第443話「ダブル隕石拳」
明日追記します!
2/11追記しました。
私は、最初から全力を出したことで、爽快感を感じていた。ダブル隕石拳は問答無用で敵を押し潰していく。そして、超高速で移動していくので、空からや後方から攻撃されても私に当たる事は無かった。
ダブル隕石拳自体に攻撃をされているようだが、びくともしていないようだ。この隕石拳の上に乗っかろうとしてきたりする奴もいるようなのだが、恐らくそいつらも吹き飛ばしてしまっているようだ。上から襲い掛かられたら絶対にまずいと思っていたのだけれど、私の上の方から、何かが燃える様な音が時折聞こえてくる。
摩擦熱か何かなのか? いや、隕石にそんな効果なんてあるのかどうかも分からない。本物の隕石ってわけでもないと思うし。そのあたりはまぁそういうものなんだろうと認識しておく。
モンスターの国中をダブル隕石拳でひたすら暴れ回る。マオウペンギンが姿を現さないが、このような事態をただ見ているだけなのだろうか。このスキルが切れる時を狙って私に襲い掛かろうとしているというのだろうか。
何を考えているのかは分からないが、この国を滅ぼすくらいのことを私がやっていることは確かなので、そのうち絶対に出てくるだろう。
「グォオオ!」
モンスター達の雄叫びと悲鳴が聞こえる。あらゆるモンスターがこのダブル隕石拳を止めようと必死になっている。悪魔型のモンスターや一つ目の巨人、あれはサイクロプスなど様々な種類がいるのが分かる。サイクロプスはブッチとは違うんだろうけれど、そいつらもどんどん潰されて言っているようだ。
モンスター達がどれだけ抵抗しても、私のダブル隕石拳は止められない。だけどここで違和感があった。ダブル隕石拳はかなり大きく、高速で飛んで行ってるのに、モンスター達を潰すことが終わらないと言う事だ。
つまり、それだけこのモンスターの国が広大だということを意味するわけだが、それだけの国に喧嘩を吹っ掛けたというのが私は凄い事をやっているんだなという気持ちになった。
まさか自分がこんな侵略行為をすることになるなんて思わなかったけれど、もうどうにでもなれという気持ちだ。
「はははー! どうしたー! お前らぁー! 誰も私を止められないのかー! マオウペンギンでもなんでもかかってこーい!」
叫び声をあげて挑発する。これで攻め込んできてくれればいいのだが、無差別に暴走しているこんな状況でこちらにはこないかもしれない。あるいは、今現在ブッチ達が活躍しているかもしれないので、そちらへ行ってることも考えられるな。
ダブル隕石拳の快進撃はつづいていく。凄まじい威力だと、周囲を見回して思う。私は何もかもを滅ぼす力を持っているのではないかと錯覚しそうだ。
「どうしたマオウペンギン! 国民が苦しんでいるのにいいのかー!」
人質をとっているかのようなものだけれど、マオウペンギンはこの状況をどう見ているのだろうか。私がこの攻撃を終わるまでぐっと我慢して待っているとか。できればさっさと出て切て欲しいんだけどなー。
「グギャギャヤ! コロスコロス!」
「ヨクモオレタチノクニヲ!」
言葉を話せる系のモンスターが私への怒りと憎しみを露にして罵声を浴びせてきた。が、良心は痛まなかった。そもそもこれゲームだしという冷めた感情がある。
ももりーずVの仲間のモンスター達には愛着があるが、それ以外がどうなろうが知ったことではないという感じだ。
もしかしたらここには良いモンスターがいたのかもしれないなぁ、それを押し潰しているのかもしれないなぁ。でもまぁ、しょうがない。私がこのゲームで先に進むためには、このくらいやってのけないといけないし。
「おいコラ! モンスターども! さっさとマオウペンギンを呼んできな! 私の攻撃を止めたければあいつじゃないと、止められないぞ!」
マオウペンギンがこのダブル隕石拳を止めようとすれば、それだけ力を消耗してくれるはずだ。だからさっさと現れろと思っているのだが、出てこない。
魔者である私を倒そうとする衝動で襲い掛かってきそうなものだけれど、我慢しているのかな。
「グァァァ! マテエエ! シネエエ!」
どうやら私の背後からモンスター達が追いかけてきているようだ。ダブル隕石拳の速度にはついてこれていないようだが、後ろの方に続々と集まってきているのが気配感知で分かった。
すごい、うじゃうじゃしてきている。気配感知がとんでもないことになっている。今まで見てきた中で一番多いぞこれ。
「グギャアア!」
「ニガサンゾオ!」
こちらには追い付けていないが、大量のモンスターをひきつけてしまっているこの状況は、いい展開とも言える。ブッチ達に連絡して、私の方に集まっているから、他が手薄になっているであろうことを知らせる。
ブッチ達も、私が進んだルートをたどって突撃していると思われるが、どうなっているかは分からない。
強力なモンスターを相手にしているかもしれないし、私の所にはすぐに来れないだろう。このままダブル隕石拳が切れて私が動けなくなってしまったら、そこで私はゲームオーバーといったところか。
動くことさえできれば、なんとかなるとは思うんだけれど、な。
このままどこまで飛んでいくかにもよるが、マオウペンギンは本当にどこにいるんだろうか。大体こういう時はでかい城なんかにいたりすると思うんだけれど、そんな分かりやすい所にはいないかもしれないな。昔プレイしたゲームだと、ラスボスが城の地下にいたなんてこともあったし、あれはあれでちゃんと防衛について考えられているんだなと感心したもんだ。だけどなあ。地下にいる場合はダブル隕石拳で攻撃が届かないところにいるってことになるし、そこはなんともならないな。隕石拳の弱点はこういうところにもあるってことか。強力だけど、自分で操作しないで勝手に動き回る暴走スキルだけにデメリットも多いな。
「ウオオオオ!」
ん? なんだ? 何匹ものモンスターの咆哮が鳴り響いた。これは、直線状に大量のモンスターがいる? もしかしてダブル隕石拳を止めようとしているってことなんだろうか。一斉攻撃で止めようというのか。確かにそれで止まるかもしれないけれど、今まで一回も止められたことが無いこのスキルをなんとかできると言うんだろうか?
大量のモンスターがいるのだから可能だとは思うけれど、そんな風に止められるものなんだろうか。そんな簡単に止められるようなスキルじゃないだろう、このスキルは。
「ぶっ潰せダブル隕石拳!!」
スキルを使っている途中にまた勢いが強くなるなんてことはないだろうけれど、私は思わず叫んだ。そんな簡単にこの攻撃が止められるはずがない。私が今まで必死に止まってくれと思ったこのスキルが、こんなモンスターの群れの総攻撃如きでなんとかなるわけがない。
それだけこのスキルに信頼を置いているのもなんだが、私は実際に自分で使ってみて、この勢いが簡単に止まるわけがないと言うのを知っているから、ここまで言える。
「グオアアア!」
隕石拳を使っている私に衝撃が走ってくる。これは…。まさか…。まずいんじゃないのかと思ったが、一瞬にしてそんな気持ちは吹っ飛んだ。
この程度? あれだけ大量のモンスターがいて攻撃を仕掛けてきて、たったこの程度の衝撃? そんなもんで、私のダブル隕石拳をぶっ壊そうとしているのか? そう思っていたら、一瞬のうちに前方にいたモンスター達の気配が消えた。どうやら隕石拳に押し潰されてしまったようだ。
当然の結果だろう。こんなので簡単に止まるわけがない。今回はダブルの隕石拳だし。こんなんで止められるのだったら、今までだってもっと簡単に止まっていた。
「おいおいどうしたモンスターども! こんな攻撃も止められないのか!」
ひたすら挑発を繰り返してやる。たった一人の私を相手にどうにもならないということを思い知らせてやると同時に、自分たちがいかに無力なのかを徹底的に教え込む。
「グギギギ!」
モンスター達はなおも私の攻撃を食い止めようとするが、それは失敗していく。どれだけ攻撃を浴びせようとも、ダブル隕石拳は止まらない。炎も冷気も電撃も風も、体当たりも何もかも、全てを打ち砕いていく。
…このスキル、本当に強すぎないか? キングモリコングの迷彩ジャケットを手に入れただけでこんなスキルが使えるようになるなんて絶対におかしいというかゲームバランスが崩壊し過ぎだろう。バランスブレイカー過ぎる。
このスキルを私以外の誰かが使えるようになっていたりしたら、それはそれで恐ろしいな。例えばスキルをコピーされたり、私と同じ能力を使えるようになった奴がこのダブル隕石拳を使われたりしたら、とんでもないことになるな。
この隕石拳同士で撃ち合う事になったら…とてつもないことになるんだろうな、なんて考える余裕が今はあった。私のスキルを見た奴がいれば、何か対策を講じてくるに違いないので、その対策への対策を私だって考えないといけない。
今回は好き勝手に暴れると決めたとはいえ、闇雲に暴れるだけじゃない。最前線に立ちながらも、自分に襲い掛かってくる攻撃への対策を考えながら戦わないといけない。
今回、一番気になっていた事に、隕石拳に追い付いてくる敵がいたらどうするのかということだったが、現状それはいないのでなんとかなっている。この先いないとも限らないけれど。
高速で移動してくる敵に私の手が斬り落とされたらなんてことも考えていたけれど、それもない。なのでひとまずは安全ルートに入っているはずだ。
後は、目的のマオウペンギンが出てくればいいんだけれど、あいつ、全く姿を現さない。何なんだ。あの時あんなに挑発してきた癖に、今度は逃げ回るのか。なんて奴だよ全く。
「魔者よ。貴様がここに乗り込んでくる事は分かっていたぞ」
なんて考えていたら空から声が響き渡ってきた。マオウペンギンなのかは分からない。声だけがマオウペンギンだなんて事も考えられる。そういって攻め込んだたら実はいませんでしたという展開は今まで何度も別なゲームでされてきたことから、こういうのは簡単に信じ込まない。
「我も、もう歯止めが利かぬ。今から貴様を殺すぞ魔者」
「やれるもんなら、やってみなああああああ!」
私は上を向いて思いっきり叫んだ。さて、現れてくれるのかな、マオウペンギン!