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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第5章「般若レディは備えたい」
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第449話「魔王は変身するのが定番?」

3日ぶり投稿になってしまいました。すみません!

 魔王といえば追い詰められると変身する。そして変身前よりも大幅に強くなっている。これは定番なのでマオウペンギンもそうなるだろうとは思っていた。

 今は、この変身が一回きりなのかどうかが気になっている。二、三回ぐらい変身してから最終形態になるということもありえるからだ。これからどんどん強くなってしまうのなら、私一人の手では負えなくなるんじゃないだろうか。

 ももりーずVの仲間達が来てくれないと、死んでしまうかもしれない。この一回目の変身ですらどれだけ強くなるのか分からないので何とも言えないが、魔王なんてものを相手にするのに一人で立ち向かうなんて無謀だ。

 私は、勇者だとか偉い人でもなんでもないし、特別優れたゲームプレイヤーでもない。それなのにオンラインゲームでの強力なボス、しかも魔王なんて言われている存在を相手にしている今はよほど頑張っていると言えるだろう。


 隕石拳を使っていけば、こいつにもある程度ダメージを与えられると思ったのでモンスターの国へ突撃したけれど、回避されてしまったし。

 マオウペンギンの移動速度はかなりのものなので、もし隕石拳を当てるのならば、動けないようにしてからやるしかない。じゃあそれをどうやってという問題はあるんだけれど、ね。

 あぁ、なんかどんどん黒い靄がマオウペンギンに集まっていく。ここで私は、ただ茫然と見つめているだけでなく、当然鎌で斬りかかった。でも、マオウペンギンに攻撃が全く当たらなかった。

 鎌は当てている。だけどそれが空を斬ってしまうだけだった。つまり、変身中は無敵ってことになるのだろう。もしかして、今までプレイしてきたゲームで変身していた敵もみんな無敵だったってことなんだろうか。

 折角、変身なんて隙の多い時に攻撃すれば、簡単に倒せる! なんて思っていた通りのことをやろうとしていたのに、そう上手くはいかないようだ。無念だ。


「グォオオオ!」

 ああうん。マオウペンギンが雄たけびを上げている。VRだけあって迫力というか臨場感があるけれど、他のゲームでもこういう声は散々聞いてきたので、怖いというような感情は無かった。

 むしろそこは、クエークエーみたいな鳴き声じゃないのかとツッコミを入れたくなった。

「グエーグエー!」

 死んだンゴ。いや違う、何を言ってるんだ私は。だいこんじゃあるまいし。生きてるよ、生きてる。突然笑かしに来るなよこの畜生ペンギンが。おっと違う、マオウペンギンか。

 そういえばこの黒い靄、どこから発生しているんだ? なんて思っていたら、すぐ分かった。私が隕石拳で倒したモンスターどもの死骸からだ。

 ああ、よくある話というわけか。こういう倒したモンスターの魂とかそういうのを吸収して強くなるみたいな感じ。あれ? となると私は大量にモンスター達を倒してきたんだけれど、もしかして、こいつかなり強くなるんじゃないのか!? 待て待て! あっ! そう言えば私も吸収が使えるじゃないか! 何をボケっとしているんだ! 先に吸収してしまえばマオウペンギンが強くならないし、それどころか私の方が強くなるじゃないか!


「吸収!」

 私は、急いでスキルを使った。すると、私の元に黒い靄がどんどん集まってきた。よし! これでマオウペンギンの強化を妨害する事ができるな。どんどん使っていこう!

「グェェエエ!」

「!?」

 黒い靄が、私よりもマオウペンギンの方に優先して吸収されていってる! こいつ! そうはさせないぞ! 私の方がもっと沢山吸収してやるんだからな!

 こうして吸収対決が始まったわけだけれど、私がどれだけ頑張っても、マオウペンギンの方に吸収されていってる。くそー。なんてことだ。完全に邪魔することができなかったとかまずいんじゃないか。


「グボボ。グェアアア!」

 全身が漆黒に染まったマオウペンギンは、空に向かって吠えた。次の瞬間、マオウペンギンの頭に二本の角が生えた。背中には、蝙蝠の翼が生えてきた。おお、実に悪魔らしいデザインだな。

 マオウペンギンの両目が深紅に輝いている。これはもう、明らかに魔王といってもいいデザインだな。といっても見た目はでかいペンギンをベースにしているものだから、恐ろしいという感じがあまりしなかった。

「!」


 全身に寒気のような感覚が走った。VRだけれど、ここまで臨場感があるのかと思った。もしかしたらこういう魔王については、刺激のリミッターが一部解放されるのかもしれない。まぁ私の勝手な予想だけど。

「魔者。今日、貴様は死ぬぞ。今から我が貴様を殺すからだ」

 圧迫感のある声が響いてくる。凄く強そうだというのは分かる。だけどなんだろう。とても弱そうにも聞こえてくる。

「死ね」

 私は、その声が聞こえてきたと同時に、しゃがんだ。何かとても嫌な予感がしたからだった。すると私の頭上を何かが通り過ぎていったのを感じた。それが何だったのかを確認しない。こういう時は、何か攻撃をされたと思えばいいだけだ。


 マオウペンギンは私に何を仕掛けてきたのか。それを気にする余裕はなかった。大体こういう時は致命傷を与える攻撃を高速で放ってくるのが定番だろう。

 だから、気にせずに鎌を持って私は特攻を仕掛けた。が、マオウペンギンは一瞬にして姿を消してしまった。それと同時に私は振り返りながら鎌を振るう。そこには誰もいなかった。なのでそのまま更に回転して、正面へと攻撃を繰り返す。

「…ほう、我の動きを察知したか」

 どうやら正解だったようだ。マオウペンギンの翼、フリッパーを私の鎌が止めていた。こいつ、とんでもなく素早いな。これを何度もされたら反応なんて出来るわけがないと冷や汗が出そうになった。

 マオウペンギンの方が格上だというのは理解していたが、油断したら一撃で死んでしまうことも今の攻撃でなんとなく理解できた。一回でも攻撃をくらう事が許されない状況か。これはとてつもない重圧を感じる。

 アクションゲームでノーミスクリアをやれと言われているような気分だ。ただの一回も攻撃を当てられずに回避し続けてゲームをクリアする。相当難易度が高いだろう。


「ではこれはどうだ?」

「浮遊!」

 このまま攻撃され続けたらまずいと判断し、マオウペンギンの足止めをする事にした。だけど。

「今、何かしたか?」

「ぐ!」

 失敗した。こいつは、ほんの少しだけ、体を浮かせていた。姿勢自体を崩すことはなかった。だけど浮いていようが何しようが、一瞬でも私の浮遊の効果で動けなくなるはずなのに。ついに浮遊が聞かない敵が出てきてしまったか。

「冷凍破」

 マオウペンギンが、口から吹雪を吐き出してきた。その吹雪の中に、大きな氷の塊も大量に含まれていた。


 こんな攻撃をまともにくらったらまずいだろうと、舌打ちをした。私は動く。しかし吹雪は広範囲に渡って放たれている。これはなんとか相殺するしかないだろう。

「たぁぁつううまああきいい!」

 鎌を全力で振るうと、前方に竜巻が発生した。それが吹雪へと衝突する。これだけでなんとかなるとは思えなかったが、何もしないよりは大分いいだろう。

「…これをやるしかないよね」

 錬金術士の杖を取り出した。魔者は、やっぱり話しかけてこなかった。この吹雪に対抗するためにこれを使う。

「魔者よ。貴様の竜巻など、消し飛ばしてくれよう。超冷凍破!」

「スキル調合! 狐火と竜巻で、えーっと! 竜火の狐」


 スキル名は適当につけてみたが、しっかり発動した。火を纏った巨大な竜巻が、マオウペンギンが放った猛烈な吹雪を飲み込んでいく。おお!? 結構強いんじゃないか!? 行ける行ける! 頑張れ頑張れ! あっおっあっ!?

「ぐぅううー!?」

 普通に押し負けた。ある程度までは吹雪の威力を抑えてくれたけれど、全ては止めることができず、相殺しきれなかった吹雪が私に直撃して吹っ飛んだ。すぐに薬草を食べる。回復、回復だ。

 …どうしろってんだこいつ? 魔王相手に一人で果敢に立ち向かって見せているけれど、かなりきつい。力量差がありすぎる。私は勇者でも何でもないのにこんな奴と一人で戦っているなんて頑張っているけれど、やっぱりきつい!


「魔者。所詮貴様は虫けらだったのだ。我は力を蓄えた。貴様を殺せるほどの力をな。貴様はただ元々持っていた才能だけで生きてきた。だからこそ、我に叶わぬのだ」

 …。

「貴様のような何でもできる奴は、これまでは、その才能だけでなんとかなってきたのだろう。ゆえに貴様は怠惰であった。そして傲慢であった。強欲であった。…。」

 七つの大罪系の話をしないで欲しいんだが。そういうのはいい加減聞き飽きたのでうんざりしているんだ。

「貴様はここで死ぬ。ただの才能の塊が、今ここでな。」

 …。こいつは何を言ってるんだろうか? 私が才能の塊だと? 何寝ぼけたことを言ってるんだこいつ。本当にありえない事を言ってる。腹が立ってきた。物凄く腹が立ってきた。


 私は、こいつに我慢が出来なくなってきた。これまではこいつがただ強敵だったので、そこで苦しめられてきたことに腹が立っていたが、今は全く別な怒りを感じている。

「お前、ふざけるなよ。何がここで死ぬか。死ぬわけないだろう。」

 そうだ。私はこのモンスターの国に喧嘩を吹っ掛けにきたんだ。そしてこのマオウペンギンをぶっ倒すことを目標にしてきたんだろう。ようやくこいつに会えて、そして戦いにここまできたというのに、こんな奴に負けたらその苦労も水の泡になるだろう。

「ふん。貴様は終わりだ。我の真の姿を見たのだからな。魔王としての我の姿だ。これが我の力だ。この力は、我が鍛錬して身に着けたもの! 貴様のような何もしなかったものと違うのだ!!」

「うるせええええええええ!」

 私は、なんだか、こう、無性になんだけれど、このペンギンをぶっ倒したくなった。これまでもぶっ倒したいと思っていたけれど、それとは違う。


 普通にムカツクことを言われて、凄くムカついている私がいて、こいつは絶対にボコボコにしないと気が済まないという感じだった。

 何が才能だ!? この野郎! ふざけんじゃないよ! 何が鍛錬してきただ! そんなの私には知ったこっちゃないんだよ!! やろう! ぶっ倒してやる!


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