第18話 さて、ここからです。
お読み下さりありがとうございます。
改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。
あくまでもなるべくです。
内容は変えておりません。(21年2月5日)
じゃあ、いっときますか?
こっちの世界って詠唱が普通だったんだよなぁ...
そんなの全然知らないし、念じただけで出来ちゃうんだけど...
ちょっと格好つけたいし...即興で考えよう...
「我は求め訴える 氷に閉ざされし世界の守護神よ
森羅万象、顕現せしめし氷の棺をもって永久に閉じ込めよ
吹き荒ぶ氷雪をもって命の灯火を凍らせたもう...」
こんな感じで良いのかな?
で、氷系を念じ...ん?辺りの様子が怪しい?
上を見上げると灰色の雲がうねり、広がっていく。
...顔に雪が?
徐々に雪は強くなっていき、視界の効かない猛吹雪となる...
...どうなっている?
更に上空、雲の中をうねりながら、下降している巨大な生物を感知。
とりあえず、後ろのあの人達は結界で守っとこう。
『呼びましたか?』
腹に響く程の低音の声が響く。
心なしか女性の声にも聞こえる。
「もしかして召喚...した?あれで呼んだ事になるの?」
『くすっ、誰が行こうか、くじ引きしてました(笑)』
くじ引きか~い‼
ハズレとアタリどっちで来たんだろう?
...こんな召喚素人で...ハズレと思われたら嫌だな...
巨大な生物が更にうねうね降下してくる。
うん、あれは巨大な龍だな。
長い胴体は50mは有るだろうか。
その身を捩らせ、俺の頭上を周る様に降りてくる。
10m程度上空で胴体の動きを止め、俺の方に頭だけを近付けてくる。
殺気は感じない。大丈夫だな。
『当然と言えば当然なのだけれど、怖がりませんね。
他の方々は...一柱を除いて、ほら...』
皆が俺の結界から出て城に戻ろうと必死だ。
そんなに慌てなくても、どうせ誰も入れなくて心地良い温度だし、それに...どうせ出れないのに...
「殺気が無いのに怖がれないよ?で、吹雪は止めてあげて。
あの人達を結界で守らなきゃいけないし。
結界張らないとこれ、凍っちゃうレベルだよ」
『主様は、優しいですねぇ。では吹雪は止めときましょう。
少し威厳を出したかっただけですから』
わざわざ大物感出さなくても十分大物だよ...
猛吹雪だったのが、徐々に止んでいく。
心地良かった天候だったのに、まさかの白銀世界。
空を見上げる。先程までの雪雲は綺麗に消え去り、春の陽気な太陽?が燦々と輝いている。
天候操作...龍神クラスかな?
『それと、これ程の大きさで召喚されたのは初めてです。
大規模攻撃も楽にこなせますねぇ。
あっ、申し遅れました。氷龍と申します』
大きな口をにゅっと曲げて...笑っている様だ。
「まぁ、召喚っぽい事になっちゃったのも初めてなら、龍神を呼べたのも初めてだけどね」笑顔で返す。
『で、いかがいたしましょう?
犬コロ全て氷で漬けときますか?』
動物愛護団体が聞いたら、炎上しそうな表現は止めてください...オルトロスですから...
「う~ん、ちょうど良かった。
まともな話し相手が欲しかったんだ。
君は感じるかい?あのオルトロス達から殺気を?」
『...君は?とおっしゃいました?』
「ん?変だった?」
テレビでよく見ていた様な見てない様なそんなやりとり。
『ではお言葉に甘えまして...』
その存在感、威圧感はそのままに小さくなっていき、巨大なエネルギーを内包した...人型?になった。
体全身が雪と氷で真っ白な色をした女性に変身した。
身長は俺より高め180cm位だろうか。
髪?は長く、腰までは有り、顔?も凛とした顔付きで目付きも鋭い感じ。
胸の部分が大きく開けたドレス?を纏っている。
手足?はスラリと長く、腰?もキュッとしていて、
胸?は豊かな方だ。
まぁ、完璧を求めた氷の彫像イメージ。
関節とかどうやって動かしてるんだろ?
「えっと?」
『対等に扱って頂いた時には、こんな感じで礼を致します』
「これはこれはご丁寧に...って何だこれ?
一応、戦場なんだけど...」
まともな筈なのだ、この氷龍さんは。
『主様から緊張感が感じられませんもの。
致し方ありませんね』
「まぁ、緊張感は置いといて...
で、どう思う?」
『獣達からは怯えは感じますが、殺気は感じません。
後方のでかいのは一生懸命威圧感出してますけど。
威圧感止まりで殺気ではありませんね。
頭が二つ有ろうが、所詮、犬は犬という所かと』
一応さ、多分オルトロスって種族なんだろうから、そう呼んであげてよ...
「流石にオルトロスとは会話が出来ないだろうしなぁ...」
『あら、そんなこと無いかと思いますよ』
「何故に?」
『私は主様と龍語で話してますから』
...そんな言葉、有るんだ...
世界の不思議は増えるばかりだ...
でも、まぁ大凡の方針は決まったかな?
「それじゃ氷龍さん、前方に集まってる小さいのの周りに高い氷の壁を作って。
後ろの大きいのを孤立させる感じで。
氷漬けにしない様にね」
『畏まりました。それと「さん」は要りませんよ』
言うや否や、物凄いスピードで彼らの周りを5m程の高さがある氷の壁が取り囲み始める。
オルトロス達は驚いて内側に一歩下がる。
グルッと周った後方も隙間を縫う様に氷の壁が走り、巨大なオルトロスを孤立させながら壁を高くしていく。
囲まれている事に気付いたオルトロス達は体当たりをしたり、木の上に登ってジャンプして逃げようとしたりしだした。
体当たりをして壁を壊そうとするもののビクともしない。
ジャンプして逃れようとするもののそれより速く壁が高くなり、弾き返されている。
巨大なオルトロスも壁を壊そうと必死に体当たりしているが、壊れる所までは届かない。
罅が入った瞬間から修復してしまっては壊すのも無理というものだろう。
人型となった氷龍はブレスとかで凍らせる訳でもなく、氷そのものも操れる様だ。
攻撃範囲が広大で威力も強大。
結構難易度の高いオーダーと思ったが、氷龍は難なくこなしていた。
やばいな。
レベル高過ぎ...くじで来たって言ってたけど、ハズレくじと思われなきゃ良いけど...
『安心して下さい。
下等生物たる人間などの召喚には応じる事は滅多に有りませんが、貴方は別ですよ。適当な詠唱でも』
笑いながら、更に氷の壁が加速度的に生成していく。
小型オルトロスを囲み終わる頃には高さは20m程度となった。
小型オルトロス達は乗り越える事を諦め、皆が一斉に体当たりを仕出した。
当然、砕ける気配は無い。
「早いし、上手いし、硬いね。
じゃあそこから少しずつ内側に氷の壁を厚くしていって。天井も作ってね」
『お優しいですねぇ、我が主は』
「無益な殺生はしたくないだけだよ」
俺の意図を察してくれた様だ。頭良いな...
天井となる高さの所に囲んだ中心に向かってドーム状となる様に氷が走る。
出入口のないかまくらっぽい感じになるのかな?と思っている内に巨大なかまくらが出来上がった。
その後、徐々に内側に氷の壁が厚くなっていく。
オルトロス達は諦念したのか、体当たりはもう止め内側に少しずつ下がることしかしない。
『我々ノ話ヲ聞イテ頂ケナイダロウカ?異界ノ神ヨ...』
巨大なオルトロスがかまくらを避けてゆっくりと近寄ってくる。
やっときたか。
「氷龍、止めてあげて。
その言葉を待ってたんだよ。因みに神様じゃないからね。
で、話したい事とは何だい?」
『似たような者でしょうに...』
氷龍から突込みが入るがそこは無視。
『先ズハコレマデノ非礼をワビタク...』
伏せをする様な格好となり尚、頭を下げ地面に付ける。
「襲われてないんだから謝らなくていいし、どうせあれでしょ?縄張り、とか住処を荒らすな、とかそんなの主張したかったんでしょ?
後ろの人達からは突然現れたって聞いたけど?」
『一年程前ニナリマスガ...異界ノ悪魔ノ襲来ヲ受ケ、里ヲ乗ッ取ラレ、逃ゲ出シタ次第』
軍人口調の言葉遣いも気になるが...やっぱり一年前か...
「オルトロスで良いんだよね?
君らも強い筈じゃないか?」
『ハイ、我々ハ[オルトロス]トシテ存在シテオリマス。
コノ世界デモ強イ方ノ種族ト自負ハシテオリマシタガ、残念ナガラ歯モ立タズ。
生キ残ッタ種族ヲ守リナガラ逃ゲル事ダケデ精一杯...』
悪魔との力関係で言えば、確かに悪魔が強そうだ。
『アノ...抵抗ハ致シマセンノデ仲間ヲ解放シテ頂ケナイデショウカ?デナイト、死ンデシマイマス...』
あぁ、話が聞きたくて忘れてた。
目線を巨大オルトロスの後ろにやると、白い冷気が周辺に漂っている。
氷の透明度は高く内部はクリアに見えるが、相当温度が下がっているのだろう。
小さいオルトロスに霜が降りている。
『絶対零度ですから、大気中の水分を凍らせますね。
即死はないですから安心してください』
氷龍...淡々過ぎるよ...
さて、氷龍に頼んでも良いけど、どれだけこの世界の感覚を把握出来たか試してみようか...
イメージは、あの巨大かまくらドームを20℃位の快適な水にする、そんな感じかな?
さっき絶対零度って言ってたけど、上手く出来るかな?
イメージ出来た所で、右手を顔の位置くらいまで上げ...フィンガースナップ‼...
ある程度の格好付けは必要だからね?
パチンッとなったと同時に冷気が収まり...
ドバシャァッッッ‼
かまくらドームからの氷結した水分の大瀑布‼
オルトロス達に打ち当たり毛並みがビショビショで濡れぼそり、何だか可愛そうな事をした感じになる。
俺はポージングしたまま、ちょっと硬直...
氷龍の氷、凄いわ...
今度からもうちょっとソフトにやろう...
『主様、私は必要だったでしょうか?
あれ、絶対零度ですよ?
私より神力が上でないと溶けないんですよ?
召喚された方が弱いってどうでしょう?』
氷龍が微妙な顔付きでこちらを見ている...
やっぱり龍神クラスだったか...
ここはフォローを入れとこう...
「必要に決まってるじゃないか‼
こう見えても?否、こう見えるから?まぁ、どっちでも良いけど友達が少ないんだよね。
交友関係は大事でしょ?」
黒軍服風の上に羽織っている白革コートをヒラヒラさせながら言う...
『.....................』
「.....................」
『友達?................』
「そう、友達‼............」
『召喚士と召喚獣が?......』
「変?..................」
『面白いお方ですね』
氷龍は右手で口元を隠しコロコロ笑う...
『アノ~、我々ハドウシタラ?...』
オルトロス達は皆、伏せの状態で待機中だった...
犬かっ‼と突っ込みたかったけど、洒落になってないかもしれないのでやめとこう...
「取り敢えず、人間を襲って食べるとかないんでしょ?」
『魔物ハ魔素ガ有レバ食物ヲ必要トシマセン。
ココヲ住処ニシヨウトシタノデスガ、襲ッテクル人間モイマシテ、抵抗ハシマシタガ、ナルベク力ヲ加減シテ対処シテオリマシタ』
「オルトロスって獰猛《どうもう》なイメージしかないけど?」
『ソレハ誤解デス。元ハ牛飼ノ番犬デスカラ』
親指を立てて後方を示しながら
「じゃあ、あの人達を呼ぶから待ってて」
逃げずに待機してる皆の所まで行き、事情を説明する。
結界で囲っている以上逃げられないんだけどね。
「なんと...あれらでさえ追われた身だったとは」
国王の顔から絶望感が漂う。
「さっ、皆、近くまで行くよ」
「本当に食わないんだろうな?」
リチャードさんの心配も最もだなとも思う。
あんなに大きい二首の犬は見たことないだろうし。
「襲われそうになったら守ってあげますから大丈夫ですよ。
さっ、行きましょ」
俺の言葉を信じてくれて皆ついてきてくれる。
この展開で一柱を除いて絶賛混乱中だ。
まぁ、さっきまで殺すとかどうとか言ってたから仕方無い。
巨大オルトロスの前に来る頃には密集形態で歩いている。
10人で見事なフォーメーションになっているあたり、流石は国を司る人達だ。
前衛、中衛、後衛でバランスが取れている。
「お待たせ。彼らに君らの事情を話して連れてきたよ」
「さて、ここからなんだけど...
皆さんを襲った悪魔の特徴は?」
オルトロスが先に答える。
『我等を襲ッタノハ全身赤茶デ手足ニ鋭イ爪、ギョロットシタ一つ目の大キイ目、蝙蝠風ノ翼デ空ヲ飛ビマス。
麻痺系ノ魔法ヲ使ッテ来マシタ。
ソノ配下ニハ色々ナ種族ガ居マスガ、ドレモ赤茶色デ、魔法ラシイ魔法は使ッテキマセンデシタ』
オルトロスが話し終わったと察した国王が話し出す。
「この街を襲った奴は灰色じゃったな。
体格は筋肉隆々、爪や翼は正に悪魔と言う感じじゃった。
魔法は使ってこなかったな。
配下の種族は様々じゃが、体色は同じ色で魔法を使う様な奴もいなかった」
(エイレーネ様?何かご存知ですか?)
(相手は恐らく、本気でこの世界をどうこうしようとする気はないと考えます。
はっきり言って、全滅させようと思ったら楽勝な位の規模の部隊だったし)
部隊を分けて、各国を一斉に攻撃、全滅させる気は無し。
逃げる相手には手を出さず、留まる敵には全滅させない程度に手を出し続ける。
その意図は?ただその土地が欲しいだけ?と、今考えた所で仕方ないか。
「さて、皆さんお互いに誤解は解けたでしょう?」
「うむ、魔物というだけであ奴らの仲間かと思っておった」
『コノ容貌ナノデ、攻撃サレルノハ仕方無イトハ思ッテイタガ』
「さて、ここからです。同盟を組んでみませんか?」
ここまで読んで下さって有難うございます。
ヒジリさん、やってくれました。
平和を好む彼らしい展開でしたが、どうでしょうか?基本は心優しい青年、敵を見極める目を持っているスタンス、賛否両論有るかと思いますが、暖かく見守って下さいます様お願いします。




