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平凡を超えた超越者  作者: 髭猫
第二章 異世界初体験
32/54

第32話 御奉納致します

お読み下さりありがとうございます。

改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。

   あくまでもなるべくです。

   内容は変えておりません。(21年2月16日)


「私の方が年上⁉...年下でも頼れる人なんだ...」

「わ、私は安定の年下です‼」


 いや、オウナさん...安定の意味がちょっと分からないよ...


 取り敢えず、皿を集めて食べ始める。

 美味しい食べ物はいくらでも入るね。


 目を合わさない様にしてるが、視線が痛い。

 何ならメイドさんの視線も痛い。


 空の皿が目の前に増えていく。

 やっぱりあさましく思われてるだろうか...

 早く食べ終わろう...


「ふい〜、ご馳走様でした‼」


「ヒジリさんは健啖家なんですね‼少し休まれますか?」

 アウリさんが一気に食べきった俺の様子を心配してくれる。


「全然、余裕です‼()ずは陛下に挨拶してから宝物庫に行きましょう‼」

 食べきった勢いでこのまま行動だ‼


 目の前には空になった皆の皿が...

 変に間を置くと、恥ずかしくなってくるから...


 食べなきゃ食べないで平気なのだが、食べるといくらでも入る体になっちゃったな...

 食糧事情を考えると今後は控えておこう。


「陛下はやっぱり王室ですか?」

「いえ、今の時間だとトレーニングルームに居るかと。

 では、参りましょうか?」


 トレーニングルームとか有るんだ...

 どんな器具が有るんだろ?


 トレーニングルームは同じフロア、一階の端の方にあった。

 質素めの扉を開けると、岩室の広い部屋。

 陛下の他、数名の兵士が稽古(けいこ)をしている。


 大きな岩が置いてあったり、天井から革紐がぶら下がっていたり、壁から木の棒が規則正しく突き出していたり、サンドバッグ風の袋が複数ぶら下がっていたり。


 これは...少○○だ...修行部屋だ...


「陛下、おはようございます。朝から精が出ますね」

「おぉ、ヒジリ殿、おはよう‼

 まだ若い者には負けられんからな‼

 丁度良かった。試合稽古の相手をしてもらえんだろうか?

 今は相手が居らんくてな...」


「ええ、良いですよ」

 俺が部屋の中央へ向かおうとするとアウリさんが陛下に物申す。

「お辞め下さい、陛下。

 ヒジリさんが手加減しても、人間の域を越えています。

 逆に稽古になりません」


「それはそれで楽しみなんじゃが、どうじゃろ?」

「では、ヒジリさんに剣を軽く振って貰いましょう。

 それからでも遅くはありません」


「ヒジリさん、出来るだけ軽く切り上げと袈裟斬りをしてみて下さい。片手で軽くですよ?」


 何か物凄く念押しされつつ、立て掛けてあった幅広の両手剣を渡される。

 これ、両手で持つ剣だよね?警戒し過ぎだよ?


 念の為、人の居ない方を向いて構える。

 やっぱり剣はちょっと苦手だなぁ。


 右手に剣を持ち構えをとる。

 ゆっくりと剣先を下げ、手首を返し一歩右足を踏み込んで切り上げ、パッと左手に持ち替えて袈裟斬り。

 クロスの斬線を描く感じ。

 こういうのはちょっと格好をつけないと。



 ガッ‼



 二振りの直後、前方の壁にクロスの切れ込みが入る。

 あれ?刃先は当たってないよ?軽く降ってるし。


 ってか壁まではまだ2m程あるんだけど...


「ご覧になりましたか?陛下。というか、お祖父様。

 軽く振って斬撃が出るんですよ?

 剣が見えましたか?

 幅広なのに見えないんですよ?

 斬撃が壁を切る音も同時に聞こえるんですよ?

 如何に無謀な事をお願いしようとしていたか理解出来ましたか?

 本気なら城無くなりますよ?」


「いや、アウリさん言い過ぎですって。

 踏み込みなくして、片手で更に軽く振れば斬撃迄は出ない...

 筈ですから」


「では、更に軽く気を付けの姿勢で振って頂けますか?

 切り上げと袈裟斬りで」


「了解‼」


 今度は更に軽くね。格好付けも無しで。

 玩具の兵隊っぽい姿勢で、そこから柳の柔らかさをイメージして両手剣を軽く振る。



 ヒュンッ‼



 タクトを振るような感覚だ。

 うん、良い感じ。今度は斬撃も出ない。

 どう?とアウリさんの方を向く。


「お祖父様。直立姿勢から両手剣を振って、肩から下見えました?

 無理ですよね?

 一瞬で下から上、上から下ですよ?

 音が出てるから動かしたんだなって分かる速さですよ?

 辞めときましょうよ...」


 何かエイレーネ様の(まく)し立てに似てるな...

 俺まで萎縮しちゃうよ...


「そうじゃな...500の悪魔軍団を相手に真っ向切り込み、一瞬で殲滅したんじゃった。

 人間では動きを捉えられんわな...

 儂が悪かった」


「分かって頂けて光栄です。

 まだ、陛下兼大将軍閣下には頑張って頂かなくてはなりませんので。

 ヒジリさんも有り難うございました」


 差し出された両手に剣を乗せる。


「振った剣が熱を帯びてます。

 ヒジリさんのお力に耐えられないのでしょう。

 この様な普通の武器ではほんの数振りで駄目になってしまいます。

 持つとしたらレア金属や高硬度の宝石で造られた武器ですね。

 最良はヒジリさんご自身がお造りになる事かと思われますが...」


「アウリさんってやっぱり将軍なんですねぇ。

 参考になりました。また斡旋(あっせん)所で作らせて下さい」


「斡旋所には炉が無いので、鍛冶屋の方が...」


「ああ、無くても大丈夫ですよ。

 土や石を蒸発させる程の炎を出せる焔姫が居ますから」


『鍛冶の炎は結構微調整が大変なんだゾ?』


 やった事有るんだ....冗談だったのに...


「じゃあ、良い素材が見つかったら協力お願いね‼」

『任せとキ‼いい仕事するヨ?』


 焔姫...のり易いタイプだな...


「そうじゃ、素材で思い出した。宝物庫へは?」


「先に陛下にご挨拶をという事でこちらにお連れしました」

「じゃあ、そこで良い素材が見つかるかもしれんのう」


 一段落したところで、オウナさんからオルトロスの事、アウリさんから宝物庫を見終わった後、他国へ行く事が伝えられた。

 陛下に重ねてお礼を言い、宝物庫へ向かう。


 宝物庫は何と地下に有るらしい。

 空調、湿気、菌の増殖等の対策は万全らしく、部屋に魔法処理がしてあるらしい。

 魔法って便利なんだな...


 太陽?光の届かない通路の壁には松明(たいまつ)が灯してあり、揺らめく炎で照らされていた。


 通路の分岐を二回程曲がった所で宝物庫前の扉に到着。

 魔力で個人識別をする鍵が用いられていてセキュリティもバッチリとの事。

 つまり、扉を開ける役目は決められた魔術師限定という訳ですね。


 オウナさんが鍵を取り出し、鍵穴に入れる。魔力を注入すると、ガシャッ、ギィ...重い扉が開かれる。

 と、同時に室内が全体的に明るくなる。

 天井に光の玉が点在している。照明も魔法なんだ...


 魔法技術が発達したら、電気だのガスだの近代文明は必要ないのかもしれないなぁ...面白い世界だ。


 開かれた先の部屋で先ず目に付いたのは金銀に輝く様々な装飾品だった。

 まぁ、城の宝物庫だから当然有るよね。


 飾りの宝石や金属部の材質なんかも貴重な物なんだろう...


 俺は、装飾にはあまり興味は無いのだが...

 やっぱり女性陣にとってはお宝の様だ。

 ワイワイ言いながら、陳列棚から手に取って品定めしてる。


 訂正。半分は龍神だから、というのも有るかもしれない...


 俺だけ先に奥へと進む。次に有ったのは武具類。

 外装は王族の定番だなぁ。

 飾りが多く、実践には向かない感じ。

 見せびらかす用の武具だな...


 中には魔法が掛けられている感覚の有る武具も有ったが、必要か必要でないかを問われたとしたら...


 まぁ、要らない。俺の手刀の方が良く切れそうだ。


 それにしても広いな。

 博物館程じゃないにしても、興味が有れば飽きる事の無い広さだ。


 更に奥へと進む。等間隔に浮かんでいる光の玉。

 照明の方が興味が湧いたりもするな...

 宝物集めてきた人には気の毒だけど...


 ん?陳列されている宝物?の質が変わる。

 豪華さや機能美が無くなり、怪しさ満載の品に変わった。


 いや、こっちの方が面白いぞ...


 まず、目に入ったのは長さ30cm位、太さ5cm位の見た目は何の変哲も無い真っ直ぐの木の枝...


 普通の木の枝っぽく見えるのにやたらと気になる。


「お気になる様でしたら手に取って頂いても構いませんよ?」

 背後からアウリさんが声を掛けてくる。


「ヒジリさんなら、こちらの方にご興味が出ると思いましたよ」

「良いんですか?」

「元々はヒジリさんのお助けになる物が有ればお渡しする事になってますから」


 棚から手に取ってよく見てみる。

 手に取ると分かるが普通の枝とはやっぱり違う。

 聖なる気配を感じる。


「それは、樹齢1000年とも言われている聖樹の枝です。

 聖樹は北の森の中央に有るのですが、食料採取の折大蛇が暴れて枝が折れてしまいました。

 捨てておく事も出来ず、採取班の皆で分割してお守りにした、その残りです」


 ちょっと気になる。神力を注いでみよう...

 右手で軽く持ち、放出するイメージ。

 手元から徐々に先端まで白金色に輝いていく。


 皆も俺の神力を感じて集まってきた。

 更に注ぐと、天井の光の玉より光り輝いていく。

 眩しくて直視出来ない程の輝きになった。


「木の枝が光るなんて...」

 アウリさんが呟く。


 これ以上、何も起きないかな?

 おかしいなぁ、何か有ると思ったんだけど...

 それがフラグだったのか、枝の光の輝きが増し、元々置いてあったスペースに移動し収束していく。お?これは?


『ご機嫌麗しゅう。異界の神よ...』



 何か現れた...



 まだ肉眼では眩しいが、見方を変えて高位の魂を見る様な感じで見てみる。


 (ひざまず)いている...

 これは小さいながらも精霊さんだな?


「初めまして。そして、俺は神様じゃないよ。

 ヒジリサトシって名前だよ、宜しくね。貴方は?」


『カリディアと申します。以降お見知りおきを』

「あぁ、もう堅いですよ?普段喋る感じで話しましょうよ?」


『無理でしょう...これだけの神の前に居たら...』


 そうなの?後ろを振り返る。皆、苦笑い。

 シスターズは同じ様に跪いている。


「少なくとも、俺は大丈夫ですからね?神様じゃないからね?」 

 カリディアさんの方を向いて、念を押しておく。


『貴方があのヒジリ様でしたか...お噂はかねがね。

 この世界に来られたのは、やはり?』


 あのヒジリ様ってどのヒジリ様よ?


 お噂って何処の?何の?


 もう突っ込みどころ満載だ。


「その為に来たんだって格好つけたいけど、この世界に来たのは偶然ですよ。

 それより、噂って?」


『神々の関心事は私達にとっても関心事、という事ですわ。

 お熱になってる精霊もおりますから』


 はは、もう空笑いが止まらない。

 エイレーネ様の方を見ると、渋々の仕方無しって顔してる。

 噂する程の者でもないんですが...


『そんな小さい枝からお呼びになるなんて何事かと思いました』


 あれって呼んだ事になるんだ...


「ゴメンね。不思議に感じた棒だったから試しただけなんだ。

 お仕事中だったら、本当にゴメンナサイ」


 ここは素直に謝っとこう。

 こういう姿勢は大事だと思う。


『何を(おっしゃ)いますやら。

 この部屋でその枝を手に取られたのも御縁です。

 ここでお会いするのも運命だったという事だけです』


「そう言って貰えると有り難いですよ。

 この部屋にはこの国の王様が使える物が有ったら貸してくれるって事で来たのだけれど。

 何か使える物とかカリディアさんの目から見て有りそう?」


 精霊様の目は俺より確かだと思う。


 迂闊に呼び出してしまう俺よりかはね...


『そこかしこに面白い物は有りますが...

 先ずはその枝でしょう。

 先程の様に神力を注ぎながら、お好きな武器をイメージしてみて下さい』


 言われた通りにしてみよう。イメージは日本刀。

 日本人だからこれが一番しっくり来るんだよね。

 剣道も少ししてたし。


 木の枝から白金色の輝きが(ほとばし)る。

 光の帯がイメージした長さまで伸びると、輝きが収まり...


 そこには一本の日本刀が。

 刃は長く1m程。波紋が美しく、業物に見える。


「凄いね、この日本刀‼何で出来てるの⁉

 凄いよ⁉この質感‼日本刀だよ⁉」


 今まで模造刀しか見た事がないので、ボルテージマックス‼


『本当に面白い御方なのですね。

 木の枝ですから材質は木ですよ?但し聖樹ですけど』


「質感的にとても木には見えないんだけど...」


『ただの木ではありませんから。

 ヒジリ様の神力を元に変換されていますので、神器クラスです』


 笑いながら、説明してくれる。これが...木?

 どう見ても名匠に鍛錬された日本刀にしか見えない。


『鍛冶神が創られる武器には見劣りするかもしれませんが』


「いえいえ、これは凄いですよ。

 切れない物は無いって感じしますもん」


『まだまだ、驚くのはこれからですよ。

 今度は違う物をイメージしてみて下さい』


 えっ?じゃあ、今度は何にしようかな?

 そうだ、良い事思い付いた‼出来るかな?


 今度は生き物をイメージして神力を注いでみる。


 長刀タイプの日本刀が輝き、大きくなっていく。



 バサッ‼



 大きく翼を拡げた白金の鷹になった。

 鷹は俺の手の上で翼を折りたたみ、こちらをじっと見ている。


「ちょっと飛び回ってみて?」

 俺が合図を出すと、宝物庫の天井付近をグルグル飛び回る。


 そこからの視界の共有‼

 おっ、おお‼グルグル回ってるよ〜。

 不思議な感覚だ。皆や俺の姿が別視点で確認出来る...

 おおっと、目が回る〜‼お試し終了‼


 視界を元に戻し、肩の上に着地させる。

 光源がすぐ横だけに若干眩しい...


『流石はヒジリ様。発想が普通ではないですねぇ。

 普通は武器を想像する方が多いんですが。

 とまぁ、ほんの小さな木の枝ですが、ヒジリ様の神力次第で万物に変換可能です。

 その大きさもイメージとお力次第です』


 オレはアウリさんの方を見る。

 あっ、まだ跪いている...


「アウリさん‼アウリさん‼

 これ、借りてもいい?」


「貸す等ではなく、御奉納致します」




ここまでお読み下さり有り難うございます。

少し意外だったのは、ヒジリさんが健啖家だった事。そんな所まで平凡を脱却してたなんて。

今後、どんな分野で非凡さを発揮してくれるか楽しみです。

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