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04 境界

 


 掲示板の書き込みが増えるにつれて、少しずつ状況が分かってきた。


 そして、千葉県北部在住のプレイヤーが掲示板に書き込んだことにより、トレハンCW公式掲示板に、隕石衝突後の日本列島の様子が伝えられた。


 それは驚くべき内容だった。



 ・隕石衝突後、日本列島にはこれまでの常識を覆す異常事態が起こっている。


 ・日本列島は、現在、複数のエリアに分断されている。


 ・本州は「フォッサマグナ地域」により東西に二分され、その境界線には《次元拒壁》というが特殊な壁が現れている。そのせいで、「フォッサマグナ地域」への出入りは現在不可能となっていて、連絡すらつかない。



 《次元拒壁》の内側は、かなり広範な地域になる。


 東京・神奈川・埼玉・千葉南部・群馬西部・静岡東部・山梨・長野北部・新潟北西部

 ……首都圏を含むこれだけの地域が、現在、音信不通で閉鎖状態だそうだ。


 また、「現実(リアル)地域」と呼ばれる、リアル日本残存部が非常に少ないことも分かった。



 ・北海道・九州・沖縄・その他離島


 ・西日本: 静岡西部・長野南部・紀伊半島南部・香川と愛媛の一部を除く四国全域


 ・東日本: 千葉県北部



 確認された「現実地域」は、現在これだけ。


 これ以外の地域は、隕石の衝突により引き起こされた《次元震》と呼ばれる災厄以降、少なくとも5つの仮想世界に〈改変〉あるいは〈侵食〉されたと推定されている。



 ・「仮想エリア」と「現実地域」、あるいは異なる「仮想エリア」間には、《次元境界》が存在する。


 ・《次元境界》は、《次元拒壁》とは異なり、境界をまたいでプレイヤーが双方向に移動することが可能である。



 ただし、



 ・「仮想エリア」内に侵入すると、身体がその仮想世界(VRゲーム)のアバターに変化する。


 ・アバターへの変化は双方向に可逆性で、「現実地域」に戻ると身体も元に戻る。



 アカウントを持たない非プレイヤーが、「仮想エリア」に侵入を試みた場合、《アバター登録・キャラメイキング》を促され、拒否すると境界壁に弾かれてしまうそうだ。



 ・西日本の「仮想エリア」は、仮想世界へと全面的な〈改変〉がなされ、リアル世界の痕跡は全く残っていない。


 ・「現実地域」から、ゲーム機器を通して仮想世界にログインできるか試してみた人がいたが、それは不可能だった。


 ・東日本では、「仮想エリア」の中に一部リアル日本が残されていることが確認されており、丸ごと書き換えられてしまう〈改変〉と区別するために、その状態を〈侵食〉と呼ぶことになった。〈侵食〉度合いは、地域により差がある。


 ・〈侵食〉を免れた場所は、神社・仏閣などのパワースポットであることが多い。



 そして、人々の動向も掴めてきた。



 ・隕石衝突時、「フォッサマグナ地域」にいたプレイヤー(当時ログアウト中)が、衝突後に、「仮想エリア」内にログインしているのが見つかっている。この地域の非プレイヤーの消息は、現時点では一切不明。


 ・衝突時に、「仮想エリア」化した地域にいた非プレイヤー(アカウント非所持・地域住民)が、強制的にアバターに変化させられてログインしているケースが複数見つかっている。その際、その人々には、キャラメイキングがランダムに実行されている。


 ・プレイヤーはもちろん、非プレイヤーも、16歳以上60歳未満しか確認されておらず、消息不明者が多数いる。


 ・アカウントを持つプレイヤーは、ログイン場所が、必ずしも前回ログアウトした場所とは限らない。



 その他に、



 ・本州周辺海域は、上空・海底も含めて仮想世界による〈改変〉・〈侵食〉の影響を受けている。


 ・「現実地域」間では、無線やラジオ放送などによる相互連絡が可能だが、TVはもちろん、海外との連絡や衛星による通信は不可能である。


 ・従って、日本以外の国々がどうなっているのかは不明。



 *

 *

 *




「はぁ」



 掲示板を閲覧し終わって、思わず溜息が溢れた。


 何も分からない状態よりは、ましになったと思うしかないが、《次元震》から既に3日が経っている。その間、周辺を見回って父の姿を探していたが、どうやら無駄足だったようだ。



 いったい、どこにいるのか……。



 先ほどの動向調査を見ると、父は非プレイヤーとして、このトレハンエリアのどこかにいるかもしれない。しかし、消息不明者多数とあり、それに含まれている可能性も否定はできない。


 そして、その消息不明者たちがどこにいるかは、現状では全く検討がついていない。


 公式掲示板には、当然のことながら、消息を求めるスレッドが複数立っている。時間をかけて目を通してみたが、父らしき人の書き込みはひとつも見つからなかった。


 無事だろうか。……仕事一辺倒でゲームなんてしない人だ。こんな状況で困っていないわけがない。


 もし父が無事にトレハンエリアにいるとしても、掲示板の存在自体に、気づいているかどうかは怪しいけどな。



 *



現在までに確認されている「トレハンCW」に侵食された地域は、茨城・栃木・福島・新潟北東部。


 そのことから、ISAOとの《次元境界》は、宮城・山形辺りにあるんじゃないかと推測されたが、その地域に関する詳しい情報は、どこにも見当たらなかった。


 現状は、残されたリアル世界のランドマークで位置を把握するしかないから、県境も曖昧だし仕方ないか。


 広いな。


 移動手段が何もないのが辛いところだ。全て徒歩で移動するしかない。


 俺が今いるのは海岸線に近いところで、水平線から陽が昇ってくるから、そういったことわりが変わっていなければだが、太平洋側沿岸にいるんだと思う。茨城・もしくは福島沿岸部辺りのはずだが、今のところそれらしきランドマークも、街も、プレイヤーの姿さえ見つからない。



 これから、どうしようか。



 今いるのが、隕石が衝突したときにいた茨城県であれば、このまま南下すれば、おそらく、その存在が確認されたと掲示板に書き込みがあった「霞ヶ浦」があるはずだ。


 霞ヶ浦の(ほとり)には「ウォルタール」というトレハンCWの街があるという書き込みもあった。そこからさらに西に進めば、最初の街であるオルレインにも行けるそうだ。


 このままでは埒があかないし、まずはそこを目指すか!


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