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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
452/473

第452話「黒蛾の羽」

明日追記します!

2/28に追記になってしまいました。すみませんでした。

 手の小指だけ曲げることができるだろうか。耳をぴくぴく動かすことができるだろうか。今、私がやろうとしていることは、どうやらそういうことらしい。

 私の背中から黒い蛾の羽が生えているが、これを今、必死に動かそうとしながら走っている。これが先ほど、一瞬だけ動いた。しかしその一瞬動かすだけで大分気力を使った。

 ペン回しやら口笛やらを練習していた時の事を思い出す。それらと全く同じような感じで、ひたすら感覚を掴むために失敗してもやり続けなければいけない。

 あと、どのくらいでこの羽を動かして空を飛ぶことができるようになるんだろうか。それが気になってしょうがない。

 一朝一夕で出来るようにはならないんじゃないだろうか。でも私としてはいますぐ使いたい。今ここで交戦中のマオウペンギンを倒すためには、私も空を飛べるようにならないといけない。

「全然飛べないんだけれど! ひじき! 本当にこれで合ってるの!?」


「はい、合ってますよ母上! そのまま頑張れば飛べるはずです!」

 頑張れば…ね。今の私は本当に頑張っているんだけどなあ。マオウペンギンに追い回され、逃げながらも羽を動かそうとしているのだからすごいと思う。

 こんな危機的状況だって言うのに、私は絶対頑張ってるよ! 羽! 羽! もっと動いて! こういうのは慣れだろう慣れ!

 ブッチだって、あのサイコロの目を使いこなすくらいになっているし、私がこの羽を動かすことに集中すれば、絶対に出来るようになるんだ!

「羽! 羽よ動けええええ!」

 背中から生えている漆黒の蛾の羽に向かって叫ぶ。気合いだよ気合い。こうでも言わないと、なんだか落ち込んじゃいそうだったので、気合いをいれないといけないな。

 現状、ただ走って逃げているが、このままだと、力尽きたところに絶対零度砲を放たれて、死んでしまうだろう。そんなことにならないためにも、ここで羽を使えるようにするんだ!


「と、飛べよ! 飛べっての!」

 飛べ! 飛んでよ! ああもう! まだできない! この羽は稀にぴくぴく動くけれど、基本的に何かが起こるわけでもない、すごい地道な作業をしている。

 現在はマオウペンギンと交戦しているが、こいつを倒すためにもこの羽は絶対に必要だ。これが使えるようになれば、今後、あらゆる点で便利になるはずだ。はずなんだけれど、現状きつい!

 動くのにあと何時間、何日かかるんだってペースな気がする。もう! この羽を使いたいだけなのに時間が取られすぎだよ!

 本当にもう、空を飛ぶことに関しては初めて浮遊を使った時から振り回されっぱなしだよ! なんで私は飛べないんだよ! 空を自由自在に飛べたらどんなに楽しいんだろう。現実では決してできないことだけに、ゲームではできたらいいのにって考えていたらできないとか酷すぎる!


 羽には、私の神経が通っているわけじゃない。稀にぴくっと動く理由に関しては、この羽を動かすのに必要な何かの感覚が偶発しているからじゃないかとは思う。

 それとも…もしかするとだけれど、蜂女王の羽をつけているからそれが邪魔になって飛べないなんてオチじゃないよな。そういえば、この羽、ずっと前につけてから一度も外したことがなかった気がするな。一旦外してみるか?


メッセージ:蜂女王の羽は現在外すことができません。


…え!? 何だそりゃあ!? 外すことができませんってなんでだ!? あ、あーそういえば、妖狐の尻尾も外そうと思うと何かデメリットがあったっけな。それと同じようなものなのかな。あ、でも違うな。メッセージに現在って表示されている。

 現在ってことは、何か理由があって外せないって事か。もしかして、ひじきにつけて貰っているこの漆黒の羽が影響しているのかな。蜂女王の羽と漆黒の羽の二つが干渉しあって上手く動かないなんてことはないよね。もしそうだとしたら、今とてもまずいってことになる。

「…なんて冷静に分析している時間がなああああああい!」

 こうしている今も、当然ガンガン走り続けているので、正直考えが追い付かなくなってくる。


 飛べ、飛べと頭の中でひたすら念じる。動け、動けと体を必死で動かす。絶対零度砲を回避すると、後ろから冷たい空気が流れてくるのが分かる。少し振り返ってみてみると、その場所全体が小さな氷山のような、または氷柱のようなものが出来上がっていた。こんなのくらってしまったら絶対に死ぬだろうという気持ちが強く印象に残った。

 既に絶対零度砲は百発以上撃ち込まれてきているのに、威力が衰えている様子は無い。マオウペンギンなんてふざけた名前の魔王のくせになんなんだ。

「だぁー! もう! こんなのいつまで続けるんだぁー!」

 そろそろブッチぐらいは来てくれてもいいんじゃないか。私が隕石拳でこの国を荒らしまわったのだから、この国全体がパニックに陥っていてもおかしくないだろう。そのタイミングでどさくさに紛れてもこちらまできてもおかしくないと思ったのに。


「ブッチまだかー!」

 叫んでみるが返事はなし。これは、私一人でこのマオウペンギンを倒せってことなんだろうか。これはおかしいじゃないか! 敵に攻撃が届かないのに一方的に敵から攻撃され続けるって狡いじゃないか! それはむしろ私がやりたかったことだよ! 先にこのマオウペンギンから使ってくるなんて酷いじゃないか!

「うぐぐぐ。なんなんだぁ! あと少しだっていうのに! あと少しだってのに!」

 怒りが頂点に達しそうだ。だってもうすぐ倒せそうだったってのにおあずけとか、おあずけとかぁあああああ! なんなんだあのペンギン野郎があああ! ここまできて空に逃げやがって! もう我慢ならん。この鎌でさっさとぶった斬ってやりたかったのに! んぐぐぐ!

「こらぁああ! この軟弱な翼がぁ! さっさと動け! 動くんだよおお!」

 背中をこわばらせる。いけ! いくんだよおおお!

「ん、んん!? う、お、う、お、あ、い!?」

唐突に、そして猛烈な勢いで背中の羽がバタバタと動き始めた。これは、蜂女王の羽と漆黒の羽の両方が動いている。お、おおおおおし! これでいけるぞ! いけなきゃおかしい!


「ひじき! ここからどうすればいいか分かる!?」

「母上! その後は、母上的に言うと、気合いです!」

「気合いか!? それなら大得意だ!」

 ひじきも良い事を言うじゃないか! ここからは気合いか! 要するに今は空を飛ぶための準備が整った状態ってことだろう。エンジンがかかってきたってことだろう! このまま空にいやがるマオウペンギンに突撃して、鎌で斬ればおしまいってことでいいはずだよね! そうだよね! 私は行くぞ。行ってやるぞ!

「よっしゃ! それじゃ、あの畜生ペンギンに向かって突撃するよ!」

「はい! 私もお供します!」

「気合いで行くぞおおお!」

 私は、空を飛んでやる! という気持ちを強くする。強く。つよ…ぼ。ぼ。!?!?

「う、うげあああああああああああああ!?」


 な、なんだ!? 視界が!? 視界が!? おっおっおっ!? と、飛んだ!? 飛んでいる!? ど、どうなっているんだ!? なんか雲の上にいる!? 雲が!? ここは空だよね!? なんでいっきにここに!? 飛び過ぎじゃないか!? なんでいきなりいいい!? ストーップ! これはだめ! こんな空高く飛ぶのは駄目! 一回、一回地面までもど。

「ぶべあ!?」

 突然、地面に顔から激突した。何これおかしくない!? 暴走しているよこれ!? しかもすごい速度がでているみたいで、かなりヤバイ! 制御が出来なさすぎる!

「いや、今度は軽く。かるーく空をとふっ!?」

 また雲の上じゃないか!? 極端すぎる! あっ!? というか今地面に激突したし、ダメージを食らったかもしれないので、薬草を食べないと。もぐもぐっと。んっあっ!

「おひれるぅうううう!」

 そのまま垂直落下していく。うわぁ! 空を飛ぼうって気合いを込めるか何かしていないと、浮いたままにすることもできないのか! これはとんでもない!


 私はたた普通に飛べればよかっただけなのに、これじゃあ飛んでいるなんて言わないっての! 飛び上がっている、地面に突撃している、落下しているのどれかってところだな!

「はっ!? そうだマオウペンギンから攻撃されるかも!?」

 このままじゃいい的になってしまう。ええい、このままどんどん動いてみるぞ! ひたすらこの空を動き回ってみいいいるううううう!? だから早いっつーのおおおお! もうちょい! もーちょっとだけ速度を落としてもら、もらえねえええ!

「魔者! ここまで来たか、貴様の命も…」

「うるさああああい!」

 空の上で暴走していたら、そこにはマオウペンギンがいた。口を大きく開けて、またしても絶対零度砲を撃とうとしてきた。ああもう! どうせ当たらないと思うけれど、この鎌で突撃いいい!

「おりゃああああ!」

「終わり…が…ぐ。お?」

 あれ? マオウペンギンの姿が見えなくなった。ああ、またどこか遠くに飛んだな。くそう! やっぱりこれは蜂女王の羽と漆黒の羽を二重で使ってることのトラブルだよ!


 私は空を飛んではいけなかってことか! こんなのばっかりで最悪だよ!

「マオウペンギン! 私はまだ戻ってくるからなあああ! これで終わりと思うなよおお!」

 上空をひたすら動き回ってしまうので、今、自分がどの位置にいるのかもよく分からなくなってしまった。本当に踏んだり蹴ったりだよ! もう面白すぎるよ<アノニマスターオンライン>は! こんなことになるなんて完全に予想外だったしな! 普通に空を飛んでとどめを刺しましたとかじゃ確かに面白くなかったかもしれないので、これは個人的にはすごい盛り上がっているよ!

「このまま! マオウペンギンも絶対ぶっ倒してやるぞおおおお、おおおおおお!?」

 まだ動き続ける。ちょっと動こうと思っただけでワープしたみたいに動く! これを制御できるようになれば、私は誰よりも空での戦いが上手になるはずと思いながら、飛び続ける。


メッセージ:マオウペンギンを倒したことにより「魔法」を覚えました。

全体メッセージ:ねこますが「魔王」の称号を得ました。


……………………………え?


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