第20話 しかと見させて頂きました
今回はヒジリさんの苛烈な攻めが始まります。
表現はなるべく抑えていますが、暴力シーンが苦手な方は読み飛ばしをお願いします。
後書きで簡単に活躍振りを書きますので、そちらをお読み下さい。
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月5日)
『了解致シマシタ。オ任ヲ』
『お任せ下さい。ご武運を』
何となくだが察してくれているのか。
頼もしい限りだ。
「じゃあ、行ってくるよ」
知覚した奴の20m程離れた地面を狙って転移した。
転移した先は岩が所々で突き出している平原。
そんな一つの岩陰に...
居た‼黒い頭だけ出している。
頭には髪の毛が無く、耳は尖っていて両目は異様に大きく白目は血走っている。というか瞳孔が無い。
鼻は辛うじて有ると分かる。耳元まで裂ける様な口から除く歯が肉食的。
うん、友達にはなれそうにないな。
如何にも悪魔っぽい。
様子を見ていたら、顔がこちらを向いた。
大きな目が細められる。多分、焦点が俺に合ったんだろう。
こいつがさっきまで見ていた方角はジアンスロ王国、自分が居た方角だ。こいつが偵察役なのは間違いないだろう。
悪魔は俺を見て、一瞬硬直していたものの、直ぐに岩の上に乗って戦闘態勢に入る。
背には悪魔定番?のコウモリ調の羽。
体はガリガリで肋骨が浮いている。
腕も骨と皮だけかの様に細い。
胸の高さに腕を上げていて引っ掻くぞっていうポーズを取っている。
細い尻尾は緊張感からか硬直している。
全身毛が無い人型の生き物?ってこんなに気持ち悪さを感じるものなんだな。
黒色のオーラが見えるあたり、どうしようもない悪よりな存在なんだろう。
しかしオカルト図鑑とかで出てくる悪魔とは印象が違い、知性を感じられない。
多分、名も無き悪魔なんだろう。
『ギィッ‼』
どうやら問答無用で襲い掛かってくる様だ。
遅い...普通に飛び退いて引っ掻きを交わし、5m程の距離を取る。
渾身の一撃のつもりだったのか、腕を振り下ろした状態で顔だけをこちらに向けている。
顔付きからすると一応驚いている様に見える。
〜〜〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「じゃあ、行ってくるよ」
主様の気配は遥か南に移動する。
オルトロスとの戦いの時の雰囲気は全くの戦いド素人。
転移とは誤ると次元の狭間に捕らわれるのだが、事も無げにやるのだから、見掛けによらない。
その前にまさかのオルトロスと人間との和平だ。
激甘思考だが、それを実現出来る力がある。
発する言葉に力があるのは間違いない。
あれで、人間だと言い張る。
力と言葉のアンバランス感...可愛い過ぎる。
ずっと側に居て、愛でていたいものだ。
そんな心からだろうな。
いまだこんな格好をしているのは。
胸元の開いた氷色のドレスをまじまじと見つめる。
ハズレくじじゃないかと心配していたみたいだが、とんでもない。
最高位の我からしても大当たり。
今頃、眷属達は悔しがってるだろう。
そんな事を思っていると...
「っ、ヒジリさんが消えた⁉」
人間共は辺りをキョロキョロしている。
「まさか、高位魔法の転移⁉人間では使えないのに?」
何たる無知蒙昧な事か。
あれだけ話をしておっても気付かん馬鹿共が。
少々苛立たしい。
『(氷龍さん、そうカリカリしないで。
後、彼に恋慕するのは自由なんだけど、独り占めは駄目だからね。
この世界にもファンを作りそうだけど。
というか確実に二人程やられてるけど)』
『(龍神の心までをも読むとはなんと厄介な事か。
安心召されよ、あれ程の存在、我でも御しきれんわ。
但し、今回の前哨戦が終わった後に永久の主従を結ぶ。
我が眷属は全面支援をする。
必然の帰結だ)』
『(それは頼もしい事だわ。
他の龍神さんも動いてくれると助かるのだけど)』
『(彼が望めば、誰でも動くだろう。
捻くれ者の黒龍辺りは、どう出るか分からんがな。
だが、しかし彼は奴を必要とするだろう。
動く事間違い無しなのは白龍だろう。
召喚される前に現れるかもしれん)』
『あらあら、そうこう話している内に、敵さん達近付いてますわよ。
ここはビシッと言っておやりなさいな』
ったく、愚か者共が‼
人間はどうしてこう愚鈍なのか...
『主様の言葉が聞こえなかったのか?
敵は近いぞ。
早急に城に戻り体勢を整えよ。
我とオルトロスは街壁を守護する。急げ‼』
やっと人間共は動き出す。
愚図共が...こんな奴等を守ってやらなくてはいけないのかと苛々が募る。
『ソウ、イライラシマスマイナ。
アノ方ノ命ナラバ仕方ガナイデハナイデスカ。
地上部隊ハ任セテ頂キマショウ』
『普通に考えるならば、我は飛行部隊。
だがしかし貴様、勘違いしておるぞ。
主様は「間に合わせる」と言った。
我らを信用している上で。
それがどう意味か分かるか?』
『マサカ?...』
『そのまさかだ』
『目に焼き付けておけ。荒ぶる神の威光を』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
距離を取りつつ、敵軍団の位置を探る。
後、2kmって所か。
思ったより機動力があるな。急ごうか...
瞬間移動で5m程の距離を一瞬で削り取り、手刀を首目掛けて振り下ろす。
「スパンッ‼」
意外と柔らかいな。
小悪魔は何が起きたかまだ分かっていない。
数瞬後に気付いて俺から離れようと動き出す。
だが...もう遅い。
動き出した瞬間に胴体から頭が落ち、血が吹き出す。
ピクピクしながらバランスを崩し、胴体も倒れる。
死んだかどうかの確認だ。相手は悪魔だからね。
魂を見る感覚で見てみると、黒色の細長いオーラが目から出始めている。
...死んでないのか?
オーラが伸びる方向はジアンスロ王国とは違う。
嫌な予感がする。これを放っておくのは不味い。
腕を伸ばし、手を拡げる。イメージは炎。
「ボッ‼」
大きな火柱が空を突く。
と同時に延びていた黒いオーラも霧散する。
元の世界で練習していた「水を加熱」ではなく「炎」を出す。
予想以上の炎の大きさに半分納得、半分違和感。
この世界の事情と自身の成長度合いが測れない。
嬉しい事なんだろうか...
片付いた所で再び敵軍の位置を探る。
うおっ‼思ったより速い‼
やば...思いに耽ってる場合じゃなかった。
直ぐ戻ろう‼
氷龍は正直に門の上に立っている様だ。
本当に真面目な龍神様だ。氷龍の横に転移する。
『開戦の狼煙お見事でした』
「見てたんだね。ありがと。
敵からの遠隔攻撃も無かったみたいだね」
『いつもの人間相手と思っての編成なのでしょう』
「取り敢えず偵察役の小悪魔は潰しておいたから情報がこれ以上情報が流れる事はないよ」
『成る程、そういう小悪魔でしたか』
「向こうには何かの意図があっての戦法だと思う。
残念ながら小悪魔は知性が無かったから、情報は無し。
あの軍団に知性がある奴がいれば良いけど...」
『どうでしょう?軍団長が辛うじてある位じゃないですか?』
500m程まで迫った軍団を見つめながら、氷龍は敵の知性レベルを評価する。
「こちらの残存兵力と人間という種族の強さから考えたら、低級だけでも十分でしょう」
俺も同意。氷龍は話しやすいな。
「それじゃこちらも出撃しよっか」
『布陣はどうされますか?』
「俺が決めて良いのかい?」
『勿論で』
「じゃあ、決めさせて貰うよ」
「オルトロスと氷龍はこのまま待機ね。
先ずは俺が出るよ。俺の後ろを抜ける敵が居たら足止めでお願い」
『もう少し頼って下さっても良いのですよ』
「オルトロスは今後の為にも怪我もさせたくないし、氷龍にも頼りっきりってのもどうかと思うしね」
『分かりました。では足止めに専念しましょう。
抜けられる敵がいたとしたら』
「もう、変なプレッシャー描けないでよ。宜しくね」
門の上から飛び降り、オルトロスの横に着地する。
「オルトロス達も抜けて来た奴には気を付けてね」
残り200mを切った段階か。
一気に間合いを詰めるとしますか。
勢いよく、駆け出す。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『始まる...』
戦いのド素人なんて評してしまったがとんでもない。
一体どれだけの顔を持っているのか。
駆け出す前の膨れ上がった神気は最早、武神級か。
直後門も揺るがす程の爆発をお越し全てを置き去りにする一筋の稲妻を見る。
『駆けるだけでこれとはのう。
雷龍が見たら腰抜かすぞ...』
轟音とその景色に驚いているオルトロスを見やり、目が合うと笑みが溢れる。
地面は直径5m程の窪みが出来、所々燻り、主様が通った後は炎の轍が出来ている。
戦場に目を移すと、既に始まっていた。
まだ気付きもしない飛行部隊が何処ぞの花園の様に飛び散っている。
地上では天を突くかの様な見事な火柱が至る所で立ち昇っている。
地獄の蓋が開いたか...
再びオルトロスを見やり、声を掛けてやる。
『主ら、主様を襲えなくて命拾いしたな。
悪魔共に地獄とは言い得て妙じゃ』
『アノ様ナ力ヲオ持チトハ...
普段ハ露程モ感ジサセナイトハ』
『戦う相手もきっちり感じ取っておる、という事じゃな』
激甘さんかと思ったがそれも検討違いじゃった。
『分かっておるかもしれんが、我らが物質世界に顕現した時は術者の力量次第で扱える力も左右される。
今の我は神界と同様の力が使えておる』
『ツマリ?...』
『つまり神界で満ち溢れている神力を主様一人で我に送りつつ、あの様に戦えておるのよ。
一柱の神をもってしても無理な業よ。
もっとも神で我等を呼び出す様な奴はおらんがの』
『それが、後衛でこうやってお喋りさせる程の暇を出すとは。
こんな事は生まれい出てより初めての事じゃ。
我とても、全く底が見えん。
或いは底が無いのか...』
戦場に目を戻すと、既に最後の一兵となっていた。
『あ奴が話しできる奴だと今後の攻め方も変わるのう...』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は、この世界に来て初めてイメージした稲妻ダッシュよりも力を入れて走る。
それでより速く走れるか試したかった。
結果...これ、止まれるのかよ?って位の速さが出た。
空気抵抗も上手くいなせている...が、空気との摩擦だけはどうしようもなく、熱い空気が身体に纏わり付く。
服、燃えないだろうか?
結果...俺の作った服は無事だ。
素材が良かったのか、俺の神威が効いているのか。
今度から自分で服を作る事にしよう。
素材はまた貰えるかな?
一瞬の間に接敵。
試してみたかった事その二。
複数の事象を神威で操れるのか?
今回は二種類。
飛空部隊には細胞を振動させる神威。
まぁ、電子レンジの応用だな。
地上部隊には豪勢な焚火をお見舞いしたい。
攻めてきてるんだから、相応の報いは必要だ。
結果、上空では仕掛け花火で空が彩られ、地上では手筒花火。
見事な競演だ。
試してみたかった事その三。
神威を使用している間の肉弾戦。
どっちかしか使えないなら今後の戦い方も工夫しないといけないからね。
結果、両方同時にいける。
天地の花火の競演をすり抜け、悪魔達に殴打、蹴り、手刀を喰らわせる。
どれも一撃で倒せる。
小悪魔みたいに最後の力を振り絞って何かやられると困るから微塵になってない悪魔にはやっぱり花火をプレゼント。
試してみたかった事その四。
最後のボスキャラにはワザと攻撃を受けてみよう。
この身体、どれ程の耐久力が有るのか試してみたい。
相手の手刀が首筋に迫る。
そのまま首で受け止める。
結果、痛くはない。
不思議だな。服の防御力だろうか?
戦場で服を脱いで試すのも変だから、帰ってから誰かに手伝ってもらって試してみよう。
『なっ、このガブロ様の攻撃を受けて傷一つ無いだと⁉貴様、何者だ‼』
ガブロ...本では見たことない名前だな。
これまで倒してきた唸るだけの悪魔よりかは喋れるだけ知性が有る様だ。
しかし、魔法ではなく肉弾戦とは...脳筋って奴か?
特徴からいって、王様が言ってた奴だな。
だとすると...脳筋だ。
筋肉隆々だし。
ガブロの左回し蹴りが俺の頭部を襲う。
何もせずに受けてみる。
「ゴッ‼」
派手な音はするが、やっぱり痛くはない。
服の防御力じゃなさそうだ。
帰ってから試す事が減ったね。
首筋で受けた蹴り足を右手で抑え、左手で膝を掌底突き。
膝関節を破壊する。折れ曲がる左足。
これは効いたか?
『なんのこれしき‼』
折れた筈の左膝は一瞬で元通りとなる。
再生能力有りの悪魔なのか...これは厄介だな。
しかし喋れる奴がこいつしか居ないってどうよ?
人間を甘く見過ぎてないか?
今度はこちらから。
懐に飛び込み、右手の手刀を振り下ろし、左肩から腕を切断し、切断箇所を神威で燃やす。
『ぐおぉぉぉぉっ‼』
再生は...しない。
有効な攻撃手段が見付かった。
取り敢えず距離を取って、落とした左腕を念の為焼却しておく。
『貴様っ‼貴様~っ‼許さんぞ~っ‼』
まだ、戦意が萎えないとは、見たことの無い悪魔だが俺が無知だっただけか?
飛ぼうとしているのか、体勢を低くした。
させない‼
後ろに回り込み、悪魔特有の翼を掴み、むしり取る。
先程と同じ様にむしり取った跡を焼き、再生を防ぎ、翼を焼いておく。
『ぐおぉぉぉぉっ‼』
低くした体勢から両膝を付く。
こいつは捕虜としたいが、出来るだけ抵抗出来ない様にしとかないと、被害が出そうだ。
それだけの力はやっぱり有る。
ダルマにしたとしても人族相手なら楽勝そうだ。
先程無効化を覚えた麻痺を部分的に使ってみよう。
頭部を残し、麻痺を全身に掛けるイメージ。
『なっ、何をした〜っ⁉』
両膝を突いていた状態から前のめりに倒れ込む。
力が入らなけりゃ倒れるしかないよな。
『魔法か?詠唱も無しで使えるとは何処の国から来た⁉』
こいつ...悪魔の癖にお喋り好きだな。
...そして、頭は悪そうだ。
口も麻痺させておこう。
『う〜‼、う〜‼、う〜...........』
やっと、気を失ってくれた...さて、戻るとしますか。
ガブロの足を持ち、オルトロス横に転移する。
「ただいま〜‼終わったよ‼」
『オ見事デシタ。オ疲レ様デシタ』
『お力の片鱗、しかと見させて頂きました』
ここまでお読み下さり、有り難うございます。
ヒジリさんが自分の力を確認しながらの戦いとなりましたが、所詮は有象無象の悪魔達。楽勝で撃破してしまいました。
神威の多重発動、肉体強化状況を把握出来た様です。
彼が本気モードとなる日は来るのでしょうか?




