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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第461話「カピバラ人間」

ついに50万PVを達成しました!!!

これも読んでくださる皆様のおかげです!!!

ありがとうございます!!!!

「そこのカピバラ。よく聞いて。私はプレイヤーだよ!」

 さて、素直に聞く耳を持ってくれるかどうか分からないけれど、こういっておけば少しは安心してくれるだろうか。

「ひ、ひい!? プ、プレイヤー!? え!? え!? マジで!?」

 しどろもどろになるカピバラ。なんか可愛いな。多分中身は男なんだろうけれど。

「まじだよ」

「化け物じゃんか!」

「化け物じゃないよ!」

 なんだこいつ失礼な奴だなあ。般若レディのどこが化け物なんだ。全く、センスが無い奴はこれだから困るんだ。般若レディは可愛いだろう!

「…こ、怖いって! なんなんだよその顔!? ホラーゲームのキャラみたいじゃん!」

「ああもう、そういう話をしたいんじゃないんだよこっちは。私は今日ログインしたらここにいたんだけれど、そっちはどうなの?」

 さっさと本題に入る事にした。いちいち突っ込んでいたらきりがないし。というかひじきが若干苛ついた表情をしているんだけれど、私が化け物と言われたことが気に入らなかったんだろうか。


「俺、もう一か月くらいここにいるかも。折角大人気のゲームでみんなと遊ぼうと思っていたのに、一人だけここだったんだよ。どうにか脱出してみんなのところに行こうと思っているんだけど、どうしても出られないし、はぁ」

 ブッチやエリーちゃんと同じ状況ってわけか。そんでもって、共通点は人外系のキャラクターってところか。これは、超低確率で人間以外のキャラクターが選べるようになっているか何かで、その場合はこうして脱出できないような場所から開始ってことになるのかな。

 だけどなぁ、そうなると私の場合だけ特殊なんだよなあ。一人だけ草原って。まぁ魔者の大陸からは出られなさそうな状況ではあったけれどさ。

「私の仲間も同じような状態だったよ。それで、私の方は、もうこのゲームを始めて1年は経過しているんだけれど…」

 今更だけど、初めてプレイしてから1年経過していたことに自分でも驚いている。月日の流れって早いなあ。


「え! それじゃあここから脱出する方法とか知ってる!? 教えて欲しいんだけど!」

「それが分からないから、私はここの敵を全滅させてみようと思っていたんだけれど、えーっとカピバラ君も倒せば出られるんじゃないのかなーと」

「俺はカピバラじゃないよ! 名前は獣王だよ! けもののおうって書いて獣王!」

 じゅ、獣王様でしたか。そうですかとツッコミをいれたくなった。獣王かぁ。そうかぁ。やっぱりそういう年頃かぁ。うんうん分かる。

「何頷いているんだよー! そっちは、そっちの名前は! バケモノキングとか!?」

「そんな大層な名前じゃないし。ねこますって名前があるよ」

 思わず名乗ってしまったがまぁいいか名前くらい。偽名の寿司ギャルとかのほうがいいかとも思ったけれど、なんかこいつ仲間になりそうなノリだし。

「は!? どこに猫要素があるんだ!?」

「猫好きってだけだから」

 そして沈黙が生まれた。うーん。なんかどうも話がかみ合わないなあ。


「お、俺を倒しても多分出られないと思うんだけれど。それにそっちはここにいたゴブリンとかこうもりを倒しちゃったんだろ?」

「ん? そうそう。そうだ。そっちはあいつらに襲われなかったの?」

「電撃魔法撃ってたら、攻撃されなくなったよ。だから基本無視してた。それに…こんなところでずっと一人だったのもあって、倒してしまったら本当に一人になると思ったし」

「人なんだ。匹じゃないんだ」

「俺人間だし! それに見てみてよ! これこれ! おいしょ! ほらほら! 俺、実はカピバラ人間なんだぜ!」

 そういうと獣王は二足歩行で歩き出した。凄いなおい! それにカピバラ人間も珍しい種族だな。なんだか感動してしまう。こんな種族がいたんだなあと。

「あ、あと、それで、そっちの美少女妖精みたいな子は!? プレイヤーなの!?」

 なぜ私が美少女じゃなくてひじきを美少女扱いするんだろうか。この野郎、ふざけやがって。


「私は、母上の召喚獣のひじきです」

「そう、私の召喚獣の黒蛾ひじき」

「えっ!? あっ。そうなのか。そうだったのか。はぁあ」

 露骨に残念そうな態度をとるなと思ったが、このカピバラこと獣王君はきっと若いんだろう。そうに違いない。ひじきが可愛いから、プレイヤーとして仲良くなりたいとか思ってしまったんだろう。

「こくが、って何?」

「黒い蛾のこと」

「が、が、蛾ぁぁぁ!?」

 反応が面白いなあ。私も今よりも何も知らなかった頃はこんな風に何でも驚いていた気がするなあ。若いっていいなあ。私もまだそんな年寄りってわけでもないけれど。

「というわけで、美少女妖精のうちのひじきをよろしく。いやぁ良かったねえひじき! 美少女って読んで貰えて!」

「…母上、なんだか少し怒っていませんか?」

「私は温厚だから怒るなんてないよ!」

「待って待って、ひじきって、なんでその名前?」

「黒いし」

 またしても沈黙。なんだろう。さっきからどうも漫才でもやっているような気分になってくるんだけれど。


「えーと。ねこます…さん? 名前のセンスが壊滅的じゃないっすか」

「壊滅させられるくらい素晴らしいってことか。いやぁ褒められるなんて照れるなあ」

「あ。あー。はい。もういっす」

「じゃあ、そろそろ本題に入るか。私達は閉じ込められているみたいなんだよね。で、ここは多分モンスターの体内なんだよ」

「ええ!? でも体内だったら、脱出できそうなもんじゃないっすか? 出入口が無いとかなんかおかしいと思うし!」

 確かにそれは私も思うんだけれど、出入口の無い場所も存在しているのだからしょうがないだろう。あるいは、普段は閉じていて、何かがあるときに開くみたいな体の器官なんてあると思うから、そういう場所なのかもしれない。

「それで、この壁を攻撃するしかないかなーって考えているんだけれど」

「やめておいたほうがいいっすよ。岩のモンスターがでてきて、数秒後に自爆するんです。その自爆で壁はダメージ受けないようですし、こっちだけ一方的にダメージうけるはずです。」


 それは困ったな。岩のモンスターを沢山集めて、そいつらを利用すれば出られるんじゃないのかなあと思っていたのに、何の役にも立たないなんて。

「それじゃあ私はここで仲間から救助されるのを待つくらいしかないなあ」

「ええ!? 自力で脱出が出来たりしないんすか!?」

「ここを無理矢理壊して行く方法もあるにはあるけれど、それはまだやりたくないんだよ。それに、今はここにいる限りは安全だし」

 他の事が出来ないというだけで、ここはもう敵を全滅させたから安全と言えば安全だ。そして吸収も試すことができるし、隕石拳だってあるから、まぁなんとかなりそうな気がしている。

「俺、早くここから出たい…。もうこんなところうんざりだ! もっとこう、獣王として、覇権を狙いに行くようなことができるようになりたいのに!」

 おお、輝いているな獣王君。私にはない青春を感じるぞ。すごい、これが若さか!?


「外の世界ねえ。カピバラ人間ってことか、人間達をぼこぼこにする方になるってこと?」

「人間の中で一番凄い奴になるよ!」

「え? だってカピバラ人間って、どっちかっていうとモンスター扱いされるんじゃないのかな」

 まさか人間達の中に混じってそこで獣王となるなんてよく分からない妄想をしていたんだろうか。獣王なんだから、獣人とかそういう奴らの王様ってことになると思うんだけれど。

「え。え。なんでモンスター!? 俺はただのカピバラ人間ってだけだよ!?」

「私は変装して街の中に入ったことあるけれど、獣人は全然見なかったよ。まぁ別の街に行けばいるのかもしれないけれど」

 そもそも獣人って存在があるのかどうかもよく分からない。多分あるとは思うけれど、あの国にはいなかった気がする。となると、やっぱり獣王君はモンスター扱いされるんじゃないのだろうか。

「え。えぇぇえ!? じゃあ俺、もしかしてここから出てもみんなと遊べないとかなるの!?」


「それは分かんないよ。でも獣王君の友達だったら仲良くしてくれるんじゃないの?」

 現実の友達だったら、仲良くしてくれるだろう。もしかしたら、物凄くからかわれたりするかもしれないけれど。

「うう。俺も初めてみたって言ってて、VR機器まで見せたのに、仲間に入りたくないんだみたいなこと言われ始めてて結構辛い状態なんだけど」

 あ、エリーちゃんの状況と似ているなあ。やっぱり仲間がいても何かのきっかけで疎遠になったりするものなんだよねえ。

 その点、私は楽だな。周りに<アノニマスターオンライン>をプレイしているなんて話したことが無いし。今後も話すつもりが無い。他にも色んなゲームをプレイしていることも話したこともない。親友とかじゃなくてもある程度仲良くしている友達はいるし。それにゲームだけで付き合っているわけでもないからなあ。

「獣王なんだからそこはほら、もっと強くなって、仲間たちの前に立ちはだかってみればいいんじゃないの? 俺様が獣王だぜ! みたいな。」


 そういう方がいっそ清々しい気がする。仲良くなれないなら仲間と敵対するっていうのも、面白そうだし。

 それに私だって、ブッチやエリーちゃん達と今後対立しないとも限らないしなあ。別に仲良く遊んでいるだけじゃなくて、戦ってみたいとか思う事だってあるだろうし。ブッチは特に好戦的だし、私と戦いたがっている所があるので、今後また本気でやり合わなきゃいけなくなりそうな気はしている。

「そ、そうだ。俺は獣王だ! うおおお! やってやる! このゲームで覇権をとってやる! ってわけでここから脱出ってマジで無理なんすか?」

「一応色々調べてはみたんだけれど、特に何も無くてね。時間経過でイベントが進行しないかなぁって思っていたんだけれど、それもないみたいなんだよね」

「そうなると結局出られないままっすか。気が滅入ってくるってのに! ああもう!」

 そういえばブッチも相当辛かったみたいだしなあ。何もできないでずーっと同じことだけしているのって。


 最新ゲームを手に入れた、やった遊ぶぞ! って思ったら、こんなところだったら、私も気が滅入ってしまっただろうなぁ。うーん。どうするかなぁ。ここはちょっと先輩プレイヤーとして一肌脱いであげましょうかねえ!


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