第36話 王妃をお連れしました
長らく更新できなくて、読んで下さっていた方々には大変申し訳ないです。
コロナ禍の中、忙しくはあるものの落ち着ける忙しさとなってきましたので、また書いていけます。
更新間隔は長くなってしまいますが、気長にお待ち頂けると助かります。
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月18日)
『仕方無いから、しっかり見てて上げる‼』
完璧に口調が変わったな...
『さ、話が纏まった所で、海底国家都市へ急ぎましょ?』
氷姫、何かドライ...
アウリさんを立たせて、先を促す。
「それが、この海中へと続く階段以降は魚人族の案内無しで進んだ事は有りません。
途中から道に自信が...泳ぎながらですし...」
「ここからは遠いんですかね...」
「魚人族の泳力で進んでおりましたが、驚く程遠くは無いかと」
「それじゃ、ちょっと探ってみます」
知覚を拡げる...
毒のせいか生物が居る様子は無い。
2km程行った所か、深度20m程の所に生物の群れが。
動きが無い、死んではいないが...
まさか、毒の作用か⁉
「ここから2km程先に居ました。
でも動きが有りません...
心配ですから急ぎましょう‼」
「やってみたい事も有るので、走っていきます」
羨編絆柯を握り神力を注ぎ込む。
元の世界では見たことの無い武器...「杖」にする。
勿論、格好良く木製だ。
拳大の節を前に出し、神威を発動。
イメージは...街の入口まで真っ直ぐ海を割る‼
海水を押し退け、出来た‼
水の操作と空間の固定...伝説の業‼
ゴゴゴゴゴゴッ!!!
海が...割れる‼
まぁ、驚いているのはアウリさんだけなのだけど...
2m程の幅で続く海底道を走っていく。
泳いで行くと余り感じないんだろうが、海の底って結構起伏が激しい。
...泳いだ方が速かった?
両側が海の壁ってのも結構圧迫感有るな。
水っていう先入観が有るから、これだけ高い水の壁が崩落した時の事を考えると気が気でないだろう...
アウリさんだけだろうけど...
こういう行き方だとアウリさんの軽鎧姿ってあまり意味無いんじゃあ...
でも、あの軽装は海に似合ってるから良いよねっ。
俺が生物の群れを感知した場所が迫ってきた。
多分、あれが海底都市だろう...
海水の壁の向こうに立派な門が見える。
奥の方には思いっきり日本の歴史に出て来そうな神社風の大きな建物が見える。
海水の中に...
はっきり言おう‼竜宮城?
破壊された跡が無いから、攻め込まれたって事は無いように思えるが...
入口となる門は扉が開いている。
嫌な予感がする。
門からは泳いで入っていく。
程なく、道端にうつ伏せに倒れてる人を発見。
第一魚人族だ。ん?和装?肌が人肌?アウリさんを見る。
「間違い有りません。魚人族です‼」
アウリさんが駆け寄り、息を確かめる。
「息は有ります‼」
直ぐ様仰向けにし、抱き起こす。
ちょっと待って?水の中で会話が出来る?
そしてそして...
え?
人間?
どう見ても人間だ。半魚人は俺の妄想か...
顔立ちからすると、女性...だよね?
「答えられるか⁉何があった⁉」
「な、長い期間、毒の結界で囲まれて、しょ、食糧を手に入れられず...」
兵糧攻めか...
敵は色々な攻め方を知ってるな...
「魚は生で食べたりとか出来るんですか?海藻とかは?」
「た、食べられます...」
「水は?海水で良いの?」
「い、今は真水の方が...」
今にも事切れそうな感じだ。急がなきゃ...
毒の心配はなさそうだが、飢餓による衰弱が激しい。
時間が惜しい‼
「皆、あの広場に倒れてる人全員集めて‼」
アウリさんは近くに倒れている人を見つけては運ぶ。
四姫はひたすらに転移させている。
俺は...
「緊急事態で御免‼後で謝るから‼水龍様、大至急来てっ‼」
『はいっ‼何やら急いでますね?』
パッ‼と出てきた水龍様はもう人型で、水の中なのに水の輪郭が見える不思議な存在だった。
屈折率の違いか?
「今、集めて貰ってる人達の周りを真水に出来るかな?」
『簡単よ?』
「有り難う。俺は食糧取ってくる‼」
毒の結界の外と思われる所まで瞬間移動する。
水深は20m位。ちょっと薄暗いか...
羨編絆柯を手に取り、神威を注いで、光の柱にする。
懐中電灯のつもりだったが、全景明るくなっている。
これは便利。カリディア様に感謝。
うん、ここなら海藻類も集められそうだ。
カリディアさんへの感謝と共に、岩に生えている海藻を片っ端から手刀で刈り取っていく。
両腕で抱える位の量となった所で...竜宮城の門前に転移。
物だけを転移させた事は無いから上手くいく保証もないし、せっせと運ぶしかないなぁ。
あちこちに転移しながら、海藻を集めて、転移させる。
もう、そろそろ海藻は良いだろう...
次は魚。
なるべく巨大な魚をイメージ。
10mクラスを何匹か発見。
魔物っぽいけど、きっと食べられるよね。
場所は大イカを仕留めた辺りか。成程、あれが餌になったのね。
巨大魚の顎下に転移。
羨編絆柯を日本刀に変えて切りかかる。
エラから頭を切り落とし、更に腹を割いて急いで内臓を切り取る。
辺り一面、血が凄い。
凄まじい活造りだな...
続けて同じ位の魚を三匹程次々に捌いて運ぶ。
これだけあれば足りるでしょ。
門前に転移すると、海藻の山が海底道に複数でき、魚もしっかり獲った分送れていた。
急いでたけど何とかなったな...
後は食べやすい様にしてあげないと。
海藻の山を日本刀で切り刻む。
食べ易い大きさになるまで切り刻む。
一つ出来たら次の山、それが出来たら次の山。全ての山を切り刻む。
多分、この神速の刻みは誰にも真似出来ない、そんな自信が生まれた。それ位刻んでみた。
日本刀の使い方を間違えてはいるが...
刻んだ海藻の山は粘り気成分が多く、体に良さそうだ。
人間ならだが...彼らにはどうだろう?
ドロリとした山を抱えて、広場の前に瞬間移動する。
広場にはズラリと倒れている人が並んでいる。ざっと百人位か。
何とか足りるな。
「皆、取り敢えずの食べ物持って来たよ‼
少しずつ食べさせてあげて‼」
今、感じたけど、この都市...
しっかり重力を感じる。
水の抵抗感も少ない気がする。
これなら運びやすいな。
運んで食べさせてあげてるのはアウリさん。
丁寧さが光る。
他の皆は少量ずつ、それぞれの口に転移させている。
神様はやっぱり器用だ...
でも横着?
おっと、こうしては居られない‼
海藻の山を全て運び終えて、最後に巨大魚の前に立つ。
取り敢えず、骨、取れば良いんでしょ?
やってやるよ?
初、三枚おろし。
一匹目。
頭を落とした所に立ち、背骨のちょい上に刃を入れ...
一気に尻尾へ向かって走る‼
一枚目は何となく成功。
ひっくり返して肉に石が付くのが嫌だったので、そのまま二枚目を決行。
頭から再び尻尾へ爆走。
刃筋が少しズレて骨が若干スライスされて残る。
切れ味は抜群だから、刃が止まる事は無いが...
骨を取り出すのに苦労する。
二匹目。
一枚目、成功。二枚目、骨に肉が残り過ぎた...
まぁ、肉多いし、汁物の出汁取るのに丁度良いかな⁉
三匹目。
一枚目、成功。二枚目...成功‼
三度目の正直の体現者となった‼
四匹目。
もう、完璧‼
骨に添わせて刃を滑らし、刃筋を立てるコツを覚えた。
元の世界で出来る職業に魚屋さんが増えた‼
ファンファーレが聞こえてきた気がする。
後は...おろした魚を持って広場に移動。
地面に接している部分の水分を凍らせて即席の巨大まな板を作成。
倒れていた人達の様子を見ると、もう起き上がれる人が何人か居る。人族より生命力は有りそうだ...
この分なら全員助けられる...
氷の巨大まな板上でおろした魚を二センチメートル程度の厚みでスライスしていく。
このままだと一枚が大き過ぎて口に入らないから2cm角の肉棒になる様に切っていく。
「皆、食べられそうな人に配って‼
食べに来れそうな人はこっちに来てください‼」
長い魚肉棒をどんどん作成。
周りの様子を伺うと、四つん這いでもこちらに向かってくる人達も。俺も急いで切ろう‼
少し鋭さを増した斬撃を放ち、一枚また一枚とわんさか斬り込んで処理していく。4匹分だけど...獲り過ぎたな。
まぁ、姫達もお昼で腹減っているだろうから丁度良いでしょ‼
捌ききる頃には魚人全員が起きれる様になり、皆が配る魚肉を頬張っていた。
皿の方に来で食べる人もかなり増えてきた。
ふぅ、一安心だ。
考える余裕が出来たので今の状態を確認。
水の中だけど浮力を感じない。
水圧を感じない。
息苦しくない。
重力を感じる。
地上と同じじゃん...特殊な結界かな。
海底で地上を再現した都市。
竜宮城と言うのもあながち間違いではないのか。
浦島太郎も普通に宴会してたし。
比較的元気になってきた人達を見る。
よく口を動かしているから目立つ様になったが、頬骨を見ると、耳後ろから、下顎の途中まで見え難い位置が切れている。
一見切られて怪我をしてる様にも見えるが...あれがエラ。
魚肉棒を食べ終わり、手を舐めている人を見る。
指と指の間には水掻きが。
足は普通に二本。
だけど、フィンが付いてるかの様に足が大きい。
まとめよう。
基本、人間で...所々が魚。
それが魚人なんだな。
決して、アニメに出てくる様な半魚人ではなかった。
そして、下半身魚の人魚でもなかった。
この世界のファンタジーさでもあの夢の生物は居ないのかなぁ...
陸上にも商店街っぽく街を作っていた事から推して知るべしか。
ここの人達の服装は概ね三種類。
一つは作業着も兼ねてそうな質素な作務衣姿。
着ている人の性別が男女区別なく、この姿が一番多いかな?
約八割って所か。
一つは桃色をした軽そうな薄手の着物。
下に着ている白の衣が透けており、お洒落だな...
約二割って所か?
最後に、色とりどりの色彩をした着物。
これは着ている人が稀で三人。
恐らくは、この中で一番階級が高い三人だろう。
...全員女性。
乙姫...普通は一人でしょう‼
...まっ、何にせよ間に合って良かったよ。
と思いつつ、俺も魚肉棒を一かじり。
お?美味しい?
そうか、海水で、塩味ならぬ海味になってるのか‼
そして、水龍様が真水に変えてくれたから程良い塩分と苦味になってるのか。
これは...堪らん。
美味し過ぎる‼
「サトシさん?もしもし?サトシさん?」
氷姫から声を掛けられて、ハッと我に帰る。
氷姫の方を見ると横には水龍様が。
『やっと呼んで頂けましたね。
待ちくたびれましたよ?』
「バタバタしててすみませんでした。
ご挨拶が遅れました。
ヒジリサトシと申します」
『いえいえ、本来、召喚なんてそんなものでしょう?
気にしていませんよ。
ただ、この街の人達の飢えをしのぐ為に呼ばれるなんて思いもしませんでしたが』
何て物腰の柔らかい龍神様なんだ...
「貴方のお陰でこの国の人達も元気を取り戻しています。
感謝します」
『ヒジリ様の捌き方も中々の物です。
ほら、今でも皆夢中で食べてますよ?』
本当に切り刻んだだけだから少し、恥ずかしい。
「急ぎ過ぎて料理は作れませんでしたが、それでも皆が食べてくれて嬉しいですね」
『ひょっとして私の役目はここまで、です?』
これからの事を考えると、居てもらわなきゃ困る...
「とんでもない。
貴方の恩恵有ってこそ、この国は立て直せる...
この世界を救える一助になる。
どうでしょうか?
共にこの世界を救って貰えませんか?」
『否やは有りません。
あの様な方々に好き放題荒らされるのも我慢できなくなってきた所ですから』
水龍様が近寄って来て背後に回る。
後ろから俺をそっと包み込む。
包まれて分かったが、ゼリーみたいな柔らかさがある。
あらゆる意味で柔らかい...
皆が食べる事に夢中になっていて良かった...
『元より氷龍も居るんですもの、お仲間にならない選択は無いですよ』
水龍様が、俺の肩を掴んでクルリと振り向かせる。
黒い艷やかな髪が足首まで伸びている。
顔は大人びて清楚、氷姫を大人にして柔和にした感じか。
着物は白地に深い海に揺蕩う龍が描かれている。
正直、一番着物が似合ってるんじゃないかな?
『それで...私にも名前を授けてくれるののかしら?』
「授けるなんて大層なもんじゃないですけど...」
そんな事を言われるとプ、プレッシャーが...
「俺のイメージで悪いんですけど、涼姫、と呼びたいかなぁ...と」
水龍様、無言でスルリと俺の服を剥く。
あぁ、この流れは変わらない訳ね...
『水の龍神、貴方に永久の契約を約束しますわ。
』
俺の露わとなった右肩に口付けをする。
涼姫の髪が俺の耳にも掛かる...
しょ、衝動は抑えないと...固まる俺の体...
『水龍‼長いわよ⁉』
いつも、冷静な氷姫が激しい突っ込み‼
『緩りとヒジリ様成分を取り込みたいですから...』
穏やかな口調だが内容はすこぶる変だ。
『そんなの、皆一緒です‼』
怒りながら何気に服のボタンを掛けてくれたり。
氷姫が甲斐甲斐しく感じる。
『では、皆さんご一緒に...というのは?』
それは言ってはならない一言です...
「すみません、勘弁して下さい...
元気になった人達も見ていますから」
先程から黙々と魚肉棒を食べながら、かなりの人が興味津々でこちらを見ている。
そりゃそうですよね...
見た事無い人が皆の前でイチャついてるんですからね...
食べている人の間を縫ってアウリさんが豪華な着物を着た三人組を連れてくる。
やっぱりあの人達がこの国の偉い人?
「ヒジリ様‼トリセイレ海国の王妃をお連れしました‼」
ヒジリ君、新たな武器?を手に魚屋さんもできる様になったみたいです。
元の世界で彼は何を目指すのでしょう?楽しみです。




