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『次元融合』〜ゲームに侵食された世界【不屈の冒険魂ISAO外伝】  作者: 漂鳥
第4章 怪異

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33 水堀

 

 ミースの街のすぐ西を南北に走る川……トレハンMAPではエミール川、現実世界ではおそらく久慈川と思われる川に沿って、上流に向かって北上を開始した。


 途中出てくるのは、水棲系の雑魚モンスターばかり。今の俺とレオなら、対処するのにたいした手間は取らない。


 そうして、4-5時間も歩いただろうか?


 陽が高く昇ってきたので、昼ごろだと分かる。そろそろ昼飯にしようかと話しながら進んでいると、川が急激にカーブを描き、西へ蛇行している場所に到達した。


 ここで、この川とはお別れだ。


 これからしばらくは、川をあてにせず、盆地を突っ切るように北上しないといけない。

 そして、川から離れて歩き始めて程なく、右手の前方に、こんもりとした高台を囲むような、街壁あるいは城壁と思われる建造物を見つけた。



「街かな? それとも砦?」


「ここからじゃ、まだよく分からないな。とりあえず一旦休憩にして、昼飯後にあの場所を調べに行こう」


 何が出てくるか分からないからな。


 この辺りに関しては、地形以外の情報がほぼない。事前にレオと話し合い、慎重に旅を進めることに決めていた。河川敷の木陰で手早く昼食を済ませたあと、先ほど見つけた建造物のある方に向かう。


 近くで見ると、その外壁は石材を組んで作られたもので、高さは2メートルくらい。そして、周囲をグルっと幅十数メートルくらいの水堀に囲まれていることがわかった。


 すぐ近くの水堀の南側に、中への入口と思われる門があったので近づいてみる。


【N俯瞰】を使ってみたが、肝心の建造物内は映像がマスクされていて把握することができなかった。


 続いて、【索敵】と【気配察知】を働かせる。



「どう、源次郎?」


「街か、城か、あるいはダンジョンか。現時点では分からないな。とりあえず入口付近に生き物の気配はなさそうだ」


「入ってみる?」


「ああ。本来なら避けたいところだが、エヴリンで『嘆きのノルン』が手に入ったように、何かキーアイテムが置かれている可能性があるしな」


「だよね。とりあえず行ってみようよ。危なそうなら、直ぐに引き返すってことで」


「そうするか」


「俺が先に行くね」



 防御力の高いレオに先頭に立ってもらい、警戒しながら幅2メートルほどの木製の四角い門をくぐった。やはりこの辺りは無人のようで、門を潜り抜けた場所にあった守衛所のような小屋には誰もいなかった。


 守衛所を通り過ぎると、驚いたことに、目の前にまた水堀が現れた。


 外壁の周囲に張りめぐらされた外堀よりも更に幅広い、幅30-40メートルにも渡る、まるで池のような内堀だ。その中央には、こんもりと土が盛られ、青々しい木々が生い茂っている丘のような場所がある。



「二重の堀とは驚いた」


「あの中央の部分には渡れるのかな?」


「渡れそうな場所を探してみよう」



 反時計回りに内堀の周囲を巡る。すると、東側に回り込んで直ぐの所に、堀にかけられた石橋と、その奥にある木製の門を見つけた。


 石橋を渡り門を潜る。


 L字状に曲がった通路を右に折れると、そこにはまたしても門があった。しかし、その門は立派な普請の門で、これまであった簡素なものとはまるで異なっていた。



「ねえ、あれって瓦だよね?」


「俺にもそう見える。見た感じ、和風建築っぽいな」


 目の前に現れた3つ目の門は、木製の柱と扉を組み、その上に灰色の瓦屋根がかけられたもので、いわゆる大手門(おおてもん)と呼ばれるものに似ていた。


【索敵】と【気配察知】を働かせても、相変わらず生き物の気配はない。


「行くか」


「そうだね。じゃあ、進むよ」



 門を入ると、遠くから見た時と同じように、周囲を木に囲まれた小高い丘が目の前にあった。その木々の間に1本の道があり、奥に続いている。途中で左へカーブしていて、その先は見通せなかった。


「明らかに人工物なのに、これまでNPCを1人も見かけないのが変だな」


「この道の先に何があるんだろう?」


「さて、鬼が出るか蛇が出るか。行ってみるか」


「おう!」


 上り坂を左に右に蛇行しながら進んでいくと、急に木々が途切れて視界が開けた。


 そして、目の前に現れたのは、御殿あるいは居館とでも言うのだろうか。いつの時代の様式かは知識がないので見当がつかないが、和風建築の広大な屋敷がそこに広がっていた。



「この様子で何もないってことはなさそうだが……」


 ふと、正面の入口と思われるところに目をやる。


「子供?」


 そこに、着物を着た幼い子供が1人で立っている。


「ちょっと、話しかけてみよっか?」


 子供の方に近づいていくと、その子供も俺たちを認識したようで、パッとこちらを振り向いた。目のパッチリとした可愛らしい子だ。性別までは分からない。


「いらっしゃいませ。主人の元にご案内しますのでこちらへついてきて下さい」


 その子は、俺たちを見るなり甲高い声でそう言うと、こちらの返事も聞かずに、クルッと背を向けて歩き出す。


「どうする?」


「思いっきり怪しいが、招かれているみたいだな」


「中でいきなりボス戦とかになったりして」


「その可能性は否定できない」


 子供についていくと、屋敷の正面口を通り過ぎ、通用門らしき入口へと通じる小道を歩いて中へ入った。左右の建物の間を抜けてそのままついていく。すると、どうやら中庭と思われる場所に案内されたようだ。


 そのよく手入れされた広い中庭の中央には、妖しくも美しい桜の大木が生えていた。


 満開だ。


 薄桃色の桜の花が枝いっぱいに咲き誇っている。非常に綺麗な光景ではあるのだが……


「よくない感じだね」


「レオもそう思うか?」


「うん。桜の木の周りって妖力が溜まりやすいんだって。だから、(あやかし)を引きつけやすいって設定が多い。ゲーム的には」



 ……なるほど。今度は妖怪か。

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