第72話「罠を見破ろう」
「こちらです。」
くろごまが示した壁には、少しだけ色が違う上に、出っ張りがある。ここを押し
てみろと言わんばかりにだ。これが罠であるかもしれないが、どうしても押したく
なるので押すことにした。ただし押す前に準備をしてからだ。
「くろごま、少し離れていてくれる?」
「かしこまりました。」
落とし穴の可能性があるので少し距離をとってもらった。くろごまに押してもら
えば私が浮遊を使うことでなんとかできるとは思うが、身代わりにしているようで
気分が悪いのでしない。
それ以外の罠の時はもうなるようになれという感じだ。罠じゃなければいいなあ。
「とりあえず、押してみるよ。」
緊張し、恐る恐る出っ張りを押してみる。さぁ来るならこい! と期待をしてみ
たが何も起きない。これははずれなのだろうか。それとも別な場所で何かが起こっ
た可能性もあるのだろうか。ううむ。分からないが、何も起こらなかっただけ良か
ったことにするか。
この後もこの場所で何かないか探してみたけれど何も無かったのでひとまず階段
を上ることにした。
「何かあるとは思ったんだけどなあ。お宝でもあればよかったのに。」
「しかし、あのような手の込んだ仕掛けを作って何もないというのもおかしいです。」
確かにね。わざとらしくあんなものを用意してるっていうのは何かありそうだよね。
見過ごす人だっているとは思うし。でもこうして気になったところで何か起こるわ
けでもないんだし、考えるのは後に使用。
「螺旋階段っていうとなんか岩でも転がってきそうなイメージあるんだけどねえ」
そう、ここは螺旋階段だった。ぐるぐると回って最上階にいくようだ。でも螺旋階
段ってなんかこう戦いの場になったりするイメージがあるから、警戒しながら登っ
ている。挟み撃ちにされたりしたら嫌だなあ。
「待ち伏せされている可能性もありますね。奇襲に注意です。」
もうすぐ最上階ってところでよく邪魔が入るのがゲームなんだよね。ここは自分
に任せて先に進めみたいなノリもあるし。ここでくろごまに任せたりなんて私はす
るつもりがないけどね。そういう展開は阻止するのが私だ。嫌いなお約束は、絶対
に阻止するんだ。
「岩は無くても、横から槍が飛び出てきたりとかあるだろうから、念のため、壁に
獣の骨を投げて進むよ。」
「安全第一ですね。」
そうそう、安全が第一なんだよ。何をするにしても必要以上に警戒しておかない
と悔しい思いをするんだよねえ。選択肢のあるゲームでただまっすぐ進んでいたら
槍が出てきてゲームオーバーにになったのは忘れられない。そこまでは順調に進ん
でいたのに、それを食らっただけで即終了は悔しかったなあ。
「罠が見抜ける能力とか欲しいなあ。」
「それは、素晴らしい能力ですね。そんな能力を持っていたら、洞窟などの攻略が
捗りますな。」
盗賊系がそういう能力を持っていることが多いんだよね。盗賊っていうから悪い
イメージがあるのだから、便利屋みたいな名称のほうがいいんじゃないのかと思っ
たことはあるけど。直接戦闘はそこまでじゃないようだけれど、私としては、何が
起こるか分からないことに対処できる盗賊は、魅力的だと思っている。
「いつかそういう能力を持つ仲間ができたらいいなあ。」
「マスターは素晴らしいお方ですからきっとできますよ!」
「そうだねえ。」
今すぐ欲しいんだけどそんなこといっても始まらないしな。とにかく進むしかな
いんだなあって、
「おうっ!?」
「むっ!」
や、槍が出てきた。まじかよ。本当に出てきたりするんだなオイ。いやさっきか
らこういう話していたんだし当然出てきたりはするもんだろうけど、両方の壁から
それぞれ5~6本くらい槍が飛び出ているよ。うわぁこわー。やっぱり警戒していて
正解だったな。槍なんてでてこないと思って進んでいたらまずかった。
面倒くさがって突き進んでいたらお陀仏まっしぐらだな。あーよかった。
「危なかったね。やっぱりこんな感じで進まないとだね。」
「いやはや、罠というのは恐ろしいですな。」
何もないと見せかけて実は仕掛けがあるというのが怖いんだよね。だけど今度は
それを調べていくと時間がかかってしまうというのがあるから、罠があると示した
時点で効果がある。
「最上階に続く階段だからね。何もないってことはないんだろうね。」
最後の守りの要なのだろうからね。だけど、ここまでするくらいには最上階には
とんでもないお宝が眠っているかもしれない。うわぁわくわくするなあ。何がある
のかなあ。
そこからは入念に調べながら進んでいく。岩は落ちてこなかったが、壁から槍が
出てくることは、5回くらいあった。他の罠はないのかと思ったが、どうやらなさ
そうだ。ところで2回目くらいで思い出したのでやったことがあった。
「この槍が欲しいな。」
というわけで、取ろうとしたが取れなかった。槍の穂先だけが鉄製で、持つ部分は
木製だったので鎌で切り落とした。よし、刃物を手に入れたぞ。
メッセージ:鉄槍の穂先を手に入れました。
お、これはアイテムインベントリに入るみたいだな。飛び道具として使えそうだ。
というわけで、こんな感じで、罠が出て来たら鉄槍の穂先として集めるのだった。
ああっ。これいいなあ。この罠が何度も復活するなら、この鉄槍の穂先を無限に
集めることができるんだけど、無理なのかな。
あぁ、罠は嫌いだけれど何度も集めることができるアイテムがでるならお気に入
りになるな。最上階から戻ってくるときは、またこのあたりにきて試してみよう。
そんなこんなあって、最上階にたどりつき、大きな門の前まで来たのだった。
般若レディは何度でも手に入れられるアイテムは無限に手に入れる派です。
ドラゴン○ーラーの竜槍スマ○グとかも躍起になって手に入れるでしょう。