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平凡を超えた超越者  作者: 髭猫
第二章 異世界初体験
14/54

第14話 どっち向かえば良いのよ⁉

お読み下さりありがとうございます。

改稿1:なるべく読みやすく改稿してみました。

   あくまでもなるべくです。

   内容は変えておりません。(21年1月29日)

 一歩踏み入れたそこは見渡す限りの草原だった...時折吹く風に草花が揺らめいている。


 空は黄金色に染まり、今まさに太陽?が登らんとしている...

絶景。


 心が洗われる様だ...でも、有り得る景色。


 先程までの会話が無ければ、ここが異世界だとは思えない。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 楽しい晩餐後の翌朝、出発場所である実家に集まった。

 食事をしている中である程度広い場所が要るとのアリエル様のアドバイスから決まった事だ。


 皆が見送ってくれる中、軽く目を閉じ家族を想い浮かべ、異世界転移を試してみた。

 目を閉じる前、皆が心配そうな顔をする中、アリエル様だけは意味深な笑顔をしていたのが印象に残り...


 再び目を開けると...

 そこは...空は仄暗く、少し肌寒い。


 足元は一人が辛うじて歩ける程度の道、しかない...

 その道は一本道で延々と続いており、その横は...


「底が見えない...」


 奥深い谷、否深いなんてものじゃない。



 まさしく深淵。



「ここが、俺が誤って家族を送ってしまった世界?」


 こんな寂しい世界へ送ってしまった事に胸が締め付けられる。


「とにかく探さなくちゃ」


 何処まで何処に続いているか分からない道...

 一歩を踏み出す...


 と、突如道が太くなり、広場の様になったかと思うと真っ白い石造りの巨大な門が現れる。


 突然現れた巨大な門に驚き、危うく足を踏み外し...

 あっ、もう落ちる事も無いや...


「お見事。皆が注目する訳ね。

 後ろに進んでたら、下に落ちてたわよ。

 まぁ、落ちても何とかするんでしょうけどね」


 ん?何処からか声が掛かる。

 声...なのか?反響していて声がする方向が掴めない。

 脳内に直接語りかける感じか?

 辺りをキョロキョロしていると...


「あら?気配感知が育ってないのかしら?

 高次元体は無理なの?

 まぁ、そんな時間も無かったかな?」


 高次元体?

 アリエル様は感知できるからそれ以上という事なのか?

 それとも神話体系の違い?

 ティアさんやアリエル様が俺に合わせてくれていた?


『魂も視れる様にしないとね』ふと、昨日のアリエル様の言葉が頭を過ぎる。

 当然の事ながら【魂】なんて見た事がない。

 形の無い物、漠然とした概念...

 まさか...それを視る事か?


 と、思った瞬間、眩いばかりの白光が大きな門の上から差してきた。


『ピンポンピンポーン‼大正解‼

 とても覚醒(めざ)めて間もなくとは思えないわ』


 見上げるくらい高い門の上に白光玉が燦然と輝いている。

 焦点が合ったかと思うと、ふわりと動きだし、それと同時に形を変えながら降りてくる。

 地面に着地する頃には完全に女神を(かたどっ)っている。


 神々しいばかりの白衣に黄金の腰巻、右手には天秤を持ち、左手には剣を持っている...

 多分、どっちかだな...と思っていると...


『どっちも正解よ。

 呼びやすい方ならテミスかな。

 宜しくね、新人君、いや、()()()かな?』


 もう心を読まれたって驚かない。

 むしろウィットに富んでるなぁと思わず苦笑いが出る。


『神様なんて言ってもそんなものよ。

 さて、アリエルさんから頼まれた事も終わったし、本題に入りましょう』

 やっぱり、あの時頼んでいたんだ...優しいなぁ...


「その前に宜しいでしょうか?」


『あら?何?』


「後ろに進んでいたら下に落ちるとはどういう事でしょう?」


 テミス様は背後に有る白い巨大な門を見ながら説明してくれる。


『ここはね。魂の行く先を決める場所なの。

 先に進もうとした魂だけがこの審判の門に辿り着き、私達の裁きで決定された次の世界への扉を開けられる』


 次に俺の後ろの方に視線を送り、


『下り立った時点から審判は始まってるの。

 あそこで後ろを見たり、後ろに進んだら...深淵に引き摺り込まれ、ラルヴァ、まぁ平たく言うと怨霊ね、になるの』


『まぁ、進化の望める魂は必ず前に進める様になってるけどね』


さらっと、恐ろしい事を言ってくれる。


『貴方の後ろに道は見えなかったから後ろに進む事は無いと安心してたけど。

 むしろ清々しい位前しか見てなかったわね』


 言われてみれば、後ろは全く見てなかった様な気がする。


「ラルヴァとなったらどうなるのでしょう?」


『この深い谷は魔界に通じる道でもあるの。

 もしそうなったら悪魔達が魂を裁いて魔界側の魂として転生するわね』


「例えばリッパーの様な?」

 僕が倒した異界の住人を思い出す。


『そうそう、そんな感じで転生するの。

 こちら側から転生する場合は摂理に則った転生となるわね』


「ありがとうございます。で、本題とは何でしょう?」


『そうそう、それね。

 今後君専用の門は私が開ける事になったからヨロシクね』


「そんなお手間をお掛けして宜しいんでしょうか?他のお仕事も有るのに?」


『まぁ、そこそこに忙しくはあるけども、面白いじゃない。

 自ら選択した世界や引き寄せられた世界を案内してあげるのも。

 私の仕事を半分取られた感じだけどね』


 美しくも凜とした笑み。

 しかし、神様って何故こうも美形なのだろう?


『私達って本来、形が無い存在なのよ。

 こうやって形を取れるのは偶像崇拝がある為。

 例えば貴方が私を男と認識していたら男の姿となってるわよ』


 あれ?じゃあ男神とか女神とかは?


『まぁ、創り上げられたストーリーね。

 でも厳然とそこに私達は存在する』


 次元の違い過ぎに少々ショックを受けた。


『今の私は貴方のイメージ。

 貴方のイメージで男神となってしまう神が居たらその神の事を笑ってしまいそうだわ』



「...何故でしょう?」



『貴方は男と結ばれる趣味は有る?』



「...ナンテことをダイレクトに聞いてくれるんですか。

 ...普通に無いです」


『つまりはそういう事』


 屈託無く、気持ち良く笑ってくれる。

 ちょっとフォローを入れとかないと...


「でも、男性とは固く結ばれた友情とか有りますし」


『確かに絆は大切よ。でも、ほらね』


 テミス様は剣を剣帯に差し、そっと左手を門に添える。


 すると...


 過去に俺が女性に告白してきた光景が映し出させれる。

 告白した回数分の画面数。


 ...言わないよ、画面数は。


 それに対し、俺と男性が映し出されている画面は無い。


『ほら。絆さえも分御霊の成長に使われる中で貴方が求めていたのは女性、ね?』


 俺は何も言えず...羞恥心で一杯だ。



 恐るべし、審判の門...



『本来はね、ここには悪業が映し出されるのよ。

 まぁ、多分説明する必要は無いと思うけど。

 甘酸っぱい青春を映し出すような門でないのよ』


 笑いながら、画面が一つ増える。



 そこには、図書部屋で色々な本に囲まれながら色々な本を読んでる子供が映し出されていた。



 更に一つ増え、一生懸命公園で自転車の練習をしてる子供の姿。



 更に一つ増え、足元の蟻の行列を跨いで玄関を出てランドセルを背負った少年の姿。



  更に、更に、更に増え色々なスポーツに打ち込む少年の姿。



 徐々に徐々に成長していく少年の姿。



 最後に、家族で団欒を楽しむ青年の姿。



『分御霊は必ず人の魂と融合する訳じゃない。

 むしろ、私達の歴史の中でも融合例は無いわ。

 業が悪に傾けば分御霊は離れていく』


『生まれ出て18年間、貴方の生きてきた軌跡はいっそ不思議、奇跡と形容したくなる位、平凡ではあったけれど...』



『誇りなさい。輝かしい人生よ』



 途端、俺の頬に涙が伝う。

 審判の神にこう評価されて感極まった。


『あらあら、本当は懺悔の涙を流す場所よ。ここは』

 今度は優しく包み込む様な笑顔をしてくれる。


 鼻をすすりながら、強引に笑顔に戻す。


『貴方がそうだから、アリエルさんからお願いされてなくてもこの仕事は自分からお願いしてたわね』


『で、貴方の転移先の決定はしないけど、貴方が行く世界のヒントをその都度あげるわ』


「ヒント?」

『そう、貴方が行こうとしてる世界の注意事項ね』


「やっぱり、僕の居る世界とは相当に違うのですか?」


『全然違う世界も有るからねぇ。

 でないと貴方の力じゃ一瞬で世界そのものを壊しちゃうから』


「そんなに?」

 ちょっと顔が引き攣る...


『成長したらね』と付け加えられた。


『アリエルさんから言われているとは思うけど、必ず家族の居る世界に行けるとは限らないわ。

 居ないと分かった時でもその世界の声に耳を傾けて、自分がその世界で何をするべきか考えて』


「はい、お約束します」


『ではこれから行く世界のヒントね』

『到着したら、神威の力調整を行って...以上』



「それがヒント?」



『そう、ヒント。答えを先に言っては楽してしまうでしょ』

「確かにそうですね」


『それじゃあ、名残り惜しいけど、行ってらっしゃい。

 帰りもこの門を通るから感想でも言い合いましょ』

 巨大な門がゴゴゴッと地響きを立てながら開いていく


「はい、行ってきます。宜しくお願いします」

 俺は開いた門の敷居を一歩跨ぐ様に踏み出した...


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 とまぁ、そんなこんなで到着した訳だが...


 本当にしかし、何処に向かえば良いか全然分からない。

 右も左も分からないなんて初めての経験だ。


 そう言えばテミス様が力調整って言っていたなと思い出す。


 どうしよ...

 取り敢えずはそこの辺りの草花を凍らすとかしてみようかな?


 直ぐ側の範囲を半径1m位を意識して霜が降りる程度の温度を意識してみる...


「パキパキパキパキパキパキパキパキパキ」



 おいおい?



 ヤバいっ‼、止めなくちゃ‼

 今度は冷却を止める様に意識するとやっと止まってくれた。

 そこには、小山にも見える程の氷山が出来て上がっていた...

 でもまだ徐々に成長してる...


 あの~、この世界は何が違うんでしょう?


 目の前に出来た氷山を見上げ、暴走させてしまったのかと冷や汗が背中を伝う。

 何にしても生き物が居なくて良かった。


 取り敢えず、どうしよ...

 あぁ、ティアさんに聞いてみれば良いのか?


 ティアさんの存在を想い浮かべつつ、

「ティアさん、声聞こえますか?」

 心の中で話してみる。


『はい、しっかり聞こえますよ~』

 と弾んだ声が返ってきた。

 ホッとした気分になりつつも、これまでの経緯を話す。


『テミス様の助言と合わせて考えるとその世界は信仰が深くこちらの世界と比べて【魔素】が濃いのかと思われますわね』

「その【魔素】が濃いと制御が難しいの?」


『何て表現しましょう。

 賢さんの場合ですと...

 ロケットで1mだけ浮いて静止させる...位でしょうか』



「できるわけないじゃん‼」



『【魔素】の量を感じ取れば良いのですよ。

 これからそんな世界に行く事が有るかもしれませんし、まずこちらの世界が【魔素】少な過ぎと感じますわ。

 まぁ、慣れ、ですわね』


『じゃあ、いつものいきましょう。

 魔素、感じ取りますか?』

 やっぱりティアさん居ないとまだまだだなぁと思いつつ答えてみた。すると...


 おいおいおい、何だこの高揚感、力が漲り過ぎて怖っ‼


 焦る焦る焦る。


『落ち着いてくださいまし、深呼吸をして』

 必死に深呼吸をする。


『では次に吸った魔素を全身に巡る血液の流れに溶け込ませて送るイメージを』

 言われた通り、手足の隅々に送るイメージをしてみる


「あっ、まだバクバクしてるけど治まった感じ」


『体が馴染みましたわね』

『では、先程と同じ様な範囲で氷を溶かすイメージをしてみて下さい』


 氷山に向かって、溶かすイメージをする。

 おっ、半径1m程の窪みが綺麗に出来た。


「何とかできたよ。範囲と効果は想った通り」

『本当に何ていうか尊敬しますわ。

 ではできてしまった氷山を消す事にチャレンジしてみて下さい』


 う~ん...今度はかなり大きいなぁ。

 しかも今でも成長してる様に見える氷山。


 温度の違いから範囲を限定してみるか?

 この大きさを溶かすのに神力持つかな?


 試しにやってみよう。


 既に標高100m程度には成長してしまった氷山の輪郭を捉え溶かすイメージをする。


 あら?神力の減少は微々たるものと感じる...

 制御出来なかった?


 見上げると...あれ?見上げる程ももう高くない。

 ...と思っている内に溶けきった。

 先程の様な暴走気味な兆候は無い。


「おお、自分でもびっくりする位上手くできたよ‼

 ティアさん居ないと心細くなってきたよ...」


『最初からそんな調子ではダメですわよ。

 でもありがとうございます』


『それから、今神力が減ったと感じるのはこの念話のせいと思われるので、もうそろそろやめておいた方が良いですわね。

 名残惜しいですが』


「ティアさん、ありがとう~‼

 また何かあれば宜しくお願いします」


 ティアさんとの意識を落とすと念話が途切れた...

 何かブルートゥースイヤホンの通話に似てるな。


 よし、これでテミス様のヒントもこなしただろう。


「よし、探索の始まりだ‼ってどっち向かえば良いのよ⁉」

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