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『次元融合』〜ゲームに侵食された世界【不屈の冒険魂ISAO外伝】  作者: 漂鳥
第8章 ソトノセカイカラ

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75 無限回廊

 

 最上級職への転職クエストが一筋縄ではいかないことは、予め覚悟していた。


 何しろ最上級職だ。ゲームとしてやっていた当時、ISAOの中では、この最上級職はオプション的な立ち位置になっていた。つまり余力があったら挑戦してみて下さいって部類のものだ。


 だから、これまでの転職クエストと異なり、NPCが直接的なヒントをあまり出してくれない。NPC好感度がぶっちぎりで高く、ルートヒントを幾つも貰いながら転職を進めてきた俺にとっては、梯子を外されたような格好になる。


 ……でも、やるしかない。


 どれを進めていいか分からないなら、全部やればいい。そう前向きに開き直って、次々と提示される課題や業務については、要求された以上のものにまで手を広げ、とにかく片っぱしから進めてみた。


 その結果。


 《最上級職クエスト「猊座(げいざ)へ至る道」ルートミッションA「対魔知識の集積」を達成しました》


 山のような資料や書籍を漁るように読み込んだ結果がこれだ。レベルIXだった【速読】が早々と完ストしてレベルXになり、新たな職業関連スキルを覚えた。


【J渉猟(しょうりょう)(聖)】


 取得条件はおそらく、「研究や調査などのために、たくさんの書物や文献を読みあさること」だ。スキル効果として、ステータス画面から入る[参照]タブにインデックスと検索機能がつき、任意にフォルダ分けができるようになった。


【J 辞書(聖)】にも類似の機能はあったが、既読図書を参照するには繰り返し読んでおく必要があった。それに比べ、【J渉猟(しょうりょう)(聖)】 は、一通り通読すればそれでOK。そのおかげで 、飛躍的に読むスピードを上げることが可能になった。



 そしてもう一つ。いやふたつか。新しく得たスキルがある。


 《最上級職クエスト「猊座へ至る道」ルートミッションB「精神耐性スキルの習得」を達成しました》


 修練の一環である瞑想や武道を散々繰り返した結果、やっとこんなアナウンスがきた。どちらが有効だったのか、それとも両方必要だったのかは今となっては分からない。


 そして、このアナウンスの直後に得たスキルがこのふたつ。


 《スキルを取得しました。【J精神耐性[魔]】・【J透視眼】》


 見て分かるように、ルートミッション名と獲得スキル名に共通するものは、どれも「対魔」だ。


 このことから、既に肉体的には滅びているという魔族と、なんらかの形で戦い勝利するというのが、今回のクエストの最終目標なんじゃないかと推測している。


 そしてそれを裏付けるような証拠も出てきた。これらのスキル取得後に、あの読めなかった冊子を改めて読んでみたら、読めるように変化した箇所があることに気づいた。


 それがこの4つの短い文章だ。


 〈銀の鍵で無限回廊への扉が開く〉

 〈純度の高い悪意の集合体〉

 〈干渉を排除せよ〉

 〈緋色の試練〉



 ……銀の鍵。ここでようやく出番なのか。


 ゲーム時代にいつの間にか入手していた〈銀の鍵〉。今もアイテムボックスに入っている。この記載の銀の鍵は、ずっと用途が不明だったこの鍵を指すことは、まず間違いないだろう。


 そして〈無限回廊〉。


 おそらく〈純度の高い悪意の集合体〉ーーつまり、精神生命体あるいは概念的存在になった魔族がいる場所で、そこへは扉を開けて入ることになる。


 でも、その扉はいったいどこにあるんだろう?



 *



 はい。これまで十分に回り道はしたので、もう直撃するしかないと、神殿長に扉のありかを尋ねてみたら、


「それは当神殿にございます。〈不可視の扉〉と呼ばれているものです」


 タイミングがよかったのか、あっさり教えてくれた。


 〈不可視の扉〉、あるいは〈見えざる扉〉とも呼ばれる無限回廊への入口に関する伝承が残されているという設定だ。


「せめてどの辺りにあるとか、範囲は分かりませんか?」


「残念ながら。『必要となった時に資格のある者の前に現れる』……そう言い伝えられているだけです。しかし、闇雲にどの場所でも現れるのかといえば、おそらくそうではないでしょう」


 ここでも資格か。


「それはどういう意味でしょうか?」


「扉のありかを探る。それも試練のひとつと考えられています。猊座への道のりはかくも険しく、それ故に尊い。あなた様に神のお導きがありますように、心からお祈り申し上げます」


 あらら……祈られちゃったよ。


 この状態になると、NPCの人たちはヒントに関しては一切口を開かなくなる。聞いても同じような返事しかもらえない。でも、今のセリフの中に〈試練〉という言葉があった。


 そして、あの読めなかった冊子から新たに拾えた言葉にも〈試練〉を含むものがある。この二つが無関係とは思えない。


 〈緋色の試練〉


 扉を見つけることもクエストの内、つまりそのきっかけを掴むのに、クリアしなければならない条件があるってことで。


 ・不可視の扉、見えざる扉。


 ・新たに増えたスキルの【J透視眼】。



 この言葉の符号も、偶然ではないはずだ。でもこの【J透視眼】というスキル。どうやらアクティブスキルのようで、持っているだけじゃ発動しない。使わないといけないんだけど、肝心の使い方が謎なんだ。


 クソっ。やっとここまできたのに、また停滞か。いい加減にしてくれよ。努力・忍耐はもう十分にやっただろ!


☆☆☆☆☆評価・ブックマーク・感想などでの応援に感謝。とてもありがたいです。


更新する際の励みになっています。お手数ですがよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最上級職の転職は、あのNPC好感度ぶっちぎりのユキムラさんですら手をこまねいているとなると他の人はもっと厳しいのだろう… [一言] 本当にこのゲームは努力と忍耐だなぁと思う。 神官が本…
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