第52話 兎にも角にも
いつもお読み下さりありがとうございます。
今回は戦闘シーンも程々ですのでご安心下さい。
それはそうと、オリンピック、どうなっちゃうんでしょうね?
振り回される感満載の選手の方々が可哀想に思えます。
「じゃあ皆、ダイブね‼」
狙い通りに門の上空100m程に転移する。
風龍に乗ったお子ちゃまアマゾネス達は大喜び。
子どもの方が高い所は平気なんだな...
「颯姫‼風で結界張って‼」
ちょっとした熱気が届くのとほぼ同時に張られる風の結界。
『おぉ、息ピッタシやな‼
後少し遅れとったら、あのドアホウらの熱でヤラレとったで‼』
眼下はなかなかに地獄絵図となっていた。
カテロアは無事だが、門を出た辺りから一部の森が焼かれ、地面がマグマチックになっている。
...あの二人が本気出したらそうなるわな。
その周りは森が延焼しない様に氷姫と涼姫が焼けた森を囲む様に結界を張っている。
熱波に遅れて蒸気にも襲われた。
皆、どんだけ全力なんだ?
神気の混じった熱波と蒸気に包まれて、敵の確認がしにくい。
あのマグマの中心に居たんだろうけど、この状態で生きていられないだろう...
来て早々に終わった?
『サトシ⁉気を緩めちゃ駄目だヨ‼』
『あのウルサイ風龍が居るのは何故じゃ?』
『あら?賢様の方でも何か有ったのかしら?』
『風龍だけじゃなく、神も増えた様ですね』
『またサトシに良い所取られちゃうじゃない‼』
『『『『
お前が言うな(ナ)‼
』』』』
かなり後方で待機してる?アマゾネス達を守ってる?聖姫に皆が突っ込む。
『だって、光属性じゃどうしようもないじゃない‼』
話の流れからするとまだ終わってないらしい...
見るとマグマ化した土?がウゾウゾ中心に集まっていく。
小山が出来たかと思うと、そこから人型になっていく。
無骨な人形...マグマで?マグマのゴーレム⁉
『いやぁ、元は複数の岩石のゴーレムじゃったんじゃが、溶かしてしまえば終わるじゃろうと、炎を当てておったんじゃが...
それだけでは終わってくれんらしい。
これで何回目じゃ?』
『五回目ですね』
『しかも、全部がくっついちゃっテ‼巨大化しちゃっテ‼
合体するなんて反則だよネ‼』
「俺の浅い知識だとゴーレムだったらエメスをメスに変えるとかどうとかすれば、死ぬんじゃ?」
『サトシ、教科書好きなのね...私はそんなサトシが好きよ?
人族が作ったのなら、そういう文字とか使われてる場合が多いけど、残念な事にこれは悪魔が魔法で造ってるから無いのよ、文字が』
色々と聖姫は教えてくれるのだが、やっぱり何処かで脱線する。性分なんだろうか?
「じゃあ、対処法は⁉」
『魔法の効果を超える破壊...かしら?』
『飛び散ったマグマは細かいのも本体に戻っていきますから、相当強い魔法ですね』
『よっしゃ‼悪魔よ‼バビューンって行っとこか‼』
『相手がマグマ状だと斬っても無意味かと愚考します』
『ん〜...ここで、ゴーゴン三姉妹に振るのは酷やから、ここはサトシはんやなぁ』
見た所、20m位の高さのゴーレムになっちゃってるんすけど...
でもまぁ、くっついて一体になった敵ならやりやすい方だし、的が大きくなったと思えば良いか...
切り刻む...じゃ駄目なんだろうな。
『んじゃ、取り敢えずは動かなくしてみる?』
岩石がマグマ状になってるって事は千五百度前後。
絶対零度ってマイナス二百七十度程度。
単に温度を下げるっていっても、気温より下げるのが大変なんだよね...現実世界では。
でもね、ここはファンタジー世界。
可能でしょ?
神力を冷気の神気に変えていく。
目標はあのマグマゴーレム。
まぁ、その周りも影響で大変な事になるだろうけど、氷姫の結界が有るからそこで止まるんじゃないかな?
元が千五百度だから、神力も結構要りそうだ...
イメージは地獄の最下層、コキュートスのミニチュア版。
まだ、足りないか?
あぁ、コキュートスって精神も凍てつかせるんだっけ?
そこまでは要らないから、適当な所で止めておこうか。
温度だけならもう十分絶対零度だろう...
これまでにない程良い疲労感を感じる。この辺りかな?
マグマゴーレムを中心に、氷姫の結界内を捉えて...
神威解放‼
マグマゴーレムは瞬間的に凍った。それは万々歳。
氷結ゴーレムにはなってくれて、動き出す様子もない...がしかし。
そこ迄は良かったが...空気の氷結が止まらない。
あっと言う間に氷姫の結界に迫る。
「キシキシッ...キシキシッ...」
結界って軋む音するんだ...
...なんて暢気に考えてる場合じゃなかった...
ヤバイ‼氷姫の結界が壊れる‼
慌てて、氷姫の結界の上から更に結界を張る。
当然上方にも。
軋む音は止まり、物凄く静まり返る。
眼下には、物凄く透明度の高い馬鹿でかい氷柱が。
その大きさは直径50m、高さ50m程に。
結界で止めてなお、冷気を撒き散らしている。
当然、こんな大きな氷の塊なんて見た事がない。
北極とか南極とか行けばゴロゴロしてるだろうけどね‼...
...アブナカッタ...
結界で止めなかったら、何処まで広がってたか...
確かに今までにない位、神力使ったし、時間も掛かったけど...
ここまで強力無比な氷柱牢獄が出来上がるとは...
...因みにここには一杯の龍神様や神様や悪魔や死神や人間達やアマゾネス達が居るんだよ?
...だけど、誰も何も喋らない...
固唾を呑んで?見守っている?
いや、離れるタイミングを図っている?
物音一つでもしたら走り出す、そんな雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。
コワッ‼静寂、コワッ‼
「良かったよ。止まってくれて」
テヘペロッ‼
ホント、良かった...
『ワタシノケッカイガコワレタ、トウケツシテ』
...氷姫の普段絶対に聞けない口調が聞けた。
『ワタシノマグマガコオッタよ?』
...焔姫の口調が逆になった。
『ネェネェ、ゴクエンッテコオルノ?』
...小夜姫が幼児退行している。
『氷の中で永遠の愛、悪くはないわね』
...聖姫は平常運転だ。
『ヤバイわ〜...ナイわ〜...』
涼姫から上品さが消えた...
『サトシなら有りだね‼』
峰姫がテンションマックスになった...
『...............』
颯姫が無口になった。ある意味、一番重症だ。
「「氷に迫られる体験、貴重です」」
ジアンスロ姉妹は俺を信じてくれてるみたい。
「「「
氷の津波って初めてかも?初体験?テヘッ‼
」」」
トリセイレ三姉妹もまぁ、平常運転なんだろうな。
人族の方がダメージ少ないのは良い事だ‼
そういう事にしよう‼
アマゾネス達の一人が水魔法で作った頭大のウォーターボールを氷柱に向けて飛ばす。
氷柱に辿り着く前に霧散してダイヤモンドダストが発生する。
別の一人が火魔法で作った頭大のファイヤーボールを氷柱に向けて飛ばす。
ウォーターボールと同じ様な位置で同じ様にダイヤモンドダストと化す...
...そんな現象は初めて見たゾ?
斬姫、美那、ゴーゴン三姉妹がやっと口を開いたかと思ったら、発した言葉が被った。
『『『『『
コキュートス...
』』』』』
...アタリ。
「ねぇ、皆?敵の動きを止めた今、アイツをどうやって倒すのか考えよ?」
『イキテルの、アれ』
『既に生死の問題じゃ無いよね‼』
『ってか、これ解ける?』
『ムリッポ』
『結界壊れない?』
『ワタシノジャナイカラダイジョブ』
『.............』
「........」
『(サトシさん?コキュートスってどうかと思いますわよ?
この世界を地獄の牢獄にするおつもりですか?
いえ、戦ってくださるのは有り難いのですが...
この世界を...壊さない様にお願いします...)』
ハイ、一番ツラクナル言葉頂キマシタ...
「そ、そう言えば、宝物庫で会ったカリディアさんが言ってたよ⁉
この世界の精霊様も助けてくれる的な何か‼」
その時、羨編絆柯から気配を感じ、次元収納から取り出す。
取り出した途端に輝き出し、一際輝いたかと思ったら、そこにはカリディアさんが。
『こんなに早々にお役に立てる...
これはまた、何と言いますか...
立派なオブジェをお造りになられましたね...』
『(オブジェ...こんな物騒なオブジェは要らないです...)』
ア、ハイ、ソウデスヨネ...
『氷の精霊に来てもらいましょう。ちょっと待っててくださいね』
氷の精霊さんなら何とかしてくれるかも⁉
『ハイハイ〜‼呼ばれてきまし...たよ?』
『ハイ‼この世界の氷の精霊「クリステス」さんです‼』
現れたのは全身透き通るような白い肌、髪をしている精霊様。
西洋版雪女と言ったところかな。
『...何が起こったの?』
うわ〜...すっごいローテンションだぁ...
カリディアさんのハイテンションが浮いてる...
『クリステスが一肌脱ぐ時がやって来たのです‼』
『服ならいくらでも脱いであげるけど⁉』
...いえ、それは望んでません。
...本当です。本当ですよ⁉
「初めまして。ヒジリ、サトシと言います。
実は...」
これ迄の経緯を失礼の無い様に説明する。
『あ〜、貴方がサトシさん?お噂はかねがね。
お噂通りね。ここでお助けしたら仲間に入れて頂けます?
そして、我々の長になって貰えます?』
「仲間だなんて、そんな‼
ここに来て頂けただけでも嬉しいですから‼
長ってのは意味が分かりませんが...
友人になって頂けると嬉しいかな...と」
『契約成立‼いや〜、チョロいね‼ねっ、カリディア‼』
『小芝居で乗せられるなんて...
私の時はのらりくらりしてたのに』
...ジアンスロの時といい、この世界の住人は小芝居好きなんだ...忘れてたよ。
『それは良いけど、どうするつもり?
近寄ったら貴方でもアウトよ?』
『忘れたの?私達、氷雪世界の住人が居る世界は閉ざされた氷海の孤島よ?
滅多な事ではだ〜れも来ない氷の世界。悪魔以外はね。
それに近寄らなければ、この冷気、私達の力になるわ。
無限の力を手に入れたってところかしら』
『この氷を何とかできる?』
『この凍結世界と言って良い小さな異世界、ここに有るからいけないのよ。
島の中心にある氷の神殿に置けたら、何も問題無いわ』
『では、サトシ様。
この凍結世界を彼女の神殿に移す事は可能でしょうか?』
確かに移界の方が消し去るよりかは遥かに疲れない。
でも...
「やってみないと分かりませんが、多分できるかと。
ところで、中のゴーレムはどうします?」
『どうせ、残骸ですもの。サトシ様の威光を周知させる為にも、是非ご一緒に。
あぁ、それと丁寧な言葉は不必要です。何せ私達精霊族、それと私の使役する氷魔獣達の頂点に君臨するお方ですから』
...話が大きくなってないかい?
『全然?契約でございますから』
...精霊族?も?
『ええ、こちらに居るカリディアも含めて』
...他の精霊様に了承も無しに?
『ええ、反対派は居ません』
...エイレーネ様?
『(これを目立たない様にするのであれば、その程度些事です)』
些事...俺の意見は?
『ええ、契約でございますから』
...交渉は一人でやっちゃダメ。今後は絶対に。
...今回は仕方無いか。
「契約は守りますけど、ホント、君臨とかはマジで勘弁して下さい。それ以外はオッケーなんで」
『どうしよう?カリディア?また言質取れたわよ?
良いの⁉こんなに簡単で?』
...絶対に、は何処へ行ってしまった?
『いちいち私に振らないで?共謀してる様に思われるじゃない⁉
純粋で純朴で純情なのよ、サトシ様は。
真っ直ぐにお話しした方が良いわよ?
怒らせたら...皆殺しなんだから』
有り得もしない事を確定事項の様に言わないで下さい...
『(先日、軍団を壊滅させたのは誰でしたっけ?)』
そんな事有りましたっけ?皆のお陰ですよ?
「...あの〜物騒な話は止めるとして、移す先は何処でしょう?」
地図を見せて移す場所を訊ねる。
『あ〜‼昔見た面白い地図‼
これで、伝説の武器を探しに来た勇者(?)が来たわね〜。
懐かしいわ〜‼どれどれ?』
わざわざ俺の横に移動して覗き込む。
何気に腕が触れ合う...
『全く、クリステスは...
わざわざそんな近寄らなくても良いんじゃない?』
『だってさ〜、こんなチャンス滅多に無いんだよ?
私が触ってもなんとも無い人なんてそうそう居ないんだから。
まだ、抱きつかないだけマシだって‼』
精霊様のイメージが...
まぁ、畏まられるよりかはマシか...マシなのか?
『そうそう、ここよ。この島の中心の神殿‼』
「今更だけど、神殿って言うからには神様居るよね?
大丈夫?怒られない?」
『ええ、居ますわ。何故かサトシ様の中に』
カリディアさんが若干キレ気味で教えてくれる。
あ〜...この世界の神様...
些事...俺をこの世界に誘導?できた事で別荘の一つや二つ無くなっても仕方無いか、そんな感じ?
『(眠いわ)』
...逃げた‼
まっ、良いか...
「大きい神殿...これなら入り切りますね。
では、やります...」
これは...普通の物質転移じゃ駄目だ。
これとセットで概念の転移も必要。
凍結という概念を元に創り出した凍結の世界。その概念ごと転移させる。
イメージは思った事を伝える念話。
思念体同士の思念送信は次元を問わない思念の転移と言い換えられる。
思念体同士が繋がっていれば、思念は送れる。
それを世界という概念に置き換えて転移させよう。
この世界の中の小異世界。
上手く送れてくれよ⁉
『世界転移...』
...どうだ⁉
この場に溢れかえっていた冷気はすっかり無くなり、焼け焦げた森の跡が露わとなり痛々しい。
地図を見ると、神殿から冷気が溢れ、神々しささえ感じられる。地図越しでも冷気が感じられそうだ。
...おぉ、成功した‼
『さっ、今度は私の方にお力を‼』
「ほえ?」
間髪入れずにカリディアさんが手を繋いで急かしてくる。
いや、もうチョット余韻に浸りたいと言うか何と言うか...
『カリディアも他人の事言えないじゃない...』
『あら、私は貴方とは違って純粋よ?
この森の再生にはサトシ様のお力が必要なの。
龍神様の炎からのサトシ様の凍結の上書き。
このままではここは死の大地よ?』
...大地という程、広大では無いと思うんですが。
でも、当事者だから何も言えない。
『さぁ‼私の【生命の息吹】に神気を同調して頂けませんか⁉』
若干、興奮気味のカリディアさん。
何を期待してるのだろうか...
気になると言えば気になるが悲しいかな、立場上是非も無い。
カリディアさんの【生命の息吹】って何か特殊な感じがするけど、大丈夫だろうか?
まぁ、同調させるだけだし、大事にはならないかな?
イメージは新緑が芽吹き、成長していく感じだな。
先程の戦いで散っていった草木が戻って来て新緑となり元気に成長していく感じ。
その神気を神威にしてカリディアさんを経由する。
『わっふぅっっ〜‼‼‼これよっ‼‼‼』
カリディアさんのキャラが崩壊した瞬間を見た...
眼下では壮絶な光景が。
まるでビデオの早送りの様に先を争って芽が伸び草となり、木が芽吹いたかと思うと、メキメキいいながら成長していく。
焼け跡は無くなり、緑豊かにはなった。
なったのだが、今俺達が居る上空100mに届くかの様な大木がそそり立っていた。
巨大過ぎる幹もその枝葉の成長っぷりも見事で圧巻。
...コマーシャルでも見たことの無い大きさだな。
『まだ、いけるわ‼』
『ちょっと‼もう流石に良いんじゃない⁉
この世界では一番の大樹よ‼』
慌ててクリステスさんが止めに入るが...
興奮状態のカリディアさんが語り出す...
『神話の時代...世界と世界を繋ぐ大樹が有ったわ...
いいえ、その葉一つ一つが世界とまで言われていたわ‼
でも、時と共に枯れ果て今では存在していた事も忘れられている。
これも緑を司る精霊の役目‼
復活よ‼世界樹‼』
...ぶっとんだなぁ、カリディアさん...
...そんな都合良く作れる訳無いじゃん...
『(あぁ、私は何も見てない、何も言わない、何も聞いてない...)』
...エイレーネ様?
そんな事言わずに何が起こったか教えて下さいよ...
『(今、世界という世界が繋がろうとしています。
この葉一つ一つが世界の一つ一つ。
世界が終わる時、この葉が落ち、新たな世界が芽吹く...)』
凄い、真面目な口調のエイレーネ様...
とんでもない事をした様で怖い...
「世界が終わる時?」
『(もう、後戻りできなくなる程に荒廃、壊れてしまった世界は破壊神の手によって破壊され、再生されます...
この木に願えば、特定した世界の様子が手に取る様に分かり、またその世界に行く事も可能となります。
この場合はサトシ様に願う事になりますか。
無限の世界に唯一の大樹。
天界、その神域のシンボルツリー。
決して枯れる事の無い概念の大樹。
...その複製。
当然、あの葉のどれかはサトシ様の)世界です』
あれ?これエイレーネ様に怒られるパターンじゃないの?...
『(恐らくは...悪魔の一件が終わったら...
今回の一連の出来事で召喚されるかと思います。
二人して怒られましょう?
...諦めて)』
あぁ、そういう流れでしたか...
やっちゃったもんは仕方無い。後で怒られよう...
でもその前に...
「兎にも角にも、悪魔達を何とかしないとね...」
またまた、サトシさんがやっちゃってくれました。
この世界、どうなっちゃうんでしょう...
大詰め感も出てきた所で、大変な事をしてくれてるもんですよ。
この先、どうなる事やら...




