第33話 救済するのは必然
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月16日)
「貸す等ではなく、御奉納致します」
頭を下げたまま目線も合わさず畏まって...
御奉納って...この世界にそんな言葉まで有るのか...
「やだなぁ、アウリさん。冗談は辞めましょうよ?
オウナさんも‼」
シスターズももうそろそろ普通に接してくれないかな?
『それは無理というもんじゃろ?
あれ程の神気に当てられては人間ではどうもこうも出来んわ...』
『サトシ...底無しだナ...』
『潔く諦める、それも肝心です』
『眷属化も進んでますし...』
...この件に関しては、断じて諦めたくはない‼
『ほら、二人とも立って?』
二人の手を取り立たせてあげる。
『お優しいのに、強引な所もあって...
何処までファンを増やすんですか...』
エイレーネ様?何故にそうなル?
「で、ではこの枝は無期限でお借りするとして...
これだけの品を「枝」って言うのもちょっと忍びないんで、名前を付けて良いですか?」
『光栄ですわ。それでどの様なお名前をお考えですか?』
「そうですね。羨編絆柯なんてどうでしょう?
色々な変化をする意味と、貴方との繋がりを持った枝という意味を合わせて...どうでしょう?」
『お噂には聞いていたのですが...
私も...いえこの世界の精霊も貴方へのご助力は惜しまないでしょう』
『ほら、わざととしか思えないですわね』
エイレーネ様?突っ込み激しくないですカ?
「有り難うございます。
それで、カリディアさんの見立てで他にも無いですか?」
『こちら何てどうでしょう?』
見当が有ったのか、すたすたお目当ての物の前に歩いて行く。
迷いの無い動きは頼りになるなぁ...
カリディアさんが持ち上げたのは両手拳を合わせた程度の大きさの黒い石。
「それは陛下が仰られていた石です。
魔素を吸収して魔力に変換しているのは分かるのですが、その魔力を使えるまでには至らず...」
『ヒジリ様なら仕組が分かりますよね?』
おぅ⁉そんなプレッシャーの掛かる様な言い方はキツイよ...
石を見詰める...
あぁ、何となく分かった。
カリディアさんからその石を受け取る。
やっぱり魔力を封じ込める様に結界が作用してる。
で、その結界のエネルギーの元は石の中で変換された魔力。
魔素の吸収、魔力への変換、魔力が漏れない様な封入結界。
見事なサイクルだ。
魔力を放出しない様にしていた封入結界のみを外してみる。
途端に魔力が溢れ出す...
どうやら結界に使用していた魔力が流出している。
夢のエネルギー源...
『そこのお嬢さん用に少し分けてあげてはどうでしょうか?』
カリディアさんナイス提案‼
黒い石を摘んで砕こうとすると、意外にも割れるのではなく粘土みたいに千切れた感じになる。
『魔力が少ない人が触っても超硬の石ですけど、神力をお持ちのヒジリ様ならその様に扱えます』
とてもワンダーな石だったんだ...
千切った親指大の石をコネコネして落涙型にして指先で整える様にすると、黒く輝く石となる。
ブラックオニキス...っぽいけど違うんだよなぁ。
後は...チェーンと石の止具をシャワーを作るのと同じ要領で作る。
止具に石を嵌め込んで外れないようにして、ベンダントトップ、チェーンを通して...出来上がり‼
「オウナさん、どうぞ。必ず貴方の役に立ちますよ」
オウナさん、顔が真っ赤ですよ?
なかなか動けないオウナさんの手を取り、ベンダントを握らせる。
効果としては、魔力の補充に使えるかな?
オウナさんはベンダントと俺の顔を交互に繰り返し見てる。
オウナさんの魔力が充実していくのが分かる。
あぁ、ここに入るのに結構魔力使ってたのね。
「あ、有り難うございます。私...頑張ります‼」
魔術師が魔力減らないってある意味無敵だよね...
そして...エイレーネ様の顔は怖くて見れない...
『そして、残りなのですが...
ヒジリ様が神力を注いで調整すれば、ヒジリさんの神気を絶えず吸収、神力に変換、更には増幅して放出出来る様になります。
純粋な増幅器となりますが...どうでしょうか?』
「その神力を、今この街に張ってある規模と同等の結界に使おうとしたら、どれ位の結界を賄えますか?」
『感じから言いますと、今張られてる結界は非常に効率が良い結界です。
加えて、ヒジリ様がこの石を調整されるとしたら...この大陸の半分程度は覆える結界面積を賄えるかと』
まさに狙っていた通りの効果じゃないか?
「アウリさん、これは陛下に良い報告できるね」
「ええ。平和に一歩近付いた...と感じるのは気が早いでしょうか?」
『お嬢さん、気が早いなんて事は無いですよ。
この世界の生きとし生ける物、全ての願いが届いてヒジリ様が来られた、と考えるのが普通です。
私とて悪魔の前では無力。お貸し出来る力がこの程度なのは申し訳ありませんが』
カリディアさんが俺の方へ向かって申し訳なさそうな、それでも良いスマイルをくれる。
そのスマイルで十分ですよ?
ここへ来た理由かぁ...
最初は神様達に嵌められたかと思ったけど、違ったんだよなぁ。
これからはなるべく犠牲者を出さない様に迅速に動かなきゃな‼
『ヒジリ...頑張るなよ。妾にも仕事を残せよ?』
『ヒジリ...燃やす事なら任せとけナ?』
『ヒジリ...もう後ろでお喋りは嫌ですよ?』
『ヒジリさん...ご行使は計画的に...』
今度は皆ヒジリで合わせてきたな...
打ち合わせしてるのか?
エイレーネ様...何かのキャッチコピーみたいになってますよ?
『実際、その石をヒジリ様がお持ちになる限り、結界に使用する意外にも使う事ができます。
この世界の再生はヒジリ様の思うがままでしょう』
そんな大袈裟な...でも色々と試せる事が多そうで楽しみだ。
『カリディア様?頼みますから、持ち上げ過ぎないで下さい。
色々とプレッシャーになりますからね?』
『大丈夫ですよ。これだけ他の神様が居られれば、再生も早いでしょう』
「確かにそれはそうなんですけどね。
皆に頼り過ぎるのもどうかと思いますし」
皆の笑顔も何となくプレッシャーになりそう...
「後はどんなの有りそうですか?」
『そうですねぇ、ヒジリ様はどれだけ魔法の知識がお有りですか?』
「いや、この世界に来て本格的に魔法を見たという感じでして...知識と言われたら、全然無いですね」
『では、こちらの本はどうでしょう?』
「この本は?」
とても分厚い本だ。
外装もしっかりしていて、年代物って感じがする。
古い紙の匂いもする。
本好きとしては欲しい1品...
『この本は禁呪目録とな『却下です‼』り...』
『もう、今でもヒジリさん自体が禁呪的な存在なのですから不必要です』
...酷い言われようだ。
あの本、コレクションに加えたいなぁ...
戦いが終わって、平和になって不必要って言われたら無期限貸与して貰おう。
『じゃあ、こちらなんてどうでしょう』
地図だ...でも地図がお宝?
「その地図は...古くからある地図、という位で誰も興味が湧かず調べられておりません」
あぁ、古くからあるから、お宝ね。
この世界の地図...初めて見るな
...ふ〜ん...ん?
眺めていると陸地が段々立体的に見えてくるんだが?
海の所なんて波が動いてる様に見えるんだが?
シスターズの方を見る、反応は普通。
三姫は?...ニヤついている...
エイレーネ様...笑顔が硬い...何かある...
「俺にはこの地図が立体的に見えてますが、アウリさんとオウナさんにはどう見えてます?」
「「普通の世界地図です...」」
...見る人によって見え方が違う?
「カリディアさん、どういう事でしょう?」
『この地図の名前は...神の願いを地図に託す』
俺は超速でエイレーネ様を見る。
エイレーネ様、超速で目を逸らす。
カリディアさんが続ける。
『今となっては昔の話ですが...
今回の様な異界からの悪魔では無く、この世界で生まれた魔王に頭を悩ませていた神がおりました...』
お?昔語り風?その神は今ここに居ますよね?
彼女は目を逸らし続ける。
『直接世界に干渉出来ない神様にとって、その魔王の強さはこの世界の平和を脅かす存在...
魔王を倒そうとしてくれる勇者を待つしかありませんでした...
その筈だったのです』
あれ?神様は何をしたの?
喋り出さないエイレーネ様の後を継ぎカリディア様が喋りだす。
『神様はなかなか現れない勇者を待つよりも、神器を餌に人間達が試練に向かう様に誘導したのです』
『カ、カリディア様?え、餌とか誘導とかは、い、言い過ぎではないでしょうか?』
エイレーネ様...エグいですね...
『釣られた人間達は与えられた試練に向かい、命を落とす者、生き延びても廃人となってしまった者が殆どでした』
『か、神様だって、ア、アフターケアはされてたのよ?人伝に聞いた話ですけどね』
確かに神様には厳しい一面が有るとは知っていたけど...
せめて見込みのある人だけにしときましょうよ...
そして、自分でフォローすると泥沼にハマりますよ...
『しかしその中で、確かに、純粋に魔王を倒したいと願う者も現れ始めたのです』
それって、試練に挑んだ人達の家族だったりして...
『その者達は試練で親を失くして失望に暮れた子供達。
その晩に神の啓示を受けた、とされております』
まさかのビンゴ...
エイレーネ様?それアフターケアじゃなくて魔王討伐の洗脳手段では?
『か、神様は子供達の悲しみを癒やしてあげようと、ま、枕元に立った...らしいですよ?人伝に聞いた話では...』
結構、裏目に出るタイプの神様か...
ドジっ娘神様か...
そんなタイプが居ても良いかもしれないが...
『ひ、ヒジリさん?失礼な事、か、考えてませんか?』
『神の啓示を受けた子供達は、数多の試練を乗り越え、神器を手にし、遂には魔王を討伐致しました。
この地図と、先程の石はその神様が創り出された物の一つです。
他にもこの世界中に不思議な力を宿したアイテムが残っている事でしょう』
「神様は神器とか創って人にあげたりするんですね。
魔王を倒す武器とかは無かったのでしょうか?」
ゲームとかではかなり定番なんだけど?...
『そ、そんなに簡単に与えている訳じゃないんですよ?
平和を愛する神様には直接殺傷する様な武器は創れませんでした...と伝えられてます』
...エイレーネ様が答えてどうするんですか...
武器無しかぁ、それは魔王倒すのも大変そうだ...
『ええ、エイレーネさ...んの言う通りです。
魔王討伐の志を持った人々の補助となる神器が主でした』
カリディア様はエイレーネ様が神様って知ってるから名指しで詰まるんだ...
『例えばこの地図...ヒジリ様、この国を注視して下さい』
ジアンスロ神国を見詰めてみると、地図がズームアップされていく...まさかの拡大機能。
そして、人形の様な物が動いてる。まさか⁉...
『そうです。建物の内部までは見えませんが、外部は完全に現状を見通し再現する事が出来ます。言わば、神の俯瞰図です』
『試練をクリアした者に適切な仲間を探し出す事を容易とさせ、倒すべき魔王とその配下の位置が分かり、万端の準備をして挑む事が出来る、最高の地図...ですが...』
「ですが?...最高じゃないですか?何か問題でも?」
『非力な人間にとっては心を折るに十分な情報をも与えます』
あっ、魔王が強過ぎたらそうなるのか...
『世界の勇者、英雄を有らん限り集めての魔王討伐となりました。
そして少なくない犠牲の元、この世界の平和は守られたのです』
少なくない犠牲...か。
どうしても魔王の強さに追い付けず、かと言って現状も許せない。
平和を願う気持ちが勝って、無謀な挑戦にも打って出る...
エイレーネ様が震えながら喋り出す...
『だ、だから‼世界が窮地になったとしても、自ら何も出来ない神なんて必要無いのよっ‼必要なのは...』
『必要なのは‼世界を救える神なのよっ‼
目の前で、目の前で‼...何百‼何千‼何万人と愛される人々が殺されてもっ‼』
顔を両手で塞ぎ、へたり込む...
『指を加えて見ているしかない神よりも‼
そんな神よりも‼必要なのは、世界を救える者なのよ‼』
嗚咽と叫びが部屋に木霊する...
辛かった過去なのだろう。
多くの犠牲を強いて救った世界も彼女の望んだ方法ではなかったのだろう。
過去の犠牲が枷となり、今回の襲来では神として行動を起こせなかった...か...
『もう、赦して...私にこれ以上の事は出来ないの...
もう、許して...何も出来ない私を...
もう、祈らないで...救えないから...
もう、分かって...万能ではない事を...もう...』
彼女の両肩に包み込む様にそっと手をあて。
『もう、大丈夫...今度は何とか出来る人が来てくれたから...
でしょ?』
エイレーネ様は両手を顔から離し、涙も拭かず見詰めてくる。
これまで、普通に振る舞うのさえキツかったかもしれない。
俺が作った物を人にプレゼントする事に過敏になってた理由も何となく分かるか...
彼女の頬に手をあて、涙を親指で拭き取りつつ、目を離さず。
『もう、安心して...これ以上好き勝手はさせないから』
ゆっくりとお互いに誓う様に。
『貴女の愛するこの世界を護るから...もう、泣かないで』
最後は勇気付ける様に。
『今ここには、この世界には、世界を護る最強のパーティーが集ったのだから...もう、肩の力を抜いて大丈夫』
彼女を抱き寄せる...
相手は神様で畏れ多いが、抱き寄せずには居られなかった。彼女も両手を回して俺に抱き着く。
『そうね...そうよ。貴方が来てくれた。
無数の世界の中から貴方がここに来てくれた...』
彼女の抱き締める力が強くなる。
『神が神に願うのも有りだったのね。
非力な私を許して。
もうこの世界は貴方に頼るしかないの...』
彼女の温もりを感じる。
神様の仕事って大変なんだな...
「クドい様ですが...俺は神様じゃないですよ。
神様ではないのですが...
偶然が奇遇となり、奇遇は順当となり、順当ならば必然である...
俺がこの世界に来たのが偶然ならば、救済するのは必然...
でしょう?」
ここまでお読み下さりありがとうございます。
ヒジリさんやっと武器を手に入れました。
何時まで素手で戦うのか心配してました。
まさかの短い枝...ですが、最強の枝の様です。
ヒジリさんらしい、と言えば、らしい武器です。今後どう使っていくか、見ものです。




