 頭がぼーっとしてきた。呼吸を意識して深呼吸気味にしたらあくび発作がましになった。呼吸抑制による酸欠の影響か。
3:06 陶酔が感じる。手先が冷たい。
3:10 陶酔が強くなってきた。吐き気等はほぼ無い。
3:11 そういえばあくびが消えた。視界にフレーム効果が出てきた。
3:14 深呼吸を意識していないとあくびが出る。やはり呼吸抑制からの酸欠が原因の可能性が高そうだ。
3:15 体の軽さを感じる
3:20 頭を後ろに倒すと陶酔感が強くなる。なぜ?
3:23 胃に不快感がある。苦みが胃から口へ登ろうとしているような感覚だ。水を一口飲む。なんとなく体が水を飲むのを拒否しているように感じた。
3:25 BGMをかける。以下つけっぱなし。
3:28 タオルを目にかけるとあの世界に行けた。泡の液面のような模様が緑に光っていた。
3:46 時間の進みが遅い。指がしびれているような感覚でキーボードが押しづらいが不可能なほどではない。部屋を暗くしてみる。
(注)被験者は部屋の電気を消しました。
3:59 手足が床にめり込んでいる、沈んでいるかのような感覚だ。認知感覚はまだ正常。あおむけになってみる。
4:18 あの世界に幾何学的、非ユークリッド幾何学的な図形、模様が浮かび上がる。意識は極めて明瞭。横になっても手足が床に沈んでいる感覚。体が軽い。座る。
4:26 非常にリラックスしている。中用量以上ではあの世界にひきづりこまれるような感覚だったが、今回の用量ではあの世界を見ようとする(ピントを合わせる)とあの世界へ行ける。ただ、模様以外のビジョンは薄い。
4:37 時間の進みが遅い。陶酔が非常に強い。
4:39 BGMを変えてみる。
4:48 心地よい。ずっとここにいたいと思わず思ってしまう程だ。翼が生えたでっかいやかんのあのビジョンは何だったんだ?あの世界にピントを合わせるのは脳と体に負担がかかるような気がする。
4:57 陶酔と幸福感がメイン。
5:00 至高。横になる
5:52 目を閉じると勝手に空想、妄想がはじまる。
8:5 思わず寝てしまったようだ。ベットへ移動する。
8:30 吸い込まれるかのように睡眠の世界へいざなわれた。
15:30 途中何度か覚醒するも起床 まだ見ようと思えば暗闇に緑色でぐにゃぐにゃしたものが見える、が、数秒で消える。
16:30 頭がもやもやする。体もまだロボウォーキング状態が抜けきっていない。
18:43 最後に食事をしてからもう24時間たつが一向におなかがすかない。さすがにまずいのでご飯を食べる。
(注)被験者は食事のため部屋を出ました。
18:50 部屋の外の世界が妙に現実味がない。まるですごくリアルなFPSゲームをやっているかのように感じる。まだ視覚的離断が抜けきっていないのだろう。このような世界は初めてであり新鮮である。
19:20 24時間ぶりの食事はまずまずおいしかった。
所感
低用量では閉眼幻覚は生じないと考えていたがC-01892は特定パターンで鳴動している幾何学的・非ユークリッド的模様の出現を報告している。だがそれ以上のビジョンは見えなかったようだ。やはり本物質がもたらす作用には個人差が大きいようだ。
■ ■■博士
●入手方法
・DXMは市販風邪薬、咳止め薬の成分として入手可能です。
-OTC医薬品にはDXM以外にAcetaminophen、Caffeine等の成分が入っていることがほとんどです。OTC医薬品の大量摂取はそれらの好ましくない成分も大量摂取することになるため危険です。また徐放薬は効果の発現まで非常に時間がかかるため摂取量に注意が必要です。これらのことをよく頭に入れて使用するOTC医薬品を選定してください。
・DXM含有の医薬品は医師の処方によって入手可能です。
-咳止め薬として処方されます。ただしCodeine誘導体等DXM以外の成分の医薬品が処方される可能性があります。
・DXM含有の医薬品は個人使用に限り海外からの個人輸入による入手が可能です。
-個人輸入した医薬品は完全な自己責任であることを認識したうえで使用してください。
●法規制
〇日本
・DXMを含む医薬品には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が適用されます。日本国内においてDXMの個人使用、所持は違法ではありません。が、処方薬の無許可での譲渡・売買は違法です。DXM含有医薬品はOTC医薬品として薬局やドラックストア等で処方箋なしでの購入が可能です。
〇日本以外
・DXMはほとんどの国と地域で薬局、もしくは医師の処方箋によって合法的に入手と所持、使用が可能です。ただし、ロシアやフランスなどの一部の国では規制物質であり、許可なく所持使用した場合罰せられる可能性があります。