第28話 来れるか?
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月16日)
「まぁまぁ、本題はこれからなんですから。
何でもこれから呼ぼうとしている龍神様は一筋縄ではいかないらしいですから。
気を引き締めていきましょう‼」
『サトシは少し緩い方が良いヨ‼』
『強大過ぎると何をしでかすか...』
...じゃあ、加減して呼ぼう。
加減してるつもりなんだけど、龍神様は巨大なんだよね...
元の世界じゃイメージした大きさで呼び出せたのになぁ...
後は...最初から怒らせない様に失礼の無いセリフにしてみよう。
今回は戦闘お願いする訳じゃないからソフトランディングが希望だ。
「来たれ、冥界の守護神、黒竜よ。
来たりて、我にその深淵たる知恵と知識の一端を与えたもう」
来た...気配がする方、空を見上げる。
徐々に霧状の暗闇が広がる。
星空に有って、明らかに異質。
広がり続ける闇...
夜じゃなかったら、空が明るかったら、この世の終わりと感じる人も居るんじゃないかな...
闇の中に蠢く黒い龍。
闇を纏いし龍神様ですか...
手加減した筈だけどやっぱり巨大だ。
二姫より大きい位だ。
紅く光る瞳が...大き過ぎるよ?
...ホラーチックで怖いよ?
『我を呼び出したのは主か?』
やっぱり腹に響くアルト調。
ソプラノ系って居ないのかな?
「はい、そうです。
俺の名前はヒジリサトシと申します。
宜しくお願いします」
丁寧に、失礼の無い様に。
『何か、おかしいとは思わぬか?』
決まり文句からの次がこれですか...
「...はい?...何がでしょう?」
『ふむ、気付かぬか?』
何だか、何処か不満げな、いや不貞腐れてる様な?それとも拗ねてる様な?
そう言われても、思い当たる節は何一つ無い。
「申し訳有りませんが、何も...」
『クスクス...今までと少し違いますからね』
後ろを振り返る‼
エイレーネ様、気付いてるの⁉
『そだネ...黒竜も普通に呼んで貰いたかったんだナ‼』
「え?どういう事?普通に?今、普通じゃないの?」
『炎龍、少し足りません。サトシさん、私達との違いは?』
氷姫から問われる。
...そう言われても...
「聞きたい事を、教えてもらう...こと???」
まだ分からない...ひたすら疑問形だ。
『で、その後は?』
「ありがとうございました???」
『本当に、天然だネ‼お礼を言った後ハ?』
焔姫に言われてしまった。
あの姿の彼女に言われると妙に凹む。
「お仕事頑張ってください...ん?違うな...」
「またお会い出来る日を楽しみにしてます?的な?」
『と、なりますわね』
エイレーネ様、大爆笑。
『むがぁっ‼許さん‼‼許さんぞぉ‼‼‼』
すっごい悪役の人が言いそうなセリフだ。
しかも、むがぁって...
『貴様‼妾から知恵と知識を欲するだけ...
それで終わりかっ‼我と勝負しろっ‼』
話がややこしい方向に...どう修正しよう?
この龍神様の傾向と対策を...間違えた?
冥界の守護神って強さ半端無い感マックスなんですけど...
見回すと、皆は俺と目を合わさない様にしている...
俺が悪者ですか?俺一人で対処しろと?
...どうしろと言うんだ?
「例えば、貴方の望む事と引き替えに...というのはどうでしょうか?」
『面白い...ならば尚更の事、勝負だっ‼』
...二姫を見やると...
仕方無しの表情で顔を横に振っている...
あぁ、こういう龍神様だったのね...
激情型にはなりたくないな...
『我が勝ったらお前を地獄に...囲ってやる‼』
え?...勝ったら?それが望む事?
場所が地獄というのは、まぁ、冥界の龍神様だから仕方が無いが...
しかし、最後は微妙な言い回しだな?
普通そこは「落とす」でしょう...
『我の咆哮を前に、そのキョトン顔が...堪らん‼』
この龍神様はテンション上がると述語を間違える龍神様?
一番間違えては駄目な部分だと思うんだ...
そこは「気に食わん‼」とかじゃないかな?
『喰らえっ‼獄炎の業火‼』
凄い...どういう攻撃か教えてもらった...じゃなくて‼
大きく開かれた顎から炎が走る‼
見た目から普通の炎とは違う。
紅と黒が混じった炎だ。
どっちかと言うと黒い炎と評した方が良いかもしれない。
炎玉が地面に当たり、俺を囲む様に炎の壁が走る。
『サトシ‼触るなヨ‼』
『魂が悪性なら、魂が燃え尽きるまで消えません』
二姫、それはフリ?...
触れって言ってる気がするのは気のせいか?
『その炎、地獄の炎と同じ炎ですよ?耐えられるかしら?』
エイレーネ様...解説有り難うございます‼
つまりは触れと?
「「ヒジリさん‼」」
シスターズは心配してくれている。
そう、それが普通の反応ですよね?
選択肢は二つ。避けるか、止めるか。
止めるなら、左手?右手?
神の左手、悪魔の右手なんて、よく聞く表現な訳だが、そうなると左手で止める事になる訳だが...
...不毛な迷いは止めよう。
答えはもう出てるじゃないか...
手なんて言わずに、全身で受ける...
いや、浴びると言い換えても良いか...
迫り来る黒い炎壁に、更に黒い炎玉まで飛んでくる。
条件反射で避けようとした体を強引に抑え付け、力を抜いて両手をだらりと下げる。
もしかしたら、魂が焼け爛れるかもしれない。
もしかしたら、一生地獄に囚われるかもしれない。
もしかしたら、魂さえ残らないかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら...
もしかしたら、俺が俺を許せない...んだろうな。
すっと目を瞑る。
四方八方から獄炎を浴びる。
この世に有らざる炎...地獄の炎。
炎の壁が幾重にも津波の様に迫ってきて飲み込まれる。
黒炎を全身に浴びながら思う。
この炎は神が断じた罪を燃やし尽くそうとする炎だ。
魂に巣食う悪を根源から消滅させようとする苛烈な炎だ。
...思った通りの炎だ。
俺の過去の過ちを断じてくれる炎だ...
「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ヒジリさんっ‼‼」」
シスターズの叫び声が遠くに聴こえる。
きっと、俺の体は黒い炎で燃え盛っている様に見えているのだろう...
俺は罰を与えられるべきだ。
自分の家族を異世界に飛ばしてしまったのは罪なのだから...
自分に気を許してくれた唯一の家族を、
例え邪竜に襲われたとはいえ
その魂を異世界に転移させてしまった罪は消えない...
その罪は罰を以って償わなくてはならない...
『だからこそのこの旅なのだろう?』
「...黒龍?」
声を掛けられ目を開ける。
俺の体は、魂は...燃えていない...熱ささえ感じない。
俺の体は未だ黒炎に包まれているのに...
『主は主の信念を曲げず、例え家族が居ない世界でも見捨てず、世界を救おうとしておるではないか』
黒炎が薄くなっていく。
『この炎は主の様な魂を燃やす為の炎ではない...』
先程とは打って変わり優しく包む様な声音。
『消える事の無い炎でその身を焼かれ、その苦痛をもって過去の過ちを悔い改めるものだ。
その苦痛から開放された時、魂は昇華する』
黒炎が消える...
自分の体を確認する。火傷一つ負っていなかった。
魂も...壊れてはいない様だが...少し変だ。
火傷を負っていない変わりに体が白金色に光っている。
皆の方に振り返る。
『当然の結果です』
『まぁ、サトシだしナ‼』
『あ...セリフ盗られた...ヒジリさんですから‼』
「「ヒジリ様...」」
アウリさんとオウナさんは跪いて、俺に向かって手を合わせている。
『それが、お前の魂の色、何とも神々しいではないか。神よりも神しているぞ?』
「黒龍。君は俺の苦悩を分かっていたんだね...」
星空を被っていた闇が凝縮し、轟々と燃え盛る黒炎を身に纏いつつ、2m程度の大きさの人の形となる。
『我だけではないぞ。ここに居る神は皆見抜いておるぞ』
もう一度、皆の方を見る。
二姫もエイレーネ様も皆、優しい笑顔だ。
『有難う、黒龍。有難う、皆...』
『なに、礼には及ばん。必要の無い心の棘を抜いたまで』
『『『礼には及ばん‼』』』
光っていた体が淡く淡く弱くなり、消えていく。
「棘...か。確かにそうかも。
家族が死んでいないと聞いてほっとしたけど、何処かも分からない所に転移させてしまった事を悩んでた。
殺した事と変わりないのでは?って...」
アリエル様から告げられた時からずっと思ってた。
「あの時から自分だけ変わらずにのうのうと生きている事は許されるのか?ってずっと心の隅で考えてた」
異世界に来てからもずっと...
「大事なのはこれからどう行動するかだね?頑張るよ。
有り難う...」
『さて、心の整理がついた所で...まだ妾に知識と知恵のみをご所望か?』
「俺が悪かったよ。ゴメンね。
良かったら、一緒に旅をして支えてくれないかな?」
『良いのか?龍神と言っても冥界の龍神じゃぞ?
少々毛色が違う、忌み嫌われても仕方の無い龍神じゃぞ?』
何も言わずに右手を差し出す。
黒龍は差し出された右手を見詰め、俺の顔を再び見る。
『まったく...とことん可愛くて、男前よのう‼』
握手をしたかと思うと、勢い良く俺を引き寄せる。
左手ですっと胸を、首下から鳩尾の辺りまで撫でられかと思うと、ボタンが外れ、胸が露わとなっている。
はい?黒龍さん?器用ですね...
って、何をなさるおつもりで?
そのまま、身を屈め胸の中央、心臓の辺りに優しく口づけをされる。
『今より貴公の心の枷は全て妾が喰らおうて』
抱き寄せられ、耳元で囁かれる。
広がる安寧。水面に広がる波紋の様に...
緩やかに、穏やかに、優しく広がる...
黒炎が一瞬燃え盛り、人型に圧縮される様に縮んでいく。
元の人型より一回り小さくなった黒龍は長い黒髪の後髪を結い上げ、簪で止めている。
体の色は小麦色。日焼けした様な感じだ。
妖艶さが漂う顔立ちと後ろ髪が数筋垂れ下がっているうなじからは大人の色香が漂ってくる。
着物の生地は黒が基調で白金色で龍が刺繍されている。紅の瞳でこちらを睨んでいる様に見える。
胸元は着崩れ、谷間が露わとなっている...
大人だな...かなりの...
黒龍は氷姫と焔姫を順にゆっくり見てから自分の姿を確認する。
『にしても、なんだ...氷龍と炎龍を見ておらんかったら未だに今の格好が信じ難い...』
『私の名は氷姫です』
『私は焔姫ナ‼』
『名...じゃと?』
『サトシさんから貰いました。見てなかった?』
『可愛いだロ‼聞いてなかったのカ?』
バッ‼勢い良く俺の方に顔を向け、無言で待つ。
だよね...そうなるよね。
大人っぽいし、背も高いし...
だけど冥界だからと言って恐怖を煽る様な名前はどうかと思うんだ。
見た目は女性な訳だし...
「小夜姫...なんてどうかな?
もっと強そうな...『今から妾は小夜姫じゃ‼』名...」
『黒龍に小夜姫だなんて斜め上過ぎです』
『大きいのに小夜だっテ‼ププ〜‼』
『一段落した所で...ヒジリさん。胸はだけたままですよ?』
エイレーネ様、ご指摘有り難うございます‼
ですが、少し怒ってます?
さっきまでお祈りポーズだったシスターズも掌で顔を隠し、指と指の間からこちらを見ている。
二人の仲が良いのは分かったから余計に恥ずかしくなるからヤメテ...
慌てて、シャツのボタンを掛ける。
胸の辺りのボタンを掛けていると、先程の光景を思い出してしまい、手が止まる。
顔の火照りを感じつつ、慌てて再始動。
急いでボタンを掛けていると...
『なるほど。主は初いのう...』
小夜姫がニヤッと笑って、手を伸ばしてくる。
『これ以上は黒龍でも駄目です』
『黒龍はえろイ‼』
『ヒジリさんを取り巻く環境を察して下さいね』
二姫プラス一柱の鉄壁防御が瞬間的に築かれる。
素朴な疑問良いでしょうか?...
胸に口づけするのは何故に許せる?
『まぁ、いくら妾とて天界を敵には回したくはないわな。
して、聞きたい事があったのではないか?』
黒龍は何事も無かったかのように話を進める。
やっぱり大人だな...。
敵拠点を調べに行った時に村で起こった出来事を話す。
擬音が多いホラー映画の説明をしてるみたいだ...
『ふむ、縛魂、反魂か...操屍術が使える奴がおるようじゃな。
どれ、この近辺の術の気配を探ってやろう』
小夜姫は目を瞑り、意識を集中している。
不謹慎なのだが、とても不謹慎なのだが...
その姿も艶やかだ...
一時後、目を開け厳しい現実を俺に突き付ける。
『この近辺の魂はほぼ縛魂、反魂されておるな。
器が消失した者は怨霊、骨だけでも残っておるのは生ける死体となっておる。
気になるのは術師の気配を感じ取れん事じゃな。』
「その魂は倒したら、無事に審判の門に送られるのかな?」
焔姫がゾンビを火葬している時に思った事を聞いてみる。
『術を破らん限りは魂は解放されん。
残念じゃが、炎龍の倒し方なら実体を持たない怨霊となるか、他に利用されるかのどちらかじゃな』
「他に利用?」
『魂を捕食する魔物、大概は死霊系じゃな。
その餌付けや悪魔の食糧じゃ。
後は霊力場の維持に使われたりもするな』
「小夜姫なら何とかできるかな?」
『ん〜、小夜姫か。良い響きじゃ...
妾でも出来るが数が数じゃ。時間が掛かり過ぎる。
使える奴を呼んでやろう』
再び、目を閉じとんでもない神様を呼び出そうとしてる。
『来れるか?死神?』
ここまでお読み下さり有り難うございます。
どうやらヒジリさんの周りは龍神様で固められそうな勢いです。彼の性格がオープン過ぎて怖いです。
黒龍さんが呼び掛けたのも怖そうな神様ですし。どういう展開になるのか、ヒジリさんらしい事にはなるんでしょうね、きっと。




