第29話 冗談で言ってるだけですよ?
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月16日)
『来れるか?死神?』
小夜姫の前方に薄っすらと人影ができ、徐々に濃くなっていく。
『これは久し振り、黒龍さん‼...何故に人型⁉初めて見た‼』
現れたのは漆黒のローブを身に纏い、背中に大釜を固定している怪しげな風貌の...神様だな...
背丈は小夜姫と同じ位大きい。
ただ、ちょっと雰囲気は異様...かな?
フードを目深に被っており、顔は見えない...
と言うか、顔が有る位置は闇の様に漆黒で何も見えない。
フードが浮いている様にも見える。
この神様、絶対ホラー系の神様だ...
ホラーが苦手な俺にとっては...正直ビビってる。
『妾の名前は小夜姫じゃ。ヒジリと友達になったからの』
俺の肩を優しく撫でながら、俺を紹介?してくれる。
俺がビビってるの、分かってるみたい...
女の子とホラー映画見に行って、女の子よりビビってるの見られた時位に恥ずかしい...
いや、見に行った事無いけど...
『こやつは冥界の管理者の一人でな。
まぁ、死神統括って感じじゃな。
魂を扱わせたらなかなかのもんじゃ』
「はじめまして。
こちらに来るの大変じゃありませんでした?」
まだ、若干ビビりながらも挨拶してみる。
『はじめまして。
なはは、普通の神とは違って、制限無し‼
なんせ冥界送りはどの世界でも大事な仕事でね。
それはそうと、貴方...人間ではない...よね?』
この言葉で正気に戻れた...
「よく間違われますが、人間ですよ」
『サトシは人間モドキだナ‼』
『神を凌駕する人族、でしょう』
『妾の獄炎を全身に浴びても火傷一つせん人間じゃ』
『話をまとめると、その辺りの話はそっとしておいた方が良いという事ですね。分かりました』
例え格好が怖くても話が分かる神様は好感が持てる...
『でな、死神であるそちに仕事じゃ。
この世界の魂をきっちり門まで連れて行ってやって欲しい』
『来た時から感じてましたが、真っ向喧嘩売ってくれてる奴が居るみたいですね。
上等ですね...腕が鳴ります。
ったく、ここの担当は何してるのやら...』
...魂送るのって担当決まってるんだ。
そりゃ無数に世界は有るんだもんな、当然か...
ローブから出ている手を見詰める。
普通の手をしている。大きいけれども、線の細い手。
死神って肉体が有るんだな...腕も鳴るんだな...
『ヒジリさん...あぁ、ヒジリさんと呼ばせて貰いましょう。
ヒジリさんが私を恐ろしいと思えば骸骨にだって、見えますよ?』
やっぱり、神様は心を読むのがデフォルトらしい。
「小夜姫の知り合いというのが分かっているので恐ろしく感じる...まではないですね。
ビビってますけど...」
『死神を前に安心するとは本当に面白い。ほら』
死神指差す方を見ると、この世の終わりを感じている様な顔をして小刻みに震えているシスターズ...アウリさんとオウナさん。
『死を告げる神が現れたら、彼女達の反応が正解と思いますよ?生者からすれば死は恐怖と直結です』
これは...常時発動型の精神衰弱が効いているんだな...
もう少し続けば彼女達の心臓も止まりそうだ。
とりあえず、結界だな...
二人に耐精神異常型の防御結界を張ってあげる。
同時に精神強化も。うん、これで大丈夫。
『そう簡単に神の能力を防御されても困るのですが...
まぁ、ヒジリさんだから...仕方無いですね』
会って間も無い死神様もお決まりの言葉を使い始めた...
そんなに早くに諦めたら駄目でしょう...
『で、いつから掃討します?
早く死者を冥界に連れて行ってあげたいのですが...
今すぐにでも』
やっぱり神様なんだなぁ。
自分の仕事の範疇に対しては凄く真面目だ。
「分かりました。では、今からお願いして良いですか?」
俺は握手をしようと右手を出す。
俺の右手を見詰めて一拍。
『なるほどなるほど。これはご丁寧に』
死神様とガッチリ握手。
『死神と握手など神でもやらんぞ』
小夜姫大笑い。
『まぁ、例え神でも耐性が無い神は即死しますからね』
クスクスと死神様。
上品に割と恐ろしい事を仰る。
「神様が即死って凄いですね」
握手しながら死神様を見る。
あっ、顔が見えた...
ボサボサの黒髪が目の下まで伸びており、辛うじて切れ長の目の輪郭が分かる。瞳は深紅。
妖しく光る瞳を見つめていると吸い込まれそうな感覚に陥る。
切れ長の目が更に細められ、引き結ばれた口角がすっと上がる。
『黒龍さんが入れ込むのも分かりますね。今なら...ホイッ‼』
握手した手を離し、両腕を上げる。
恐ろしい勢いで死神様が増殖?分身?していく。
もう、見渡す限り死神様だ。
『いつもなら配下を呼び寄せる所ですが、貴方が居るこの世界ではこちらの方が早く片付きますね』
『掛かっても二日で片が付くでしょう。成功報酬は貴方の命で...』
心底、ドキッとした。
そうか死神様だもんな...どうしよう?
俺的には冗談っぽく聴こえるけど、辺りはザワッとする。
結界の中に居る二人からも戦意が感じられる。
皆の緊張感が半端無いぞ?一触即発?
『...と言うのは冗談で、私にも名前を下さいな。
何処に行っても"死神"としか言われませんからね。
神格には上下も有れば左右も有るのに...
因みに私は最上です』
涼しい顔の死神様。この状況を楽しんでるなぁ...
「確かに死神だと総称っぽくて寂しいですね。
それで良ければ喜んで。」
『では、お約束も出来た所で行ってまいります』
見渡す限りの死神様が足から塵になるかの様に消えていく。
これで、杞憂の一つは無くなりそうだ。
『サトシが冥界にも手を出したゾ‼』
『神脈が広過ぎます』
『妾がここに居る時点でそうなるわな』
『まぁ、ヒジリさんですから...』
変な緊張感から解放されて、皆、自分を取り戻した様だ。
「あの?死神様は何処へ?」
戦意を解いたアウリさんが、結界の中から聞いてくる。
結界を解きつつ説明してあげる。
「この世界の報われない魂を冥界に送ってくれるんだよ。
村や街で殺された人達は魂をこの世に縛られて利用されてるだけから。
ただ倒すだけじゃ冥界にも行けないらしくて」
「た、例えそうだったとしても、し、死神と契約してまで救おうとなさるのですか?」
オウナさんはまだ興奮気味だな...
「ゾンビと化した人達を焔姫に火葬してもらっている時に感じたんだ」
ゆっくりと、諭す様に。
「器を無くした魂の中には罪を犯した人も居るかもしれない」
生涯罪を犯さない人間はきっと居ないだろう。
「でも、審判の門で裁かれて、違う世界へと行く権利は有る」
その為に様々な世界が用意されていると考える。
「その先で善悪に関係無く魂は進化するべき」
善なら善なりに、悪なら悪なりに...
『魂の進化は他の誰にも止められるべきではない』
最後、ちょっと力がこもっちゃった...
でも、伝えたい事は言えたかな?
「ご自身とは異なる世界の住人でも...ですか?」
「それなんだけどね。
自分が住んでいた世界とは違う様々な世界が有るのはつい先日知ったんだ。
そしてこの世界に来て、感じたんだ、朧気ではあるけれど。
きっと全ての世界は繋がっている。
この世界も、俺が住んでた世界も、まだまだ沢山ある他の世界も。
それが自然な事なのか、はたまた誰かの意志なのかはスケールが大きすぎて分からないけど」
『それは、いずれ分かるでしょうね。
その時が来てもヒジリさんはヒジリさんでしょうけど』
エイレーネ様は笑いながらお決まりの文句。
「だから、異世界だからとか、異国だからとか、異種族だからとかは関係ないよ。
自分の力で助けてあげられるなら、生者も死者も等しく助けてあげたい。
例え自分が危うくなったとしても」
『おいおい、やっぱり私より立派だゾ?』
『人間らしくもあり、神らしくもあり、ですね』
『この先の旅が楽しみじゃ』
アウリさんとオウナさんは...
再び跪き、両手を組み合せる。
あっ、ちょっと光ってたかな?
「「神のご意志に感謝を...」」
「何度も言ってるけど、違うからね。さっ、立って立って‼」
二人を立つ様に促し、空を見上げて、時間感覚の確認。
「今ってやっぱり深夜だよね?」
空は満点の星空。星好きには堪らない光景だろうな。
「そうですね。夜も深まっております」
アウリさんがさも当然という感じで答えてくれる。
そりゃ、そうだよね...
ごめんね、変な事聞いて...でも、もう少し聞かせて?
「深夜が長時間続く...とか無いですよね」
「後、四、五時間位で夜明けですね」
オウナさんもさも当然という感じで答えてくれる。
すると、時間の経過は元の世界とそう変わらないな。
「じゃあ、もうすぐ丸っと一日経つんだ。濃い一日でしたよ。あっ...」
すんごい、忘れてた...
オルトロスの体格に合わせて鍛冶屋さんに装具作って貰うんだった。
あいつ等が変なタイミングで攻めてくるから...
「明日、朝からオルトロスを呼んで、将軍達にも来て貰って、鍛冶屋さんに連れて行かなくちゃね。
それから、皆で宝物庫を見させてもらって〜。
それから、他国も心配だから、行く準備をするかな?
あっ、俺が壊しちゃった測定具を作るのが先かな?
これは明日も忙しい一日になりそうだよ‼」
二人を見ると、若干呆れている様な?
「最初の王に朝一番で伝えれば良いでしょう。
最後に出てきた道具は当面使わないので、この世界が落ち着いてからご協力して貰えれば嬉しい...という程度です。
何もヒジリさんが全てやる必要は無いです。
他国救援は残念ながら我々の力では及ばないと思いますので、ヒジリさんのお力が必要かと思いますが...」
アウリさんは将軍っぽくなく宰相って感じの意見。
あのブローチのせい?
「あの...ヒジリさんって疲れないんですか?
それに、ずっと龍神様を三柱も召喚されてますけど、神力とか大丈夫なんでしょうか?」
オウナさんは魔術師らしい質問。
疲れてると言えば疲れてる様な?
そうじゃないと言えば...疲れていないな...
全然気にしてなかったけど、神力の枯渇も感じない。
「ん〜、多分疲れていないね。
神力の方も大丈夫だと思うよ。この世界の魔素が濃いからかな?」
『コスト高い黒龍を合わせて呼んでも疲れてないとハ、龍神丸ごと呼べるナ!!』
『相性が良い私を軸に考えるなら、今の組み合わせは最高に疲れる筈ですし』
『そもそも、ヒジリに軸なんて有るのか?どう考えても無いじゃろ?』
『龍神が三柱、しかも人型。
この世界を救うのにはもうお腹一杯の柱数ですね。
お釣りの方が大き過ぎますね。
お釣りの方が大きくてこの世界が壊れそうです。
因みに魔素は疲労と関係ありませんよ。
ヒジリさんのは神力が必要なのですから。魔力じゃないです』
エイレーネ様がちょっと怖い...怒ってる?
正直、呼び過ぎなんじゃないかなぁと、何となく不安には思ってたけど、世界が壊れる所まで行っちゃうのかぁ...
皆には全力で手加減して貰わないとヤバい事になるんじゃないかな?
『大丈夫だヨ?白龍呼べば上手く繕ってくれるよ』
焔姫さん?壊れるの前提で話さないで...
『氷結しても、いずれかは溶けます』
氷姫さん?世界を氷漬けにされたら、大半の生物が死滅しちゃいますから...
『元々、妾は破壊専門じゃからなぁ...』
小夜姫?間違っちゃいないかもしれないけど、世界を壊すほど本領発揮しなくても良いと思うんだ...
「皆は相当強いんだよ?
エイレーネさんの心配も理解出来る位強いんだよ?
世界が壊れたら大変だよ?
皆手加減してよ?」
『私の炎に普通に触れるサトシが言うのカ?』
『一番加減しなきゃいけないのはヒジリさんだと思います』
『そもそも妾達がこれ程強いのは、ヒジリの神力あっての事じゃしの』
皆から一斉砲火を浴びた...
俺、十分コントロール出来てると思うんだけど?
『間近でバトル見たの氷龍だけだからなァ...』
焔姫は倒しまくった後に呼んだんだった...
『そんなにか?』
小夜姫が氷姫に問う。
そんなんでもないですよ?
主に自分がどれだけの事が出来るか試してただけだから...
『居るだけで神力を消費する私を召喚して後ろに控えさせて』
それはゴメンナサイ。
戦いたかったんだね...
『異なる系の神威を同時に行使できる』
多重発動がマルチプレイヤーの基本だからね。
『攻撃対象も全体と個体別々に同時制御ができて』
だって、陸と空で攻められてたし...
『五大元素だけじゃなく系外の魔法も使える』
それは応援してくれている神様達のお陰だと思うんだ...
『中級悪魔程度の物理攻撃なら防御せずにノーダメージ』
きっとすっごい硬い神様も応援してくれているんだよ。
『物理攻撃をし始めたら、手刀で悪魔がぶつ切り』
きっと闘神とか武神とかそういう神様も応援してくれているんでしょう。
『その他、諸々』
あっ、面倒臭くなったな?
『キレたらこの世界が次元ごと破壊されます』
温和な僕がキレる訳ないじゃないですか。キレるって余程よ?
『この世界が消滅、だけでは収まらんか?』
小夜姫も、消滅基準で話を進めないで...
『断言できますね』
そんなに言い切らなくても良いと思うんだ...
『キレる前に妾がそっと抱きしめてやるからな...』
『私もレロレロしてあげるヨ‼』
『では私は啄むとしましょう』
エイレーネさん、最後をそれで締めますか...
男としては確かに癒やされるとは思う。
癒やされるとは思うが、思うんだが...
少し違うとも思うんだ...
「あの、皆さん...そんなに危険人物じゃないと思うんだ...
ちゃんと加減できてるからね?それにキレないよ?」
『まあ、ヒジリさんですから仕方無いですね...』
「もしもし、エイレーネさん?
そこは仕方無いは不味いと思いますよ。
この世界の存亡を賭けて、しっかりこの世界の事を考えて、自分に出来る事を模索してるんですから...大丈夫です‼」
シスターズにサムズアップする。
危険人物じゃない事をアピール‼
「「神の御心のままに...」」
「...俺は神様じゃないからね...」
『まぁ、何だかんだ言うてもヒジリじゃ。
被害を最小限に食い止める戦い方はするじゃろうて』
『そうです。圧倒的な力も使い慣れれば制御もしやすい』
『て言うか、あたしらが戦えば、ヒジリが頑張らなくてもいいんじゃないかナ?』
下げといてからのアゲ。
この三姫は人心を掴むコツをしっかり心得ている。
龍神様...恐るべし...
「今度からは皆にもフォローして貰って、頑張るよ」
『いや、だから頑張らなくても良い様にあたしらが居るんだっテ...』
『この世界を壊さない様に、という意味でしょう』
『後から死神も仲間になる筈じゃから、魂の行き先は保証されるぞ?』
「ちょっと、皆酷くないかな?流石に凹むよ?」
涙目になりそうだ...
『皆、冗談で言ってるだけですよ?それはそうと、皆さんお風呂に入りません?』
ここまで、お読み下さり有り難うございます。
ヒジリさんの周りが段々カオスになってきました。彼に親しい人達?神様達?が増えるのは喜ばしい事ですが、今後が怖いです。




