第445話「錬金術士ねこます」
昨日、一昨日と風邪でダウンしてましたが元気になりました!
よろしくお願いいたします!
「死ね!」
マオウペンギンは、全身を回転させて飛翔しながら私に突進してきた。空中から勢いよく突進してきたが、かなりの速度で反応が遅れたが回避した。しかし、マオウペンギンはそのまま地面へと入っていくと、私の周囲で揺れが生じた。
げぇ! これって土潜りがあまり使えないってことになるんじゃないのか。そもそもグローリーアントもクロウニンの一匹だったし通用しないのは分かっていたけれど、これはやばいなあ。
マオウペンギンは、一瞬で地面から出てきたが、その間も回転していた。うわぁこれってつまりドリルじゃないか。こんなのをまともにくらったら即死じゃないのか? 嫌だなぁ。こういう即死系の攻撃は嫌いなんだよ! RPGなんかでは一定確率で死ぬ魔法があると、運が悪い私はそれで全滅したこともあるくらいだし。
「おいおい! いいのか! そんなの私がくらったらじわじわと苦しめて殺す前に死んでしまうぞ!」
「安心しろ。貴様がその程度で死ぬわけがない」
うわ、何その無駄な信頼は。私はあっけなく死ぬってのは本当だってのに、さて、どうする。ドラゴンフルーツを何個か食べているけれど、これで全快とは言えないし。
よし、だったら、先生の元で頑張って錬金術で作ったアイテムの出番だな! ふっふっふ! これまで温存してきたアイテムの数々をここでお披露目してやるぞ!
「グァァ!」
「また水鉄砲か! だったらこれでもくらえっと! 熱々湿布!」
私は、マオウペンギンに湿布を投げつけた。この熱々湿布を強粘着性だ。一度貼りついたら、そうそう剥がせないだろう。
「!? なんだこんなもの。む、ん? なんだ!?」
そう、剥がせないんだよ。だから使う時はとても注意が必要なアイテムだ。間違って自分に貼りついたときのために剥がす方法はあるけれど、それだって結構面倒な手順を踏む必要がある。
この粘着性は、1時間以上は持つように作った。火薬草と粘着性の液体など、色々混ぜ合わせて作ったとっておきのアイテムだ。
剥がされたらどうする? という対策をするために、絶対剥がされないようにするという事を考えつつも剥がせなくなったらどうするという対策もきちんと考えた。
使う時に注意が必要であっても有効的なアイテムならどんどん作るべきだ。危険があっても正しく使えば有効的に使える、闇の錬金術の教えに基づいて、私が作った新しいアイテムだ! 先生も褒めてくれたいい出来だ!
「む、ぐ。熱い、ぞ。なんだこれは。ぐぐぐ!?」
そう、このアイテムは体の外側ではなく、内側に高熱を与えて内部を燃やすアイテムだ。どんな体の構造をしていても、熱が内部に通るようになっているという恐ろしいアイテムだ。外皮が分厚かろうが何しようがその中に熱が入り込むとか言う意味不明な効果を発揮する。
先生曰く、ドラゴンの鱗に張り付けても、そこから内部に熱が通っていくという話だ。私もそりゃ無理があるんじゃないかと思ったけれど、先生がいったからには間違いない!
「もういっちょ!」
苦しんでいるマオウペンギン相手に更に一枚投げつけて貼り付けた。
「ぐぉっ!? ぐあっ!? ま、魔者あああ! やはり貴様はこのような卑劣な戦い方をするのかあああ!」
戦いに卑劣も何もあるか戯けが。私は、こういうアイテムで敵を倒せる方法を一生懸命考えただけだ。これまでプレイしたきたゲームって、こういうアイテムだって工夫すれば色々な効果を発揮するんじゃないのかなあなんて思ってきたものだって沢山あった。なのに大半はそういうことが出来なかった。
私は、アイテムは組み合わせたりできないのっておかしくないかなぁなんて散々思ってきたので、今回この熱々湿布のようなアイテムが作れた時は、とても嬉しかった。
役に立たないなんて言われているアイテムでも有効活用できるとかそういうのが好きだ。そしてそれらを便利に使いこなすことで戦いを有利にするのが面白いって思っている。
それを卑怯だなんてないな! これが私の戦い方だ! 私は、このタイミングでドラゴンフルーツをがつがつと食べ始める。熱々湿布はあくまでも足止めをするためのアイテムだ。これでマオウペンギンが倒せるなんて思ってはいない。もっと弱いモンスターになら決め手にもなったかもしれないけれど。
「こっ、こっ! こんなものっ!」
…あぁやると思っていたけれど、やっぱりやられたか。くそう、割とあっさりやられてしまったな。そう。この湿布は普通に剥がすことができない。剥がすためには、私が設定したキーワードを言うか、もう一つ方法がある。それは貼り付けた部分事削り取る事…だ。
貼り付けるという性質上、どうしてもその対策はできないことが分かっていた。自分自身の体を傷つけるという行為をすることを躊躇しないモンスターには意味のないものになってしまう。
だけど、一応無理矢理剥がせばそれだけダメージを与えることができるので、十分効果ははっきりしてくれるだろう。ただし、モンスターに自動回復能力がある場合は、やはり有効的ではないわけだが。こんな弱点があっても、一定以上の効果はあると考えて採用した。といっても、今使った2個だけしか作れなかったのでもう在庫は無しだ。
「こんな姑息な戦い方をするとは!」
まーだそんなことを言ってるのかこのペンギンは。まぁいいか。次だ次。次のアイテム。この小さな実を、いくつか地面に投げつけて、と。おし、ちゃんと地面に入っていったな。後はマオウペンギンが襲い掛かってくるのを待つだけだ。
「死ね! 死ぬのだ!」
マオウペンギンが、今度は翼を振るって真空波のようなものをいくつも放ってきた。これは危ない! 速度重視というか私の全身に何発か切り傷をつけていく。すぐに薬草を食べるが、完全回復できないかもしれない。うぐぐ。これには気を付けないとな。
「ウォオ!」
また、連続で真空波を放ってこようとした瞬間だった。私はここでさっき仕掛けた物を発動させる。
「凹!」
「む!?」
私の声と同時に、マオウペンギンの周囲の地面が、どんどん凹んでいく。そして真空波は当然私の方には届かなかった。よっし、狙い通りだ! これも結構使えるな!
「こんなものは、飛んでしまえば意味がないぞ!」
だろうねー。でも意味がないなんてことはないんだなぁそれが! 今度は薬草を食べながら私は高みの見物だ。
「凸!」
今度は、私の足元の地面が一気に盛り上がっていく。マオウペンギンはそれを察知すると、すぐさま飛行して盛り上がった土にいる私へと迫ってくる。
だけど、そんな風に動くことは想定の範囲内だったので、そのまま盛り上がった土から飛び降りて、マオウペンギンに鎌を振るう。
「おっりゃあああ!」
「むぐ!!」
私の鎌とマオウペンギンの翼が衝突した。落下速度が加わっているので多分、私の方が強いと思ったのだけれど、マオウペンギンの翼を斬る事は出来なかった。くそー、なんでだろう。私の鎌の威力のほうが高いと思ったのに!
「こんな、鎌で我を倒せると思っているのか!!」
なんていうかなぁ。ちょっと思ってきたんだけれど、マオウペンギンって…意外に弱くないか? 結構本気で戦っているような感じがするけれど、強敵って感じが全然しない。このままいけば勝ててしまうんじゃないのかと油断しそうになる。
だけど、そういう油断をすることで敗北したことは何度もあるので、こいつはまだ実力を隠しているだけだと判断する。このまま楽に勝たせてもらえる相手じゃないだろう。
「甘いぞ。魔者」
マオウペンギンの姿が消えた。こういう時は大体後ろに回り込まれていると思って、すぐに落下している体制を仰向けにして、鎌を正面に突き出した。すると、衝撃が襲い掛かってきた。くそっ、さっきと逆の立場になったか!
「…まさか今のを防ぐとは!」
そういう攻撃を散々食らってきたからな! 不意打ち、だまし討ち、奇襲、見えない攻撃、死角からの攻撃、これまであらゆるゲームで最悪のタイミングで攻撃をされたことがある。だからな、ゲーマーってのはゲームのセンスがある奴だけがすごいわけじゃないんだよ! 経験に基づいて、様々な状況から戦い方を選択するという私みたいなゲーマーだっているんだ!
私は凄腕のゲーマーなんかじゃない! 才能もセンスの欠片もない! だけどなぁ! これまでプレイしてきたゲームで培ってきた経験値は大きいんだよ! だから今のも偶然だけど必然的に防げたんだ!
「うぐぐ。凸!」
地面が一気に盛り上がってくる。そこにそのまま落下する事で、一番下まで落下する際のダメージを軽減した。おー危なかったなあ。
そう、今回私が使ったのが凹凸の実。でこぼこの実だ。採取でとれるわけじゃなくて、私が錬金術で作ったアイテムだ。地形を変えるというのはとてもすごい効果だということを私は知っている。敵の攻撃に合わせて使わなきゃいけないのは使いにくいけれど、これもまた、相手がどんな出方をしてくるのか経験があれば、なんとなく分かるので、アクションゲームなどの経験者だったら、かなりいい感じで使えるんじゃないだろうか。
ふっふっふ。今回のマオウペンギン戦でもう2つも私が錬金術で作ったアイテムが役に立ったな。これはもう気分がいいな。まだこいつを追い詰めるためのアイテムはそこそこある。そこそこ、というのは作るのにやっぱり時間を要するものがあったので大量には準備できなかったからだ。
だけど、それらを駆使して、このマオウペンギンをぶっ倒すんだ。
今回、隕石拳はこいつ相手にはかわされたらおしまいだし、当たらない可能性が高いので使えない。ということは、だ。雷獣破を使うか、それとも竜巻のようなスキルでこいつを倒すのか、ってところだが、長期戦になるだろう。
そんな長期戦必至で、ある意味追い詰められている状況だというのに、切り札がないまま戦うという久々の状況だというのに、なぜだか私は心が躍っていた。
「やっぱりいつも挑戦者ねこます、じゃないとな」
絶対に勝てるような戦いもいいけれど、たまにはこうやって、次がどうなるのか分からない戦いをするのも、やっぱり楽しいな。ふふふ、なんとしてもぶっ倒してやるぞマオウペンギン!
やっとこさ錬金術士っぽさを出すことができたような気がします…。
ちなみに私はア○リエシリーズが大好きです。
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