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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
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第85話「蜘蛛蟷螂戦」

 蜘蛛蟷螂の足がどれだけ頑丈なのかは分からなかった。だがまさか、鼠に簡単に

噛み千切られてしまうとは思わなかった。そして、肝心の鼠がその噛み千切った足

をむしゃむしゃと美味しそうに頬張る様がどこか滑稽に見えた。


「美味しいでチウ! もっと食べたいチウ!」

 嬉しそうな叫び声をあげるねずおに怖気づいたのか、蜘蛛蟷螂は、後方へ向かっ

て飛び跳ねて距離をとった。

 窮鼠猫を噛むなどという言葉があるが、今の光景は意気揚々と捕食者が餌に食ら

いついているだけにしか見えなかった。


 驚いてばかりいても仕方がないので、私は、火薬石弾を投げつけた。足を一本失

った蜘蛛蟷螂は、それをかわすことができず、爆発した。

 そこにエリーちゃんが追い打ちで電撃の魔法を打ち込む。なかなかいい連携だ。


「ねずお! 私達が隙を作るから、あいつの足を食べて!」

「第一ご主人! わかったチウ!」

「主人じゃなーい!」


 戦闘中に気が抜けることを言われて、困った。今は、真面目に戦闘しているので

気が緩んだ隙を狙われたらたまったもんじゃない。

 

「ギギギギギ!」

蜘蛛蟷螂の唸り声と共に鋭い真空波がとんできた。


「っつぅ!!」

 私は、必死に回避したが、肩に当たってしまった。真空波は早すぎる! 放たれ

てからよけることは厳しい。打つ前の動作を見切ればなんとかなりそうだけれど。

って、あ。


 私は、走り出し蜘蛛蟷螂の近くまで接近した。とりあえず、距離をとらせないこ

とにした。距離をとる方が危険なモンスターがいるゲームを思い出したからだ。

 近距離でちょこまか動くと、攻撃の動作が完了せずに隙だらけになるというのは

よくあることだった。こいつもそうかもしれない。


「くろごまも前線!」

「はいっ!」


 というわけで、私とくろごまが前線で戦い、エリーちゃんが後方支援、そしてね

ずおが切り札となる作戦が成立した。

「グギギギ!」


 蜘蛛蟷螂が鎌を振りかざそうとすれば、くろごまが黒如意棒で妨害する。私はその

瞬間を狙って鎌で攻撃する。ねずおも攻撃しようとするのだが、1番警戒されている

のか、近づくと離れようとする。意識は常に向いているようだ。


 エリーちゃんの炎や電撃の魔法で削っていく。そして私も少しずつだが鎌を当てら

れるようになってきた。

 かなりいい流れだ。これはこういうパターンに入っているということだ。


「伸びろ黒如意棒!」

「グッギイイ!」


 蜘蛛蟷螂は、私達の包囲網に手を焼き始めたのか苛立っている様子だ。こういう作

戦が成功するとこちらとしても気分がいい。だが、いつも通りここで安心しない。

 今までの経験から、体力が低下すると動きが著しく変化する可能性があると判断し

ている。現に最初より動きが機敏になってきた気がするし。


「チウ!」

「ギギギギ!?」


 ねずおの奇襲がようやく成功し、2本目の足に噛み砕いた。その足をあっという間に

食べきったねずお。蜘蛛蟷螂はその場から逃げようとする、が。


「もっと食べるチウ!」

 すかさず、3本目の足に食らいつく。食べる速度が向上している!? というかねず

お強すぎじゃないか。なんでそんな簡単に噛み千切れるんだ。こいつの歯と顎はどれ

だけすごいんだ。


 ねずおは、電撃の鞭で簡単に仕留めたけれど、結構危険だったんだなと思うと冷や

汗が流れてきた。こんなボス級の敵にこれだけダメージを与えられるなんてすごい。

これを機に、今後はねずおみたいなモンスターが出てきた時も絶対に注意することを

心に決めた。


「ギイ!!!」

足を失い、もがく蜘蛛蟷螂。この勝機を見逃さず、私とくろごまは攻め立てる。私は

「狐火!」

 蜘蛛蟷螂の顔面に向かって口から火を吐いた。視界が遮ることで、こちらの動きを

悟らせないようにする。


 さっきから何故か金縛りを使ってきていない。これが気になっている。一定期間使

えなくなるにしても、そろそろ使ってきてもいいはずだ。だけどそれがない。何かあ

あるのではないか。


「こいつは、もう少しで倒せるかも! でも次の敵が来るかもしれないからみんな警

戒して!」


 後ろにいるエリーちゃんが特に狙われそうなので叫んでおく。こういう勢いに乗っ

ているところで、流れを変えるように新たな敵が出てくることがある。そんな展開に

なってもいいようにする。


「チウ! 美味しいチウ~!」

 あの小さな体に蜘蛛蟷螂の足が納めるとは思えないが、見る見るうちに飲み込まれ

ていく。異次元にでもつながっているのではないかと思えるくらいだ。

 それにしても、4本食べたか。蜘蛛蟷螂の足の半分。バランスがうまくとれなくな

ってきたのか、よろよろと動くが。


「グギィ」

 すぐに倒れ込んだ。まるで自分自身が蜘蛛の巣に引っかかってしまったかのように

体を揺する。ねずおは、そんなことお構いなしにどんどん蜘蛛蟷螂の足を食べていく。

大食感だなこいつ。

 いや、それとも蜘蛛蟷螂の足がそれほど美味しいという事か? 私にはゲテモノに

しか見えないのだが。


「狐火!」

「はあっ! やあああああ!」

 私とくろごまは攻撃を継続する。くろごまも私のように注意深くなってきたのか容

赦なく黒如意棒で攻撃し続けた。

 第二形態みたいに変身するモンスターではないことを祈りながら攻撃をしていく。

とりあえず今は、ねずおに全部の足を食べてもらうことが最優先だ。

 あの勢いならいけるだろう。

 

「ファイアボルト!」

 エリーちゃんも、少し近づいて攻撃に参加してもらった。逆に私が後ろに下がる。こ

のまま行けばこいつは確実に倒せる。


 だけど確実だと確信した時こそ、計算外の事が起こりうる。この室内には窓があるが

ほぼ密閉されている。あの窓から、何かがでてこないか警戒するし。こいつが死んだ時

毒ガスみたいな攻撃をしてきたらなんてことも考える。


 エリーちゃんには一応そのことを伝えておいている。なのでそういうガスを出してき

たら、一目散に扉から出るように言った。

 

 何が起こるか分からない状況だ。この状況を私は今楽しんでいる。更に楽しむために

は、こいつを上手く撃破することだ。さぁあともう少しだ。頑張るぞ。

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