第50話 只今、向かいます‼
いつもお読み下さりありがとうございます。
更新が遅く申し訳ありません。
今回は戦闘シーンがあります。
表現は柔らかい筈ですが、苦手な方は飛ばして下さい。
後書きでサラッと書きますので。
『気に食わない...
奴等が気に食わない...
戦術が気に食わない...
戦略も気に食わない...
思考も気に食わない...
何もかも気に食わない‼
手を出すな‼俺がやる‼』
もうすぐそこが魔物の溜まり場。
暗いながらも薄っすらと見える魔物の影。
次第にはっきりと見えてくる。
蜘蛛の糸の様な物でグルグル巻きにされた幼い子達が盾の様に立たされている。
その後ろには...
斬姫が教えてくれた通りに蟻、蜘蛛、蛇達が牙を広げて、口を広げて俺達を待っている。
さも、抵抗するなら、子どもを食い殺すぞ‼と言わんばかりに。
更にその後には牙をカチカチ鳴らして大量の魔物達がこちらを待ち構えている。
それぞれの牙からは唾液が滴っており、地面に落ちて煙が立ち込めている。
簡単に殺せる筈の子ども達を殺そうとしない所を見ると、人質の意味は理解しているらしい。
それとも悪魔に何かをされて、操り人形と化しているだけか?
やりたくもない事を無理矢理させられているのか?
人質さえ取っていなければ、まだ助けようがあったものを...
ん?上にもいる?
コウモリか...でかいけど。
これでもう、手加減はしてやれそうにない...
魔物との距離はまだ有る為、魔物も油断している。
分身の珊瑚を取り出し、神力を通す。
珊瑚に神力を通すと、俺の前後左右にワラワラ分身が増殖する。
顕現と言うには少し節操が無い増え方だ。
これが、あの時言えなかったもう一つの能力。
分身は元の強さより弱くなるという話だったが、こいつら相手だったら十分‼...の筈だ‼
数秒と経たない内に分身体が10人となる。
敵もそれを見て一瞬動こうとする。
だが...遅い‼
分身体10人が子ども達を転移で同時に引き寄せる。
まだまだ‼
魔物は人質が居なくなった事に気付き、こちらに向かって襲い掛かってくる。
新たに発現した十一番俺が魔物に向かって瞬間移動する。
十一番俺が蟻に襲い掛かり、手刀で切り刻み、殴って破砕している間に十二番俺が発現し、十一番俺を囲もうとしていた蜘蛛の前に瞬間移動する。
服はしっかり同じ物?を着ている為防御力は有ると思うが、俺が手に武器を持ってないせいか、皆も武器を持っていない。
それでも、魔物の突撃は止める事が出来たが...
う〜ん...攻撃が薄いか?
エイレーネ様の分も含めて13人。
防御十人、攻撃二人、俺の中で揺蕩っている人一柱。
攻撃が二人でも魔物は仕留められているけども...
力強さが足りない‼
なので、当然、まだいくよ?
コウモリ達が十一番俺と十二番俺に群がろうとしているところに十三番目俺が発現し、十一番俺と十二番俺の背後から襲おうとしているコウモリ達目掛けて瞬間移動し、連打で殴り飛ばす。
見事な連打に見惚れていても分身は止まらない‼
更に十四番俺が十一番俺をサイドから狙おうとしてる蛇の前に転移して十一番俺への攻撃を防ぐ。
毒や酸と思われる液体が滴っている牙を掴んでいる...
まあ、耐性は有るから良いとは思うけど?
と思ったら、そのまま牙を圧し折っている。
あれは...モストマスキュラー破壊‼
筋肉は無いけど、分身ながら見事だ‼
更に十五番俺が十四番俺が止めた蛇を手刀で切り裂く。
これだけ増やしてもまだ手刀で切れるという事は...
まだ行ける‼
十六番俺が十二番俺のフォローに入る。
手数が必要そうな所にスチャッと入る辺り、戦況も見えてるみたいだ。
だったら...まだ行ける‼
十七番俺が、一斉に飛び立ったコウモリ目掛けて風属性の鎌鼬を飛ばし切り刻む。
何故鎌鼬か?
だって、腕が鎌の様な刃物状になったイタチが本当に見えて、その子達が旋風を纏いながら突進してるから。
久々ファンタジーだ...
突進して切り刻んだら消えている...
切れ味抜群で、コウモリ肉の輪切り量が凄すぎる。
近くに居る分身は、血肉を被らない様に物理結界を張っているようだ。
誰だってあれは被りたくない...
もう大勢は決したか?
あの布陣を切り崩してこちらに攻め込める魔物は居ないな...
戦場を俯瞰し、ふと気付く。
俺、何もやってないじゃん‼
最初の決意は何処消えた‼
俺もあれ、やるぞ‼
と思ったところで、一斉に皆が俺の所に転移する。
皆‼俺のやりたい事をよく分かってくれた‼
いや、あの鎌鼬を見たら、カッコカワイイって感じ?
魔物からしてみればコワカワイイ?
○○仕事人みたくさり気なく倒して格好良く消えていくし。
まだ沢山いるから駄目押しって感じでやってみても良いよね?
風属性の神威で出て来てくれるのかな?
ヒュッ‼ザクザクッ‼
...旋風だけだ...
まぁ、沢山やっつけられたから良いんだけど、確かにやっつけられたんだけど‼
なんて言うか、違う...そうじゃない...
よし、考えよう...
やっぱりあれは召喚?
...幻視じゃなかった訳ね。
分身俺でも喚べるのか?
まぁ、実際喚んでるし...出来るんだろう。
あのカッコカワイイ姿を思い浮かべて喚んでみる。
来た...デカイなっ‼
倍は有るんじゃないか?カマイタチの王様?
でも、格好良いからからヨシ‼
さあっ‼行って‼
我ながら、犬じゃないんだかさ...なんて思っていると。
喚び出した一匹は極大の旋風を纏って魔物めがけて突進する。
...もしもし、カマイタチさん?
加減を考えないと洞窟崩れちゃうよ?
突撃して一頻り切り刻むと、スッと消えていく。
まさしく○○仕事人‼
長居出来ない特性の魔物なんだろうか?
見たら、隣で峰姫が洞窟の壁を神威で補強している。
『サトシ...、オーバーキル...』
「ゴメンね。ついつい...」
峰姫には強く当たれずついつい謝ってしまったが...
悪いのは俺なのか?ま、いっか。
次からサイズに気を付ければいいんだ。
今度は周りの皆と同じ大きさで来てください‼
強く念じると皆とほぼ同じ大きさのが来てくれた‼
コツが分かりさえすれば、簡単だ。
そう、大きさのイメージをしっかり出来れば大丈夫‼
俺を含めた18人で鎌鼬を次から次へと飛ばす。
敵に蟻も、蜘蛛も、蛇もコウモリも無い。
等しく平等に旋風に巻き込んでは切り刻んでいく。
魔物の肉片が飛び散り、地面に降り注ぎうず高く積もっていく
...
コツを覚えた頃にはもう居ない?
どうやらやっと文字通りの全滅をしたらしい。
静まり返った中、お子ちゃまの無事を確認しようと見てみると...
一番から十番迄の俺がいつの間にか蜘蛛の糸を絶ち切っており、お子ちゃま十人が集まって抱き合っている。
凄まじかった光景にお子ちゃま達は肩を寄せ合ってフルフルしている。
チラッチラッと肉片の山と守り担当俺と攻撃担当俺を交互に見ながら...
まぁ、最後は全員攻撃だったから、ちょっと過激だったかな?
確かに同じ姿の人が一杯でイタチ連発してたら少し怖いか...
肉の山もグロいし...
でもなぁ、洞窟内では燃やす事も出来ないし...
『大丈夫、餌、肥料』
峰姫が恐らく使い道を教えてくれているのだろうが...
あんなの収納しておきたくないぞ?
肉片の山がうぞうぞ動いている様に見えるが...
『菌』
何か近寄りたくねぇ〜〜〜っ‼
『肥料、大事』
大事なんだけどもさ...
みるみる内に山は低くなっていき、血溜まりや血糊、骨さえ無くなっている。
うわ〜、エゲツな〜...
増えた菌と肥料分は随時峰姫が回収しており、心なしか嬉しそうに見える。
『食物、花、育てる』
そだね〜、殺しただけでは無駄になるもんね。
肉食の菌は少し怖いけど、食物連鎖は大事な事だ。
偉いっ‼峰姫‼流石は龍神様‼
でも...その菌は食物に付着しない様に気を付けてね。
空気の様になっている斬姫だが、何だか温かい?視線が気になって彼女の方を見てみると、やっぱりこちらを見ている。
目があった...何かウルウルしてる?
『おおぉ...』
何?まだランニングハイ?
『あの苦行の様な走破の後の殲滅戦‼
人質を取られている逆行にも関わらず素早く対処し無傷の奪還‼
圧倒的な戦術とそれを後押しする単騎戦力‼』
いや、何が始まった?
『貴方と敵対しなかった事は何たる僥倖‼
圧倒的強者でありながらも傲り高ぶらない...
まさに、武神‼』
いやいや...酔ってる?お夜食で酒飲んだ?
『何が私の活躍?そんなもの有る訳がない‼
大将が戦闘に立ったら、我等はオカズ...
そう、オカズ‼
私はこの眼に焼き付けた‼
あの光景だけでご飯は三杯食べられる‼』
いやいやいやいや...実はオナカスイテタ?
「何、言ってんのさ?
斬姫は対悪魔参謀だよ?
俺より遥かに詳しいんだから。
意地でも活躍して貰うからね?」
『光栄の極み...
微力ながら尽力させて頂きます‼』
熱いな...熱過ぎる...
「さて、一旦戻りたいんだけど...
走るよりか地上に出て転移した方が早いと思うんだ。
だけど、あの奥の細くなってる洞窟を進むのもどうかと思うし...
と、言う訳でここより地上に向けて穴掘りして出よう‼」
『私、掘る、下、大丈夫』
そう言うと峰姫は小さい龍神の姿になり、そこから徐々に大きくなる。
『下、待ってる』
真上をガガガッと掘り始めた峰姫から少し離れた所に皆を集める。
奇襲を用心し、アマゾネスっ子を分身で囲って守る。
地下室から真っ直ぐに洞窟を作ってくれてたら早かったんだけど、どうやらそうでもないらしい。
時折、峰姫の様子を見に真下から見上げてみるが...
もうかなり掘ってる筈だけど、まだ穴は開かない。
出た直後の奇襲の可能性も考えて、十一番俺と十二番俺を送り込む。
相変わらず、地中からだと気配が読みにくい。
しかし、分身は自分の気配だからか、しっかりと位置は把握できる。
ガガガ...
音が止んだ。どうやら地上に出たようだ。
「(峰姫?地上にでた?)」
・
・
・
『(非常事態)』
待ち伏せか‼
素早く転移しようとするとガッ‼と肩を掴まれる。
振り返ると斬姫が肩を掴んでいる。
『マイ・サトシ様?ここはお任せを...』
うっ、女性の真剣な眼差しは最強だ...が。
胸筋が片方ずつピクピクしてる...
いや、ブルンブルンしてる...
色んな意味で台無しの様な...
ここでオッケー出さなかったら、信用してないとかどうとか面倒な事になりかねない...
こんなにやる気なのだから...
「分かったよ。ここは斬姫に任せるよ‼」
『ハイ、マイ・サトシ様‼承りました‼』
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『ハイ、マイ・サトシ様‼承りました‼』
勢いよく、峰姫殿が開けた穴を飛ぶ。
太古より存在している、否、最古の龍神が一柱、が穿った穴。その穴を自分が通っている。
こんな体験はそうもない。
しかし、そんな彼女が非常事態とは?
ゴーゴンの呪詛も通用しないだろうに...
それにしても久々に血が滾る。
この世界では力量差から全力なんて出せよう筈もなく、尚且つあのバラムの戦略のせいでフラストレーションが溜まりまくった。
つまり、奴とは最初から馬が合わなかったという事だな。
その点、サトシ様はいい‼
判断、機転、胆力、思考、機敏、そして戦闘...どれをとってもバラムより上。
否、比較したら失礼というものだ...それ位能力は優れている。
難点は少々若いと言うか、青いと言うか。
だが、それもまた初々しさと言えばそれまで。
彼についていけば、今後の神生に飽きが来ない程、波瀾の予感がする。
さて、元魔界の大侯爵の力をお見せしておこう‼
勢い良く穴から飛び出し、上空から地上を確認。
間違いない。アマゾネスを襲った特殊部隊だな。
ざっと見ると三十体程度か。ゴーゴン三姉妹も居るな。
峰姫殿が囲まれてブレスを吐かれている。
おかしい、あれ位何とも無い筈だが?
むっ、何かを抱えている?守っているのか?
...若い龍か?何故龍が?...成る程読めた。
龍神があんなトリッキーな部隊に負ける筈がないとは思っていたが、彼女が非常事態ではなく、原因はあれか...
未だ峰姫への攻撃を続けている。
誰一匹こちらに気付いていない...
ふむ、峰姫殿に集中し過ぎて、私が出てきた事に気付いてないのか?
何ともお粗末な...
大剣を構え、斬撃を飛ばす。
連射だ連射‼気持ち良いぞ‼これを待っていた‼
人族にとってはかなり強かろうが、私にとってはバジリスクやコカトリスなど蝿も同然。
されど、人族相手よりは十分に楽しめる。
多少厄介なのはゴーゴン三姉妹だな...
むぅ、やっぱり耐えきるか...
更に強く御見舞してあげよう‼
うん?あぁ‼
飛べるのに飛ばないサトシ様が壁を蹴って近付いている‼
否、任せると言っていたのにこちらに向かっていると言う事は、何か考えが有るという事...
穴から出た‼
あ...ゴーゴン三姉妹が石に...
...呪詛...返し?
無効化とかなら分かるが...返し?
そもそも、返せるものなのか?あれ。
毒を持つ動物が自分の毒で死ぬ様なものだぞ?
魔法とか呪符とかそんなのじゃなくて、彼女等に掛けられた「見たら石化」という呪いだぞ?
その呪いを?どうやって?
先程の鎌鼬もそうだが、何たるオーバーレギュレーション...
あ...手招きしてる。
「只今、向かいます‼」
さて、サトシさんはテスト好きですね。
ぶっつけ本番の筈なのに分身一杯にしてオーバーキルしてます。流石です‼
更に意外な事に斬姫さんも強い事が分かりました。今後、期待の前衛になってくれるでしょう‼
それにしても、斬姫さんのボス戦?に乱入してしまったサトシさん。
何か意図があったのでしょうか?
増えたサトシさんの動向も気になります。




