第55話「猿との対決」
何がどうなっているのかさっぱり分からない。猿真似をしたら人面樹が召喚され
るとかどういうことなんだ。本当に、理解が追い付かない。私はそういう特殊能力
を持っているわけではないと思うのだが、たまたま上手くいってしまったというこ
となのだろうか。
「主って私の事?」
「キィイイイイイイ!」
おっと、今は戦闘中だ。問答無用で襲い掛かってくるに決まっているよな。よく
漫画だのアニメで、戦闘中にだらだら会話しまくっているシーンがあったりするけ
れど、その間に私なら攻撃するよなって思っていたがこの猿にやられるとは。
この猿はむかつく奴だな!よし、よくわからんが人面樹に命令してみよう。
「あの猿野郎をぼこぼこにしろー!」
「アイアイサー!」
あ、アイアイサーーねえ。一匹が声を上げると、他の人面樹たちも声を張り上げて
猿のほうへと向かっていく。そこには勿論猿が召喚した人面樹がいるので、人面樹
同士が争い合うことになった。
「ギャアアアアアアアア!」
「ナンダコラ!ヤンノカオラ!オラオラ!」
「ギギギ…。」
「ナニガンツケトンジャオラ!シニテーノカオラ!」
「ギィイ。」
なんだこれは。私の召喚した人面樹たちはどことなくガラが悪いようだぞ。先に
一匹を囲んでリンチをし始めた。猿が召喚した人面樹たちもその隙に攻撃をしかけ
ているがびくともしていない。
「オメエラアトデドウナルカワカッテンダローナ!」
「アルジガオメーラニヤキイレチマウゾ!」
「オウナニビビットンジャコラ!」
なんでこいつらこんなに威勢がいいんだよ。どこのヤンキーだよ。やめてくれよ。
「キィ!!!」
おっとお!また奇襲をしかけてきやがったぞこの猿。何するんだよ。
「キッキッキイイイイイイイ!」
ん?あっ!ああああ!分かったぞ!今更だけどこの猿の鳴き声に「き」が入って
いる。つまりこれが「木」である人面樹を召喚する儀式みたいなものじゃないのか!
いや、単純過ぎかもしれないが、このゲームならやりかねないし実際にそれっぽい
し。実にくだらなすぎる!
「猿と木の関連性が鳴き声とかないっての。」
ここで私は、襲い掛かってくる猿を前に、大の字になって寝ころんだ。隙だらけ
の状態まで自分を追い込み、猿が飛び掛かってきた瞬間に狐火をお見舞いする作戦
だ。もしかしたら警戒して距離を置かれるかもしれないと思ったが思った以上に馬
鹿だったようで、そのまま爪を立てて飛び掛かってきた。
「狐火!!!!」
至近距離から思いっきり狐火を浴びせることに成功する。やったやった!まさか
こうも気持ちよく引っかかってくれるとは思わなかった。これぞ待ち般若レディ作
戦だ。こちらは攻撃をせず動かない。相手が攻撃してから動く。いくら素早い相手
でも攻撃するときは近づかないといけないからな。
猿が遠距離攻撃持ちだったらこう上手くいかなかったけれど、直接攻撃してくる
だけだったからないと判断したのだ。
「ギィイイイイイイ!」
キじゃなくてギになって絶叫を上げる猿。さっきまでよくも攻撃してくれたな。い
まのはほんのお返しだ。ここで燃えて転がる猿相手に、今度は電撃の鞭でビシバシ
とたたきつける。
「ギッ!?ギッ!?ギッ!?」
おぉー。効いてる効いてる。かなり効果はあるようだ。少し可哀そうに思えたがこ
いういう敵に油断してやられてきたことが沢山あるのだ。可愛いモンスターだと思
っていたら、一撃でやられたゲームがある。それ可愛さ余って憎らしくなってしま
ったというのがある。
優しくしたらつけあがるということを忘れてはいけない。そもそも襲い掛かって
きたのはむこうからなんだから、ここは許しちゃなるまい。
「この猿がっ!さっき爪で攻撃されて痛かったんだぞ!」
アノニマスターオンラインでは、痛みは不快感というもので感じたり、一部は本
当に痛みを感じるようにする設定があるが、私も多少は痛みなどがあるようになっ
ている。そのほうがリアリティがあるからだ。それでこの猿からやられた不快感が
すごかったのでこうして鞭で何度もしばいているのだった。
「ウオオ!サスガアルジドノダゼ!マジカッケエ!」
「オッシャ!オレラモヤッタロウゼ!オラオラ!」
「ギャアアアアアアア!」
「ナイテモユルシテヤンネーヨ!」
ふと、人面樹たちを見ると、相手をボコボコニしていた。おいおい、同じ人面樹
同士でなんでそんなに差がでるんだよ。おかしいだろ。もう、完全にむこうさんは
意気消沈しているじゃないか。お前らやりすぎだろ。
「ウキキキキキイ・・・。」
それから私は猿が抵抗しなくなるまで、電撃の鞭で叩き続けた。毎度のことなが
ら私は失敗しないように、絶対安全安心を確保できるようになるまで気を抜かない。
情け容赦内のない般若レディだから!泣いても叫んでも、抵抗するそぶりを見せた
ら攻撃をやめないのだ。ふっふっふ。
「うきゅー。」
こうして猿は、その場に突っ伏して動かなくなった、猿が召喚した人面樹も抵抗し
なくなった。よし勝ったぜ。私が召喚した人面樹たちはなぜかふんぞり返っていた。
色々と罵声を浴びせていたがとりあえずスルーした。
「ふぅ・・疲れた。まったく。」
なんだかこんなことが前にもあったような…。あ、たけのこと初めて会った時だ。
ん?まさか。
「うき・・きぃ。」
猿の体が黒い光を纏い、そして…。呑まれていく。そこから現れたのは黒い猿だった。
「忠誠を誓います。マスター。」
黒い猿は私に跪いてそう言ったのだった。
木とキなんてこの話書いている時に思いついただけなんです。本当なんです。