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18 理由

 


 巨大蟹を討伐後、さらに川沿いにしばらく進むと、ようやく街が見えてきた。



「源次郎! 街だ!」


「ああ、やっとだな」


 なだらかな丘陵地を背景に、その裾野にポツンと街が広がっている。「クウォント」。父が待っているその街に、俺は、ようやく辿り着くことができた。



 *



 《クウォント・ハンティングギルド》



「いない!? 確かにここにいるってメッセージを貰ったんですが」


「メッセージは、残されています。しかし、現在、この街には『高瀬 馨』というハンターは存在しません」


 受付の青いウサギのセリフは、耳を疑うものだった。


「存在しませんって、そんな。一時的に街を離れたとかだと思うので、行方を探したいのですが、何か情報はありませんか?」


「履歴を検索しますので、しばらくお待ちください」


 いないって……「ここで待つ」ってあったよな。父さん、いったいどこに行ったんだよ。


「履歴がございました。『高瀬 馨』様は、2日前にこの街を出られています」


「目的地は分かりますか?」


「目的地は記録にございませんが、街を出る際に依頼を受けていらっしゃいます」


「依頼? いったい何の? そもそも、1人で街を出たんですか?」


「お一人ではございません。パーティを組まれています。依頼内容につきましては、秘匿情報にあたりますので、お答えできません」


「秘匿情報って……こっちは身内だぞ。家族の心配をしてるんだ。隠す必要なんかないだろ?」


「規則によりお答えできません」


「そんなこと言われても……」


「そこのあなた。そのウサギにはそれ以上言っても無駄よ」


 声がした方を振り向くと、そこには何人かのプレイヤーが集まっていて、俺の方を見ていた。


 その内の1人が一歩前に出てきて、話しかけてくる。


「急に声をかけて驚いたと思うけど、あのウサギは、あれ以上は情報を吐かないわ。もう、散々試して分かってるの。あまりしつこくすると、ペナルティを受けるわ。そんなのバカらしいでしょ? だから、止めさせてもらったの」


「それは……ありがとう、なのかな?」


「あなた、高瀬さんの身内って言ってたけど本当?」


「本当です。高瀬馨は、俺の父親です」


「……息子さんか。あなたがこちらに向かっていることは高瀬さんから聞いてるわ。情報が欲しいんでしょ? 私たちが知ってることなら、教えてあげられるから、付いてきてくれるかしら?」


「ここじゃダメなんですか?」


「ここだと、いろいろ面倒なのよ。近くに、こじんまりした酒場があるの。そこでどう?」




「源次郎! どっか行くのか?」


「こちらは?」


「俺の連れだ。レオ、ちょっとこの人たちと話をしてくる。悪いが、俺が戻るまで、ギルドの宿泊施設で待っていてくれ」


「分かった。気をつけろよ」


「ああ。なるべく早く済ませてくる」



 *



「で、話ってなんだ?」


「せっかちね。一杯くらい飲んでからにすればいいのに」


「酒はいらない。情報があるというから付いてきたんだ。ないなら、さよならだ」


「ふふっ。顔は全然似てないけど、馨さんの息子って分かる気がするわ」



 馨さん?



「すごく怪しんでいるみたいだから、先に自己紹介するわね。私は戸山光緒(みお)


「私は、吉野夕子。よろしくね」


「峯岸春香。よろしく」


「高瀬昴です」


「昴君ね。聞いていた通りだわ。私たちが、あなたのお父さんを知っている理由。それはね、私たちが、あなたのお父さんと同じ職場で働いていたからよ。つまり、ここにいる3人は、全員警察官なの」


「えっ!?  父の職場の! 同僚の方たちなんですか?」


「同僚っていうか、全員が直属ってわけではないけど、部下ってところね。あなたのお父さん、偉い人だから」


「そ……れは、失礼しました。それで、父の行方をご存知なんですか?」


「詳しい行き先は、私たちにも分からないの。でも、誰と一緒にいるかと、何の依頼を受けたかは知ってるわ」


「教えて下さい。父は、なぜこの街を出て行ったんでしょうか?」


「話がちょっと込み入っているから、座って話さない? 私たちも、困っていたところだったの」



 *



 《レオ、遅くなってごめん。今、ギルドに戻った。夕飯、1人にして悪かったな。今日分かった情報は、整理してから、明日話すよ。なんか、いろんなことを一度に聞いて、ちょっと混乱してる。

 じゃあ、また明日。お休み。》



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