30 終息
イベントが終わったといっても、ここはゲームのようで、ゲームとは異なる世界。まだいろいろとすることが残っている。
そう、片付けだ。
でもまあ、今日はもうさすがに遅いということで、一旦解散。各自休養を取って、明日の正午に集合して、各門の前の陣地の撤去をすることになった。全員じゃないけどね。
亜空間収納があるので、片付け自体にはそれほど人数はいらない。だから、片付け班と、開通する予定の船便班、それに「クウォント」にいる人たちとの交渉班など、いくつかの班に別れて作業を分担することになった。ちなみに俺とレオは片付け班だ。
「源次郎、お疲れ」
「ああ、レオもお疲れ様。救援、すごい助かった」
「一番大変な役目を、源次郎に押し付けちゃったからね。みんな心配してハラハラしてたし、別働隊のメンバーも、いつ突入するかって凄い意気込みだった」
「そうか。ありがとう」
「俺も、頑張ったよ。死に戻りがあるとはいえ、源次郎を殺されるのは絶対に阻止したかったから」
「駆けつけてくれた時のレオは、すごく頼もしくてカッコよかったよ」
「またまた。調子乗っちゃうぞ、俺。おだてに弱いから」
「いや。本当だ。強くなったな、レオ」
「強い源次郎にそう言われると、照れるよ。それにしても、今日は疲れたね」
「じゃあ、そろそろ寝るか。明日は寝坊するだろうから、自由に起きて朝食、昼前に下に集合でどうだ?」
「OK。おやすみ、源次郎」
「おやすみ、レオ」
レオと別れて、それぞれハンティングギルドの宿泊所の狭い個室に入る。
無事に終わってよかった。これで当座の父の居場所ができる。
父は、イベントの事後処理が終わったら、「クウォント」の街にいるプレイヤーの多くを移動させるつもりだ。まず、転移オーブを介してこのミースへ。そして、開通した船便を使って「エヴリン」へ。
山裾の何も産業がない「クウォント」の街で燻っている人でも、農業が盛んで牧歌的な「エヴリン」の街でなら、前向きな気持ちになれるかもしれない。そう父は考えているようだ。
それに、「クウォント」の街は、あれだけの人数をずっと養っていけるような余裕のある街じゃない。ここは、以前の日本と違って、憲法25条で「生存権」が規定された世界じゃない。弱者を守る法律も政府もないってことを、いい加減に彼らにも分かってもらわないと困る。
父がどこまで彼らの面倒をみるつもりなのかは分からないが、父の考えは尊重したいと思う。説得が上手くいくといいけどね。
そういった懸念について考えつつ、ウトウトし始めた俺は、いつの間にか眠りについていた。
*
翌日は、陽がすっかり高くなってから起床し、食堂でレオと昼飯を食べていた。するとそこに、元婦警の3人がやってきたので、折角だからと相席することになった。ちなみに父は、男性の元警察官の皆さんと一緒に、「クウォント」に向かったそうだ。
「昨日はお疲れ様。昴くんもレオくんも、大活躍だったね」
「レオくんは、頼もしかったよ。お姉さん、惚れちゃうかと思った」
女性たちのお喋りで、急にテーブルが賑やかになった。レオがちょっと赤くなっている。
「昨日はハラハラしたよね。昴くん大丈夫かなって、凄く心配だった。無事でよかった」
「本当にそう思う。でも、結構危なかったよね。光緒さんなんて、『昴くん!』って叫んで魔法をブッパしてたし」
「その辺りの話を詳しく」
「そりゃあ、私も必死で走ったよ。だけど、光緒さんの必死な様子には、なんていうの? 『愛』? それを感じたかも」
「ちょっと待って。愛とかじゃないから。昴くんは作戦の要だし。そりゃあ、必死にもなるわよ!」
「ほお。光緒がムキになるなんて怪しい。愛? そこに芽生えてない?」
なんか話が変な方向に向かったぞ。
「ち、違うわよ。それは全然っ違う。昴くんは確かにカッコいいけど、凄い年下だし、それに正直好みじゃない」
「一生懸命否定しちゃって、余計に怪しいな〜」
「ね〜。怪しい〜。怪しい」
戸山さんの反応を、面白がってませんか? お二方。
「誤解を産むような言葉はよしてよ。本当に困るから」
「何が困るの? 歳下だから? いいじゃん。こんな世の中になって、もう歳下も歳上もないよ。愛が全て」
「そうだよ、思い切って、ここで告白しちゃえ!」
「違う。本当に違うの。例えるなら、昴くんは馬だから!」
馬?
「馬って何ですかそれ?」
「えーっと。もしかして、将を射んと欲すれば……の馬? じゃあ、光緒の好きなのって……」
「「本部長?」」
父さん? えっ! でも、戸山さんって、父さんよりかなり年下だよ。そんなことって……
「なるほど。たまに本部長のことを名前呼びしてるから、怪しいとは思ってたんだ」
「私たちも『馨ちゃん』って、陰で本部長のことをそう呼んでたから、『馨さん』はそのバージョン違いかと思ってたけど、違ったわけだ」
「もう。昴くんにバレちゃったじゃない。どうしてくれるのよ!」
……あるんだ。
*
夜になって、父さんがミースに戻ってきた。
父さんは〈開通クエスト〉報酬の「転移オーブ利用無料パス」を持っているので、ミースとクウォントを気軽に行き来できる。
「昴、やはり行くのか?」
「うん。どうしても会いたい。会って安否を確認したい人がいる」
「お前にとって大切な人なんだな」
「凄くね。凄く大切な人なんだ」
「そうか。それじゃあ、行かないとな」
「父さんは、最終的にはエヴリンに落ち着くつもり?」
「もう少し先になると思うが、おそらくな」
「俺、必ず戻ってくるよ。父さんを迎えに。俺の行く予定のISAOの方が、ここよりずっと安全に暮らせるから」
「無理はするなよ。ここから北の情報は、まだほとんどないんだ」
「もちろん。慎重に進むつもり。だから、時間がかかると思うし、かなり待たせることになる。でも、必ず迎えに来るから」
「待ってるよ。どんなに時間がかかろうともな。俺にも会わせてくれるんだろう? お前の大切な人を、俺にもいつか紹介してくれ」
「うん」
必ず戻って来る。でも今は、行かなくちゃならない。その決意を改めて胸にし、俺とレオはこの地を離れ、北へ旅立つことになった。
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ユーザー名 「源次郎」
種族 「金鵄族」
種族レベル 43
状態 : 健康/体力 100%/精神力 100%/魔力 100%
空腹度 : 微
STR ★★★★★★★
VIT ★★★
MND ★★★
INT ★★★
AGI ★★★★★★★
DEX ★★★★★
LUK ★★★
メインスキル ①【刀術◆◆★☆☆☆☆】
サブスキルA 1【鋭斬】11【連撃】21【飛斬】41【刀波斬】
メインスキル②【槍術◆★★☆☆☆】
サブスキルA 31【鋭突】
サブスキルB 1【跳躍◆◆★☆☆☆☆】11【空歩◆◆☆☆☆☆☆】21【エアリアル◆★★★☆☆】31【縮地◆★★★☆☆】41【空間瞬動★☆☆☆☆】
感覚スキル 1【N俯瞰◆★★★★☆】6【索敵◆★★★★☆】21【N空間把握◆★★★☆☆】21【気配察知◆★★★☆☆】26【暗視◆★★☆☆☆】41【弱点看破★☆☆☆☆】
身体スキル 11【N持続回復◆★★☆☆☆+★】11【身体強化◆★★★★☆】
精神スキル 16【精神一到◆★★★☆☆】36【心眼★★☆☆☆】
魔法スキル 【S生活魔法ー】31【N幻惑★★★☆☆】31【属性付与[雷]◆★★☆☆☆】
生産スキル 【Q料理◆★★☆☆☆】
特殊スキル 【S簡易MAPー】【S簡易鑑定ー】
血脈スキル 【風乗術◆★★★★☆】【操風術◆★★★★☆】
特殊効果 【PS会心率上昇◆★★☆☆☆】
〈装備〉
E【数珠丸】[刀]★★★★★ 闇特効(中)+
E【革の鎧】[鎧]★★
E【革の籠手】[腕装備]★★
E【兎印の黄色いハンカチ】LUK★+
E【猫足のロングブーツ】[脚装備]★★★★ 消音(中)+ 衝撃吸収(中)+ 跳躍(小)+
E【飛燕の服】[内装備]★★★ [色: オフホワイト]AGI上昇効果★ NEW!
E【飛竜皮革のロングコート】[外装備]★★★ [色: シトロングリーン]空間制御(小)+
E【龍鱗のネックガード】[首装備]★★★★★ [色: アッシュグリーン]斬撃・刺突・衝撃吸収(中)+ 魔法防御力(小)+
E【水妖の指輪】[指装備]★★ 耐水性(小)+ 水中移動補助(小)+ 水中呼吸補助+
・【初心者の刀】[刀]★
・【初心者の鎧】[鎧]★
・【初心者の短ブーツ】[脚装備]★
・【布の服】[内装備]★
・【刃状槍[鉄]】[槍]★★ NEW!
・【水妖の三叉戟】[槍]★★ 水属性(小)+ 3つの穂を有する戟(槍)
・【革のマント】[外装備]★★
・【歴戦の鉾槍】[槍]★★★ 重量軽減(小)+
・【革のブーツ】[脚装備]★★
・【宵闇のフロックコート】[外装備]★★★ [色: ダークネスブラック]隠密効果(小)+
・【ゲオルギウスの槍】[槍]★★★★★★ 貫通(大)+ 特性
第3章、ここで終了です。第4章からは北紀行が始まります。