第467話「ツンシネ?」
すみません。投稿が遅れました!
頑張って追記しますのでよろしくお願いします!
あと自分は死なない限りは必ず完結させますのでよろしくお願いいたします!
長期間更新できなくなったらその際も必ず状況報告しますのでよろしくお願いいたします!
4/1追記しました
「不気味過ぎる!」
という感じで不満を大声で叫んだ。何が起こったのかというと、液状化した象の身体が、凄い勢いでもくもくと煙を出して蒸発してしまったのだった。
液体化した後に今度は気体化して、襲い掛かってくるのかもしれないとしばし警戒していたのだが、それは一切なかった。これが逆に怖い。
確実に倒したのかどうか分からない状態というのが。不安を煽ってくるような感じだ。
「こういう倒したと思って、実は倒せていませんでしたというパターンが嫌なんだよね…」
「往生際の悪いボスっているっすよね。最後は道連れにしてやるとかそういうの。アクションゲームのシリーズ物で何度倒しても復活するラスボスみたいな感じっす」
それはまだいい。こいつ絶対最後に出てくるんだろうなって言うのが分かっているから。いやらしいのが、忘れた頃に突然襲い掛かってくることだ。そして唐突に味方がやられてしまうなんてことが起こる事だ。この場合、私か獣王君のどちらかがやられるってことだな。嫌だなあ。
「こういうボスって倒して近づくとアイテムが手に入ったってメッセージが表示されることが多いんだけど、それがないのがね」
それで9割は倒せていると私は思っている。そして、1割は疑っている。敵を倒したとか表示されていたメッセージ自体が実は嘘でしたという事が他のゲームではあったからだ。倒したというメッセージが表示されたことで安堵したプレイヤーは、突然復活した敵が襲い掛かってきたことで、混乱して、どうしてこうなったと理解できないままやられてしまうといった展開になる。
だから、ゲームで勝利するためには、常に疑心暗鬼であり、例え勝利したという状況であっても決して油断してはいけない。
「なんか、戦っている時よりもずっと怖いんすけど…。これ、やっぱりホラーゲームじゃないっすか?」
「大半のゲームはホラーゲームだと思ってプレイしたほうがいいよ。いつ何が起こるか分からない、そんなハラハラドキドキのスリル満点なのがゲームだし」
「ある意味合ってるっすね。俺も味方キャラだと信頼していた奴に何度裏切られた事か。もうこいつ最初に裏切るんじゃないかと考えるようになってしまったっす」
「その期待も裏切られるよね。実はそういうキャラほど仲間意識が高くて、裏切らなさそうな奴から裏切られてしまうとか」
こうして新作のゲームをプレイすると、やたら周囲を警戒する癖がついてしまうようになるのだが、逆に疑い過ぎてなかなか先に進めなくなるなんてこともあるなあ。
「やめやめ! やめにしよっす! もうなんか段々とねこます先輩とかも実は悪の大魔王とかに見えてしまいそうっす! 敵が消えたことだし、出口をもう一回さがそうっす!」
そうです。私が大はつかない魔王ねこますです。なんて言ったら信じて貰えるんだろうか。獣王君も流石にそこまでは考えていないよなあ。
「分かりやすく、どこかに出口が新しく出てきてたらいいのにね。何か起こった感じしないよね」
「あの液体が消える前までそこそこ調べて何も無かったし、これで出口が無かったら俺ら詰みっすよ!? こんなボスを倒したのに出られないなんて、絶対バグっすよ! セレクトボタン押したら出られなくなるみたいなノリは嫌っす!」
カピバラの姿で駄々をこねるのは可愛いけれど、そんなこと言われても困る。私はゲームの開発者でも何でもないし。
そもそも<アノニマスターオンライン>って、絶対これバグだろうと言いたくなることが多い気がするのに、全然バグじゃないようなんだよなあ。
「詰んだら死ねの精神なんじゃないのかなこのゲーム。あ、良いこと考えた。こういう風に詰んだら死ななきゃいけない状況をツンシネって言うことにしない?」
「なんすかそれ…。ツンシネとか嫌っすよ。それにここで死んで復活したとしても、ここから出られないままじゃないんすか? ねこます先輩はもしかしたら別な所で復活するかもしれないっすけど。そうなったら俺、また一人じゃないっすか!」
そうだね一人だね。私もまだ奇跡的に死んだことがないのだけれど、こんなところでツンシネと言うのは勘弁願いたい。ああ、ツンシネ。便利な言葉だな。
「まぁそういうことなので、ここは必死になって探そう。私だって死ぬのは嫌だし、ここはもっと脱出ゲームをミリ単位で画面を選択するような勢いでやろうよ」
「ううっ。またそんな苦行をやらなきゃいけないんすね。修行僧みたいなノリっすよね」
何を言ってるんだ。こういう地道な努力を重ねていく事で、確実にゲームが上手くなっていくのだから、こういう事をさぼっていたら、いつまで経ってもゲームは上手くならない! ということで、象を倒した後の液体を無視して散々探し回ったこの場所をまたうろつくことになった。
「この部屋広すぎるっす。球場とか体育館が何個分あるかってくらいあるっす」
「でも現実みたいに疲れるわけじゃないからねー」
私は獣王君の発言を軽く流した。だって肉体的疲労がないというのはかなり楽だし。それに私はこういう風に探索をしているのは結構好きな方なので、大して苦痛にはならない。流石に毎日ずっとこれを続けなきゃいけないのは大変だと感じるけれど、そこまでじゃないし。
「ねこます先輩って結構外を歩き回るタイプなんすか?」
「んー。現実だとやっぱり疲れるからそこまでじゃないけどゲームなら別だよ。RPGなんかは徹底的に歩き回るタイプだね」
だってRPGなんか序盤に凄いアイテムが隠されているなんてことが結構あったりするし。隠しイベントや、実は小ネタが満載なんてこともあるので、歩き回らないとむしろ損する事の方が多い。そして歩き回らないと、ボスに有効なアイテムを所持していないまま戦うことになって苦労するなんてこともあるので、探すのをさぼると痛い目に遭う。
「この広間の柱の模様とかなんか怪しい気がするんすけど、別に触っても何も起きないっす。こういうのを何度も繰り返すって嫌にならないんすか?」
「それを言ったらオンラインゲームは地獄ってことになるからね。繰り返し作業を最もやるゲームってオンラインゲームなんだよ」
オンラインゲームは、レアアイテムを手に入れる場合、超低確率でしか入手できないというものが多い。何千の敵を倒せばでるというものから、何十万の敵を倒さないと出ないアイテムだってある。要するに運ゲーなんだけれど、そういうゲームを沢山やってきた私としては、この大広間程度を探索する事はどうってことがないレベルだ。
ゲームのバグでアイテムが出ないのに出ることにされていたとか言われていた時は本気でブチ切れたことがあったけれど、そういうことがあったので、レアアイテムに関しては求めすぎないということを私は念頭に置いている。
頑張ってどうにかなることならいいけれど、運要素が高いと頑張ってどうにかなるわけでもないし。手に入らなければただ時間だけを費やしてしまう。
「苦行じゃないっすか」
「沢山の人がプレイするからね。超低確率であっても誰かは入手出来てしまうんだよ。まぁ私としてはそんな運要素にばかり頼りたくないしから大して欲しくないんだけどね。それに」
「それに?」
「どうせ後でアップデートが実行されて、それまで入手困難だったものが簡単に入手できるようになることだってあるからさ。馬鹿らしくなってくるから必死にはならなくなるんだよ」
一生懸命頑張って手に入れたアイテムも、1年後には誰でも簡単に手に入るようになってましたとなることが多い。となると、そこまで今頑張る必要があるのかという考えになってくる。後で楽になる事なのに今頑張る必要はどこにもない。
レアアイテムを持っていることを自慢したいとかいう人もいるかもしれないが、私はそんなレアアイテムを手に入れるために大量の時間を費やすよりも別なゲームで遊ぶことの方を優先する。
「ということは、ねこます先輩も、レアアイテムを狙って必死になったことがあるんすね!」
「…実際は小数点以下の確率で入手できるアイテムがあったんだよ!」
「やめろっす! つーかそれはオンラインゲームじゃねっす!」
「確率はゼロじゃない!」
「ね、ねこます先輩!」
一応私もオンラインゲーム初心者だった時代があるので、必死になっていた頃もあった。<アノニマスターオンライン>よりもがっつりプレイしていたかもしれない。だけど、アップデートで色んなものが変わっていき、段々と自分が遊んでいて楽しかったものが違うものに変わってしまったことに気づいた。
そうして、最後はゲームをやめてしまったというわけだ。なので<アノニマスターオンライン>だっていつかはやめる日が来るだろう。それは今日かもしれないし明日かもしれないけれど。
「まぁ、こんな話をしているよりも、さっさと探そうよ。私はこっちを探すから」
「だからなんでそんなに離れたがるんすか!? 二手に分かれようとかは絶対俺が死ぬっす!」
「いやいや、そんなわけないよ! 二手に分かれよう」
「二手に分かれようって台詞がもう嫌なんす! いつ聞いても嫌なんす! なんでこいつら戦力を分散するのか分からないって感じっす!」
確かにそういう気もするけれど、だからといって、毎回二人で行動するのも効率が悪い気がするしなあ。
「むしろ私って運が悪いらしいので、一緒にいると悪いことが起きるかもよ?」
「でも悪運は強そうっす!」
それは確かにと思ったけれど肯定する発言をするのはやめることにした。
「じゃあ一生懸命探しまくろうか。出口。まずはあの象が消えたあたりから探してみよう」
「えっ!? いきなりやばそうなところから行くんすか!? ああいうのは最後に行くべきじゃないんすか?」
「よし、それじゃあ獣王君の好きな順番で周ろうか。別に私はどこからでもいいし」
「じゃあ、あの部屋の隅っこから順番に行こうっす!」
「あいよー」
ちなみに私は部屋の隅は、上にしか逃げ場がないのであまり行きたくないと思っていた。そこを真っ先に行こうとする獣王君の勇敢さに感動した。いや、そこまで考えていないだけかもしれないけれど、そういう勢いが最近の私には足りていない気がするし。よし、頑張るか。