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『次元融合』〜ゲームに侵食された世界【不屈の冒険魂ISAO外伝】  作者: 漂鳥
第3章 行進

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25 予兆

 


 クウォントでの夜。


 やっと父さんと2人でゆっくり話せる機会を持てた。



「じゃあ昴は、以前からレオ君と知り合いというわけではないのか」


「そう。ノアの街で話しかけられてからだね。レオの学校の同級生が、俺のやっていたISAOっていうゲームでの知り合い」


「ということは、その子を介して、レオ君に昴のことがたまたま伝わっていたってことなのか?」


「そうらしい。その子……イナバ君っていうんだけど、その子とはゲームで同じ職業だったこともあって、親しく話す機会があったんだ。その時にこのトレハンの話題が出たことがある」



 俺がSR種族になったって言ったら、SR種族が当たるまでリセマラするって言ってる友達がいるって話してたんだよな。その友達がレオだったんだろう。



「そうか。つまり昴は、あまりレオ君の家族のことは知らないんだな?」


「そうだね。お姉さんが3人いることや、いいとこのお坊ちゃんなんだろうな、っていうことしか分からない。レオもトレハンの世界に誰か来てないか探したみたいだけど、見つからなかったって言っていた」


「そもそも、この世界に来ている可能性はあるのか?」


「それが微妙らしくて。ご両親は、多分ゲームはやってないと言っていた。お姉さんたちのうちの誰かは、ゲームをやっていてもおかしくはないけど、多分トレハン以外のゲームだろうって」


「なら、彼は今、天涯孤独というわけか」


「そういうことになる。俺に声をかけたのも、イナバ君に会いに行きたいっていう動機からみたいだし、トレハンエリアでは、他に知り合いが見つからなかったんじゃないかな」


「それは心配だな。レオ君は、少し話をしただけでも、素直で、これまで苦労をしたことがないんだろうという感じがする。箱入りっていうのかな」


「俺もそう思った。一緒に旅をすることにしたのも、知り合いの知り合いだからってだけじゃなくて、あのまま1人でいたら、悪い奴らにカモにされて、騙されそうな感じがしたからだし」


「面倒見がいいんだな。昴はあまり学校のことは話さなかったし、部活にも入ってなかっただろう? 友達関係がどうなっているのか、これでも気にはしてたんだ。でも、レオ君はだいぶ昴に懐いているみたいだし、ちゃんと人のお世話ができているのが分かって、ちょっと安心した」


「お世話ってほどのことはしてないけどね。お互い様な所もあるし。でも、レオに懐かれている気は確かにする。元々、レオは人懐っこい子なんだと思うけど」


「……こんな世の中になって、今までの常識が全く通じない。大人でも疑心暗鬼になり、不安に押し潰されそうになったり、家族が見つからなくて焦燥に駆られたりしている。だから、自分のことで精一杯で、家族とはぐれた子供たちを顧みる余裕がない」


「確かに。レオみたいな境遇の子は、探せば他にも出てくる可能性はあるか」


「そう。俺は運良くこうして息子に会えた。だが、そうじゃない人の方が多いんだ」


「……クウォントの街の人たちが心配?」


「 ああ。あそこの街は、なぜだかゲーム未経験者ばかりだった。彼らにしてみれば、この世界は異世界みたいなものだ。全てが自分が知っていたルールと違う、別の決まりで動いている」


「クウォントの人たちは、被害を訴えるばかりで、動けなくなってたよな。あれじゃあ、他人を気にする余裕なんてないだろうとは思った」


「大人はそれでも自己責任な所はある。しかし、本来保護されるはずの未成年者だけでも、何とかしてやりたい。その中には、昴も入っているからな」


「俺も? 父さんが気にかけてくれるのは、凄く嬉しいけど、どっちかっていうと、父さんのが心配なんだけど」


「……俺が心配される方か。逞しくなったな、昴。親としては嬉しいが、寂しくもある。なんだか複雑な気分だ。まだまだ頼って来ていいんだぞ」


「父さんのことは、何より信頼してるし、会えて本当によかったと思う。困ったことがあったら、もちろん相談するよ。父さんも遠慮しないで言ってきて欲しい。ゲームのことなら少しだけ、俺の方が慣れてるから」


「ああ。頼りになる息子に育ってくれて、本当に嬉しいぞ。じゃあ、遠慮なく頼りにさせてもらうか」


「そうだね。こんな世界じゃ、1人じゃ何もできない。ゲームであってゲームじゃない。……ログアウトして逃げることは、できないんだから」





「ハルさん、フユさん、お久しぶりです」


「待ってたぞ。その人たちが、助っ人か」


「ああ。全員、イベント攻略に協力してくれるそうだ。紹介する」



 あの後、残り2人の婦警もパワーレベリングに参加して、総勢12人となった俺たちは、ミースへ移動した。


 何人か抜けるかな? と予測していたが、意外なことに全員がミース行きを希望した。


 互いの自己紹介が終わり、俺たちはハンティングギルドの会議室で、ハルさんたちからミースの状況を聞くことになった。



「じゃあ、もう市街地にもモンスターでてくるのか」


「そうだ。お前たちがクウォントへ行く前から、予兆はあったんだが、墓場の敷地内限定だった」


「どれくらい出てるんだ?」


「深夜、日付が変わってから夜が明けるまで、最初は2-3日に1回くらいだったが、ここ最近は毎日目撃情報が上がっている」


「モンスターの種類は?」


「今のところウィスプがほとんどだ。あとはバンシーの目撃情報が数件。実害はまだ出ていないが、NPCが怯えて活動性が落ちている」


「襲撃はいつ頃起こりそうなんだ?」


「おそらく、新月の日だろう。β通りならな」



 ミースでこれから起こると予想されているのは、防衛イベント「不死者(アンデッド)()行進(パニック)」だ。まるで、遊園地のアトラクションのようなふざけた名称。


 しかし、これが文字通りの現象が起こる。


 墓場で予兆があってから最初の新月の日に、ミースの街の北東にある墓地から、アンデッドが溢れ出す。


 そして百鬼夜行のように街を蹂躙する。


 完全クリアできなければ、街の機能の欠落を招いてしまう。そしてその中に、困ったことに重要施設である船着場が含まれる。従って、ミースからエヴリンへの船ルート開通のためには、必ずクリアしなければいけない防衛イベントだった。



「戸山さんは、光魔法を使えるのか。光魔法は闇特効があるから、是非攻撃チームに入って欲しいんだが、いいかな?」


「ええ。お役に立てるなら」


「助かるよ。何しろここは生産の街だから、攻撃魔法を使えるプレイヤーが少ないんだ」


「武器や防具に属性特効の付与はできるんですか?」


「今現在、武器・防具の生産職が付与魔法のスキルレベルを上げている最中だ。おそらく新月までには間に合うと思う」


「それは朗報ですね」


「君たちも属性付与が必要なら、遠慮なく言ってくれ」


「俺は闇特効の刀を、レオは闇特効装備一式を持っていますが、他のメンバーは所有していません。是非お願いしたいです」


「おう。弟に言っておく」



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