第22話 始めます...
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月10日)
「すいませ〜ん。門開けて下さ〜い‼」
あの人だ...無事だった...安堵する。心底...
「開門だ‼急げっ‼」
きっと無事だろう。
無事だと分かってもいても、早く確認したい。
「ギギギ〜....‼」
久方振りに街門が開かれる。
この状況だけでも奇跡だ。
開ききるのを待てず、一歩飛び出す。
そこには...
汚れの一切無い純白のロングコートを纏った彼、その横には...見た事もない服を着ている女性...誰?
いやいや、見る所が違った...
彼の足元には身動き一つしないあの軍団長...死んでいるのか?
「あっ、アウリ将軍‼捉えてきましたよ。唯一喋れた敵兵を」
敵兵っていうか、軍団長だよ?だよね?
「ご無事で何よりでした。遅参の程ご容赦を」
駆け寄って抱き締めたい気持ちを無理矢理抑えつけ、頭を下げる。
「いえいえ、意外と早く片付いたもので。
大丈夫ですよ。頭を上げてください」
『意外と早く?冗談でしょう。
最初からそのつもりだったのではないのですか?
あれは地獄ですよ?』
「いやいや、本当に。地獄かどうかは置いておいて。
これからの戦闘の為に色々と試しておきたかったから、もう少し時間が掛かると思っていたんだよ」
『試シデアレデスカ...』
「おかしいな...ツッコミ役は俺の筈なのに...」
何故そんなに余裕が有るの?
何故そんな会話が出来るの?...
いや、そんな事よりも‼
「あの...そちらの方は?」
聞きたい事は他にも有る筈だが...
非常に不謹慎ではあるが...
軍団を殲滅した手法よりも、倒れている軍団長よりも。
ヒジリさんの傍らに居るあの女性の方が気になる。
「ああ、見た目が全然違いますもんね。
先程、俺の友達になってくれて、衣替えしたんです。
あのオルトロス達を氷壁で囲ってくれた大きい龍の...
氷龍さんです‼」
ヒジリさんの声が弾んでる...
ちょっとぉ...
綺麗過ぎない?盛り過ぎてない?化け過ぎてない?
そして、ヒジリさん喜び過ぎじゃない?
龍の方が良いの?人間より?
何か、彼女に勝ち誇ったかの様な顔で見られてるのがムカつく‼
「これ、アウリ将軍‼
先ずは敵の話を聞くのが先じゃろう‼
それと‼斥候兵‼
残存兵が居ないか慎重に捜索して来い‼」
陛下の叱咤...
それはそうなんですけどね。そうなんですけど〜...
年頃の女性には、時には優先順位が...
『おるわけなかろう...
あの中を生きておったら、間違いなく魔王クラスだ。
この世界はとうに終わっておるわ...
というか、魔王クラスでもあれはキツイな』
この女、偉そうにっ‼
でも...位の高そうなドラゴンだった。
...ハイクラスドラゴンなら仕方無い...か...
「あははっ、まぁ敵も殲滅出来た事ですし、ゆっくり今後の事も含めて話し合いましょう」
やっぱり彼は何事も無かったかの様に飄々としている。
出会った時と全く同じ...
あんな戦闘の後なのに、荒ぶる事も無く、昂る事も無く、平然と...
「まず、こいつの名前はガブロ。
肉弾戦が主体。再生能力も有る様ですが、傷口を焼けば再生は出来ない様です」
彼はうつ伏せになっている悪魔の焼かれた左肩口と羽が無くなっている背中の傷口を指差す。
切った?...何で切ったの?...
ヒジリさんは武器を持っていなかった...筈。
腕は肩口で綺麗に切断されている。
羽の方は、肉の切れ方からして毟り取られている。
まさか?素手?...
「今はオウナさんに教えて貰った魔法で口から下を麻痺させてます」
オウナ...教えていたっけ?麻痺は掛けてたけど?
「あの...そんな器用な魔法は...
そもそも状態異常の魔法を掛けただけで教えるなどという事はしておりませんが...
更に言えば部分的に効果を与える様なやり方知りませんし...」
だよね?教えてなんていないよね?
じゃあ、どうやって?
「では、それより上は正常と言う事かの?」
「ええ、嗅覚、聴覚、視覚、思考は潰しておりません。
ですから、この会話は聞こえていますし、それで何かを考える事も出来ます」
「危なくないのかの?」
「こいつを使って、情報を得ようとしだしたらその気配で分かりますから大丈夫。
口は煩いから塞いだだけです。
身体は俺が麻痺を解除しない限り動きません。
ああ、それと...
体力馬鹿の様なので魔法も掛けられる心配は有りません」
何から何まで...
この程度の相手は、と言わんばかり。
何のレベルが1なのか?
エイレーネさんが言っていたわね、超越者って。
何を超越したの?人?ぐるぐる思考が回る...あれ?
こんなに色んな事考える様な性格だったっけ?
森の端から戦場へ続く焼け焦げた道を見つめる。
この始まりは門側にできた大きな円形の窪みから。
足元を見つめる。
当然ながら有るのは私の足...
まさか?まさかそんな事が?
でもその後の焼け焦げた道は?
物と物が擦り合わさると熱が出る。
初等教育を受けた人間なら誰でも知ってる。
炎の道が出来る程の熱量が?空気との摩擦?走るだけで?一体どれ程の速さなの?
有り得ない...
顔を上げると氷龍さんと目が合う...
意味深な笑みを浮かべている。
ハイクラスドラゴンと友達になれる?
ううん、あれは友達って言ってるけど、契約ね...
今でも居る事を考えると無期限?
少なくとも人間じゃ無理...
彼はオウナの魔法の解除にも一切呪文を唱えていなかった。
オウナに魔法を掛けて貰うようにお願いする前。
彼は確かにその前に言っていた...
「出し惜しみは無しでいく」と...
斡旋所の訓練施設での一幕を思い出す。
彼は、魔法の名前は発声していた。
しかし、魔素の収束や魔力の放出は一切感じ取れなかった。
あれは魔法じゃない...
私を真似しただけだ。バレない様にしただけだ...
だとしたらあの力は何?...
もっと、もっと記憶を巻き戻す。
リチャードは何て言ってた?
彼は覚えてない?
いや、彼は記憶を失くしたと言っていた...
少し変えれば、全然違う意味合いになる...
【この世界の】記憶が無い...
もっともっと記憶が巻き戻る。
エイレーネさんからどんな預言を聞いた?
神から使命を授かった人が現れる位にしか思っていなかった。
でも違う...
預言では、確か...
【其は神託 其は神威 其は神意】
この言葉からは神の使者というイメージも出来なくはない...
でも、もっと当てはまるのは...
その存在そのものが...そうであるかの様だ...
ヒジリさんの顔を見る。目が合う。今なら分かる。
彼は...違う。
「ヒジリさん...
いえ、ヒジリ様、貴方はか『アウリ将軍、その先を言っても言わなくても、ヒジリさんは何も変わりませんから。ご安心下さい』」
エイレーネさんに言葉を止められた...
知ってたんだ...確信に変わる。
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『そして、ヒジリ様。彼女に何か贈り物をしましたか?』
アウリ将軍から何かを聞かれそうになって、まさかの神様インターセプト。
どうしたの?
「えっと、職業斡旋所で色々お世話になったので、お返しにと、ブローチを作って贈りました...けど?」
『どんな?』
ちょっとエイレーネ様が恐い。何か悪い事でもしたのか?
「薔薇を模したブローチを...」
『アウリ将軍、そのブローチを見せて頂けますか?』
「良いですけど...私のですからね...」
『誰も取りませんよ。見るだけです』
アウリ将軍が鎧の中に手を入れ、ブローチを取り出す。
アウリ将軍...戦場に装飾品を持って来るのは変ですよ...
しばらくブローチを眺めてたエイレーネ様が徐ろに喋り出す。
『もう、結構ですよ』
『(また、とんでもない物造りましたね。
そして、プレゼントしちゃいましたね...)』
「(とんでもない物?普通にブローチですが?)」
『(無自覚もここまで来ると凄いですよ。
話には聞いてましたが。
貴方の造った物はもう、神器なのですよ?
知ってます?神器)』
「(まあ、一応名前だけは知ってますが...)」
何か一方的に怒られてる。
か助けて...
『(母様達が持っている様な剣とか、天秤とか髪飾りとかもうその他諸々と同等と言う意味なのですよ?)』
「(大袈裟ですよ...
そこまで大層な物じゃないでしょう?
薔薇のブローチですよ?)」
『(はぁ...じゃあ、教えて差し上げます。
地面が炎で燃える程の速さで走っても、その服は?)』
「(燃えてません...)」
『(あんな数の飛空部隊を爆裂させて飛び散ったと思われる血肉を浴びても?)』
「(汚れてません...)」
『(監視兵に別世界だとか言わせる程の火柱を無数におっ立てて、その中を走り回っても?)』
「(焦げてもいません...)」
もう、言葉が汚すぎですよ...
別世界って言われても監視兵の主観じゃん。
きっと、この世界にもそんな光景有るよ...主に火山帯の近くとか。
『(普通に鎧を着込んだ人間達をぶっ飛ばして殺す様な、一撃で鎧を砕く様な、そんな悪魔の一撃をわざと受けても⁉)』
そんな怒らなくても...ため息を付きつつ
「(ほつれ一つも無いです...)」
『(それを造ったのはどんな素材で?)』
「(何処にでも有る様な普通の生地でしたね...多分)」
横で、氷龍が大爆笑している...
お腹抱えて笑わなくても良いじゃない..
『(それはいい‼
私にも何か造ってくれませんか?
そうですね、やっぱり女型でこの着物だから簪とか?
素材は問いませんよ?)』
「(あぁ、簪とか似合いそうだね。
斡旋所にいけば色んな材料あるから『(聖様‼)』)」
更に爆笑する氷龍さん。
楽しんでるな...
『(まだ気付いてない様ですから、言いますけど...
アウリ将軍をお認めになって、ご自身の眷属としてしまったのですよ‼
分かり易く言い換えれば、妄信的な信者を一人作ってしまったのですよ‼)』
「(えぇ⁉あんな武器にもならないブローチで?)」
『(何が、武器にもならないブローチですか‼
彼女の知恵、魔力が激増ですよ‼
おまけに貴方への信頼度最大値吹っ切れて、信仰値マックスですよ‼)』
最後のは、有っても良い様な気もするんだ...
信頼有っての人付き合いだし...
『(クックッ...
ヒジリ様の横に立って戦おうとするならば、やはり簪確定です)』
「(氷龍...ややこしくなるから止めてよ。
...そう言えばその格好で氷龍ってちょっと合わないよね?
氷姫なんてどう?安直だけどさ)」
『(おぉっ、その名前気に入りました‼
おっ、力が増した⁉流石主様だ‼)』
『(ヒジリ様‼
だから、ご自身の存在がどういうものなのか、真剣に考えて下さい‼)』
『(良いではないか、私とヒジリ様はこれから旅を共にするのだし。
彼が迂闊な事をしそうになったら止めるから)』
『(くっ、本当に止めてくださいよ‼でないとこの世界のパワーバランスが崩れてしまいますからね‼)』
氷姫からの援護射撃が有ってエイレーネ様が折れた‼
流石は龍神様‼
「(ひょっとして、この世界を管理してるのは?)」
『(えぇ、私です。
一年前からおかしな事態となって、堪らず人の身に変わって確認してるの...)』
あ...怒り疲れちゃった様だ...
「(一年前と言うと僕の家族が襲われた時期と同じなんですが、関係とか有りますか?)」
『(今の所、それは不明。
もっと多くの情報が欲しいわ)』
「(じゃあ、こいつの記憶の中を一年程前から探ってみましょう)」
『(敵の首魁は知恵者よ。
多分、重要な情報は与えていないと思うわ)』
「ご報告します‼」
あっ、斥候兵が戻って来た。思ったより早いな...
「どうじゃった⁉」
「ここより続く焦げた跡を進み、戦場となった場所を確認致しましたが...」
「したが、何じゃ‼」
「み、見える範囲、辺り一面の地面がマグマと化しております‼熱すぎて近寄れません‼」
「...生き残りはおったか?...」
「その...目視では動く物は見当たらず...
あの先が中心地であったなら逃げる事さえ不可能かと...」
陛下は俺の方へ向き直る。
「...あの...それでじゃ、こやつからどうやって情報を聞き出す?」
今度は俺に切り替えた。
国王兼大将軍って忙しいな...
「ガブロは中級程度の悪魔なので、そう簡単に話さないと思います。
そこで、こいつの記憶を掘り出して皆さんの頭に送ります。
その為に、頭はフレッシュな状態にしておきました」
今の俺には可能の筈だ。やった事は無いけど。
「ヒジリ殿は凄いな。そんな事まで出来るのか...」
「あの...精神魔法なら少し知見が有ります。
私もお手伝い出来る事が有れば、お手伝いしたいのですが...」
魔法を受けた感じからするとレベルは高い方なんだろうな...
何故、オウナさんは何故に将軍じゃないんだろ?
「では先ず、オウナさんに情報を送ります。
皆が耐える事が出来る情報量か、精神に異常をきたさない情報か判断して下さい。
皆の精神状態はオウナさんの方が理解していると思うので」
「先ずはですが、悪魔の戦闘情報は将軍クラスに限定した方が宜しいかと。
兵士の中には大変な経験もされた方も多く。
精神力から言っても無理だと思われます」
「分かりました。
では、先に俺がこいつの頭の中を視て、オウナさんに送ります。始めます...」
ここまでお読み下さり、有り難うございます。
今回のヒジリさんは戦闘後のクールダウンでした。
前回から兆しは有ったのですが、アウリさんの覚醒?が明らかとなりました。
この時点で元の世界に残された四人よりかなり強くなってしまった様な?
あの四人はちゃんと修行をして強くなってるのでしょうか?気掛かりです。




