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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
463/473

第463話「カピバラと迷宮探索」

明日少しだけ追記します。

3/20追記しました。

「来ちゃったっす」

 カピバラの獣王君が、この目がちかちかする虹色の迷宮に姿を現した。

「一人で攻略してみてもいいと思うんだけどなあ」

 そう思っていたのは私だけなんだろうか。

「いやいやいや、だってずっと心細かったところに助けが来たんっすよ!? やっぱりえーと、ねこます先輩はすごいじゃないっすか! だから尊敬するから一緒に御供させてくださいっす!」

「でも、私みたいな奴といたら、友達とはどうするの?」

「あー、それっすけど、もう諦めるっす」

 カピバラだからなんだろうか。確かにそれは諦める要因にはなりそうだけれど、動物系だからどちらかというと人気になりそうな気がするんだけれどなあ。

「俺は多分、現実の友達と一緒にプレイはできないっすね。嘘つき呼ばわりもされたし。あと、別にこのゲーム以外では普通に友達としてはやってけそうなので、そこまで拘ってもいないっす。それより、俺はねこます先輩の仲間にしてもらったほうがいいっす!」


 カピバラというかカピバラ人間が仲間になるのか。うーん。面白くはあるんだけれど、なんだか気が引けるなあ。獣王君はまだまだ若いんだから友達と一緒に陽気にノリノリで遊べるような気がするのに。

「私と一緒にいたら他のプレイヤーともあまり仲良くできないの承知で言ってる?」

「ねこます先輩と、その仲間がいるんですよね? それで十分っす!」

 いいのかそれで。といっても私も似たようなものだからなあ。結局、ナテハ王国内で仲良くなれたのはドーラ師匠ただ一人だし。人間化してもっと周りのプレイヤー達と交流をとればいいのかもしれないけれど、結局正体を隠して付き合うことになるからなあ。

 自分が魔者であることは勿論、魔者の大陸の事も迂闊に話せない。薬草を大量に持っているということも知られてしまえば、これまた酷いことになるのが間違いなしだ。

 そうだ、私が平和にこのゲームをプレイするためには、あまり多くの仲間を増やし過ぎない方がいいってことなんだよなあ。


「くどいけれど、もう一回聞くよ。道は開けたことだし、自力で頑張ってみる気は本当にない?」

 自分の力で突き進むことを経験しておいた方が絶対いいと思っている。一人で心細かったから、この迷宮くらいは一緒にいて欲しいってことかもしれないけれど、いつか躓かないように、できれば一人、って考えてしまうんだよなあ。

「それはそのうち頑張るっす! 今はねこます先輩を頼りにするっす!」

「しょうがない。それじゃあここから一緒に行くか」

 出来るだけ突き放すつもりだけどね! こういう風に仲間になる展開があったとしても、一人で頑張れる気力が無いなら後でゲームを止めてしまいそうな気がするし! ゲームをすぐに辞めてしまうような仲間を作るってのはあまり好きじゃない。それもあって、獣王君を仲間にするという気持ちが持てずにいる。

 特定のオンラインゲームを長期間プレイしている場合よくある話の1つだ。ゲームを始めたばかりの初心者プレイヤーに最初に色々教えて接していたけれど、すぐに辞めてしまうという事がある。


 それが結構辛い。これから仲間として一緒にプレイしていくんだと思った矢先にいなくなるという喪失感。こんなのは何度も経験していけば慣れるものではあったけれど、むしろ色々教えてしまった事で、自分からゲームをプレイするという意欲を奪ってしまったのではないかと思う事があった。

 本当にそのゲームが好きなら、何か人から教えてもらう前に自分で試行錯誤してみるだろうし、簡単にゲームを辞めてしまうということもないだろう。

 だから、私は大してゲームを好きでもないプレイヤーを相手にするというのが好きじゃない。そう考えると、ブッチやエリーちゃんは、実はかなりのゲーム好きなんじゃないかとは思っている。

 なぜかマイナーなゲームの話をしてもほぼ確実に知っていると言うかプレイ済みだし。

 今、ここにいる獣王君を馬鹿にしているわけでもなんでもないんだけれど、やっぱり、どうもすぐ消えてしまいそうな気がするので、仲間というよりも仲間(仮)みたいな気がするんだよなあ。


「この目がちかちかするところ。昔のレースゲームの一作目を思い出すっすね。あのレースゲームの最終ステージもこんな原色でした。あ、すいません。知ってました?」

「勿論知っているよ、無敵キャラが妨害してくるあのステージだよねて、獣王君はレトロゲームもやるのか」

 まさか、レトロゲーム好きなんだろうか。それならそうと早く言ってくれればいいのに! レトロゲームが好きなら大体ゲーマーのはずだ!

「そりゃもう、結構やりこんでるっすよ! 周りにはどんびきされるくらいシューティングゲームなんかやりまくってしまったっす」

「へぇ、どんなのやるのかな」

「銀色の鷹が出てく」

「よし! 今日から私達は同士だ!!」

 私もあのゲームは大好きなんだ! 初代が特にお気に入りだ。あの横長の画面は最高だ。なんて言ってたらプレイしたくなってきたじゃないか。まったく、ゲーマーだったなら早く言ってくれ!


「ところで、この迷宮なんだけれど」

「はい?」

「バカでかい象の体内かもしれないんだ。その名もエレファントボス」

「安直なネーミングは嫌いじゃないっす。まぁ体内とかよくある設定だなぁとしか思えないっす」

 むしろ微妙なネーミングな気もするけれど、そこはいいか。

「そんで、そいつの本体か何かがここにいるのか、それともここはそいつが作り出した迷宮ってだけなのか分からないんだけれど、今はそれを確認しているところ」

 これからしばらく一緒に行動を共にするのだから知っている事は教えておくことにする。情報共有って大事だからなあ。

「なんかその、初心者に厳しいゲームじゃないっすかこれ。なんかいきなりベリーハード以上の難易度な気がするんすけど」

 おかしいとは思う。だけど私は納得してしまったことがある。私、ブッチ、エリーちゃん、そしてこの獣王君は、全員がゲーマーというかレトロゲームなどに詳しいプレイヤーだ。


 共通点はそこだけなのだが、私以外の三人は脱出できないような場所から開始だった。私にしてみても草原にいきなり投げ出されたわけなのでそこまで大差はない、とは思う。

 恐らく、私達のようなプレイヤーが最初に選択できるキャラクターは、脳データから読み取った何かから作成されたのではないかと思われる。

 だけど、ここで問題になってくるのは、私達みたいなプレイヤーは沢山いるはずだ。それこそレトロゲームのプレイヤーだって沢山だ。

 それなのに、私達のようなプレイヤーは見たことが無い。

「このゲーム自体の謎解きもしていかないといけないかな」

「考察は楽しいっすよね。なんか意味のなさそうな場所に意味を見出したくなって、こうかもしれないとか言い合ってるときが楽しいっす」

「そうだねえ。仲間内でそういうのは特に楽しいかもね」

 謎は一人で解く楽しさだけじゃなく、みんなで解く楽しさがあるからなあ。


「この七色に輝いている原色の迷宮にも何か意味があればいいんだけどね」

「こういうのは嫌がらせっすよ! 製作者とか、ゲームにマジになりすぎとか言ってきたりしますからね!」

 <アノニマスターオンライン>は、私に対する嫌がらせが多すぎるんだよなあ。前はこれでもかってくらい魔者の試練があったけれど、今はクロウニン達が襲い掛かってきているからたまったもんじゃない。どうしても私に楽をさせるつもりがないようだ。

 運営側が、私に何か恨みでもあるのかと思う事もある。

「ん?」

「お?」

 突然、地面が揺れだした。地震か。これはブッチ達がボスを倒したのだろうか。それとも中ボスか何かを倒したからこんな状態になっているのか。

「結構揺れる!」

 現実で言うところの震度5はあるな。そう思っていたら更に揺れが激しくなってきた。待て待て! これはそのままダンジョンが崩壊するとか言う流れじゃないよね!?

「うわわっ、な、なんなんすか!?」


「もしものときは自力でなんとかしてね!?」

「おうっす!」

 ただひたすら揺れているだけだけれど、なんだこれ、いつまで続くんだ。もう数分間ずっと揺れっぱなしだぞ。うげげ、これは嫌だなあ。現実だったら絶対気分が悪くなってそうだ。

 でもおかしいな? ゲーム内では気持ち悪さを感じない。そういう設定があるってことなんだろうか。それはそれで凄い気がする。

「と、とにかく、このまま真っ直ぐ行ってみようか。」

「は、いっす!」

 このように地震で揺れている最中に移動するのは危険だと思うが、ここで移動しないでじっとしていても意味が無いので、ガンガン進んでみることにした。

「くぅう! 目がチカチカするわ、体が揺れるわでどんどん気持ち悪さが増してくるね!」

「これは、辛いっす! 直接攻撃しないでこういう陰湿なやり方をしてくるのは腹が立つっす!」

 戦闘能力は高くないが、毒や麻痺など状態異常になる攻撃を仕掛けてくるモンスターを思い出した。


 毒消し薬などを持っていない時は真っ先に倒さなきゃいけないモンスターだ。今の私は毒耐性などがあるからいいけれど、揺れ動くことには耐性はないのでこれは結構きつい。

 獣王君の言う、陰湿なやり方というのは共感できる。これをやっているのがエレファントボスだった場合、あれだけ馬鹿でかい癖にこんなことしかできないのかと思ってしまう。

「ここで行き止りとか! こういうのも嫌だね!」

 さっさと終わりにしたいと思っているからこうして移動しているのだが、ここは迷宮なので、行き止りに行きあたってしまう事もあるだろう。既にプレイしたことがあるゲームだったらゴールを知っているので楽だが、知らない状態で移動しなきゃいけないのは、疲れてくるな。

「一応、こういうイベント発生中は、モンスターが出現しないとかありそうっすけど!」

 獣王君のような甘い考えは捨て去ったほうがいい。大体こういう時は悪いことになるに決まっているんだ。

 謎を解かなきゃ出られない場所があったとして、沢山のゲームでモンスターは出現しないように設定されているが、それと同じくらい沢山のゲームで、嫌味かというくらいモンスターが出現してくることがある。


「ヴォオオオン!」

「…なんかモンスターの唸り声が聞こえてくるね獣王君!」

「きっと気のせいっすよ! こんな時に出て来たら、俺がフラグを立てたみたいじゃないっすか!」

「そうだね! ところで、私の気配感知だと、強敵がでてきているっぽいんだけれど!」

「きっとねこます先輩の運が悪いからじゃないかと思います!」

「何言ってんの! 悪運が強いっていいことじゃないか!」

「それはあんまり良い事じゃない気がするっす!」

 …そんなことを言い争っている場合じゃない気がしてきた。かなり強い反応だし。もしかしたら、エレファントボスじかもしれないし!


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