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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第462話「般若レディ、先輩風を吹かせる」

「一応確認しておくけれど、ここから脱出できるとしても危険が伴うと思う。それでもいい?」

「いやもう、ここから出られるんだったら何でもいいっすよ。ずっとここにいる方が気は滅入ってくるし。それにこのままだとこのゲーム自体やめちゃいそうだし」

 ずっと同じ場所にいて何もできないというのは確かにそうなりそうだ。最初から詰んでいるようなゲームをプレイしても、重しくもなんともないだろうしな。

「分かった。それじゃあ脱出できるか試してみるとしようか。」

 脱出するにあたっては、この場所の中心部、8の字のど真ん中にある壁まで移動して試してみることにした。なんとなく、そっちのほうが壊せるんじゃないかと思っただけだけれど。

「ここらでいいかな。それじゃ吸収!」

 私は、両手を壁に当てて、吸収を試してみた。少しずつ私の方に何かのエネルギーみたいなものが流れ込んできているけれど、壁を消滅させられそうな感じはしない。


「この壁、魔力か何かで出来ているわけじゃなくて、壁に魔力がかけられているだけみたいだなあ」

 魔力で出来た壁ではなく、魔力を帯びた壁と言ったところか。これだと吸収する事はできないみたいなので、どうしたものか。

「母上、壁から魔力がなくなっているのであれば、壊しやすくなっているのではないでしょうか」

「なんか壁から不気味っぽさがなくなったっすね。これならいけるんじゃないっすか」

 ひじきと獣王が、壁を壊せそうな雰囲気を出していると言うが、私にはそう見えなかった。これ、すごく頑丈そうな壁にしか見えないし。

「そうかなぁ。かなり分厚そうなごつい壁だし、こんなの壊せる気がしないんだけれど。ためしに獣王君体当たりしてみる?」

「いや、流石に俺の体当たりじゃぶっ壊れないかと。ここは魔法でいきますよ」

「おう! 獣王様の力を見せてくれ!」

「サンダーショック!」

 お、さっきまで使っていた魔法とはまた別な魔法か。どんなものなのかなと思っていたら、電撃のビームみたいなものが獣王の前足というか右手から飛んで行った。


 ビームが壁に直撃した瞬間、壁が崩れ落ちる。お、いつもはこんな簡単に上手くいかないのに、上手くいったのだろうか。いやいや、そんな簡単にいくわけは。

「お、おおっ!? ねこますさんみたっすか!? 壁が崩れ落ちましたよ! あんだけ壊れなかったあの壁が!?」

「なんで一発で成功するの!? おかしくない!?」

 絶対におかしい。なんで私が予想していたことは大体上手くいかないのに、私以外がやるとこうして上手くいくのか。しかも一発成功。そんな簡単に上手くいくなんてずるい。

「大きな穴ができているから、ここから出られそうっすよ」

「良かったね。それじゃあ獣王君。後は頑張って脱出するんだよ。達者でね」

 はぁ。まさあ、こうもあっさり成功するなんてなぁ。私の運が悪いだけなのかな。私もこのくらい楽に進めるようになりたいなあ。

「えっ!? あの、一緒に行く流れじゃないんすかここは!?」


「獣王君はきっと運がいいから、このまま脱出できると思うよ!」

 笑顔でそう答えてあげた。獣王とか気高き魂みたいなものを持っていそうなので、多分なんとかなると思う。私が何か手伝えることなんてないだろう。

「いやいや、ちょっと見捨てないでくださいっす! 俺一人とか何が起こるか分からない場所に投げ出されるとか不安しかないっす!」

 カピバラの焦り顔は意外と面白いなあ。まぁ不安になる気持ちは分からなくもないけれど、ここからは一匹でもやっていけそうな気がするんだよね。何せ獣王なんだし!

「うーん。そうはいっても、私もあんまり強くないし、獣王なんてすごい強そうだし、俺様一人でなんとかしてやらぁみたいな感じで迷宮を制覇しそうじゃない?」

「まだ獣王になって目覚めたばかりなので一緒に迷宮攻略して欲しいっす!」

 そんな流れになってしまっているが、ここは断ることにする。

「ここからは自力で頑張ってみた方がいいんじゃないかな! 化け物の私になんか頼らずに!」


「あっ! 根に持っているんすね! それはもうすみませんでした! よし、これでいいっすよね! これでもう俺ら仲間じゃないっすか!」

 いや、別に根に持っているわけじゃないんだけれど。そういうことじゃなくて、やっぱりここは一人でどこまで出来るのか挑戦して貰いたいなあって気持ちがあるんだよなあ。

 ブッチと違って経験が浅いプレイヤーを連れて行くのはどうなのかなぁって思う所があるし。一緒にプレイしていくと多分私に依存してしまうんじゃないだろうか。そうなるのは良くない気がしている。

 突然、投げ出されたところから自分なりに考えて進めるから楽しいのに、ここで私が協力してしまうと、自分ではどういう風にプレイしたらいいのか分からなくなりそうなタイプな気がする。

「獣王君。ここは自力で頑張ってみる気はない? そっちのほうがいい気がするんだけれど」


「今まで自力で頑張ってきたけど上手くいかなかったので一緒がいいんすよ!」

 確かにそれは一理あるんだけれど、うーん。どうしたものか。

「これは、私が考えている事なんだけれどプレイヤーとして出来るだけ自分で何とかしようって考えが無いと、そのうち飽きて辞めちゃうと思うんだよね」

 オンラインゲームではよく見る光景だ。仲間と一緒にゲームをプレイするが、その仲間がいないと何もやる気がでないとか、仲間に流されてプレイするようになる。最悪、仲間にずっと寄生してプレイするようになる場合もある。私はこれがあまり好きじゃないので、獣王君をそうさせたくない。

「いやいや、俺、一人でだってやれるっすよ! だってここでずっと頑張りましたし!」

「だからここから先だよ。私は先輩プレイヤーだからってことで安心しちゃうよね?」

 これが問題だ。誰かがいてくれるからなんとかなるという状態はあまり良くない。私にしたってブッチがいるからなんとかなるかという考えはあるものの、基本的には一人で立ち向かわなきゃいけない敵が多いので、依存しているというわけではないし。


「そりゃ、先輩プレイヤーがどっしり構えてくれてたらこの先大丈夫そうじゃないっすか!」

 あぁ、これはあまり良くない傾向だな。というかこれまでも他のゲームとかでこんな感じでプレイしてきたってことになるのかな。

 これは、私のプレイスタイルとは合わないので、仲間にはなれない。

「分かった。それじゃあ私は先に行くから後はがんばって! ではまた会おう!」

「え!?」

 言うが早いか私は、ここで一気に走り出した。このまま走っていけば振り切れると思ったし、迷宮なので、多分好き勝手に進んでいけば、位置はばれなくなるだろうと考えた。

 この獣王君は、私のいる位置が分かってしまうようだが、一気に逃げ去った私を追うようなことは多分しないだろう。こうして突き放したことだし、私に頼る気持ちもなくなったと思いたいところだ。


(母上。よろしいのですか?)

 いいのいいの。ああいうのは追い詰められてから伸びるタイプだと思うし。それに私も獣王君にかまっている暇がないからね。ここでエレファントボスがいつ出てきてもおかしくないし。

(どこでも出現できるとすればかなり厄介ですね)

 出てくるならさっさと出てこいって思うんだけれどね。面倒くさいったらありゃしないよ。ん? なんだか雰囲気が変わってきたな。これは…目がきつい!? なんだここ。天井も壁も床も七色、つまり虹色に変化して輝いているじゃないか! 目にきっつい! 原色系の色ばかりだし、なんだこれ!

 これ、ゲーム的にどうなんだ。問題になりそうな気がするんだけれど、こういう目に疲労が発生しそうな迷宮とかだめじゃないのか。苦情の一つでもいれようかな。

 それとも、VRだから大丈夫ですみたいに言い張るだろうか。いやぁこれは言わなきゃだめだろう。マジで目がきつい。こんなところにいたら目の負担がやばい!

「ここもさっさと通り過ぎよう!」


 さっきまでが暗い所だったのに急に明るい場所にでるのは辛いなあ。長居は無用だし、さっさと通り過ぎようかなと思っていたその時だった。

「グゲゲゲゲ!」

「目がきつい! くたばれ!」

 目の前に現れたゴブリンにむかって鎌を振りかざした。このゴブリンたちも、体が七色で出来ていた。目にきついモンスターだ。ここは、そういう嫌がらせをするための場所みたいだな。

「ぎぃいい!?」

「おい」

このゴブリン、そのままばたりと崩れ落ちてしまった。だけど、血しぶきまで虹色とかなんなんだここは。本当にふざけているのか。そしてこのゴブリン弱いし。

 そういえば、獣王君はここが開始地点のようだから、初心者に合わせた敵がでているってだけなのかな。でもそれにしたって虹色のゴブリンはないだろう。


メッセージ:虹色のゴブ棒を手に入れました。


 虹色のゴブ棒って、虹色に輝くゴブリンの持っている虹色に輝く棒か。これ、どこか暗いところだと役立ちそうだけれど、逆に目立ちすぎて狙われそうな気がするなあ。


「アイドルの応援とかにはいいかもしれないけれど」

 サイリウムと考えれば悪くない気はする。だけどこのゲーム内で応援したいアイドルなんていないし。そもそもゲーム内にアイドルがいるのかどうかも分からないな。

「キキー!」

 うん。出ると思った、虹色のこうもり。ああもう、目がちかちかするんだってば! 

「狐火!」

何匹か群れてこっちに突撃してきたので、口から狐火を吐いて、一掃する事にした。こういう迷宮で火属性の攻撃を使うのって酸素がなくなったりしそうで怖いけれど、とりあえず一発くらいは大丈夫なんじゃないかと思ってぶっ放した。

「キァァア」

 やっぱり弱いな。簡単に倒せる。余裕だなぁなんて思っていたその時、何か重たい物が落ちる音が聞こえた。咄嗟に私は、これってまずいんじゃないかと思って、後ろに逃げ出した。

「ゴヴァアア!」

 出てきたのは、虹色に輝く岩だった。あぁ、狐火が壁に当たったから攻撃の判定ってことになったから出てきたってことか。くそう!

「バーン!」

 岩がそう叫ぶと、七色に光る爆発が発生した。爆発まで派手とかいい加減にしろこの迷宮を作ったアホ!


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