表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『次元融合』〜ゲームに侵食された世界【不屈の冒険魂ISAO外伝】  作者: 漂鳥
第5章 踏破

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/86

42 道先

 


 レオが血脈クエスト報酬として入手した「如意宝珠」は、神通力を使える道具だった。龍人族固有の道具で、青龍族の場合、水を自由に操ったり、雷や雨を呼んだりできるらしい。


「すごくないかそれ?」


「まあな。範囲制限やクールタイムがちょっときついみたいだから、ポイポイ使えるわけじゃなさそうだけど」


「なるほど。使いどころは考える必要がありそうだな」


 レオの血脈クエストは、俺の時と同じくクリアまでに何日もかかっている。俺はといえば、掲示板を眺めたり気晴らしに狩りをしたりしながら、湖畔でレオを待っていた。


 レプティルの街ヘ再び戻ったら、数日間を休養や補給にあて、いよいよ北へ出発だな。



 ……それがだ。


 驚いたことに、俺たちが湖から街へ戻ると、誰もいなかったはずの冒険者ギルドが様変わりしていた。


「源次郎、ウサギがいる」


「本当だ。どこから湧いて出たんだ?」


 空っぽだったカウンターやその奥に、受付作業をするウサギの姿がある。


「これって、時間差で実装されたってこと?」


「運営がいないのにどうやって……誰が実装してるんだ?」


 疑問は尽きないが、残念なことに誰もそれに答えてはくれない。


 そして、そこにいたのはウサギだけじゃなかった。


「あなたたち、プレイヤーよね?」


 ギルドホールで、慌てた様子で俺たちに話しかけて来たのは、一人の見知らぬ女性プレイヤーだった。



 *



「よかった。てっきり先に行っちゃったかと思ってたの」


「あなたもISAOエリアへ?」


 その女性プレイヤー、香里奈(かりな)さんは、俺たちがISAOへ向かっているらしいという情報を掲示板で拾い、それを頼りにして、俺たちと合流するためにここまでやって来たそうだ。


「よく一人で無事に来れましたね」


「オルレインからミースまで転移陣が開通したの。だからかなりショートカットすることができたわ」


 そっちも開通したのか。


「それにしても、あまりレベルも高くないみたいだし、大胆というかなんというか」


 一人で旅してきたというのが信じられない。


「これでも、一生懸命にレベルを上げたのよ。あと、ここまで順調に来れたのは、私の種族特性のおかげかな」


 彼女の種族を聞いて、疑問は若干解消した。「八咫烏(やたがらす)」。父と同じだ。【N道先案内】のスキルで、安全かつ最短距離を進んできたんだろう。


「どうしてISAOへ? 家族がいるとか?」


「いえ、違うわ。ISAOは長くやっていたゲームだから、あそこなら生活基盤ができているのよね。それに、家族じゃないけど、共に過ごした大切な子たちがいる」


「じゃあ、俺たちと同じだね」


「足手まといなのは分かってる。でも、できれば同行させて欲しいの。さすがにここから先は、一人で行ける自信がなくて」


「源次郎、どうする?」


 さて、どうするのがいいかな?


「お礼は、ここでは手持ちがないけど、ISAOに行けばそれなりに提供できるわ。それじゃダメかしら?」


 正直言って戦闘力は話にならない。でも、種族特性的には同行可能な気はする。女性一人でここまで来たんだ。よほどISAOに行きたいんだろう。


「お礼は特に必要ない。死に戻りのリスクがあることを承知なら、俺は構わないが。レオはどう?」


「俺もいいよ」


「じゃあ、決まりだな」


「ありがとう。私の方がだいぶ年上っぽいけど、気にせず香里奈って呼んでくれると嬉しいわ。これからよろしくね」


 街の周辺で、食料確保がてら香里奈のパワーレベリングをある程度行い、それから出発することになった。制限されていたギルド機能が使えるようになっていたので、父宛てにメッセージを残す。



 これから辿るのは、阿武隈川沿いに北上を続けるコースだ。川が次第に東へ向きを変えて、最終的には宮城県にある河口へ到達するはず。


 宮城県は、トレハンとISAOの境界があるのでは? と掲示板上では推測されているところだ。それが本当なら嬉しいが。



「宿屋で聞いた『人食いの鬼』が気になるね。どこら辺にいるのかな?」


「北へ進むなら、回避できないイベントっぽいわね。『道先案内』のスキルを働かせると、必ずある場所を通らないといけないようになってる」


「つまり、そこにいるわけか」


 元々人懐こく、姉がいたというレオは、すぐに香里奈に馴染んでいた。彼女は幸いなことに、分別のある大人な女性で、人との距離感を保つのが上手い。


「そうね。割りと近いわ。たぶん最短距離で徒歩2時間ちょっと」


「なら、実際には3時間くらいか」


「怪しい岩屋って言ってたから、見れば分かるかな?」


「不死身の身体。斬っても斬っても与えた傷が治ってしまう。強そうな敵ね。人食いっていうのも嫌だし」


 人食いか。このゲーム、そういうのが多い気がする。イメージするとぞっとするな。実際に食われることがないことを祈るしかない。



「よし! 行くか!」


「おうっ!」


「はい!」


 北へ向けて出発だ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 香里奈さん、もしや『歌姫』なんだろうか? 確か『歌姫』のプレイヤーネームは「カタリナ」だったはず。 かりなとカタリナで名前も似てますし、大切な子たち=修道院の子供達だと考えれば可能性はかなり…
[一言] むむ、この人は……誰だろう?(´・ω・`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ