第8話 何処から何を聞こう?
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年1月27日)
「エイプリルフールだから?...」
恐らくは正体の誰何だろう。
正体を隠したいって程ではないけど、明かすつもりもないんだよなぁ...
だから、誤魔化してみる。
「いえ、本気で思っていますよ‼」
ちょっと食い気味に返答してくる。
まぁ、昨日の夜の事も話したかったし、ひょっとしたらどれかの趣味が合って会話が弾むかもしれないし。
まっ、いっか...
「それじゃ、バイトが終わったらここで話でもする?」
「ここではちょっと...」
...やっぱりね...
「それじゃ、他の喫茶店にでも入りますか?
珈琲専門店だけど何を飲んでも美味しいと思えるよ。
どうかな?」
「それじゃ、そこでお願いします」
...いつもは演技してたのかな?
...それとも今演技してる?
まぁ、話せば分かるか...
丁度お客さんが来て、パタパタと案内をしに行った...
(そう言えば...彼女の名前何だったっけ?)
『それは意外と可愛そうですわよ...』
ティアさんから突っ込みが入った‼
初めてじゃないか?俺がツッコミ役の筈なのに...
そこ突っ込まないでよ...
どうせ相手にされないんだから、適当に聞き流してたんだよ...
まさか、こんな事になろうとは...
確か名字と合わせて何かを連想させる名前ではあった...
気がする...
そこからは、いつも通り?
何かの話をする訳でもなくあっという間にバイトの時間が終わる。
バックとホール係とでは話すタイミングも無いしね。
能力の練習は見つかった時からやってないよ?
落としそうになった皿を空中で止めたのはあったけど、素早く持ち直したし。
練習じゃないよね?ね?
『練習ではないですけど、その時こちらを見てましたわね』
二度目のツッコミありがとうございます...
コレカラハキヲツケマス...
更衣室でチャッと着替えて外に出る。
勿論、能力を使ってます。それ位は良いでしょ?
他に誰も居ない更衣室だから...
『聖さんが普通に着替える様子も見てみたいものですわね』
...それはツッコミ?
...見られるの恥ずかしいじゃないですか。
ティアさんにクスクスと笑われる。
相変わらず右耳がくすぐったい。
因みに今日の俺の服装は黒のジーンズに上が白生地のバックプリントTシャツ。
Tシャツの背には、黒と金色で天使の羽根がお洒落に描かれている。
更にその上から白よりのクリーム色のジャケットを羽織っている。
バックプリントは少し目立つから、ジャケットを着てるのだ。
少し目立つけど、そういう柄が好きなんだから仕方ない。
ジャケット羽織ってるから良いじゃないか、それ位。
『聖さんらしくて、素敵だと思いますわ』
ありがとう、誰にも言われなかった言葉に感動しています...
「お待たせしましたっ‼」
急いで来たのか、少々息が荒くなってる。
そんなに慌てなくても逃げませんよ?
「んじゃ、行きますか...」
左手側に南風原さんが位置取り歩き出す。
(良かった。
ティアさんが右肩に乗ってるから右に顔を向けると大変な事になるんだよね。
ところで女子の歩調ってどれ位なんだろう?
これじゃ速すぎるかな?)
『もう少し遅くした方が親切ですわね。
因みに大変な事があっても大丈夫ですわ』
ステルスモードのティアさんから指示が...
了解しました...他はスルーするよ?
ちょっと速度を遅くしつつ、会話を試みる。
「そう言えば南風原さん...」
「朱でお願いします...」
ちょっと俯き加減で顔が赤くなってる。
もう一つの【存在】は目を閉じてる。
意識は有るんだろうけど、非常時以外は力を温存してるのかな?
うん、自己紹介の時を思い出してきた...
右肩に乗ってるティアさんが耳の耳朶を強く握ってる気がする...何故?
そうだった。
聞いた時、特徴的な名前だと思ったんだ。
南に朱で連想されるのは...
【炎帝、朱雀】...
霊獣だ...
それが後に居るもう一つの【存在】の正体。
炎を身に纏うかの様な赤色系の体毛に、鋭い嘴と爪、尾羽は黄色と赤色が入り混じり幾重にも別れてやはり炎を連想させる。
睨まれたら逃げられないと思わせる眼圧も凄まじい。
今は眼を閉じてるけどね。
「朱さんの家はこの辺りなの?」
「はい、アパートを借りて住んでます」
「この辺りは大学も近くて学生街だからナンパもよくされるんじゃない?」
「いえいえ、全然もてませんよ。
彼氏も居ませんから」
この顔で全然もてないとかあり得ないんですけど...
いや、朱雀が邪魔してるのかも?
召喚とかして主従関係となっていたら有り得そうだ。
「理想が高すぎるとか?」
ストレートには聞けないなぁ...
「まさか、自分からは声なんて掛けれませんし...
仕事が有りますから」
「仕事?学生じゃないの?」
「仕事の一環で来週から大学には通う予定となっています。
聖さんが、先輩です」
「仕事の一環で大学生って余程特殊な仕事なんだねぇ。
え?俺、先輩?」
「同じ学校に合格しまして」
「で、こっちに引っ越して独り暮らしを始めた訳だ」
「高校もこの辺りにあって一応地元ですが、独り立ちもしなくてはいけませんので」
「俺とそんなに年変わらないのに偉いねぇ」
「いえ、先輩の方が色々と偉いと思います」
...ん?少し可怪しいぞ?
そもそも俺はバイト先で大学名を皆に話していない...
あのレストランも世話になった婦警さんに紹介してもらって去年の夏から始めた。
その時の店への紹介も俺は事情を説明していない。
大学名くらいか...
南風原さんは、確か冬からか?
俺の事情を何一つ知っている筈がない。
店長が府警さんから聞いて他人に話せば別だが、個人情報を漏らす筈もない...
そこまで考えると目的の珈琲専門店に到着した。
まっ、美味しいコーヒーでも飲みながら、話しますか...
「いらっしゃいませ、あら?今日は女の子とデートですか?」
ここのホールの制服は珈琲専門店なのにメイド服。
質が良さそうな黒生地で仕立ててあり、フリルの付いた白いエプロン、カチューシャを着けている。
小柄な身長で、肌は色白。
黒く艷やかで腰まである長い髪を首元辺りで一回縛っている。
お人形さんみたいだ。
怜悧な印象を受ける顔立ちだが、右目の目尻に泣きボクロが有り、美人の印象を上乗せしてる感じがする。
胸は...何も言うまい。スレンダー美人さんだ。
そして、背後には朱雀とは別の【存在】が...
あ〜...この人もだったんだ...
取り敢えず気付かない振りをしつつ、バイト帰りで話でもしようと意気投合しただけですよ、と返す。
朱さんと何やら目で合図した様な気もする...
気を利かしてか、いつもより奥の四人掛けの席を案内してくれる。
普通二人掛けの席を用意する筈なんだけど...
美味しいコーヒーの店なんだけど、お客がほぼ居ないから良いのか。不思議だ。
偶然かもしれないけど、いつもはもう少し流行ってるのに...
そう言えば、ここも最初は婦警さんに連れられて来たな...
ん?今、何か違和感を感じた...
『この店全体に人払いの結界が張られましたわね』
結界を張ったのはこの二人...
おいおい、お店で客払いしちゃ駄目でしょ...
先に来ていたお客さん達が帰って行く...お〜い‼...
レジを売っているのは先程の店員さん。
会計をし終わってお客さんが出て行った瞬間、朱雀と店員さん【存在】が濃くなった...
『来ますわね』
やっぱり?しかもあれは?
スタスタと店員さんがやって来る。
いつもと雰囲気が違う...身構えとこう。
「自己紹介させて頂きます。
北河原 玄と申します」
玄...ね、しかも北。
間違いないよな?別の【存在】は...
【玄帝、玄武】...
霊獣シリーズですか...
自己紹介が終わるや否や、朱さんは立ち上がり玄さんの横に並び二人して片膝を床について臣下の礼をとる。
おおぅっ‼びっくりするから、止めてよ...
何故にそうなる?...
「取り敢えず話を聞きたいから、そんな格好止めてよ。
落ち着かないよ。椅子に座ろうよ。
それと、コーヒーも欲しいかな?あっ、三人分ね。
お金は俺が払うから」
「お金を取るなど滅相もございません‼」
...北河原さんの声が大きい。
いや、ここコーヒーを売ってる店だから。
それが普通だから...
「俺は客なんだし、それが普通だから。
それよりエイプリルフールでからかってるとかは無いよね?」
「その様な無礼は致しません‼」
...だから、声が大きいよ...
真面目なんだな...
「取り敢えずコーヒーをお願い。
ビックリして喉も乾いてるからさ」
「只今お持ちします‼」
走って店の奥に行く...
コーヒーを煎れる時間が有るからそんなに早くは無理でしょ...
天然アピールなのか?
奥に消えてすぐ、ミルの音がする。
ほら、そこからでしょ?なんて思っていると朱さんがまだ臣下の礼を続けているのに気付く。
「ほら、朱さんも、立って立って。話しづらいよ?」
「はいっ‼」ビシッと直立不動だ...
確かに立ってとは言ったけどねぇ...
どこまでどうなってるの?...
「いや、座ろ?」
「ではお言葉に甘えまして‼」
俺の横の席の背もたれをガッと掴んで、引こうとする。
「ここはやっぱり、俺の対面じゃないかな?」
「で、ございましたか‼」
もう、時代劇の武士の言葉になってるよ...
やっと対面に座った朱さんに言葉遣いを戻す様にお願いすると...
「よろしいのでしょうか?」
「よろしいんです‼」
...既に昨日の夜以上に疲れるよ...
「まっ、取り敢えずはコーヒーを持ってきて貰える迄、雑談でもしよっか?」
「とりま、ですね?」
「そう、とりまです」
...何このやり取り?
って言ってると、三人分のコーヒーを北河原さんが持ってくる。
あれ?いつもより早いぞ?
「我が水を操る力にて、早々に作らせて頂きました」
...もうオープンにしちゃいますかいっ‼
そりゃ人払いするよね‼
「んじゃ、座って座って」
俺の横の背もたれをガッと掴む...
この人達思考回路は同じかいっ‼
「どうして、そこに?」
「最高の誉れに御座いますれば...」
...ここで妥協はあらゆる意味で駄目だな...
「話しやすい様に朱さんの隣に座ろ。
で、その言葉遣いも禁止ね。普段通り喋って」
「承りました」...
残念な事に接客ではよく使う言葉だな...
二人が揃った所でコーヒーを飲む。
えっ?いつもより格段に美味しい...
「このコーヒー、凄く美味しいよ」
「未熟ではありますが、私の魔法で作らせて頂きました。」
煎れてくれた玄さんが答えてくれる...
なるほど、魔法ね...これは後二人何処かで登場するね。
誰かの目星は付いた...かな?
「はてさて...何処から何を聞こう?」




