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『次元融合』〜ゲームに侵食された世界【不屈の冒険魂ISAO外伝】  作者: 漂鳥
第1章 災厄

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09 正体

 



 ……来なければいいと思ってたんだけどな。


 どうやら、現実は甘くないようだ。やっぱりこの世界でも、イベントは起こるのか。



 *



「あら〜そこのオレンジ色の髪の派手なお兄さん! もしかして1人? それはた〜いへん。1人って心細いでしょ? だったら〜いいお話があるの。絶対に損しないから、ねえ、ちょっと寄ってかな〜い?」


 ハンティングギルドに入るなり、妙なシナを作った派手な女性が、馴れ馴れしく声をかけてきた。いかにも怪しそうな呼び込みだな。それに、それってダッチュ〜のポーズ? もはや古典的な。


(チラッ)


 うーん。……ポーズだけじゃない。


 服装などの見た目も、その台詞と同じくかなり軽薄な印象だ。胸とか腹とか、やたら露出度が高いが、正直いって色気はあまり感じない。どっちかというと……リアクション芸人みたいな残念感が漂っている。


「結構です」


「……あなた、なんか感じ悪いわよ。チラ見してスルーって何よ。人が頼んでるのに。少しくらい話を聞いてくれてもいいじゃない」


 ふぅ。……なんか、うるさい奴に捕まったか?


(チラッ)


 うん、やっぱり信用に値しない。


「いえ、結構です」


「キーーーーッ! その態度ムカつくーーー!」


「ちょっとちょっと、それじゃダメでしょ、落ち着いて」


 もう1人、別の女性が現れた。


「お兄さん、これからここの会議室で、防衛戦についての話し合いがあるんだけど、是非参加してくれないかな?」


(チラッ)


 うん? こっちはかなりまともそうだ。この2人が仲間なのか? まるで印象が違うが。


 ………どうする? 防衛戦についての集まりか。気になるところではあるが。



「俺がなんで参加を?」


「あんた、なんで急に態度変えてるのよ! 私の時はスルーだったくせに!」


 そりゃあそうだろ。


「まあまあ、抑えて。お兄さん、見た感じR(レア)種族でしょ? 今、防衛戦が始まるに当たって、戦力になってくれそうな人に声をかけてるんだ。話を聞くだけでもいいから、参加してってよ」


 見た目でレアリティの当たりをつけたのか。R種族ではなくSR種族だが、あえてここでカミングアウトする必要はないな。


「それって、話を聞くだけじゃ済まないんじゃないか?」


「まあ、勧誘はするよ。でも、話を聞いてどうしても駄目なら断ってもいい。だけど、本音を言えば、一人でも多くの戦力が欲しい。それが、戦闘系R種族ならなおさら。それに、お兄さんにとってみても、レイドクラスの防衛戦で孤立するのは危ないと思うよ」


「それは一理あるな。だが、参加するかどうかは、状況次第だ。すぐには返事はできないかもしれない。それでもいいなら話を聞こう」


「ありがとう! じゃあ、案内するからさ、こっちへ来てよ」



 *



「集まってくれてありがとう。俺はβテスト経験者の拓磨(たくま)っていう者だ。ぶっちゃけ、俺が仕切るのもどうかと思うが、もうそんなことを言っている時間がない。急いで対策を練って、協力体制を作らないとマズイと思ったから、声をかけさせてもらった」


 どうやら、防衛戦の音頭を取る人が現れたようだ。言ってることはまともだし、信頼できる人物だといいな。


「時間がないんだろ? そういうのはもういいから、早く話を進めようぜ」


「分かった。じゃあ、俺たちが調べた防衛戦の情報から話そう。桜、続きを頼む」


「桜です。では早速。NPCから集めた情報と、資料室の文献、街の図書館の書籍、過去の様々な経験などから、防衛戦はこの嵐が去った時点で始まることが予想されます」


「嵐はどれくらい続くのか分かるのか?」


「恐らく三日三晩です」


「昨日の夜から始まったとして……」


「明後日ですね」



 明後日か。……それは早過ぎるな。ろくな準備ができないんじゃないか?



「そりゃやべえな。敵の正体は分かってるのか?」


「はい。敵は恐らく海からやって来ます。調べた限りでは、『イブピアーラ』という、凶暴な肉食の半魚人が、今回の主な相手になりそうです」


「肉食? まさか人も食うのか?」


「はい。残念ながらそのようです。『イブピアーラ』は、人肉を好み、繁殖期前になると人を襲って喰らうとされる魔物……という伝承が残っていました」



 なんだって? じゃあ、そいつらはつまり、俺たちを食うために上陸して来るっていうことか?



「うへえ。マジかよ。で、強いのかよ、そいつら」


膂力(りょりょく)に優れ、(げき)を振るい、力で圧倒する……基本的には、パワーファイター系の魔物という記載がありました」


「弱点はあるのか?」


「水棲モンスター共通の『雷』は、有効のようです。ただ、群れの中には、マージ系亜種が紛れているそうなので、一旦魔法障壁を張られてしまうと、その弱点は軽減されてしまいます」


「マージ? 敵にも魔術師がいるのか。それは厄介だな」


「……実は、それがそうでもありません。種を明かしますと、このイベント、類似のものがβテストの時にもあったんです」


「なんだって! 本当かそれ」


「はい。βテストの時は、『オルレイン』ではなく、この『ノア』の街がスタート地点でした。そして、最初のレイドイベントが起こったのもここになります」


「今回のは、それと同じ内容のイベントなのか?」


「おそらく」


「じゃあ、βの時は、防衛戦には成功したんだな?」


「はい、最終的には。初回討伐時は、マージ系亜種の存在にやられて失敗しましたが、第二次討伐ではレベル上げと属性対策を入念に行い成功しています」


「だったら、そのやり方を踏襲すれば……」


「十分な成算が見込めることが予想されます」


「問題は、人材集めと攻略物資の確保……あと時間か」


「そうなります。どれも多ければ多いほどいいです。是非とも皆さんのご協力をお願い致します」

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